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生活基盤を整えよう




「思わぬ臨時収入が手に入ったなぁ」


俺は、革袋いっぱいに詰まっているお金を眺めながら一人ゴチる。革袋の中には銀貨は二千枚と銅貨五十枚が入っている。銀貨二千枚は、冒険者二十人分の示談金だ。

本当はもうちょっと巻き上げたがったけど、ギルドマスターが土下座をかましながら懇願してきたので、一人につき銀貨百枚の示談金で許してあげた。

確か銀貨一枚で平民の家族が一ヶ月過ごせるって設定だったから、頑張れば一年もしないで支払えるはずだ。でも、一年も待てないからギルドに立て替えてもらった。


ちなみに、銅貨五十枚はバランウルフの素材の代金だ。バランウルフの素材って、人気も用途もあまりないらしい。後、余談だがついでに非常食として持ってた木の実やリンゴっぽい果実も出してみたんだが、買い取り拒否された。・・・どれも猛毒なんだってさ。

あれか、これを食べる度に頭の中でアラームが鳴るのはそういうことだったのね。毒だから【危機察知】が反応してたと、でも【毒無効】のおかげで美味しくいただけてたと。

こわっ!毒が効かないとはいえ、知らず知らずに毒を食べてたことに恐怖を覚える。


「お金も手に入ったし、シロ!美味いもんでも食うか」

「ウォンっ!」


それはさておき、ちょっと想像してたのと違う稼ぎ方をしてしまったがお金はお金だ。使わせてもらおう。シロには怖い思いをさせちゃったし、まずは屋台で腹ごしらえだな。

そして、当のシロさんは相変わらず住民のみなさんに撫でくりまわされている。往来の場で大乱闘かましちゃったから、住民の反感を買ったか心配だったけどそうでもなかった。むしろ、冒険者たちをぶちのめしたことに関しては好意的に受け止められている。

なんでもブレイバーの先走った行動には、手を焼いていたらしい。・・・何してんだ、あいつら。

まぁ、いいや。まずは食べ物だ。




・・・




「うわ~、人も多いけど屋台もすっげぇ」


俺は中央広場から、商店街通りに行くことにした。辺境都市バランの屋台は、冒険者が狩ってくる魔物の肉を調理したものを出していて、その味は美味から珍味まで幅広いと有名だ。・・・ゲーム時代の知識ではあるけどね。


「どれも美味そうな匂いだな。よし、片っ端からせめていくか」

「ウォンッ!」


商店街通りを駆け巡る良い匂いに、シロも臨界点突破寸前だ。主に尻尾が。


「おっちゃん、それ四本ちょうだい!」

「まいどっ!お、兄ちゃん可愛いワンコ連れてるねぇ。一本おまけだ、もってきな!」

「おっちゃん男前じゃん!ありがとうっ」


とりあえず、目に入った串焼きを買ったらおまけしてくれた。おっちゃんマジ男前。ちなみに俺が一本で、シロが四本な。シロさん二メートル近くあるからね。

次は、あの焼きそばみたいなのにすっかな。


「今度はあれにすっかな、おねーさん!それ二皿ちょうだい!」

「あらやだ、わかってるじゃない。可愛いワンコもいるし、おねーさんサービスしてあげる」

「やったー、おねーさんありがとうっ」


焼きそばみたいなのを大盛りについでくれるおば・・・おねーさん。

ちなみに、味は焼きそばというより焼うどんみたいな味でした。シロもご満悦だ。お前、肉食だろうに野菜も炭水化物も関係ないんだな。

・・・こいつ実は、狼型の魔物じゃなくて森に捨てられた犬なんじゃね?

バランの森にいたから、てっきり魔物とばかり思い込んでたけど。でかくなりすぎて森に捨てられた白い犬ってほうが納得できる。


「ワゥン?」


どうした?と言わんばかりに俺を見上げてくるシロ。

・・・まぁ、今更こいつが魔物とか犬とかどうでもいいな。俺の大事な相棒ってだけで十分だ。


「よし、シロ。次はあのステーキみたいなやつを食うぞ!」

「ワォーンっ!」


この日、俺とシロは屋台全制覇という偉業を成し遂げた。(八割はシロが食べた)

その食べっぷりと野生を捨てたワンコムーブから、シロは屋台のおっちゃんおばちゃんはもとい、住民のアイドル的存在となった。

ちなみに俺の方は大勢の冒険者をぶっ飛ばし、そのプライドと心をへし折ったことからハートブレイカーと恐れられる存在となった。

ハートブレイカーってなんやねん!ブレイバー見たいで嫌なんですけど!




