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4000兆回目の転生日記  作者: ゆるん
一冊目《迷宮姫の覚醒》
30/102

29ページ,邪王ケル

「お招きいたしました。邪王様」


 家臣の人が短く済ますと、何処かへ行ってしまった。そう、音もなく消えてしまった。まるで(おぼろ)のように消えてしまった。


 あれも覇気なの?覇気って一体なんだっけ?便利過ぎない?

 いや、この世界は全てが覇気で決まる世界。なら、小さい頃から覇気の英才教育を受けていたなら、人ならざる者の動きだっていけるだろう。だが、覇気。覇気なのだ。変幻自在?


「お前が、ガージュが言っていた嫁御というもの……か…………っえ⁉」


 あっ、やばい、家臣の人に気を取られすぎて邪王の存在を忘れていた。さて、イケメンか、デブか……!声はどっかで聞いたような美声だけど……どっちだ!

 私が振り向くとそこにいたのは黒髪のイケメン……いや、どこかで見たことが……


「…………きゃる……」

「っえ、なんで、私の名前を知って……」


 いやまって、もしかしてこの見たことがあるこの容姿……


「もしかして……け、ケルちゃん……?」

「(コクッ)」


 あー間違いない。この頷きはケルちゃんだ。……あれ待ってケルちゃん……?


「ええええええええええええええぇぇぇっ⁉」


 多分、この何年間で一番でかい声量だったと思う。


 ***

(少女、落ち着き中……)


「えっでも、それでもケルはケルで。それはきっとこっちのケルだからこっちのケルはケルじゃなくて(?)だから、ケルは現実のものだからこっちのケルは偽物?」


「まだ落ち着いてないね」(ケル)


 ***

(再度、落ち着き中)


「えーっと、なんでケルがここに居るの?」


 落ち着いた。そして落ち着いてみて生まれた質問を飛ばす。


「逆に聞くけど、なんでキャルがここに居るの?」


 逆に質問をされてしまった。でも(もっと)もな意見だった。ケルは邪王としてここにずっと居るわけであって、違う世界に居た私が急に自分が居た世界に来るなどおかしい話だ。

 あれ?ってことはケルの出身地って<邪覇獄凄愴試煉カザレイズ・ダ・ベータ>ってこと?


「うん」(コクッ)


 ケルが『読心術』で私の心を読んで答えた。もう私の言葉要らなくて心で会話すればよくない?


「スキル、普通にマナが削られるからしんどい」


 〈スキル〉を使うためにはマナを使う必要。スキルの個体差でマナの使用量は変わる。

 マナはもともと、魔力と同じ<素>で出来ている。<素>というのは、<素>という<力>の源の種類だ。


 <法>、<力>、<素>の順番で細かくなっている。


「オッホン」


 私でもケルでもない声が聞こえた。私は声のした方を向くと立派な服を着た貴族みたいな方たちが一杯豪華な椅子に座ってこちらを呆気にとられた表情で見ていた。


「あっすいません」


 私が謝ると、貴族の方たちは笑顔で私を迎えてくれた。


「いいのよ、じゃあそこに座ってくれるかしら?」

「あっどうも」


 ……………………………………なにも話すことが無い。


 えっなに?この気まずい状況。なにから話せばいいだろう。えっえーっと……


「申し遅れました。(わたくし)は、ワーベラスト=レーベラ。ケルちゃ……じゃなくて、現邪王、ケラヘルス・ワーテル・アーネスト・ネ・ルグルスラスト・ウォーガン・べラベルズ・トメイスト・ウェンター=レーベラの実母であり、現冥王、テュポン・ゴード・ファクトリー・プラネル・ウィール・マウズ・グ・ジュリュウ・アーント・ケルセス・ケルラル=レーベラの妻でございます。どうぞ、お見知りおきを」


 ……?日本語を喋ってください?ちょっと名前長すぎない?というかケルってそんな名前だったの⁉私なんか縮めちゃってケルって名付けちゃったんですけどいいんですか⁉まあケルが頷いてるからいいのかな?


 てまあ、話はトントン拍子に進んじゃって。ついでにどうして私がこんなところに来たのかもホント全部言っちゃって。


 それはもう盛大に大変で、これからどうしようかという話になっちゃって。


「取り敢えず、元の世界に帰りますか?」

「えっ帰られるのですか?」


 てっきり帰れないものだと思っていたので内心、驚愕(きょうがく)する。


 するとワーベラストさんはにっこりと笑って「帰れますよ」と呆気らかんに言った。


 こんなにもあっさりと言われてしまったら少しだけ考えてしまう。このままなにも考えずに「帰りますっ!」って言えば楽だろうけど、その後が大変だ。


 だってアメリという鬼が「覇気は十分に習得できた?なら勝負しようか。不十分と私が判断したらまたあの世界に送り込ませるからね」とかいってきそうだ。ていうか絶対言ってくる!そう確信できる。

 ならどうしたものか。うーん、そうだ。


「なら、ケルに少しだけ覇気の練習をさせてもらおうかな」


 すると、全員がこちらを見てニッコリ「「「「いいですよ」」」」


 凄い優しそうな顔、だけどその顔には少しだけ含みがありそうな顔だった。

 読心術で覗いてみよう。なになに?(絶対、ケルちゃんとくっつけてみせるわ!)……余計なお世話だわ!


「あのー、なにか良からぬことを考えてません?」

「「「「なにも考えてませんよー」」」」


 皆ニッコニコで口を揃えた!皆同じような考えだった。ちなみに当の本人(ケル)の心の中を覗くと、(今日の晩御飯は唐揚げとかよさそうだなー)だった。いや、庶民的!


