表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/21

指導4

 私は聖女の正装のローブを着て、一段高い王族席から夜会の会場を見渡していた。

 言われた通り、バードナー王子の隣で。

 たくさんの人々が王族に挨拶に来るが、私は無表情のまま一言も発しない。皆、気になるようで私をチラチラ見るが、私の方は気にならない。

 一段高い席は見晴らしが良い。


 今日は朝からバードナー王子のスケジュールに合わせて付き添いながら、色々浄化していた。

 やはり王子は毒を盛られているようだ。

 無駄に美々しい顔のせいで見逃していたが、私が飲食物の浄化をしてから顔色が良くなった。

 身分の高い人間に毒殺は付き物だが、本来のものとの味の違いがわからなくなるほど長い間、全ての飲み物と食事に毒を仕込まれているというのは釈然としない。

 他の王族は毒を盛られているように見えないし、毒見役が買収されているとしても、そんなに長い間、日々交代する毒見役全員を買収してバレないのはおかしい。

 毒見役がシロなら料理人もシロだ。調理場で料理人全員に見られながら毒見して、一度も異常が報告されていない。

 バードナー王子だけを狙い、執念深く毒を盛っている。

 毎朝、王宮の医師に健康をチェックされているが、体調不良を疑われたことも無いらしい。医師がグルという線も、長期に渡っているなら無い。医師だって複数いる。全員に買収や脅迫される弱みがあるというのは不自然だ。王太子の暗殺に加担するなんて特大のリスクに見合う対価が想像つかない。


 挨拶の列は、ようやく貴族が終わり、様々な分野の有名人や実力者が見えやすくなった。

 私は目的の人物の色情霊の答え合わせをして行く。

 愛人伯爵と子爵は見るからに小物だった。ついていた色情霊は全裸ミリアだけ。愛人侯爵も含め、この小物トリオは妻に見放されているようだ。

 愛人俳優は、締まりの無い口許をしたヘラヘラ笑う男だった。頭空っぽそうなくせに、芝居がかった仕草で意味の分かっていなそうな小難しい言葉を並べる。ミリア以外にも全裸色情霊が四体ついている。雰囲気からしてパトロンぽい。若くて可愛い娘はいない。立ち去る間際、私に気色悪いウィンクを寄越した。隣から冷気が漂う。涼しくて丁度いい。


 さて、ミリアは今夜のエスコートに実業家のギャンを選んだようだ。

 二人とも複数の色情霊をつけている。全部全裸。ギャンは二体。ミリアは六体。

 ギャンの方はミリアと、もう少し若い細身の女性。何処かで見た気がするけど誰だっけ?

 ミリアの色情霊に目を凝らす。全裸のオッサン共をじっくり検分する虚しさを考えてはいけない。

 ん? 変だな。ミリアの色情霊、オッサンしかいない。まだ十代の新人騎士は何処だ。報告書では、ミリアのかなりのお気に入りで、頻繁に呼び出されて食事の後に屋敷に連れ込まれていたはず。出逢いは新人騎士が城下町の巡回中に、ミリアから熱心に声をかけたらしい。一緒に巡回していた同僚騎士の証言もある。

 じゃあ、あの背が高くて目付きの悪い全裸のオッサンは誰だ? 顔つきや色彩が北方系のような。

 ミリアの隣を再度見ると、ギャンの若い方の色情霊と謎の全裸オッサンは面差しが似ている。



 とんでもない大物だ。



 私は頭を抱えたくなった。

 ミリアにはブリス皇国の宰相ハイラン、ギャンにはハイランの娘ビオラがついている。

 ブリス皇国は北方の極寒の地。小国だが鉱山資源で国民は飢えてないはず。

 何代か前のエイレインの国王が神託によらない結婚をして、国交が冷え込んだ相手国だ。

 神様は、私が生まれる前の神託の後始末を私に押し付けたようだ。


 理不尽さに死んだ目をしている内に、いつの間にかバードナー王子に手を引かれてホールにいた。

 考え込んでいたら、体は無意識に王子にリードされたまま踊っている。子供の頃、よくダンスの練習に付き合っていたからなぁ。ステップは全部記憶しているようだ。王子の身長がかなり増えて違和感はあるが、さすが優秀王子、リードが上手くて他のことを考えていても踊りやすい。


 曲が終わると、バードナー王子付き色情霊の本体の貴族令嬢たちに囲まれた。

 皆、着衣のバードナー王子だけ色情霊をつけている。コイツやっぱり女の敵だよなぁ。

 期待を込めた眼差しで熱く見つめられた王子は、私を抱き寄せて爽やかな笑みを浮かべた。


「神託があったから、僕はもうリュカとしか踊らないよ」


 嘘は言っていないが、誤解を招くし言葉も足りない。私としか踊らないのは、今日だけだ。

 しかし今は認識を正す時間も惜しいので、王子の服の裾を掴んで簡潔に言った。


「庭に出たい」


 王子が子供の頃のような満面の笑顔で私の腰を抱いて庭へ向かう。

 背後から令嬢たちの悲鳴が聞こえたが、フォローは万事解決後に王子がするだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