光の者としての覚醒ー1
金の光に包まれている。肌がチリチリして、目の前、なんか小さな光の粒がチラチラして見えるけど、悪い気分じゃなかった。
むしろ、特別感っていうのか?どっちかというといい気分だった。やべえ、アタシ、覚醒しちゃったかも。もしかして●イヤ人だったりして?……なんて、転生前につるんでた女友達んとこで読んでた、スゲー巻数の少年マンガ(その子の兄貴の)を思い出した。
(まー、にしちゃ、若干地味だけど。)
所詮は乙女向けゲーム、だもんなぁ、と思う。めちゃくちゃパワーアップした感じはしないんだけど、それなりに手応えはありそうな気がした。
「おい、あれって……」
「まさか、“光属性”、なのか……?」
「いやだが、光属性は聖女って……」
あれが聖女に見えるか?と、さっきあたしを良い度胸している、と言っていた、上背のあるで赤毛のツンツン頭が指差している。
(あたしも同感だけどよ……)
自分が“光属性”とか“癒し・再生をツカサどり、祝福を与える(なんだそれ?)”“聖女”とか言われるの違和感しかねえ。……なんだけど、あいつらに言われるのは、なんか妙にムカつく。
「何かの間違いだろう。それより、」
いかにもな感じで“王子サマ”な白金頭がアゴをしゃくる。その行動、なんか微妙にジジ臭えな……、と思ったのはあたしだけか。
ともかく、なんだか外野と目の前の男どもがザワついてる。よくわかんねえ、けど、そんなことより大事なのは、この喧嘩に勝ち目が見えてきたーーいい予感がすることのほうだ。
(こいつは、……イケる!)
イケると感じたら、勘を信じて迷わずぶちかます。それが前世からのアタシのやりかただ。少しでも迷ったら、命取りになると知っている。
(腕力じゃ敵わねぇだろう……が、)
この世界のあたしは、やたら細くて、いかにも女子って感じだ。鍛え直さなきゃなんねえが、そんなの、今言ってもしょうがない。
「うおおおぉ!」
ビキビキビキ!と音を立てて、あたしの足を固めていた何かがひび割れ、砕け散る。
(消えた!)
そのまま、手元の何か、筒?を構えて突進する。
(メガネごとぶっ飛ばしてやるよ)
卑怯だと思われるかもしれねえ。けど、女の体で男とやりあって勝つためには、手段なんて選んでらんねえことはある。
(目え潰されるよりかマシだろ)
金色のオーラを纏ったアタシには、まわりの動きがカメみてぇに見える。
「もらったあぁ!!」
「◯◯◯◯!!」
上段からの袈裟懸けに見せかけて逆サイドから最短を狙った突き。間髪あけず膝を打ち込んで、フェイクだった袈裟懸けの手を返し裏拳スタイルでメガネを狙ったーーはず、だった。
(……効いてない?)
クリティカルヒットとはいえない。が、当たった感触はあった。けど、ユリウスは眼鏡を落としただけだった。
「む、……ッ?」
鋭い氷みてえな青い目が突き刺さるみたいで、
「ぐっ……!」
次の瞬間、あたしの体は見えない壁に押しつけられる気がした。
(くそが!)
不意を突かれた、とはいえ、チビガリに、公衆の面前で壁ドンされるなんてありえねえ。
「さすがユリウス様!」
「見事だな」
「美しい……」
黙れ外野が。チビでガリガリ、とはいえ男に女が吊り上げられてんの見てその反応はなんだ。気色悪い。
(屈辱的だ。。。)
ムカつく。腹立つ。このあたしを公衆の面前で吊りあげて、このまま済むと思うなよ、と、腹の底から何かが激しく沸き上がる。
(!)
ゴオッ、と、何かーー金の羽根?みたいなものが拡がるような気がした。
「なんだ……!?」
「まさか、ーー神獣?」
「召喚か?」
「なんだかよくわかんねえ、けど……」
あたしを押さえつける水色若白髪ことユリウスが、青ざめているのは理解できる。
「馬鹿猿が。退け!」
ビビってんのか、こりゃ面白え、とあたしはもっと力を強める。
(!?)
一瞬、頭の奥を殴られたみたいなーークラっとくる感覚がする。ガリガリ君の悪あがきか、と無視することにする、
「貴様にはまだ早過ぎる!そんな事したら……」
そう言って、やつは顔を切り替えた。
「猿には無駄か、……なら仕方ない!」
「ああ、来るなら来い!」
あたしも、逃げ出す相手に追い討ちかけるのは趣味じゃねえ。やっぱりケンカは向かってくる相手を返り討ちにしてこそ………
(!!!)
そこで、あたしの記憶はぷっつりと途絶えた。