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シロさんモテモテ?


「そこの旅人、止まれ」

「ん?」


魚と戯れた次の日、浜辺を沿って歩いてると不意に後ろから声をかけられた。振り向いてみると、豪華な鎧を来たおっさんがいた。そのおっさんの後ろには、これまた豪華な鎧を着たやつらと豪華な馬車が控えてる。


・・・うわー。すっごい面倒ごとの匂いがプンプンする。異世界あるあるだと、この後に絡まれるのが定番だよな。


「シ、シーナさん。あの馬車についてる紋章って・・・あれって王族の紋章(エンブレム)ですよ」

「へー、そうなんだ」


はい、面倒事確定。

リリアちゃんの言う通り馬車の側面に、ペガサスと二本の剣が組み合わされたエンブレムが描かれている。あれは人族の王族を表す紋章だ。つまり、あの馬車の中には王族が乗っているってことだ。


確か人族の王って・・・ダメだ。あんまり思い出せない。王様とか、【騎士】や【勇者】の職業をもらいに行った時に謁見したくらいだしなぁ。それに、覚えてたとしてもゲームの頃の話だしな。覚えてようが忘れてようが関係ないか。


「へーって、王族ですよ!?何でそんなに平気にしてるんですか?」

「だって、俺ら別に悪いことしたわけじゃないじゃん?」

「それは、そうですけど・・・」


リリアちゃんは王族に引き止められて、結構緊張してるみたいだ。さっきからずっと目がきょろきょろ落ち着かない。そんなに緊張することかね?とも思ったけど、この世界の人間からしたら殿上人か。仕方ないね。

俺も、総理大臣に会ったらキョドキョドする自信があるわ。


「第十三王女であらせられるカトリーヌ姫が、貴様と話がしたいとのことだ。跪いて待つがいい」

「はっ?いきなり何・・・」

「シ、シーナさんっ!」

「・・・チッ、わかりました」


偉そうなおっさんに言い返そうとしたら、リリアちゃんに涙目で訴えられてしまった。・・・リリアちゃんの涙に免じて、一回だけ我慢してやろう。俺は渋々だけど、素直に跪くことにした。

シロも、俺らの様子を見てお座りをする。シロって意外と空気読めるんだよなぁ。


俺とリリアちゃんが跪いて待ってると、しばらくして馬車から十代前半くらいの少女が降りてきた。ほー、王女なだけあって美少女だ。プラチナブロンドに蒼い瞳、THE王女って感じじゃん。

王道の王女って何か語呂が変だよね。


「私が、第十三王女カトリーヌです。私に声を掛けられたことを光栄に思いなさい」

「・・・」

「貴様!姫様に返事をせんか!無礼であるぞ!」

「・・・はいはい、光栄に存じ上げます」

「ありがたき、幸せにございます」


おっさんうぜぇ・・・。王女様が偉そうなのは分かるんだ。実際に偉いしな。だけど、護衛のおっさんが偉そうなのがなぁ。所詮、ただの護衛じゃん?

それにしても結構年下の少女に頭を下げるのは、ちょっとゾクゾクするな。


「あの白い狼の飼い主は、あなたですか?」

「・・・ハッ!? え?あー、はい。俺ですね」


危ない危ない。今ちょっと危ない扉が開きかけてたわ。死んだバーちゃんが言ってたじゃないか。Yesロリータ。Noタッチ!って。心をCoolに保つんだ。


「良い毛並みですわね」

「あー、はい。ありがとうございます?」


王女様は、状況は分からないけどとりあえず座っとこの精神で俺の隣に座っているシロを指さす。

どうやらシロがお目当てらしい。撫でたいのかな?

