湾岸都市シーズについた
「着いたー!バランも賑わってたけど、ここはもっとすごいのな」
「わぁぁ、活気に溢れてますね!」
やってきました。湾岸都市シーズ。一言でいうならば、とても開放的っていう言葉が似合う都市だな。
異国との貿易の拠点ということもあり、商業が盛んでそこかしらでバザーが開かれている。もしかしたら、掘り出し物に出会えるかもっ!?・・・というのが、この都市の表の顔だ。
裏の顔は・・・別名、犯罪都市シーズ。窃盗品・盗難品色んな訳アリの物がここの闇市に流れてくる。ってことは、必然と犯罪者やならず者もこの都市へ流れてくるってわけだ。ほら、路地裏に怖いおじさん達が、獲物を探してるね。怖いね。
「リリアちゃん、シロ。はしゃぎすぎて俺から離れないようにな。特に路地裏には絶対行くなよ」
「え・・・あっ!はい、わかりました」
「ワウッ!」
リリアちゃんも、路地裏の連中に気付いたみたいだ。うんうん、素直でよろしい。
「ちょっと浮かれてしまいました。シーズは闇市の時期ですし、一時的に治安が悪化してるみたいですね」
「あー、闇市か。また面倒な時期に来ちゃったなぁ」
闇市かぁ、ゲーム時代はアイテムが格安で買えたからお世話になったな。でも、今は現実なんだよなぁ。窃盗品を買うってなると、ちょっと気が引ける。
俺だけならまだしも、リリアちゃんもシロもいるし。闇市には近づかないようにしとくか。
「まぁ、闇市や路地裏に近づかなきゃ大丈夫だろ。純粋にバザーやら飯やら楽しむか」
「そうですね。私、前からバザーに興味があったんです!」
「おぉ、そうなんだ。でも、バザーは色々と用事を済ませてからな」
「はい!」
どこの世界も女の子は買い物が好きなんだねぇ。リリアちゃん、目を輝かせながらバザーを眺めてる。
こりゃ、早く用事を済ませないとな。
「よーし、もう暗いし。まずは宿と飯の確保だな」
「あの便利な魔法は使わないんですか?」
「ん?あぁ、【安全地帯】のことね。人前で出したくないし、せっかくだから都市にいる間はここの宿を楽しいたいかな」
「ふふ、シーナさんは色んなことを楽しんでるんですね」
「あはは、そういうこと。よし、そろそろ行こうか」
「「はい!(ワゥッ!)」」
「シロちゃん、目立ってますね」
「バランでも目立ってたしなー。シロ隊員、俺からあまり離れないように」
「ウォンッ!」
尻尾をふりふりしながら、元気よく答えるシロ隊員。どうやらシロの可愛さは、シーズでも健在のようだ。通りかかる人々に頭を撫でられている。
可愛がられる分には問題ないんだけど、シロは人見知りしないから知らない人にホイホイついて行きそうで不安だ。・・・、目を離さないようにしなきゃな。
「とりあえずは宿を決めないとな。表通りのちょっと高そうなとこにするか」
「高そうなところ・・・ですか?」
「あぁ、あんまり安いとこだと。泥棒が入りそうだしな」
「・・・確かに、その可能性はありそうですね」
「だろ?今でさえ、こんな状況だしな」
「あ、あはは」
俺の辟易とした表情に、リリアちゃんも苦笑いで応える。都市入口から歩いて十分程で、五人ほどぶっ飛ばしたんだけど。
理由もなくぶっ飛ばしたわけじゃないよ?三人は、俺の財布を盗もうとしてぶっ飛ばした。残りの二人は、シロを攫おうとしたから念入りにぶっ飛ばしておいた。
残念だったな。俺のスキル【危機察知】さんに死角はない。効果は、名前から察してください。
「でも、おかしいですね」
「何が?」
「いくら闇市の時期とはいえ、ここまで治安が悪いとは聞いてないです」
そうだねー。リリアちゃんの言う通り、いくらなんでも大通りで堂々とシロを攫うなんてこと普通しないよな。ってことは、誰かに狙われている?初めて来る都市で?んー、情報が少なすぎてわからん。
「確かにな・・・警戒はしておくか」
「それが良いと思います。衛兵さんも期待できそうにありませんし・・・」
リリアちゃんの懸念も分かる。既に五人もぶっ飛ばしてるのに、衛兵一人も来ないもんな。来るかわからない衛兵に期待するよりも、自分で自衛したほうが確実だもんね。
・・・何か、まためんどくさいことに巻き込まれてる予感がしないでもない。
「ま、考えてもしょうがないか。とりあえず、宿屋を探そう。飯だ、飯」
「ワォンッ」
「あはは、そうですね」
考えるのは苦手だ。何があっても何とかなるっしょの精神で行こう。
・・・
「ご飯も美味しいしベッドも清潔。この宿は当たりだな」
「はい、あんな美味しいお魚初めて食べました!」
「ワフワフッ」
宿屋を色々と物色した結果、俺らは中央広場にある高級宿に泊まることにした。この宿は、貴族御用達ということもあってセキュリティはバッチリだ。その分、お高いけどね。
ちょっとリリアちゃんには払えない額だったから、俺がまとめて払ったよ。
え?なんでそんな高級宿をとったのかって?あれから、三人追加でぶっ飛ばしたからだよ。
都市に入って一時間もしないで八人に襲われたら、そりゃ用心するよね。特にリリアちゃんもいるし。
「私、明日からいっぱいお金稼ぎますね!次は、ロブスターが食べてみたいです!」
「ワウワウッ!」
「ふふ、シロちゃんも一緒に頑張ろうね」
高級宿なだけあって、ご飯は絶品だった。特に海鮮パエリアが出た時は感動したなぁ。バランでも魚は食べてたけど、やっぱり味も鮮度も段違いだった。来て良かったわ、シーズ。ありがとう。シーズ。
ちなみにリリアちゃんもシロも、海鮮がお気に召したのかすごい勢いで食べてた。頬っぺたにご飯粒がついてるのに気付いた時のリリアちゃんの表情は可愛かった。
「シーナさん、明日は冒険者ギルドに拠点登録しに行ったら依頼も受けましょうね」
「はいはい。お嬢様の仰せのままに」
リリアちゃんやる気だなぁ。そんなにロブスターが食べたいのかな?
拠点登録っていうのは、簡単に言うとこの都市を拠点にしばらく依頼を受けますよってことだ。めんどくさいけど、この登録をしないと素材買い取りの時とかに通常より安く買いたたかれてしまうらしい。
「んー、シーズの冒険者ギルドかー。バランとどう違うか楽しみだな」
「そうですね。バランのみなさんのように、良い人たちだと良いですね」
「・・・良い人ねぇ」
「? どうかしましたか?」
小首を傾げるリリアちゃんに、俺は思わず苦笑いしてしまう。そっか、リリアちゃんにとってはアイツらは良い人なのか。俺は、アイツらとは全然分かり合えなかったけどな。
「いや、何でもないよ。それより、今日はもう休もうか。明日は、いっぱい稼ぐんだろ?」
「あはは、そうでした。明日は頑張りましょうね!それでは、おやすみなさい」
「あぁ、お休み」
「ワフー」
リリアちゃんとシロは、部屋に戻っていった。・・・シロ、お前も行くんかい!
「・・・寝るか」
とりあえず、長旅で疲れた。もう寝るか、一人で。
・・・寂しい。




