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指導5

「目的は、庭の警護の新人騎士?」


 夜の王宮の庭、私の腰を抱いたまま、わざとらしい甘い声で王子が囁く。

 話が早いのは褒めたいところだが、手慣れた振る舞いに呆れ返る。


「密着して耳元で囁くのは誤解を与えるので、今後は結婚相手だけにしてください」

「わかった。でも今はリュカとこうしていていいよね? イチャイチャしないとここでは目立つよ?」


 ニコニコと世迷言を吐く王子が私と恋人同士に擬態するのを放置し、目的の人物を探す。

 新人騎士ダイナは、庭の外れに近い場所に居た。

 聖女の館のある王族専用庭園と違い、夜会の会場から直接出られるこの庭はかなり広い。その外れの警護とは、本当にコネの無い新人だな。

 ここは夜会の参加者なら誰でも自由に歩き回れるが、一般公開はされていない。ダイナの立つ位置からは、国民にも観光客にも開放されている、花より芝生の多い広大な庭が近く見える。

 ダイナをよく観察するために、バードナー王子を手近な植込みの陰に引きずり込む。


「え? ちょ、何を食べてるの?」

「うるさい。観察中」


 ダイナを眺めながら、植込みの一口サイズのトマトを毟って咀嚼する。鑑賞用だがちゃんと食べられるし、むしろ食用の大きな品種より美味。野生でも繁殖しているので、任務中のオヤツによく食べる。


「鑑賞用でもトマトだから毒ではないだろうけど、女の子が摘んで食べるならイチゴとかじゃ、うぐぅ」


 ブツブツうるさい王子の口にトマトをまとめて突っ込み、ダイナの色情霊には見覚えが全く無いことを確認した。

 浮かない顔で警備中の新人騎士には、町娘の服を着た可愛らしい女の子の色情霊が一体だけ。ミリアとの肉体関係は疑いが無いのに、ミリアの色情霊は見当たらない。

 つまり、どちらか片方が望んでいない関係だ。

 ダイナの色情霊を見て確信した。ミリアとダイナの愛人関係は、ミリアが一方的に取り付けたものだ。

 ダイナの心は町娘にあり、二人はおそらく将来も誓い合って両想い。でも、ダイナは結婚も婚約もしていない。


「明日、あの騎士と話したいので休憩時間を教えてください」

「執務室に呼ぼうか?」

「コネ無し新人騎士が、いきなり王太子の執務室に呼び出されたら遺書を用意するレベルです」

「じゃあ鍛錬場の見学という体で二人で行こう」

「王子が邪魔」

「駄・目」


 耳に息を吹き込みながら囁かれて背筋に寒気が走った。

 腕の中から出ようとしたら、でかい図体で更に抱え込まれる。


「暴れない。観察対象に気付かれるよ。僕が騎士の鍛錬を気にかけるのは自然だけど、聖女が一人で見学に行ったら大騒ぎだよ? 男所帯なんだから、自分がどう見えるのか考えようよ」


 ぐうの音も出ない。

 このカンのいい頭の回る王子を誤魔化しつつ、色情霊で得た情報を深掘りしなければならないのか。面倒な。

 私が仏頂面で頷くと、バードナー王子は満足げに私の髪を撫で、腰に回した手で王宮ヘエスコートした。


「トマトは小さい方が美味しいんだね」


 月明かりの下、悪戯っ子のように笑う王子は爽やかな笑顔の時よりずっと綺麗だ。


 ここで気付く。

 王子の周りが少しスッキリしている。

 また、王子の色情霊が減った。消えたのは、さっき夜会で囲みに来た貴族令嬢たちのもの。


 昨日から、王子にエンカウントした女性の色情霊が消えて行く?

 思い出せば、昨日消えたメイド服の色情霊も、移動中に廊下で本体を見かけたような。


 思考の海に沈んでいると、また王子の私室に居た。

 答えが出ないので、風呂に入ってソファで気持ち良く眠った。

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