その気持ちはわからんでもないな。最近のシロの毛並みはマジでやばい。定期的に俺が、水魔法を駆使して洗ってあげていることもあってモフモフだ。リリアちゃんなんか、最近ではこのモフモフがないと寝れないほどに虜になってるのだ。恐るべし、モフモフ。


「その狼を私に献上なさい」

「は?」


何いってんの?このロリ王女様。思わず、素っ頓狂な声がでちゃった。リリアちゃんも、目を見開いて茫然としてる。


「聞こえませんでしたか?これだから下民は・・・その狼を献上なさい」

「は?嫌に決まってんだろ」

「貴様!王女様に対して何たる暴言を!黙ってその狼を献上すればよいのだ!」


ヤバい、キレそう。シロを寄こせってだけでもありえないのに、何でこんなに偉そうなのコイツら。

え?王族ってこんなに横暴なの?・・・ダメだ。冷静になれ椎名。心はCoolにだ。とりあえず会話だ。うん、まずは会話だな。それが大人の対応だ。


「・・・シロを欲しがる理由を教えてもらえないか?」

「貴様!まだ口答えするか!」

「アロール、下がりなさい」

「しかし!」

「アロール、二度は言いません。控えなさい」

「・・・はい。申し訳ありませんでした」


お、どうやらおっさんはちょっと出しゃばり過ぎたらしい。怒られてやんの(笑)

おっさんは、俺を睨みながら王女様の後ろへ下がっていった。


「さて、そこの狼を欲しがる理由でしたか?」

「まぁ、そうですね」

「・・・はぁ。本来は、下々に説明する必要はないのですが。私は今機嫌が良いので、特別に教えて差し上げましょう。心して聞きなさい」

「はぁ、ソレハソレハアリガトウゴザイマス」


クソッ、おっさんにもイラついてたけど。このロリ王女の尊大な態度も癪に障るな。

・・・我慢だ。我慢しろ椎名。


「そこの狼は王へ献上します。とても立派な獣です。血肉は王の体を巡り毛皮は国庫に保管されることでしょう。光栄に思いない」

「・・・ハ?」


それはつまり、シロを食うってことか?

怒りのあまり、殺気が溢れる。横にいるリリアちゃんは、俺の殺気を感じ取ったのかガクガクと震えている。・・・ごめん。もうちょっと我慢して。抑えられないんだ。


「聞こえているのですか?本当に下民は・・・ひっ」


どうやら溢れた殺気が、王女様まで届いたようだ。王女様は地べたへ尻もちを着いた後、青ざめた顔で俺から距離を取ろうと這いずっている。どうやら腰が抜けた上に声もでないようだ。

でも、それだけじゃまだ許さない。俺は殺気を更に強め、王女様へ近づく。


「王女様、あんた偉いんだろうけど。言って良いことと悪いことがあるんだよ?」

「ひっ、ひぃぃ・・・あふん」


あ、白目剥いて気絶した。おまけに水たまりが・・・。さすがに、幼い少女は殴れないからお説教で勘弁してやろうと思ってたら速攻で気絶された。

・・・どうしよう。怒りが収まらなくて、すごいモヤモヤする。


「き、貴様ぁ!姫様に何をしたっ!」

「あ、こいつらがいたわ」


王女様の異変に気付いた護衛のおっさんたちが、剣を抜いて俺に殺到してくる。ちょうどいいや、おっさんにもイラついてたし。


「死ねええええ・・・ごべっ!」

「貴様!おとなしくぐべらっ」


俺は、おっさん達の腹に容赦なく腹パンをかましていく。竜撃槍を使わないのかって?バカ言うんじゃないよ。あんなぶっとい鉄の塊でぶん殴ったら死んじゃうよ。流石に俺も、イラついたからって理由で人を殺したくはない。


「よし、お前で最後だな」

「ま、待て!貴様、こんなことをしてタダで済むと思うなよ・・・貴様は王族にたごべらっ!」

「ふう、スッキリした」


最後の一人に腹パンを決める。はは、ご自慢の豪華な鎧がベコベコにへこんでる。もうあれは使えないだろうなぁ。


「よし、リリアちゃん。シロ。行こうか」

「「は、はい!(ワ、ワフッ!)」」


えっ?なんで二人とも引いてるの?




