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第8話 家での闘い


「帰ったか」

 

 精悍な顔つきの男が逞しい上腕を晒しながらガリウスを出迎える。

 鍛え抜かれた逞しい身体のあちこちには傷の跡が見える。年齢は30前半髪色は金色。ガリウスも同じ色だ。

 

「何で木剣持ってるんだよ!」

「俺は悲しい……。お前が剣の道を選ばなかった事が」

「納得しただろうが!」

「あんな事後承諾で誰が納得するか!」

 

 家に入ってすぐの場所で言い合いが始まる。相手は今世の父親。

 名前はドミニク・ガスター。

 職業、元騎士隊隊長、現、騎士隊剣術指南役。

 

「表に出ろォ!」

「やだよ! 俺は剣なんざ振らねーかんな!」

 

 ガリウスもこれだけは譲れない。

 木剣ならまだしも武術科に入れなど本物の剣を振る事になる。自らの死因になったものを平気で振るうなど頭のネジが数本吹っ飛んだイカれた奴だ。

 平穏な世界で生きてきた日本人の精神を持つ慶悟がトラウマを抱くには十分過ぎた。

 

「どうしてそこまで嫌がる」

「何でって…………生理的嫌悪感」

 

 ガリウスは少しだけ言葉に迷い思い浮かんだ言葉を口に出す。

 

「剣は誰かを守る物だ」

「いーや、それなら魔法も誰かの支えになってるね!」

「なら、恋人とか友達がピンチな時にお前は自信がない魔法を使うのか? こういうのは嫌だからと手段を選ぶのか?」

 

 話が飛躍しすぎている。

 守るだなどと。

 

「お前は剣を使え。才能がある」

「うぅ……」

 

 ガリウスが唸る。

 才能があるならしなければならない。

 

「るっせェエエエ!!!!」

 

 わけがない。

 完全に油断していた父の顎にガリウスのアッパーカットが吸い込まれる。

 

「ガッハ……!」

 

 吹っ飛んだドミニクは顎を抑えながらガリウスを見上げる。

 

「才能才能ってなぁ! 祭り上げられても嬉しくねぇんだよ! 木剣なら我慢する! けどなぁ、俺は人を殺せる武器は持ちたくねぇんだよ!」

 

 包丁を握った時に思い出すのは胸を貫いたナイフの事だ。吐き気がするほどに、身体が言うことを聞かずに崩れ落ちる。

 

「才能だけで剣が持てるなら、この世界で才能ある人間は皆んな剣振ってんだよ! 世界中見てみろよ! 才能だけで剣振る奴なんかどこにもいねぇだろ!」

 

 今までガリウスが我慢していたものがアッパーカットが決まった心地良さと共に放出される。

 

「本物の剣は握りたくないんだよ!」

「……わ、悪い。悪かった」

 

 ドミニクもガリウスの剣幕に押されて謝罪を述べる。

 

「もう剣を握れとは言わん」

「…………」

「──が、木剣ならいいんだな?」

「お、おう……?」

「なら、剣術だけは鍛えような」

 

 立ち上がったドミニクはニッコリと笑いながらガリウスの両肩を掴む。

 

「…………ワカリマシタ」

 

 仕方がない。

 自らの口で言ったことだ。木剣なら我慢すると。断れる筈もない。

 

「よし! ユリア、飯だ!」

 

 ズンズンと奥に入っていくドミニクの大きな背を追いかけてガリウスも食卓に向かう。

 

「話は終わったの?」

 

 ふんわりとした茶髪の美人が待っていた。ユリア・ガスターはドミニクの妻。ガリウスの母親だ。

 

「まあ、お互いに納得できるところを見つけたからな」

 

 ドミニクはドカリと椅子に座る。

 

「わたしはガリウスの好きにすれば良いって言ったのだけど……」

 

 ただドミニクが納得できていなかった。

 

「パパは剣の人だから」

 

 ガリウスもユリアも苦笑いを浮かべる。

 まだ続いてますね。

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