・・・




「よし、シロ隊員。今日は俺とシロの装備を整えたいと思います」

「ウォンッ!」


俺の芝居に、元気良く合わせてくれるシロ。ノリの良さについつい俺も嬉しくなる。食欲も満たし、宿で一日の疲れを取った俺とシロは元気いっぱいだ。


「それでは、まずは武器屋からだ!ついてきたまえ、シロ隊員」

「ウォーンっ!」


颯爽と宿を出る俺、俺の後ろをキリっとした表情でついてくるシロ隊員。そしてそんな俺たちを、生ぬるい視線で見送る宿屋のおばちゃんと宿泊客たち。・・・ええんや、俺らが楽しければええんや。


と、そんなこんなでやってきました武器屋さん。

宿屋から武器屋まで移動する間、シロの人気にはびっくりした。多分、昨日の食べ歩きの影響だとは思うけどシロを見つけると気さくに声をかけてきてくる人が多い。

主に子供に大人気だ。都市にきてまだ一日、すごいなお前。


そして俺はというと、昨日の乱闘の影響だとは思うけど、冒険者と道すがら出会うと目を逸らして道を開けてくる。主に冒険者に不人気だ。都市にきてまだ一日、どうしよう俺。

住民のみなさんからは好意的に思われているが、冒険者からの印象は最悪だ!これは冒険者活動で挽回しなければ・・・それには、まず装備を整えなければ。

冒険者から巻き上げたお金でだけど、そこは気にしない。正当防衛だもの。


「おじゃましまーす。おお、武器がいっぱい」


武器屋の中に入ると、当たり前だけど武器がいっぱいある。しかも、色んな種類の武器が置いてある。・・・こういうのって少年心をくすぐられるよね。ちょっとテンションあがる。剣とか槍とかかっこいい。

どれどれ?鉄剣(アイアンソード)が銅貨五十枚で騎士式剣(ないとソード)が銀貨十枚か・・・これ素材は同じ鉄だよな?この値段差は何なんだ?

鉄剣の見た目は装飾のない重厚で無骨な剣で、騎士式剣は剣の淵や柄部分に綺麗な装飾が施されている。そして、鉄剣と比べて厚みが少ないな。・・・なんていうか、ポッキリ折れそう。


ゲームだと攻撃力が表示されるからわかりやすかったけど、今は全然わからん。素材は同じでも切れ味が違うのかな?・・・考えてもわからん。聞いてみよう。


「すいませーん、ちょっと良いですか?」

「おお、なんじゃ?」


おお、店の奥からドワーフっぽいおっさんが出てきた。あの髭にあの筋肉にあの身長、完全にドワーフだこれ。そうだよね、エルフがいるならドワーフもいるよね。


「鉄剣と騎士式剣って素材は一緒ですよね?この値段差はなんですか?」

「お主、そんなこともわからんで武器を買いにきたのか?」


あら、ドワーフのおっさんがすごい呆れた顔してる。やっぱ、俺にわからないだけで切れ味とか違うのか?


「装飾が施されてるか施されていないかの差に決まっとるじゃろ」


俺は盛大にずっこけた。切れ味変わらないのかーい。


「えっ、切れ味が一緒なら騎士式剣を買う人なんているんですか?」

「騎士式剣は、主に貴族や懐に余裕のある高ランクの冒険者が儀式用に買っていくな。鉄剣はビギナーから中ランクの冒険者や衛兵が買っていくわい。まぁ、騎士式剣なんぞすぐに折れるから、鉄剣の方をお勧めするわい」


あ、やっぱり折れやすいのね騎士式剣。儀式用か、納得。素人の俺がみても折れやすそうだもんね。


「そ、そうなんですね。ちなみにモンスターの骨とか牙を使った武器ってないんですか?」

「・・・あほか。お主は骨や牙が金属より硬いとでも思っておるんか?そんなもの加工の時点で砕けるわい」

「あ、あはは・・・ですよねぇ・・・」


砕けた・・・俺の中のファンタジーが思いっきり粉砕された。

そうだよね、現実に考えて骨が金属に勝てるわけないよね。現実って残酷だよね。


「ミスリルとかアダマンタイトの武器は・・・ありますよね?」

「そんな高級品は、こんなしがない武器屋にはないわい。そんなん売ってるのは王都ぐらいじゃの」


よ、よかったぁ~。ミスリルとオリハルコンはあるんだ。ファンタジー要素全否定は、さすがに心が折れるとこだった。


「ところで、お主は何しに来たんじゃ?買わないならワシは戻るぞ」

「あ、すいません。先日に冒険者登録したばかりでして、何を買ったら良いかわからないんですよ」

「なんじゃ、ビギナーかい。それなら最初はこれを買うと良いわい」


ドワーフのおっさんは、刃渡り三十センチほどの小剣(ショートソード)を取り出してきた。


「これは?」

「ビギナーは、まずは武器に慣れることから始めな。いきなり長剣(ロングソード)なんぞ握っても、死ぬだけじゃわい」


・・・なるほどな、確かに言ってることは間違っていない気がする。職業はカンストしてるけど、実際に刃物を使ったことないしな。慣れる為にも、小剣から始めるのも悪くないかもしれない。

