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大抵のことは、お金で解決することが出来る

「冒険者ギルドバラン支部ギルドマスターのジゼルだ」

「椎名です」


若い冒険者が襲いかかってきたので返り討ちにして、更にオカワリで襲いかかってきた筋骨隆々の冒険者たちを返り討ちにした三上椎名です。今、ギルドマスターの部屋にいます。

筋骨隆々の方の冒険者一人一人に、丁寧に腹パンを決め終わった頃にギルドマスターが仲介に登場。

ギルドマスターの部屋にて、当事者+ギルドマスターにて話し合いをすることになりました。ちなみにシロは、俺の足元で丸くなってます。ふふ、可愛いね。


もう一組の当事者であるブレイバー(笑)の面々は・・・ギルドマスターが怖いのか、椅子に座って小さくなっちゃってるね。後、俺と全力で目を合わせないように逸らしてるね。ふふ、可愛いね。

ちなみに話し合いの為に、ブレイバー(笑)の治療は俺がしてあげました。


「・・・それで、事の顛末を説明してくれないか?」

「そこのブレイバーと名乗る冒険者たちに、いきなり矢を射られました」

「なに・・・それは本当か?」

「「「・・・」」」


俺の発言に、ギルドマスターの眉間に皺が寄る。そして更に、縮こまるブレイバー(笑)。最初の威勢はどこに言ったんですかね?


「黙っていないで、答えろっ!」


一向に喋らないブレイバー(笑)に、苛立つギルドマスターがテーブルに拳を強くたたきつける。


「ひっ!だって、魔物が街の中にいたから・・・」

「・・・お前ら。こんなに大人しい魔物がいると思ってるのか?」

「だって、リリィがあれは魔物に間違いないって言うから」

「そ、そうよ!エルフの瞳は、魔を見分けることができるのよ!」

「それでお前たちは、確かめもせずに一方的に強襲したと」

「・・・それは」


あっ、ギルドマスターの眉間に青筋が・・・客観的に物事を聞いて、自分たちがしでかしたことを把握できた見たいだな。ブレイバー(笑)の顔色が悪くなってきた。見てて何か面白い。


「お、俺はリリィを信じます!きっとこの魔物は危険なんです!」


お、剣士の少年ことアルス君。が若さ故か、開き直ったー!


「アルスっ!そうよ!私の瞳は間違ってなんかいないわっ!」


おお、弓の少女ことリリィちゃん。アルスに便乗してきたー!


「ええっと私は・・・うぅ・・・その・・・」


杖の少女ことリリアちゃんは、現実が見えているのかオロオロとしている。


「この・・・バカタレ共がっーー!!」

「「ぎゃんっ」」


そして、ギルドマスター切れたー!開き直って、逆ギレした二人の頭上にゲンコツが落ちる。

うわー、痛そう。二人ともあまりの痛さに床で転げまわってるよ。俺の足元で丸まってるシロが、物珍しそうに転げまわっている二人を眺めてるとこがシュールだ。


「シーナよ、ブレイバーの件は分かった。全てこちらの過失だ・・・申し訳なかった」

「ほ、本当にすいませんでしたっ」


おお、ギルドマスターが立ち上がって深々と頭を俺に下げてきた。ギルドマスターに続いて、ゲンコツを回避したリリアちゃんも慌てて頭を下げてくる。

あれだな。ギルドマスターって偉い立場だからもっと難癖つけてくるかと思ったけど、この人は良い人そうだ。リリアちゃんも、普段はあの二人に振り回されてるんだろうなーって思った。

まぁ、だからと言って許しはしないけどね。責任はちゃんと取ってもらう。


「ギルドマスターと、そこの少女の謝罪は受け入れましょう」

「おお、本当か?それは助かる」

「あ、ありがとうございます」

「しかし、そこの二人は話は別です。どう処罰されますか?」


謝罪が受け入れられ、安堵の表情を浮かべていたギルドマスターとリリアちゃんの顔が一変する。・・・これで解決した気になってたんだろうなぁ。甘い甘い。


「俺は今日冒険者登録をするつもりだったんですが、その三人組のせいでまだ登録してません。つまりまだ一般人です」

「む、それはそうだが・・・」

「つまり、そこの三人組は一般人に向かって背後からいきなり襲い掛かってきたと言うことになりますね」

「そ、そうなるな・・・」


一般人というワードに、とても渋い顔をするギルドマスター。やっぱり、冒険者が一般人に危害を加えると不味いみたいだ。ラノベの知識が活きてるね。


「この場合、処罰ってどうなるんですかねぇ」

「・・・罰金金貨一枚もしくは、冒険者ライセンスはく奪だな」

「それは大変ですねー。杖持ってる子は許したけど、二人の方は頑張ってくださいね」


罰金と冒険者ライセンスはく奪という言葉に、真っ青になるブレイバー(笑)

