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4000兆回目の転生日記  作者: ゆるん
三冊目《監禁魔女王の解放》
101/102

28ページ,極致級

 数日前の出来事である。僕は言った。


「これはただの国家間での戦争ではない……種族の対決だ」


 種族の存亡をかけた戦い。もともと、魔族と人族の間では諍いが起きていた。その募りに募った鬱憤が今、戦争という化物としてこの世に降り注がれる。


「……でも、どちらの勝利でもなく、平和を望む、というのは結局何をするというのですか?」


「前も言ったろ、停戦だって……だけどまあ、その先も言ってなかったな。俺がこの星で何をするか……それは──────」


 その言葉を告げると、周りはしんと静かになる。


「……でも、それを本当に実現するのがパルだもんね」


 一滴(いってき)。凪に一滴(ひとしずく)の水滴が落ち、波動が全体に広がる。


 キャルの声は、皆の頭にようやくとして理解できた。


「そんなもの、人族でも魔族でも鼻で笑われるよ」


「それは実現不可能だと思われていたからだろ? だけど戦争(これ)は絶好のチャンスだ」


「それが、勝利でも敗北でもない戦争ってことね……まったく想像もできないわよ」


「だから、それに向かって僕たちはするべきことをするだけだ。ちょうど今頃ケーラたちは聖教の汚点を探しているだろう」


 そう告げ、パルは座っていた席から静かに立ち上がる。


()()()()()はもう既に見つけている。あの事実を突きつければ、魔族の軍隊は落ちて当然だ。だから、さらに人族を貶めないとな……」


「パル……悪い顔しすぎ」


 あまりにも下衆の顔をしているパルにアメリは呆れながらもそんな言葉を紡ぐ。


「だけど、他にするべきことがあるんだ」


「それって?」


「このままだと人魔戦争が起きるのは二日後だ。しかし、それではあまりにも早すぎる。私たちは戦争が始まる前に戦争を終わらせる気だからな」


「でも、それってどうしようもないんじゃあ……」


「ああ、その通りだ」


 俺は両手を広げると、目の前に半透明の青白い扉が出現し、開かれる。そこにあるのは、本棚だ。


 そこにいくつかの書籍が飛び交い、一つの本だけが私たちの前に現れる。


「人魔戦争……これは二日後に始まる。これは神々が定めた運命(さだめ)だ」


「さらにどうしようもないはずだけど……」


 珍しく話に参加するケル。どうやら周りも関心があるようだ。


「ああ……だからこの運命を書き換える───アメリ」


「はい」


 アメリからとある杖を貰う。こればっかりはトアノレスで代用できないからな。


理杖(りじょう)───クレマトラ」


 クレマトラを振る。それは、まるで音を奏でるオーケストラのように。まあ、昔に指揮を振るってたからその経験が活きてるな。


 私達が声を発すると、それが音符と化す。その音符が陣を成し、一つのセレマが完成される。


「「♪」」


 僕とアメリの二重奏が、天に昇り全てを書き潰す摂理の刃となる。


 その姿を見ている周りは、ただただ唖然と見ていた。


(信じられない程の威圧……こんなの、立っていられるのもやっと……!)


 あまりにも現実離れしたこの光景が、あまりにも神々しく、思わず跪いてしまいそうな荘厳さを秘めていた。


 否、もうすでに力なきものは白目を向いて倒れている。


 その高ぶりは徐々に大きくなり、その場にいる者すべては立つことすら敵わなくなる。


 汗が止まらない。これは、ただ威圧に耐える汗ではない。もっとなにか───


 人では二度と敵うわけがない……畏怖に怯える冷や汗だ。


 それは、涙でひたすらに償ってもらおうとする懇願の汗か、それとも……


(もう……終わる……)


