魔法学園?の入学式……らしい② うるせー男を鉄拳制裁
ガリガリ君(ソーダ味)ってあるだろ。早く言えばあんな色だ、こいつの髪の色。メガネをかけた水色若白髪は、あたしの傍に歩み寄る。その顔と目付きはケンカ売ってくるヤツのそれ。
「生徒会役員として……私はあなたをこの学園の生徒と認めるわけにはまいりません。」
(なんだコイツ。)
ガタイは小さい。見た感じ筋肉もない。チビのガリが、ガリガリ君(色の)頭かよ、ウケるわ。……と、そう心のなかで吐き捨てて、スルーで通りすぎようとしたのは、あたしなりの温情だった。チビガリ君のための、優しさだったわけ。わかる?
「聞こえているのですか?貴族のみが入学を許されるこの学舎に、あなたのような野蛮な庶民が存在することは――」
そいつは大声を張り上げた。あたしはブチキレる寸前だったが堪えて立ち去るはずだった。なぜなら……
「ご挨拶が遅れました。わたくし、◯◯△△××三女のフローレと申します。実は……」
あたしのダチのフローレがヒラヒラのスカートを持ち上げて挨拶をしてしまった。しかもあたしのために。
(あー、めんどくせ~。)
あたしは別にこの学園に入りたい訳じゃない。どう考えてもガラじゃない。ガリガリ君(ちょうどそういう色の髪だから)にも王子にも興味ない。フローレはちょっと可愛いと思うけど、べつに、そっちのケがあるわけでもないと思う(たぶん)し。
「レイチェル!あなたからも!あなたが入学できなくなったら、あなたのお父様お母様がどれほど悲しまれるか……」
「庶民の分際で、身の程を弁えぬからだ、と笑い者になるでしょうねぇ。」
気の毒に。というガリガリ君……ガリガリ野郎のセリフが、やけに気に障って――あたしは、自分の頭の中が真っ白になっていくのを感じていた。
「フローレ、先に行っててくれません?」
声が震えた。それから先のことはよく覚えてない。とりあえず空気を読んだフローレが、心配そうに振り返りながら走り去ったことだけ覚えている。
「身の丈に合わないものだった、と自分から潔く辞退なさい。今なら、まだ、間に合う。」
そいつの手のなかにある紙切れが、たぶんあたしのザイセキ……書?ってことは理解できた。
「なぁ、ガリガリ君。教えてやるよ。」
「ガリガリ……?私の名は、」
名乗られたけど覚えてない。キレてたから。
「自分より強ぇヤツにケンカ売るなら相応に準備しとけやぁ!」
瞬殺。チビガリ野郎があたしにケンカ売ろうなんて10年早えわ。
「これが証明書……?」
とりあえずレイチェルって名前は読める。どうやらこの世界の文字は、あたしのなかでは日本語に変換されてしまうらしい。
そういうわけで、とりあえずあたしは入学式に出ることができたのである―――つづく。