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4000兆回目の転生日記  作者: ゆるん
二冊目《自称皇帝とジャパニーズ転移者》
39/102

2ページ,ジャパニーズ転移者

 ───11(レル)───


 ───つまらなかった。僕は、もっと修羅場を予想してたのに。両家、仲良くして終わった。


「クー、そんな目で見つめないでよ。安心してるのだから」


 今回の反省としては、俺が<邪覇獄凄愴試煉カザレイズ・ダ・ベータ>の様子をみてなかったことだ。


 もっと、ギスギスだと思ったのに。───っと、これで2763人目か?

 少し前、僕は暇だったため庭をブラついていたら傭兵の人に声をかけられ、いつのまにか勝負になってた。


 あいにく、自分は武器を持っていなかった為、素手で立ち向かった。

 それを見た他の傭兵の人も勝負を仕掛けてきたが、それも全員やった。


 そしたら、いつの間にか2763人?傭兵さん大丈夫かな?ほんとここって治安いいんだね。よっぽど暇のようだ。


 普通、私を見たら戦闘の準備になるんじゃなくて欲情するはずなんだけどなー


 ここってホント生態がよくわからない。まっ<虚次元世界>の常識と<武力世界>の常識じゃあ、全く違うから考えたって分からんか。


 フェイさんたちは先に帰ったみたいだし私達も帰ろう。


「アメリたち~!帰るよ~!」


 なにやら話し込みをしている向こうの人たちに声をかける。向こうにいるアメリ達も僕の声で気づいたようだ。万遍の笑顔で手を振っている。「はーい」


 帰る。自分の家に。傭兵さんもそこで寝てると風邪ひくかもよ?『完全完治回復(パーフェクトヒール)』っと。


 ***


 ───キャル宅、玄関前───


 緊急事態が発生したようだ。なにやら、キャルの家に不審者たちが来たみたいだ。

 急ぎ目の転移魔法を発動して、キャル宅前に到達する。途端に、沢山の視線が刺さる。冒険者ギルドの時以来の視線の痛さだ。


 この感覚は……驚き?視覚を空間で感じ取る。すると、目の前には9人の男女が居た。

 全員、黒髪黒目。珍しいな。敵意も攻撃をする意思も無し。なんの用だ?


「だれだ、お前は」


 なにやら厳つそうな見た目の男が私の目の前に現れる。随分と背が高い。相手と視線が交差する。

 すると、相手の顔がどんどんと真っ赤になっていく。遂には体の髄まで赤く染まった。


「……かわいい」


 男がぽつりと呟く。でも、そんな小さな一言でも、自分は聞こえてしまった。

 私の頭は一瞬に混乱の渦へと巻かれる。可愛い?


 でも、私は理解力が早い。そう、この男は俺に惚れたのだ。


「俺と付き合って下さい!」


 そう、俺───ではなく、アメリの方に、いつの間にか手の中に納められていた花束を渡した。


 ……恥ずかしい。自惚(うぬぼ)れてたわ。

 アメリはクスッと苦笑をして、花束は受け取らなかった。


「ごめんなさい」


 その一言で男を一蹴した。男はこの世の終わりともいわんばかりの石のように固まる。

 だが、すぐに戻りだし、気合の入れた顔になる。


「だが、俺は諦めません!必ずや、貴方を取りに───」


 私がそろそろ殴りに掛かろうとしていたその最中に、男の頭をポコッと殴る者がいた。

 ポニーテールのいかにも男勝りな女の子がそこに居た。


 女の子は男に注意喚起をする。


祐亮(ゆうすけ)!なにやってんのよ!変な事やってる場合じゃないでしょ」


 男はあっけらかんとし、「香穂里(かおり)……」と呟いた。


 なにやら、こことは違う所から来たみたいだ。名前の響きが違う。

 そんな二人に声をかける。


「なあ、なにか事情があるようだが、聞かせてもらえないか?信用に値するかは、それで決める」


 そう声をかけると、二人は目を合わせて同時に頷く。


「わかった、話を聞いてくれ」「わかりました、話を聞いてください」


 よし、じゃあ───キャルが、扉を開けて、こちらをジトーっと見つめる。


「なにしてんの?クー。騒がしいんだけど、あとこの人たち誰?」


 祐亮がキャルを見て再度呟く。「かわいい……」相変わらずのようだ。

 というか、俺は?俺だって、顔はいいと思うけど。


「じゃあ、キャルの家で話させてもらうか」


 ***


「私たちは、何て言ったらいいんだろ。他の人たちは"転移者"って言ってたました」


 香穂里は、椅子に座って語りだす。

 長くなりすぎ、割愛。要点は30秒で話せるものにしてよ。


 取り敢えず、まとめると


 ・この転移者たちは、トイツァラン帝国で召喚された

 ・トイツァラン帝国の国教の教えが自分たちと合わなくなってきた

 ・帝国が自分たちを利用していることがわかった

 ・現在は帝国を脱走中

 ・他にも仲間はいるけど今はバラけている


 こんな感じか。じゃあ質問をしよう。


「アンタらの元居た世界はなんなの?」


 質問を促すと、少し間が空き、答えが飛んでくる。


「……私たちは、知ってるか分かりませんが、地球という星の日本という国です」


 チキュウ?二ホン?どこかで聞いたような……?


 横で「あっ」という声が聞こえる。音源はアメリの声だ。


「なにか覚えがあるの?アメリ」


 そう問いかけると、小声でアメリが答える。


「<均衡世界>第62回生アクトロノス、トーレス銀河の662星目。アース52だよ」


 ……!あそこか。俺が転生して一回目の星。私が生まれた場所はロンドンと呼ばれたところだっけか。確か戦争が起こり、空襲で俺はアメリと死んだ記憶がある。


「あそこか、確か、日本語も習った記憶ある」


 私がそんなことを口走ると、周りの転移者が驚く。


「貴方も転移者なんですか⁉」


 香穂里が声を荒げる。それだけ驚くところだったか?そうだな、少し日本語で話してみよう。


『コンニチワ、ボクノナマエハ、クライシス、デス』


 片言だけど、大丈夫かな?周りが騒乱の渦になる。向こうも、こちらには信用していない奴が多少居たが、これでいいと思う。


 転移者は基本的に、こちらの世界に転移していくときに、膨大なマナなどを体に受ける。そのおかげで、元来、体に無い素回路(そかいろ)や、力回路(フェアかいろ)などが構成されていき。異世界で<法>などが使えるようになる。だが、それらを作ったとしても、マナなどは、余る。だから、残ったマナで、スキルなどを構築される。基本は〈全言語理解〉や、〈法操作〉などが全員に構築されている。それでも、まだマナが余ることがあるので、そこは本人の特技などに沿ったスキルが与えられる。


 だが、転移者ではないものは、基本的に〈全言語理解〉などは獲得できない。


 だからこそ、俺が今ここで日本語を放ったというのは、非常に驚くことなのだ。


「まあ、そんなことはいい。で、だ。結局お前らの望むことは何なんだ?」


 転移者が全員下を向き、俯いている。やがて、祐亮が頭を下げて、私たちに願いを乞う。


「頼む!仲間たちを助けてくれ!」


「断る」

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