 青白い一筋の光と、赤黒い一筋の粒子が、同時に螺旋を描いて昇る。それはまさしく、龍と呼べるような生き物のように蠢く。


「「───『絶対干渉(ジレマル)』」」


 けたたましい音と共に、目の前にある本が煌びやかに宙を浮いた。


「うん、どうやら成功みたいだ」


 本を手に持ち、その中身を確認する。その中身は2日後から4日後に変わっている。


「い、今のって……?」


 先程起きたセレマに理解が追い付かないキャルはそんな困惑した質問をする。


「『絶対干渉(ジレマル)』は、神にすら届かない絶対干渉の領域にあるセレマだ。神の目を欺き、確実に迫りくる運命にすら書き換える」


「なにその究極のセレマ」


「そりゃ〈極致級〉セレマだから」


「きょく……? え……?」


「まあ、そんなことはどうでもいいんだ」


「え? 〈極致級〉って、〈神級〉よりも上の……?」


 キャルが頭を抱えてさらに混乱している。別に今更じゃないだろうに。


「やっぱりパルだね~」


 冷や汗を吹きながらそう呟くケルは、どこか納得しきったような顔をしていた。


「ケル⁉ そんな次元じゃないんだよ⁉ 意味わかってる⁉ 極致級は神級よりも上なんだよ⁉ しかも神級だって伝説のそのまた伝説! この世界だってもう伝説上の扱いをされてるんだよ⁉」


「それは、知ってるよ。でも、パルでしょ?」


 その一言で、キャルはなんとなく腑に落ちてしまった顔をする。しかし即座に頭を振り、否定する。


「いい? そんな一言で済ましていいものじゃないんだよ? Aランクの冒険者でもまともに使えるのは〈聖・魔級〉! セレマ系統の職業持ちでも〈王級〉! 観測史上の最大セレマは〈皇級〉の『補助仮不老不死(ドマンベルダベーラ)』! しかもそれも合計100人のセレマ士の人たちが王都の冒険者ギルドに設備したやつのみ!」


「うん、今更言わなくても、分かってるよ?」


 ケルはキャルに追い詰められていて両手を挙げている。


「つまり私が言いたいことわかる?」


「わ、わかってるよ……?」


「キャル必死過ぎー」


「そうだそうだー」


「そこ! 諸悪の元凶うるさい!」


 僕とアメリがキャルに野次を飛ばすと、歯を剝き出しにして威嚇してくる。うん、キャルもケルに似てきたなー。主に犬系? とか?


「確かに主人は飼い犬に似るっていうからなー」


「何言ってるのパル? あと、それ逆じゃない?」


「…………さあ、ちょっとした雑談は終わりだよ。僕たちはすぐにこの戦争を終わらせる準備をしないと」


「はあ……もうなにも突っ込まないわよ……で? なにをする?」


「聖軍を止めるよ」


「またさらっと……」


「まあね。でも、それもケーラ達が必死に探している聖教の穴がないとだめだ」


「でも、ケーラ達探してなくて困ってそうだよ」


 もちろん、アメリの意見もごもっともだ。


「だから、僕たちも探す」


 目の前に掌を置き、横へ移動させると、半透明の青白い板が出現する。それは、現在ケーラ達がいる教会の地図だ。


「でも、これで何が分かるっていうの? 何の変哲もない教会だと思うけど……」


「この教会は、必ず何かを隠している。だって、ここだけ明らかにおかしいもん」


「っていうと?」


「ん-? なーんか感じるんだよね……───邪神」


 パルのまとう雰囲気が一気に変わる。


「まーた勝手になにかやってくれるじゃん? ……■■■」

そろそろ主人公パルの名前を確立しようと思っています。実は仮で付けた名なんで、これで完成させる感じで、はい。

現在一章を少しずつ変えているのもご存じでしょうか。カクヨムの方もどんどん変わっているのでページ表記がバグっているのもその所為。

まあ、一章書き終わったら名前変えようかなって。それっぽい名前が決まったので。ちょっと変わってたらまた報告します。オナシャス。

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