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4000兆回目の転生日記  作者: ゆるん
一冊目《迷宮姫の覚醒》
25/102

24ページ,地獄の修行

──朝か昼かどっちなんだろうの時、【永久の迷宮(ラビリンス)】<奈落>、キャルメル、ファスト──


「た、倒した?」


 私は彼女の言っていることがいまいち分からなかった。


 彼女は『迷宮統率皇(ダンジョンマスター)』ではないのか? もし倒したというのなら一体なぜここにいるのだろうか。


 色んな疑問が頭の中に提示される。


「うん。倒した」


 短く返事を返したその答えは、どこか興味が薄いような、遠くを見据えているような、そんな意味を含まれているような返事だった。少なくとも、敵意は感じ取れない。


「え、えーと」


 そこまであっさりと返事されてしまい、混乱してしまったのか新たな言葉を発するに(きゅう)してしまった。


 そこで、私は改めて周りを眺めた。太陽などの光源がないのに辺りは明るく、空気も澄んでいた。


 そういえば、さっきまであった疲労感も無くなっていた。


 この部屋の中心を見てみると暖かそうなデカい光る石が宙に浮かんでいた。


「あ、あれはなに?」


 少なくとも私は見たことが無いものだった。


「あれは、(コア)迷宮(ダンジョン)(コア)といって、あれのおかげで『迷宮統率皇(ダンジョンマスター)』がいなくても迷宮(ダンジョン)が稼働している」


「それは、どの迷宮(ダンジョン)にもあるものなの?」


 新たに疑問を言い放ち、会話を広げる。彼女は首を左右に振り、否定を出した。


「いいえ。この迷宮(ダンジョン)にしかない。私が作ったものだから。それに、あの石は回復効果もある」


 つまりあの石を一から作り出せる程に彼女は異次元の強さにいる。コアと呼ばれるあの石を維持するだけでもエーテルは減っていく一方だと思う。だが、それを常時発動するということは彼女のエーテル量は世界一といっても過言ではない。


「じゃあ、あの(コア)のお陰で私のさっきまであった疲労感も回復したってこと?」


「そう、自動的に回復している」


 こんな便利な機能を作るということはかなりの時間が経過していけないといけないはずだ。つまり、彼女はここで長い時間暮らしているということが分かる。


「貴女は何者なの……?」


「……説明するのが難しい……だけど、あの人がいるなら……ちょっとだけ理解が早いかも」


「あのひと?」


 彼女の言葉から発せられた謎の単語の答えを求める。


「気にしなくてもいい」


 だけど、どうやら回答は得られないようだ。彼女は続けて言葉を発する。


「ワタシの名前は…………アメリ・ヴィネラ・リール。よろしく、キャル」


 きっと〈読心術〉で私の名前を探り当てたのだろう。キャルという愛称を探り当てたということはかなりのスキルレベルだと思う。


「よろしく、アメリ」


 しどろもどろになるも、挨拶を返す。


「……キャルはどうしてここに来たの?」


「それは、お父さんと───」


 あっ。お父さん。わ、忘れてた。ど、ど、どうしよう、どうしよう。


「なにを、慌てているの? お父さんに関しては大丈夫だよ」


 含みのある言い方に私は疑問を抱いた。


「そ、それって、どう大丈夫なの」


 アメリは宙に手をやると、その(てのひら)に不思議な液体が溜まったコップが現れる。また、重力に逆らうくらいに、ゆっくりと腰を下げるとそこにアメリと同じ髪色の純白な椅子が出現した。


 アメリは優雅にス──と紅茶のような液体を飲む。


「ア、アメリ?聞いてる?」


「聞いてるよ」


 明らか聞いてなさそう───と、思っていたら、アメリは魔力の赤黒い粒子を操り、謎の液体を宙に薄く四角く、貼り付き固まり、映像を映し出す画面と化する。


 そこに映っていたのはキャルのお父さんだった。焦っている様子が映し出されていた。私を探しているのだろうか。それなら───


「……行かなきゃ」


 ここにいつまでも居ちゃ駄目だと、直感で感じた。しかし、この奈落最下層では外に出てもモンスターに瞬殺されるだろう。だから、近くに居る強者のアメリに相談する。


「アメリ、どうしたら短時間で外に出られる力を身に着けられる?」


「……キャルの力がよく分からないからまずは戦わないと」


 すると今まであったコップと椅子がいつの間にか消えていてアメリは見知らぬ紫色の武器を構えていた。


 あれは……この星の武器じゃない。というより、あの武器はエネルギー? で出来ている? 