拳で十分だろって?バカ言っちゃいけない。俺だってスライム系や虫系のモンスターは殴りたくないよ。


「それじゃ、これを売ってもらえませんか?」

「・・・ほう、素直じゃな。大抵のビギナーはバカにするなと怒って帰っていくのに」


素直に言うことを聞く俺に、ドワーフのおっさんは関心してるようだ。


「あなたの言ってることが、理に適っていると思っただけですよ。それに、こちらを心配してくれているのも伝わりました」

「ふん、銅貨十枚じゃ。・・・メンテナンスはしてやる、刃こぼれしたら持ってくるいいわい」

「ありがとうございます。その時は、ぜひお願いします」

「・・・ふん」


代金を受け取るとドワーフのおっさんは、店の奥に引っ込んでいってしまった。ツンデレや!あのおっさんツンデレや!

異世界あるあるのモンスター素材の武器は全否定されたけど、鍛冶屋のおっさんはドワーフでツンデレは見ることができた。

でも、筋骨隆々で髭ボーボーのおっさんのツンデレってちょっときついっすね。


空想と現実の差って残酷。




・・・




「おじゃましまーす」


さあ、今度はお隣にある服屋さんだ。防具は色んな技能が発動してとんでもないことになってるから、ぶっちゃけいらない。それよりも服と下着が欲しい。一着だけって日本人的にきついっす。替えの服ぐらいは、確保しておきたい。


「うん、やっぱ日本とは全然違う。何がオシャレかもわからん」


とりあえず、陳列してある衣類に目を通すが・・・良くわからん。そもそもオシャレかわからん。日本でも服装とか身だしなみって気にしてなかったしね。悲しい現実。

うん。こういう時は、全部お店の人に任せてしまおう。


「すいませーん、誰かいませんかー?」

「はーい、いらっしゃいませー。あら、可愛いワンちゃん」


やってきたお店の人は、十代半ばの少女だった。俺の方へ・・・シロの姿を見つけると方向転換。シロの方へ向かい、シロを撫で繰り回す。シロ可愛いもんね、わかる。


「あのー」

「はっ、すいません。どうしましたー?」


シロから離れる気配がない為、控えめに声をかけてみる。俺の存在を思い出した店員さんは、すこし恥ずかしそうにしてる。いや、わかるよ。シロ可愛いもんね。シロが褒められたり可愛がられる分には、俺も悪い気はしないから大丈夫。


「服を五着ほど買おうと思ってるんだけど、見繕ってもらえないかな?」

「かしこまりました。ご予算はお決まりですか?」

「いや、値段は気にしなくていいよ」

「わかりました。・・・でしたら、こちらはどうですか?」


店員さんは、手慣れた手つきで俺の服を選んでくれた。とりあえず、試着してみようかな。




「わぁ、とてもお似合いですよ」

「そ、そうかな?前髪を分けられると落ち着かないな・・・」

「何言ってるんですか、せっかくの男前なんですから出さないと損ですよっ」


服を選んでもらうだけのはずだったが、いつの間にかつま先から頭までフルコーデされてしまった。店員さんは、一仕事終えた感じで満足げだ。

長年の引きこもり生活で伸びきった髪を、後ろにまとめられたせいか視界が広くなった気がする。

そして、何気なく全身鏡で自分の姿をチェックした時にビビったよ。誰だこいつ!?って思った。

だって、鏡には長身でキリっとしたイケメンの細マッチョがいたんだよ?日本で最後に見た俺は、長身だけど枯れ枝のようにガリガリで、外に出ないから青白い幽鬼のような姿だったのに・・・やべぇ、悲しくなってきた。

マッチョなのは職業と技能による強化で間違いないとして、このイケメンフェイスはなぜ?・・・ホワイトな神様の粋な贈り物か?


「あのう、お気に召しませんでしたか?」


いかんいかん、色々と考えてたら店員さんを不安にさせてしまった。考えても仕方ないか、これはこれでラッキーと思っとくか。


「そんなことないよ。それじゃ、選んでもらったもの全部買うよ」

「お買い上げありがとうございます~。あっ、これはサービスします。ワンちゃんに巻いてもいいですか?」

「ありがとう、それじゃお願いしようかな」

「は~い、それじゃ失礼して・・・うん、良い感じっ」


店員さんがサービスで、青いオシャレな柄の布をスカーフのようにシロの首に巻いてくれた。

おお、すごい似合う。やっぱ服屋の店員なだけあってセンスいいな。なんというか、飼い犬感が増したがシロもスカーフにご満悦のようだ。尻尾をブンブン振り回して店員さんを舐めまわしている。


うん、これで最低限の物は確保できたし生活の基盤もできてきたんじゃないか?

明日からは、冒険者らしく依頼でも受けてみるか!




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