「じゃあ、期間は一週間で毎日、朝の11時から夕方の5時まで練習をするってことで~ケルも貴女もいい?」


 無言の圧力!なにも言い返せない!これも覇気を使っているのかな?いや、これはただ単純に奥様の暦年の経験からくる技だ!一体、どうやってるんだろう?


「いいよ」「はい、それでいいです(泣)」


 なにも言い返せない(泣)まあなにも言い返す言葉もないけどさ~……


 そうして始まった一週間、覇気練習(トレーニング)。主にすることと言ったら覇気の総量を増やすこと。そして増えた覇気の総量を制御すること。その為には、体づくりからだ。


「はい、そこ!ちゃんと脱力して他の部位に筋肉を溜める!」


 思ったよりハードだった。もうなんか……スパルタなんだよ……最初はアップという名の筋トレ。だけど、今までやったことのない筋トレだからキツイし、それにやる回数が桁違いだ。


「はい次、500回ね」


 ひいいぃぃぃぃ~


 ***

───休憩中───


「そういえばさ、私、ケルについてなにも聞いてないんだけど。」


 お昼休憩の最中。私は聞き足りなかったケルについて話を聞いていた。


「?なに?」

「例えばさ~ケルはここの住人なんでしょ?なのになんで私達の世界に来たの?そんな護衛もなしに、一人で」


 私の質問にケルは苦笑を混じ合わせながら答える。


「ふふっ、そういえばなにも言ってなかったね。……僕たち、王家は13歳になると悪魔と契約をする必要があるんだ。その時に僕は滅多に表れない大罪の悪魔を引いてね」

「それは凄いじゃん」


 私の言葉も、ケルは静かに悔しそうな瞳の言葉で返した。


「僕も、一時はそう思ったよ。でも、もちろん大罪の悪魔と契約するのだから条件があった。それはキャルたちが居る世界に行って、自分と一緒に冒険をしろ、っていう条件。だけど、僕の周りの人たちは過保護だからね。護衛をたくさんつけようとしたんだけど悪魔はそれを拒んだ。ちゃんと僕一人で生きているということを見定める必要があるって。僕はちゃんとその言う通りにしたよ」


 ケルは、ギュウウッと拳を固める。(まなこ)を閉じて、続ける。


「でも……流石は悪魔だね。僕を裏切ったよ。大罪の悪魔───ベルゼブブは僕の精神を瀕死になるまで喰らい、蝕んでいった。そして僕の体をケルベロスにしたんだ。その方が動きやすからってベルゼブブは言ってたね。ベルゼブブは世界を侵略することを目標としていた。その為の第一歩として、僕を利用したんだ」

「……」


 私は、ただ黙って話を聞いた。


「そうして王国まで着実に歩を進んでいったときに───捕まったんだよ。何処かに。そして、ある実験をさせられた。結果的に言うと、卵にさせられたよ。そして、簡易奴隷契約みたいなものをさせられた。だけど、突然にそれが孵化させられたんだ。僕が与えられた命令は、全てを壊すこと。ベルゼブブの力だったらその命令を抑えられるし、主従関係を喰らって立場逆転することもできたんだけど、ベルゼブブはその命令を逆手に取り、僕をさらに封じ込めるために利用した」


 非力のような、諦めのような、そんな溜息が零れていた。でも、希望の眼差しも、そこにあった。これから、夢物語が始まるとしているみたいに。


「もう諦めていたその時、君たちが現れたよ。ほんとに、希望だった。しかも、僕も救っちゃうんだから。親には、このことも言っている。凄い感謝されてたもんね」


 そう、話をしている時に、私はすっごい感謝されてた。私は、なにもしていないのに。


「ちゃんとキャルたちには感謝しないとね。それに、お陰でちょっとだけだけどキャル達の言語がわかったんだから」


 すごく、希望に満ちた笑顔でケルは言った。

 確かに、クーのしたことは大きい。だって、こんな不幸な目にあった人でも救っちゃうんだから。


 でも、そこに私も含まれるっておかしいな?


「でも、私たちの言語を知ってなにか意味なんてあるの?」


 私がその質問をするとケルは少しだけ押し黙った。


 言いにくそうに。もじもじとして、恥ずかしそうに。私はその意図がよくわからなかったけど、次にケルは私の手を大事そうに持ちあげ、喉から搾りでた言葉を発する。


「えーっと……ね。ッ……フー、キャル、実は君のこと───」

「───二人ともー!少し休憩が長いんじゃない?そろそろ練習再開したらー?」


 ケルがなにかを言おうとした瞬間、ケルのお母さんが私達を呼んだ。


「アッ……」


 ケルは落胆した表情を見せた後「……いこっか」と言い、立ち上がる。


 一体、なんだったんだろう、また今度聞かせてほしいかも。

 その後は淡々と業務をこなすように時間が過ぎていった。不可解だったのはケルがちょっと暗い目をしてたことくらいだった。


 ***


「どうだった~?初日の練習は?」


 夜、皆集まって夕食を食べた。あと、団(らん)も。「順調でした」「順調だった」二人同時に答える。するとケルお母さんはあらあらと言い、「いつの間にそんな仲良くなったのかしら」口を押えた。


「「気にしないでください」っ!」


 そんな愛くるしい物を見る目で見ないでくださいっ!


 私達はそんなの望んでない……とも言えないけど!それでも……それでも……まだ早いと思うの!

ケルがキャルにも感謝している理由:気持ちが乗っ取られて複雑の中、キャルに色々と介護されていた為。そこで好意にも気づく....なんでもありません。

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