金貨一枚って、確か日本円で百万円って設定だったな。駆け出しのパーティーには、とても払える金額ではない。必然と冒険者ライセンスはく奪しかないな。さようなら、ブレイバー(笑)


「い、いやだ!冒険者になったばかりなのにいやだっ」

「そうよ!私にはやらなければならないことがあるのにっ」

「アルスさんっ!リリィちゃんっ!?」


おお、おお。アルス君とリリィちゃんが泣き喚き始めた。

子供かよっ。って、どうみても十代半ばだし子供なんだよなぁ。でも子供でもやっていいことと悪いことがあるわ。特にシロに矢を射ったことは許せないし、無罪放免とはいかない。


「・・・彼らは、まだ駆け出しだがギルド期待の若手でもあるんだ。どうか穏便に済ませられないだろうか?今後、同じことが二度と起こらないように徹底して躾けることを約束する」


ギルドマスターが再び、頭を下げてくる。この人苦労性なんだろうなぁ、頭のてっぺんに深い悲しみが・・・何かとは言わないけど。まぁ、だからと言って折れないけどね。


「ダメですね、まだ許しません」

「・・・貴様に情はないのか?」

「あなたは、大事な相棒が殺されかけても若いから許せと?」


お、ギルドマスター眉間がぴくぴくしてますよっ!ギルドマスターとしては、ブレイバーの二人をどうにか助けたいんだろうな。


「あ、あのっ!」

「ん、どうしたんだい?」


リリアちゃんが、俺に話しかけてきた。その瞳には何か意を決したのか意志を感じる。


「お、お金は時間はかかりますけど必ずお支払いします。ど、どうかアルスくんとリリィちゃんを、許してもらえないでしょうか・・・」

「「リリアっ!?」」


大きな瞳から涙をポロポロ零しながら二人の許しを乞うリリアちゃんに、アルス君とリリィちゃんが激しく動揺してる。


「・・・どうして二人を庇うんだ?君は、二人に迷惑をかけられた立場ともいえるけど」

「ア、アルスくんは、考えみずなところがあるけどまっすぐで一生懸命なんです。リリィちゃんも、本当は優しくて気づかいができる子なんです。二人が好きなんです・・・ひぐっ、二人と一緒に冒険がしたいんですひぐっ」


我慢してたけどとうとう泣き出しちゃったなぁ。それにしても、リリアちゃん良い子すぎる。二人の暴走で処罰されるかもしれない状況だったのに、純粋に二人のことを心配してる。俺にもこんなことできるかな?・・・友達いなかった。泣けるぜ。


「だから・・・ひぐっ、どうか二人を許して・・・きゃっ!あなた、わたしを慰めてくれるの?ふふ」


二人を許してもらうべく、涙を流しながら話すリリアちゃんにシロが優しく寄り添う。お前、イケメンかよ!略してイケ犬だね。


「あの・・・」

「ん、どうした?」

「「本当に、申し訳ありませんでしたっ!!」」


いきなり謝罪して土下座をかます二人。

さっきまで好き勝手言ってたけど、泣きながら庇うリリア少女とそれを慰めるように寄り添うシロに何か思うところがあったんかな?


「どうして突然、謝る気になったの?」

「リリアに庇われて、改めて自分が勝手な行動をしてたんだなって思いました。・・・それに、リリアを慰める優しい生き物が、魔物なわけないって思いました。本当にすみませんでした」

「・・・」


アルス君は、本当に反省してるっぽいけどリリィちゃんはちょっと怪しいところだな・・・謝りこそしているが、瞳に不満の色が見える。んー。ここらへんが落としどころなんだろうなぁ。

