1ページ,まともな朝
───7間 18日 楽曜日 4時───
……運命なのか、宿命なのか。横を見遣る。スヤスヤと、アメリは寝ている。
サラサラな髪を大事そうに撫でる。
「うにゅ……」
そんな寝言が聞こえてしまい、苦笑する。久しぶりに、夢を見たな。
昨日、祭りが終わった後、キャル宅になるべく近い空き土地にトアノレスで家を建てた。
取り敢えず、家具などは揃えていないが、後々追加していこう。
体を起き上がらせる。「行かないで……」……まだ寝てるとしよう。
***
───2時間後───
ようやくアメリが起きた。まだ目を擦っている。コイツは人間なのだ。私とは違って。
だから起きた直後は眠いのだ。
「朝ごはんにする?」
「……うん」
まだボケーっとしているみたいだ。でも、朝食後になると目がだいぶ覚める感じかな?
今のアメリは朝に弱いようだ。覚えとこう。
寝室は昨日、急遽作ったからいいとして……ほかはゆったりとするリビングかな?
トアノレスと空間を併用して新たな部屋を作る。これで後は『空間扉』を設置してっ、完成だ。これで、扉を開くと……リビングに着く。
『空間扉』は一度作った部屋を保存して扉が開かれた時に頭の中で想像した保存した部屋を形成する。簡単にいうならグー〇ルのパスワード保存だ。
家具を作る為、トアノレスを複製して、テーブルにする。木製だ。他にも食器や日用品を作っていく。
あっという間にできたリビングは、随分と住みやすい環境になる。
広く、すごく落ち着く部屋になった。生成されてある椅子に座る。うん、言い座り心地。
───不意に、後ろから温もりが。見なくても分かる。私は、手をソイツの頭にやり、一撫で。
「もう目が覚めたか?アメリ」
「……朝ごはんに……しよ?」
アメリは、興味が引く話題以外は寡黙で、質問をしなくても答えが分かるものには一切として言わずに他の話題へと移す。
私は〈念動力〉と〈調理師〉で遠距離料理をする。
アメリはボーっとテレビでニュースを見ている。
『二日前に起こった謎の大量地震については、まだ調査中で……現在、わかっていることは、震源が迷宮ということ……』
迷宮という単語が聞こえてきたため、アメリに質問をする。
「そういえば、結局、あの迷宮はどうなったんだ?」
すると、間髪を入れずにアメリが即座に答える。
「生まれた場所がアソコだったから、取り敢えずあそこに居た邪魔者を全部ぶっ倒した。だけど、私は生態系に関することはしない。そういうルールだから。だから、あの迷宮は元に戻しといた」
「そうか、それはよかった。迷宮はキャルたちが修行で使うからな」
俺は、ガイラズさんの部屋に置かれていた教本の解読を試みる。
この前は、ある聖法でゴリ押ししようと思ったけど、それでは美しくない。
それに負けたという感じがするからな。
教本の解読を進めながら、アメリとの会話を続ける。
「なあ、あの支配されてたガイラズに倒されたのってワザとだよな?」
「……私も、邪魔者を殺して、学んだ。あまり、未来が変わりそうな可能性がある行動をしないって……だから、アナタが来るのを待った」
「信頼されててよかったよ───っと」
いつの間にか、肩にアメリの顔が置かれる。アメリが教本をジーッと見ている。
あっそうか。
「おまえ、得意だったもんな、こういうやつ」
「パルって……解読、苦手じゃなかった?」
「ああ、いつも強行突破してるからな」
「……まかせて」
アメリに教本を手渡す。すると、教本がアメリの手からどんどんと上に行き、幾重になる聖法陣がかかっていく。やがて、教本に錠前が出現し、聖法陣が鍵と化する。
「『絶対解除鍵』」
鍵が、教本の錠前に近づき、開かれる。
「ありがとう」
アメリはフフンと笑い「どういたしまして」と答える。可愛いと思ってしまう。
そろそろ朝食もできたみたいだし、食べるか。
***
───食事後(28別後)───
「……おいしかた」
「どうも」
あえて促音がなかったことを無視するが、このようなことを天然でするのは非常に良い。
短い返事をし、アメリとくっ付いている。こんな日常もいいな───
「───クー!」
「クー!「修行して!」」
……平穏は、またしてもこの二人に壊された。この、平穏破壊者共が!
ほら、アメリだって、頬が膨れている。可愛いな。
「あっごめん……用事あった?」
キャルがアメリを見て身を縮こまる。私は溜息を吐いて、立ち上がる。アメリの頭を撫でて。
「いいよ、稽古をつけてやる、アメリ。すぐに終わらせてくる」
***
───パルメル宅の庭───
「これは、最新技術の模擬剣よ。斬られはしないけど、それ相応の痛みを伴う剣だわ」
柄しかない剣を持ち、<力>を込めると、自身の魂の色の刃が出現する。
俺は、色々な色が混ざったおかしな色の刃がでてきた。
「へえ、凄いな。これは」
「じゃあ、早速やるよ、クー」
ケルは、思いっきりの覇気を纏って、地面を鳴らす。
危ないな。『反力結界』を発動。一瞬にして外部に力が漏れ出すことが無くなる。
キャルもケルに劣らずとも勝るとも言えない覇気を纏わせる。
「二人とも、成長したな」
そんな一言を申すも、時はすでに動き出しており、二人は俺の横に並んでいた。
ケルの剣が俺の首に、キャルの剣が俺の足に達しようとしていた。
その二つの刃を、俺は一瞬にして弾いた。
「「⁉」」
二人に驚きの顔が漏れ出す。まだまだ。
ゆっくりと剣を突き出す。それは速さが無く、殺意の籠っていない一撃。
当然、二人の技量ならこの速さだけでは避けられた。
でも、その刃が二人にあたった。
「───玄海零細流刀剣術〈壱〉《石火》」
「なによ、その刀剣術!この前も使ってたけど!」
「ボクに使った!また!使った!覚えてるからな!あの感触!」
どうやら、まだ恨みを持っていたようだ。気を付けないと、夜道でやられそうな。
「一つの刀剣術くらい覚えておいた方が得だぞ?」
「なんの!」
剣が交差していき、体力が削られる。もちろん、相手の方だがな。
***
───模擬戦終了(17別後)───
「「はあ……ハア……はあ」」
模擬戦が終わり、模擬剣をキャルに渡す。ついでに『反力結界』も解く。
さて、と。ちょうど、外に出たことだし、進めるか。
「皆、ちょっと行くよ」
「「「?」」」
***
───キャル宅───
「で、一体なにをするんだ?」
「いや、さ。晴れてキャルとケルが付き合ったってことで、両家で顔合わせしてほしいなーって感じだから、してくれない?」
皆、疑問の瞳を呈している。理由は?と聞いてきそうだ。
「いや、付き合ってるから両家の挨拶とか必要じゃない?あと見てて面白そう」
「「「いや、最後のやつ本音だよね!」」」
バレたね。でも、挨拶はしとかないと。認められてもらえるかな?