・・・




「本当にあのままで良かったんですか?」

「ん?あのままって王女様たちのこと?」

「・・・はい」


どうやらリリアちゃんは、気絶してる王女様一向を無視して先に進んでることを気にしてるらしい。

あんなことがあったのに優しいねぇ。流石、バランの天使と言われてたことはあるわ。


「まー大丈夫なんじゃない?数時間もしたら目が覚めるさ」

「でも、王族に無礼を・・・」

「リリアちゃんは、あのままシロを渡したほうが良かった?」

「ワフゥ・・・」

「そんなつもりじゃ!?シロちゃんごめんね・・・」


悲しそうな顔で鳴くシロに、慌てて弁解するリリアちゃん。


「ごめんごめん。意地悪な言い方だったな」

「いえ、良いんです。私は何もできませんでしたし・・・」

「ワフワフ」

「シロちゃん慰めてくれるの?」

「ワフッ!」

「ふふ、ありがとう」


今度は、リリアちゃんがシロに慰められてるな。本当、仲良くなったなぁこの二人。


「俺も短慮だったけど、何だかんだでアレがベストな対応だったんじゃないかな?」

「うぅ・・・ですが・・・」

「まぁ、過ぎたことは気にしても仕方ないさ。何か問題が起きたら、その時にでも考えよう」

「・・・はい」


完全に納得はしてないけど、とりあえずは胸の奥に閉まってくれるみたいだ。

こういう気遣いが出来る女の子って良いよね。あのリ・・・リリス?リリム?あれ、アイツの名前なんだったけな・・・。いいや、あの弓女も見習ってほしかったもんだ。


「そういえば、何であの王女様はシロに拘ってたのかねぇ。毛皮はともかく、狼の肉ってそんなに美味くないじゃん?毛皮はともかく」

「ワゥッ!?」

「キャッ!?」


俺のシロの毛並みを見る目に恐怖を覚えたのか、シロが情けない声を上げつつ跳ね上がる。ついでにとばっちりで、シロに乗ってるリリアちゃんが落ちそうになった。

・・・すいません。そんな目で見ないでリリアさん。


「コ、コホン。王女様がシロちゃんを欲しがったのは、多分だけどわかります」

「おー、どういうこと?」

「恐らくですけど、王女様はシロちゃんのことを魔物と勘違いしたんだと思うんです」

「ブハッ!?」

「ど、どうかしましたか?」

「い、いや、何でもない。続けて?」


やべぇ、そういえばリリアちゃんに、シロが犬じゃないくて本当は魔物だってこと言ってなかった。折を見て本当のこと話さないとな。でも、まずは話を聞いてからだな。


「白い魔物って、幻と言われるほど希少な存在なんです」

「ほー、白い魔物なんてそこらへんにいそうだけどな」

「そして、白い魔物は総じて災害級の強さを持っている魔物でもあるんです」

「・・・ほー」

「・・・クゥン」


災害(レイド)級ねぇ・・・。俺は思わずシロを見るが、シロは申し訳なさそうに顔を背ける。

そうだよね、バランウルフにすら負けそうだったもんね。


「シロちゃんは犬ですけど、大きいですから白い魔物の子供と間違えられたのかもしれませんね。災難だったね。シロちゃん」

「・・・クゥーン」


おぉ、シロが更に項垂れた。リリアちゃんの優しさが、シロの傷を見事に抉ってるなぁ。


「白い魔物が珍しいのは分かったけど、無理やり奪いにくるほどのもんなのか?」

「白い魔物は獣人族には、聖獣として崇められているんですが・・・人族には違った伝承があってですね。白い魔物の血肉を食べると、不老長寿になるって言われてますね」

「不老長寿ねぇ・・・」


うさんくせぇ・・・。でも、貴族やら金持ちは好きそうな内容だよな。富と名声を手に入れた先は、不老長寿ってか?


「最近、王様が病に臥してるって噂があります。もしかしたら・・・そういうことかもしれませんね」

「あぁ、そういうことね」


なるほどね。白い魔物は希少価値が高くてしかもめっちゃ強いと。そしてその血肉には不老長寿の効能があって、王様が病に臥してるから必要としてると。

病気を治したい王族と王様に取り入りたい貴族たち。・・・うわぁ、これ絶対に面倒なことに巻き込まれる確定じゃないですかやだー。


クソっ、面倒くさいけど。シロはもう俺の家族だし、リリアちゃんも俺が保護者だ。これから来るであろう厄介ごとから守らないとな。


「よし、決めた」

「え?何がですか?」

「・・・ワウ?」

「俺がお前らを絶対守ってやるからな!」


俺は、意思表明を込めて二人に宣言する。


「あわわわ」

「ワウッワゥッ」

「ははは、任せとけシロ!ん、リリアちゃん顔を赤くしてどうしたんだ?」

「い、いえっ。なんでもないです」


まぁ、暑いしな。そんなこともあるか。




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