小物トリオの終焉からの神様の爆弾
王宮の一室に、小物トリオの伯爵と子爵の妻と息子を呼び出した。
小物伯爵と小物子爵は秘密裏に捕らえてある。
妻たちには色情霊は無く、息子たちはそれぞれの婚約者の令嬢だけ。ちなみに着衣。
あの伯爵と子爵は随分前から家族に見放されていたようだ。妻と息子で、かなり詳細な小物らの悪事の証拠を掴み、王太子に献上した。機会をずっと待っていたそうだ。
バードの側で調べた内容とも合致し、人的被害が無くみみっちい悪事ばかりであったため、小物伯爵子爵両名は爵位を息子に譲って領地で幽閉となった。
また別の一室にイズン侯爵夫人を呼んでいた。
夫人には色情霊は無し。
表向きおしどり夫婦だったイズン侯爵夫妻は、結婚二年目には夫婦生活が一切無くなったそうだ。
イズン侯爵は、夫人が二年目になっても子を孕まないから愛が冷めたと吐いたようだが、以来貞節を守っていた夫人と、数々の女性を渡り歩いても庶子一人すら授からなかった侯爵のどちらに原因があったのやら。
イズン侯爵は横領しようとした金が戦争の資金になることを知っていた。
ブリス皇国がエイレインを侵略した暁には、皇国の公爵位を賜り宰相になれると言われていたそうだ。
ミリアの屋敷でハイランを紹介されたイズン侯爵は、現在のエイレイン王国の王族は根絶やしにして、新たにミリアを女王とし、ハイランが王配になり、空いたブリス皇国宰相の地位を自分が貰えるという話を聞かされ舞い上がった。
横領失敗は無能と思われたくないからミリアにもハイランにも言っていないとのことだ。無能っぷりが役に立った。
いくら何でも、これは極刑以外に無い。高位貴族とか関係ない。
イズン侯爵はコトが片付いたら処刑。侯爵家は取り潰されることになる。領地は当面、王家直轄になる。
夫人は何も知らなかったので、希望通り侯爵との離婚を認め、実家である辺境伯に引き取られる。生涯、特産の名馬を育てる仕事に携わるそうだ。
王太子の執務は国王に丸投げしたので、私室に戻って秘薬の混入されていない美味しい夕食を味わい、諜報部員の報告を待つ間に入浴することにした。
神様に訊きたいこともあるので、当然一人だ。
今日の入浴剤はオレンジフラワーだ。これなら長湯も快適だ。
子供の頃から好きな香りに浸かり、手足を伸ばして神様に呼びかけた。
「神様ー。バードは滅茶苦茶有能だとは思いますが、ほんとに賢王の器なんですか?」
どうも拗らせ後に私が伴侶と判明してから、以前は隠してたぽい本性がチラチラ見えるのだが。それを見てると、かなり人としてマズイ人物な気がする。
『あの子は元々は魔王の器でしたからね』
「はあっ?!」
『リュカに恋をして賢王の器も現れましたが、あの子の本質は魔王です』
「や、待ってください。賢王は人間だけど魔王は違いますよね? それともただの比喩ですか?」
『いいえ。魔王は魔王ですよ』
「魔力がこの世界から消えて千年は経ってますよね?」
千年以上前、魔力が地上に溢れていた時代、人間は魔法を使い、魔物が存在し、それらの王たる魔王がいた。
だが、過ぎた力を持った人間たちは足ることを知らず、魔法を駆使し、捕らえた魔物を従属させ、互いに殺し合った。
地上の至る所で甚大な被害を振りまく戦争が繰り広げられ、戦力となる魔物狩りが横行し、魔王は怒り狂った。
全ての人間を滅ぼそうとした魔王だが、神が隠した一部の魔力を持たない人間たちまで殺そうとしたために、神は魔王を滅ぼし魔物たちを封印した。
この事実は、神に記憶を植え付けられた聖女しか知らない。人々は魔法など物語の中にしか存在しないと思っている。
『魔王を完全に消滅させる力など神にもありません。そろそろ起きる頃ですね』
「起きたらどうなるんですか?」
『当然、世界滅亡でしょうね。バードナー王子が賢王にならなければ』
なんと。世界滅亡の危機は身近にあったらしい。
「あれ? 不老不死の私と魔王になるかもなバードで、この国の後継者って生まれるんですか?」
『バードナー王子が人間を辞めなければ、貴女が産んでも人間が生まれますよ』
「それ私は既に人間じゃないってことですよね?」
『バードナー王子が人としての生を全うしたら、貴女はそのまま天界に来ることになります』
「聞いてないし望んでないし!」
『ちなみに王子が魔王になったら、どの道世界滅亡なので、貴女には即座に天界に来てキリキリ働いてもらう未来が待っています』
「いやあああああああああっ!!!」
「リュカ?!」
頭を抱えて叫んだところ、血相を変えたバードが飛び込んで来て、本日の神様との会話は終了した。




