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悪魔の店とゴリラ兄弟




「うわぁ~。シーナさん、これ美味しいですね」

「本当だな。この鶏肉もなかなか・・・」

「あ、あっちのも美味しそう!行くよ、シロちゃん」

「ウォーン!」

「・・・やれやれ」


俺たちは、シーズの浜辺沿いにある屋台通りに来ている。ここの屋台では主に食べ物が売られており、地元特産の海鮮から異国の料理まで色んな食べ物が売られている。

まぁ、あれだよ。食べ歩きだよ。だってヒマなんだもん。今の時期は犯罪まがいの依頼しかないし、俺はともかくリリアちゃんにそんな依頼させるわけにもいかないし、仕方ないね。


とはいえ、この屋台通りなかなか侮れない。もちろん、料理に当たり外れがあるんだけど美味い物はめちゃくちゃ美味い。まさか、異世界でエビフライが食べれるとは思っても見なかったよ。

ただね、外れというかゲテモノ料理もあるんだよね。ゴブリンの姿焼きとか誰が食べるんだ?異世界怖すぎんだろ。


「ひゃあああ」

「どうした!?」

「あ、あれ・・・」

「あれ?・・・あっ」


リリアちゃんの悲鳴が聞こえ急いで駆け付けると、リリアちゃんは屋台の前で腰を抜かしていた。俺の問いかけに、恐る恐る指を指してくる。

その指の先には、魚に手足が生えた物体が数体吊るされていた・・・。そう、俺たちがシーズに着く前に戦った魚人と同種のやつである。


「く、食えるのか?」

「あわわわわ」


良く見ると店主のおっちゃんが、魚人を捌いている。ちょうど手足を切り取って今から身を捌くとこだ。その様は、まさに猟奇殺人事件!

いやいや、俺も一瞬・・・ほんの一瞬だけ食べようと思ったけども・・・本当に食べれるのか?リリアちゃんは、魚人が捌かれる様を目の当たりにしてすっかり動揺してらっしゃる。


「お、いらっしゃい。シーズ名物魚人料理はどうだい?」

「め、名物だ・・・と・・・」


俺たちに気付いた店主のおっちゃん。ニッコリと飛んでもないこと言いやがった。マジか、マジで?


「う、美味いのか・・・?」

「ふっ。コレ食ったらもう普通の魚じゃ満足できなくなるぜ」

「マ、マジか・・・」

「ほら、これがメニューだよ」

「ど、どれどれ」


俺は意を決してメニューを見る。


<シーズ名物魚人料理(非公認)>

・鯛魚人の塩焼き

・鰹魚人のタタキ

・鯖魚人のミリン焼き

・鮪魚人の刺身




・・・




・・・




・・・




「非公認じゃねぇかっ!」


俺はツッコミと同時に、メニューを勢いよく地面に叩きつける。くそっ!地味に美味そうなラインナップしやがって。危うく食べるとこだったじゃねーか!


「はっはっは、バレちまったか。味は良いんだけどよ。みんな気味悪がって食べねーのよ。こんなに美味いのにな」

「ひぇぇええ」


店主のおっちゃんは、悪げもなく鮪魚人の刺身を口に頬張る。それ見たリリアちゃんが悲鳴を上げながら、ヨチヨチと屋台から逃げようとする。腰が抜けちゃったかな?


「おや、帰るのかい?また食べたくなったらおいでー」

「もう二度とこねぇよ!いたいけな少女の心に傷を負わせやがって・・・シロ、リリアちゃんを頼む」

「ウォンっ!」

「うううう・・・」


俺は腰が抜けて立てないリリアちゃんをシロの背に乗せて、この悪魔みたいな店を後にする。


「はっはっは、そういわずにまた来いよー」


だからこねーっつーの!




