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帰還

 自室のドアを出ると、バードが目の前の廊下の壁に寄りかかって片手を挙げた。

 私が出て来るのを待っていたようだ。


「お帰り、リュカ」


 視線が合うと私を腕の中に囲う。


「全部、話すから聞いてくれる?」

「もちろん!」


 快諾されて、部屋の中ヘ招いた。

 花びらの形はもう無いが、一面光り輝く室内に、バードは眩しそうに目を細める。


「神様の喜びと祝福みたい」

「リュカにとって悪い結果じゃないならいいよ」


 ほんと、私中心なんだなぁ。

 バードが何者になろうと、私にとってはバードはバードなんだと思う。


 生姜湯を作ってカップを一つバードに渡し、ソファに並んで落ち着いて、私は隠し事を全部話した。

 私の正体も、能力も、記憶も。バードの正体も。ビオラのことも。天界のドタバタも。

 バードは、やはりというか、全く悩みもせずショックも受けていなかった。


「ようやく色々繋がってスッキリした」


 むしろ清々しい感じだ。

 まぁ、バードだしな。悩みやショックのポイントが普通じゃないし。


「リュカが人間じゃなくて成分的には神様っていうのも納得だし、僕の本質が魔王って言われても、やっぱりなーとしか思わない」


 うん。魔王はホントそう。むしろ、賢王っぽさが見当たらない。


「でも僕、リュカを取り上げられない限りは世界を滅亡させる気は無いよ?」

「そうだ! バード、もしかして魔王の記憶あるの?」

「ただの夢だと思ってたけど、僕が魔王だったなら記憶はあると思う」


 そうだったのか。人の事は言えないけど、あのドロドログチャグチャの記憶があって美味しくご飯を食べてる神経って大概だよな。


「気に入らない点は一つかな。僕が人間のままだと、あと数十年もしたら不老不死のリュカと引き裂かれてしまう」

「それで人間辞める気じゃないよね?」

「リュカと引き裂かれるなら考えるまでもなく辞める」


 うん、そう言うと思った!

 でも一緒に居れば世界滅亡は起こらないのかな?


「でも、人間辞めたら王国の跡継ぎはどうするの?」

「そうだね。じゃあ婚約発表の時に保険をかけておこうか。国王が何でも願いを聞いてくれるはずだから」


 悪い人の笑顔がとても自然だ。


「それとね、リュカ。訊きたいことが一つある。僕に今ついている色情霊は誰?」


 そういうのを真剣な目で訊かないでほしい。


「僕はリュカでしかエロい妄想してないけど」

「してるの?!」

「するよ? 当たり前でしょ? もう自分に嘘つく必要ないし」


 綺麗な顔でコイツは何てことを言うんだ。

 うー。いや、もう隠し事やめるんだった。

 あ、まだ言ってないことがある。


「バード。私はバードが好きだ」


 おや? 固まったな。


「バードが賢王でも魔王でも私には同じだ。バードがバードなら、ずっと好きだ」


 昔から好きだった夏空より青い瞳が見開かれていく。


「私は色情霊が見えてしまうから、自分の全裸が常に隣に見えるという状況は、まだしばらくは受け入れられない」


 まん丸の青い瞳が一気に三日月形になり破顔した。


「服を着たリュカでいいよ。で?」

「バードには私の色情霊だけついている」


 それはそれは嬉しそうに、麗しの王子様は私を抱きしめた。

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