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愛人と同志の最期

 エイレイン王国王太子の伴侶を定める神託が下されたこと。

 それが聖女リュカであったこと。

 エイレイン王国の王族が改心し、神に背く意思が無いことを認めた神が、今回に限り聖女の婚姻を許し王太子に授けたこと。

 この話はまだ国民にも諸外国にも伝えておらず、長年エイレインの王族の信仰心を憂いて教えを説いてくれたブリス皇国の至高の位に居る皇帝に先ずは知らせたのだということ。

 そして、この吉祥事に影を落とす企みが貴国から聞こえるから何とかしろという内容を、慇懃無礼に証拠や証言付きで認めた国王の親書が出来上がった。


 すぐに親書は最速で送られる。

 長男の前では情けない父親だが、国王として無能な訳ではなく、下手に出つつやんわり脅す外交手腕は侮れぬ相手として各国間で評判だ。


 親書の出来栄えを確認し、深夜バードは逢瀬中だったミリアとギャンを捕縛し連行した。

 私の見ていない場所で、それぞれ念入りにバードが話を聞くようだ。

 一眠りした私が目を覚ます頃には二人は色々吐かされていた。



 ギャンにハイランを紹介されたミリアは、皇国の宰相で公爵という地位に魅力を感じ、壮大なスケールで甘い言葉を雨霰と降らせてくるその男に夢中になった。

 通常なら疑ってかかる大言壮語も、ハイランが言うと真実に聞こえたという。ハイランはペテン師の才があるのかもしれない。

 ハイランに請われるままに、エイレイン王国宰相補佐官のイズンを誑かして横領をけしかけ、戦争が終わり王族が粛清されたら自分が女王になってハイランと結婚するはずだったそうだ。

 ミリアはハイランを信じ切っていて、彼が自分を裏切るはずがないと言い続けていたようだ。おそらくミリアも洗脳されていたのだろう。

 とは言え罪は裁かれねばならない。

 この国の貴族女性は家督を継ぐことが出来ず、婚姻の自由も無い。その代わり、極刑に処せられることはない。

 だが、ミリアのような平民の女性は家督も継げるし婚姻の自由も保証されている。ゆえに、罪の償い方も男性と同じだ。

 権利には責任が伴うのだ。

 ミリアは極刑を以て罪を贖う。

 とっくに成人して独立した娘の国家簒奪の企みに関わりを持たずにいたヤハ家の当主は、巨額の罰金を納めることで、どうにかヤハ商会の存続を許されるようだ。

 一族から大罪人を出した商人が、どう生き残るのかは今後の努力次第だろう。


 ギャンはビオラに本気で惚れていた。

 ハイランに、将来の義理の息子と煽てられ、皇国から王国へ攻め入るルートを私財で整備した。

 表向きは、国交正常化に向けた友好事業だったらしい。

 戦後、王族の血を絶やし、皇国はハイランが治め、王国はハイランの娘ビオラと結婚したギャンが新しい王として治めることになっていたと語ったそうだ。

 ギャンは、ミリアが最終的には始末される計画だったと言った。

 まぁ、極刑だ。どうしようもない。

 天涯孤独から一代で富を築いた風雲児だったが、こうなったら家族もおらず独身だったことが周囲の人々にとっては幸いだっただろう。巻き込まれる人間は少ない方がいい。

 輝くばかりの商才を手に生まれて来たはずの男は、愚かな罪人として名を残して死んで行くことになる。

 ギャンが手掛けた人気の宿は、そのままのスタッフを雇用して国営になる。当面の運営資金はヤハ家が納める罰金で賄えそうだ。



 それにしても、よくこんな短時間で曲者二人がペラペラお喋りしたものだとバードに言うと、


「必要な証言だけ出来れば、他は壊れてもいいし」


 と薄っすら笑んで嘯かれた。

 どう見ても賢王というより魔王。

 そんなバードと一緒に、朝昼を兼ねた食事をたっぷりとって、聖女の館に届け物をしたついでに庭先の花入りマフィンを焼いていたら、急使が来たと国王が呼びに来た。

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