・・・




「うぅ・・・すいません」

「いやいや、あれは仕方ないよ。ひどい目にあったな。大丈夫か?」

「はい、なんとか・・・」


リリアちゃんも、あの悪魔の店の一件からやっと立ち直れたようだ。あの光景は俺でさえ、衝撃だったもんな。


「おい、そこのお前。ちょっと止まれ」

「ん?俺のこと?」


露店を見ながら宿に向かっていたら、冒険者風の男二人に声をかけられた。

・・・うわー、悪そうな顔してんねぇ。おっと、いかんいかん。見た目で悪いやつと判断するのは相手に失礼だ。もしかしたら良いやつかもしれない。


「痛い目に合いたくなかったら、その狼を置いていきな」


前言撤回、見た目通り悪いやつだったわ。そうだよね。上半身なぜか裸でモヒカンの二人組なんて、どっからどうみても悪いやつだわ。


「理由を聞いても?」

「うるせぇよ!黙ってその狼を置いてけ!」

「本当に痛い目みてぇのか!」


ダメだ、会話を試みたけど話が通じない。実は、人間じゃなくてゴリラなのかもしれん。


「おい!お前、今失礼なこと考えただろう!」


会話は通じないけど、勘は良いらしい。


「シロ、お前を置いてけって言われてるけど。どうする?」

「だ、ダメですっ!」

「・・・クゥーン」


冒険者・・・もといゴリラを不思議そうに眺めていたシロに問いかける。シロは、悲しそうに首を振って俺に頭を擦り付けている。ふふ、愛いやつめ。


「シロもリリアちゃんも嫌だってさ。それじゃ」

「おい、待てやゴラァ!」


帰ろうとする俺たちを、尚も引き留めてくるゴリラたち。何だこのゴリラたちは、というかギルドが何とかしてくれるんじゃなかったのか?

俺は、諦めてゴリラたちと向き合うことにした。


「・・・何なの?俺ら帰りたいんだけど」

「てめぇ、ふざけやがって」

「どうやら、痛い目みたいらしいじゃねぇか」


お、ゴリラたちが武器を抜いた。器用なゴリラだこと。・・・冗談は、さておき最後通告くらいはしておくかな。流石に獲物を抜いたらシャレじゃ済まされないぞ。


「剣を抜いたからには・・・覚悟できてんのか?」

「うるせぇ!てめぇこそ・・・」

「【三段掌】」

「はがっ!おごっ!ぶへらっ!?」

「きょ、兄弟ぃーっ!良くも兄弟を・・・」

「【三段掌】」

「がはっ!ぶべっ!ぶはらっ!?」


最後通告を無視したゴリラ二匹に、【三段掌】をお見舞いする。顔・胸・腹に【三段掌】を受けた二人は、顔がぼっこりと腫れた状態でクの字になって気絶する。


・・・ぶっ飛ばしたは良いものの。こいつら、どうしよう?冒険者っぽいから、マチルダさんのとこに連れていっても良いけど。ここからは遠いなぁ。とりあえず、起こして尋問するか。


「おい、起きろ」

「「痛てぇ!はっ、ここはどこだ!?」」


とりあえず、気絶してる二人をビンタして強制的に起こす。ハモるとかお前ら仲良しかよ。いや、良くみたらコイツら同じ顔だな。双子か?ムキムキ半裸なおっさんの双子とか需要ないんだが・・・


「とりあえず、正座」

「は?なんだお前!」

「いきなり何だてめぇ!喧嘩売ってのか!」


ビキィッ!


怒りのあまり、俺の額にぶっとい青筋が浮かぶ。

こ、こいつら・・・ま、まだ我慢だ・・・


「正座」

「だから、何なんだよお前!」

「やんのか!ゴラァ!」


ブチッ!


「【活殺六打掌】」

「「ギョアアアアアアアアア!!!」」




・・・




・・・




「「ずびばぜんでじだ・・・」」

「分かればよろしい」


俺の目の前には、顔面ぼっこぼこで全身痣だらけの男が二人正座している。

話が通じないにも程があるよ。ラノベで話が通じないやつを相手にする場面は良くあったけど、実際に遭遇するとこんなにも腹立つとは思わなかったよ。



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