これ以上は、いじめと変わらん。


「はぁ、いいよ。二人の謝罪を受け入れる」

「えっ!い、いいんですか?」


あっさりと謝罪を受け入れる俺に、驚きを隠せないブレイバー(笑)とギルドマスター。頑なに許さない態度だったからね。


「確認するが、本当に良いのか?」

「いいですよ。ちゃんと謝罪すれば許すつもりでしたし」

「あっ、本当にすみませんでした・・・」


今まで一度も謝罪していないことに気付いたアルス君は、再度深々と頭を下げる。その反省した様子に、ギルドマスターも安心したようだ。


「お前ら、今回はシーナが許してくれたから良いが、本来は処罰されて当然のことをしでかしたんだからな。反省するように、退出してよろしい」

「「「すいませんでした」」」


ギルドマスターの一言により、ギルドマスター・俺の順に頭を下げ退出していくブレイバー(笑)たち。

あっ、リリィちゃんが去り際にキッと睨んできた・・・あいつ。


「今回は、迷惑をかけたな。改めてすまなかった」

「無事、解決したんで良いですよ」


ほっとするギルドマスター。偉い人も大変だね。若者の暴走の尻拭いをしないといけないんだから。働いたことないけど、なんとなく大変そうなのは分かる。


「次は、俺を襲った二十人ほどの冒険者たちの処遇の話をしましょうか」


一安心して緩んでいたギルドマスターの表情が、再び引き攣る。だってこれはこれ、それはそれでしょ?