 いや、もっと注目すべきところがあるでしょ。動きが自然すぎて全然気づかなかった。気づかぬ内に武器を構えている。しかも、椅子から立ったことさえ気づけなかった。


 これが、達人の域だと思い知る。いや、それより凌駕しているのかもしれない。


「来て」


 私は剣を構えてアメリに向かって駆ける。先程には疲労があって体が思うように動かなかったが今はそんなのはない。思いっきり戦える。


 剣を横に薙ぎ───止められた。一歩も動かさず、腕も全くとして動かさずに覇気だけで止められた。こっち側も全く動かないっ!


「終わり? まだあるでしょ?」


 やっぱりバレてた。そりゃそうだね。〈読心術〉があるんだもん。なら、出し惜しみはなしにしよう。


「〈力操作(エーテルリング)〉」


 瞬間、アメリが放った覇気が無くなる。そのことによって私に掛かっていた抵抗がなくなりアメリに剣の(やいば)が届く。


 はずだった───


「惜しいね」


 アメリは素手で受け止めた。一滴の血すらも出ていない。


 なんで? 手ごたえを感じない? え?


「〈斬鉄刄強化〉」


 やっぱりだめだ。どうして? 鉄が斬れるほどに刃を強化したのに。それを飄々(ひょうひょう)と素手で受け止めている。


「『堅牢皮膚(けんろうひふ)』まずは私の《刻印能力(ガルフ)》を砕かないとね」


 この硬さは《刻印能力(ガルフ)》のせいだったのか。なんて厄介な《刻印能力(ガルフ)》なんだろう。それ、欲しい。


 でも、このままでは前進はできない。それなら攻撃の仕方を変えるっ!


「《剣閃》ッ!」


 至る所に瞬時に移動し相手にとって予測不可能な攻撃を何回も繰り返す。この技は絶対に相手の死角を捉えて攻撃できるはずだ。でも、アメリはその全てを防いでいた。全てがわかるように、死角なんてないように。


 360°振り返らなくても知覚できるような防ぎだった。


「どんなに攻撃したって今のままでは無駄、ほら」


 アメリはそう言い、私の迫りくる剣を死角から素手で受け止めた。


「色んな魔眼や聖眼なんかのような異眼を使っていると死角なんてなくなって全てを見渡せるようになるんだよ。だから、そんな攻撃は私にとって、ただただ真正面から直線的に攻撃しているのと一緒。もっと思考を単純に、そしてもっと戦術を複雑に」


 その後、アメリは、よし、と言いなにかをする準備を始める。


 今回は聖力の青白い粒子が立ちこみ、扉が形成されていく。そういえば、さっきもそうだけど一切、陣を描かなかった。エーテルだけでセレマを扱うって確か凄いことなんじゃ……


「『突破滅界試練門(レアズヴェアラ)』」


 瞬間、物凄い圧が私にのしかかる。ビリビリと体に負担がかかる。近くにいるだけでもこれだけ圧がかかるのに、中は一体どうなってるの?


 立っていることすらやっとなのにアメリは平然としている。術をかけた術者は効かない仕組み(システム)なの?


「このくらいは普通としてられないとね」


 この言い方は、多分アメリにも圧はかかっているみたい。だけど、それでもこのくらいの圧では物ともしないみたい。


「暫くはこのままね。このくらいの圧でも平然としてられるのなら試練を受けさせてあげる」


 えっ慣れるまでずっとこのまま? えっ、ちょっと待ってよアメリ? え?


 …………え~?

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