「・・・彼らは」

「駆け出しでもなんでもないですよね?」


がんばれ、ギルドマスターの毛根。でも、悪いけど俺には関係ないんだ。




~~~sideジゼル~~~


俺の名はジゼル、三十三歳独身。最近、抜け毛が多くて悩んでる冒険者ギルドバラン支部のギルドマスターだ。元々Aランクの冒険者として活動してたが、怪我が原因で引退。去年から、ギルドマスターとして働いている。

腕っぷしだけで生きてきた俺が、今更書類仕事なんて・・・って思っていたが本部派遣の秘書が上手いことサポートしてくれて何とかやれている。

秘書がいうには、荒くれ者の多い冒険者は自分より強い者の言うことしか聞かないから、引退した高ランク冒険者をギルドマスターとして迎えるのが一番効率が良いらしい。


俺は、それを聞いて納得した。確かに、俺も自分より弱いやつからの指図なんて受けたくない。しかし、ギルドマスター就任直後は、色々と大変だった。

書類と睨めっこしては、俺をギルドマスターとして認めない冒険者と殴り合い。また書類と格闘しては、冒険者たちと肉体言語で語り合った。


そんなことを一年続けていたら、気付けば俺をギルドマスターとして認めない冒険者はいなくなっていた。

書類仕事は・・・割と出来るようになったと思う。問題ばかり起こすが、俺を慕ってくれる冒険者たちも今じゃ可愛く思える。


・・・この仕事も悪くはないな。




「「「おおおおおおおおお!!!」」」

「な、なんだっ!?」


感傷に浸っていると、外から怒声が聞こえてくる。・・・乱闘か?真昼間から何やってんだあいつら。


「エリーゼ、どういう状況だ?」

「はい。どうやらブレイバーが見知らぬ男に襲われている所を、ジンが発見したようです」

「ブレイバーが襲われただと!大丈夫なのか?」


ブレイバーは、最近冒険者になった才気溢れるルーキー達のことだ。真面目で強面な冒険者たちにも物怖じせずに話しかけてくることから、冒険者たちから可愛がられている。かくいう俺も、可愛がっている一人だ。そんなブレイバーが襲われたとなると、俺も穏やかではいられない。


「目撃者によると、アルスは顔面が膨れ上がり気絶。リリアは外傷はありませんが気絶。リリィも外傷はありませんが失禁した状態で気絶しているとのことです。ちなみに、例の男は無傷だそうです」

「リリア以外、大惨事じゃないか!」


思いのほか大惨事だった。大方、リリアとリリィにちょっかいかけたのが原因で揉めたんだろう。あいつらまだまだガキだが見た目はそれなりだしな。

それよりも、ブレイバーを無傷で倒すだと?あいつらはまだまだ駆け出しだが、才能はピカイチだ。将来、Aランクになるであろう逸材たちだ。特にアルスは、もうCランク相当の腕はあるんだぞ。


「・・・それで、その男は今どうしてる?」

「ジンを筆頭に二十名ほどの冒険者たちが、捕縛を試みているようです」

「ジンがいるなら・・・まぁ、問題はないだろう」


ジンはBランク冒険者であり、このギルド一の実力者だ。万が一がない限り大丈夫だろう。おまけに大勢の冒険者付きだ、負ける要素がない。


「その男には、少し痛い目を見てもらうか。頃合いを見計らって・・・うぉっ!」


心を落ち着かせようと、手元に置いてあった紅茶を飲み干そうとした瞬間、突然何かが窓を割って飛び込んできた。・・・ちくしょう、びっくりして紅茶が鼻に入っちまったぜ。


「あいつら、張り切りすぎだろ・・・って、ジンじゃねーか!おい、大丈夫か!?」

「マ、マスター・・・あいつ・・・やべぇ・・・」

「ジーーーン!!」


窓を割った正体は、ジンだった。ジンの元へ駆け寄るが、あいつは一言残すと白目を剥いて気絶してしまった。むき出しの腹にクッキリと拳の痕が残っているが、それ以外に外傷はない。


「ま、まさかジンが一撃で倒されたってことか?」


ばかな、ジンはBランクだぞ!?しかも、大の大人を二階まで吹っ飛ばした・・・拳で?そんなこと、全盛期の俺でも無理だ。


「やめろ来るなゴパッ」

「これでもくら・・・ヘギャッ」

「うわあああ、逃げグギャ」


ジンが吹っ飛んできたのを皮切りに、冒険者たちの悲鳴が止まらない。


「うわぁ、こりゃ・・・えげつねぇな」


窓から外の様子を伺う。二十代くらいの武装もしていない丸腰の青年が、次々と冒険者たちを腹パンで沈めていっている。何がえげつないって立ち向かってくる相手には、攻撃を正面から受け止めた後に腹パン。逃げる相手には、瞬時に周りこみ腹パン。

武器ももってない武技も使っていない相手に腹パン一発で沈められる。・・・今は気絶しているが、目が覚めた時にあいつらのメンタルが心配だ。俺だったら引退しちまうレベルだ。


「止めに行かないんですか?」


・・・あの化け物を止めに?


「行かないとダメ・・・だよなぁ」

「ダメですね、行かないんですか?」


くっ、エリーゼが急かしてくる。正直行きたくないが、ここにいても何も始まらないのも事実。

おや、待てよ?相手は二十代の男だ。エリーゼが行ったほうが上手くその場を収めやすいんじゃないか?

エリーゼは、愛想はないが見た目だけは一級品だ。俺みたいなおっさんよりも、エリーゼみたいな美人が行ったほうが良いんじゃないか?うん、そうしよう。


「なぁ、エリーゼ・・・」

「行きませんよ?」

「話くらい最後ま・・・」

「行きませんよ?」

「・・・はい」


ダメだ、無理っぽい。頭を使う仕事はエリーゼ、荒事は俺って分担してたもんな。この場合は、完全に俺の仕事だもんな。


「最後の一人が、倒れました」

「くそっ、腹括って行くしかねぇか」

「行ってらっしゃいませ」


くそ、こんな時でも無表情で不愛想を崩さないエリーゼが腹立つ。行くしかない。願わくば、話の通じるやつであってほしい。

俺は、覚悟を決めで外へ出た。




・・・




結論から言うと、今回の件はギルド側の不手際だった。割合で言えば十割こっちが悪い。だが、シーナは許してくれた。しかも、ブレイバーに反省を促しつつだ。

熟練の冒険者たちをぶっ飛ばしていた時の覇気はなく、今はとても穏やかにブレイバーを暖かく見守ってやがる。

・・・あいつは聖人か何かか?俺だったら、いきなり弓を射ってきたやつなんて絶対許さない。今回は、シーナの温情によって処罰は不問で終わった。感謝しないといけない。


「次は、俺を襲った二十人ほどの冒険者たちの処遇の話をしましょうか」


でも、他の冒険者たちのことは許してくれなかった。えっ?ブレイバーは、まだ子供だから許したけど他の冒険者は話が別?・・・俺は、エリーゼの方をちらりと見る。


「・・・(フルフル)」


ですよねぇ。無言で首を振るエリーゼを見て、俺は諦める。さって、少しでも処罰を軽くする為にも頑張りますかねぇ・・・


俺はジゼル。冒険者ギルドのギルドマスターをやっている。

この後、何とか粘って一人銀貨百枚の罰金で済ませてもらった。




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