異世界は突然に
R15は保険です。
基本的にエロ・性的虐待などの描写はありません。作者が生理的に無理です。
「・・・知らない天井だ」
目が覚めたら知らないてんじょ・・・じゃなくて真っ白な空間の中にいた。
えっ?ちょ、本当にここどこ!?
右も左も奥行がわからないレベルで真っ白なんですけど。というか、空も真っ白なんですけど。
「あぁ、夢か」
うん、夢だわコレ。だってさっきまで家でゲームしてたし、俺ん家にこんな真っ白な部屋ないし。
夢だとわかったら安心したわ。さーて、目が覚めるまで気楽に待ちますかねぇ。
~三十分後~
「まぁ、そんなすぐには覚めないわな」
~一時間後~
「夢にしては妙にリアルだなぁ」
~二時間後~
「まぁまぁ」
~三時間後~
「・・・」
~四時間後~
「おかしい。いくらなんでもおかしい」
いつもなら今やってるゲームのことが気になって一時間くらいしか寝付けないのに、流石にこんなに寝てるのはおかしい。
ということは、俺はそもそも寝てないということになる・・・現実?
「・・・痛い」
ベタな方法だけど、腕をつねってみた。痛かった。ちょっと強くつねりすぎて、腕がジンジンする。
マジカー、コレゲンジツナノカー。
どこか出口は・・・うん、驚きの白さだ。むしろ、白しかない。建物はおろか、地面も空も白い。
・・・マジカー。
・・・
・・・
「うおおおおおおっ!誰かいませんくわぁぁあああ!!」
・・・
・・・
「ぜぇぜぇ、誰も・・・いない・・・みだいだな・・・」
とりあえず三十分ほど全力で叫んでみたけど、無駄だった。すごい喉が痛いです。おまけに喉が渇いた。
何か飲みたいけど、何もないんだなーこれが。取り乱していたとはいえ、もう少し控えめに叫べばよかった・・・トホホ。
でも、おかげで少し冷静になれた。ちょっと状況を整理してみよう。こんな時こそ心はCOOLにって死んだバーちゃんが言ってた!
俺の名前は・・・三上椎名。歳は二十歳で趣味はネットゲーム。十五歳の頃に親父のヘソクリを勝手に使って始めたFXで大金を稼いで、その金を元に学校辞めてずっとネットゲームしてる。
親は学校に行けだの外に出ろだのうるさいから、とりあえず札束でビンタして黙らせた上でハワイに旅行に行かせてるから今は家に俺一人だけだ。ちなみに、もう五年は家から出てないから友達はいない。ゲーム内でも大抵の敵は一人で倒せるし、フレンドはほとんどいない。
・・・あれ?客観的に見たら、俺ってヤバいやつ?
いやいやいや、物の見方によっては両親に海外旅行をプレゼントした親孝行息子だ。うん、素敵だね。
おっと、いかんいかん。話が脱線したな。そうそう、そういえばずっとやってたゲーム内の全ての【職業】をカンストしたんだっけか。
あれは嬉しかったなぁ。何せカンストするのに五年もかかったもんなぁ。課金しまくって経験値ブーストしまくって五年だもんなぁ・・・長かったわ。
あまりにも嬉しすぎて、思わず一族秘伝の歓喜の舞を踊ってしまったほどだ。
「ん?そういえば、歓喜の舞を踊った後の記憶がないぞ」
一心不乱の踊っていたのは覚えてるけど、そこからがまったく思い出せん。
・・・歓喜の舞のせいで、部屋が白くなった?はは、そんなバカな。でも、何だろう?とても重要なことを忘れてるような気がする。
「そこからの続きはボクが教えよう」
「おわっ!だ、誰って・・・白っ!?」
振り返ると全身真っ白な人がいた。うん。その驚きの白さと、いきなり背後から声をかけられて二重の意味でビックリした。あぁ、まだ心臓がバクバク言ってる。
っていうかこの人、マジで白いな。顔が見えないレベルで真っ白なんだけど。真っ白な空間に真っ白な人とか・・・すっごい見えづらい。辛うじて輪郭くらいしか見えん。
「驚かせてごめんね。立ち話もなんだし、とりあえず座ろうか。喉が渇いてるんだろう?紅茶も用意しよう」
「え、あれ?いつのまに?」
「ふふふ。まぁまぁ、座りなよ」
「は、はい・・・」
白い人に促されるままに、席に座る。辺りには何も無かったはずなのに、いつの間にかテーブルとイスがある。しかも、ご丁寧に紅茶まで置いてある・・・あっ、美味しい。
紅茶なんてティーパックでしか飲んだことないから分からないけど、良い紅茶なんだなーってのは何となくわかる。
・・・っていうか、本当に美味いなこれ。何だろう。全身に何かが駆け巡るような爽快感がある。
「ふふふ、お気に召したようだね。気分は落ち着いたかい?」
「えっ?あっ、すいません。もう大丈夫です」
「それは良かった。とりあえず自己紹介でもしようかな。ボクは、創造神。簡単に言うと、偉い神様だね。ついてに言うと、ここは君のいた世界じゃないよ」
「・・・やっぱり」
「おや、思っていた以上に冷静なんだね」
「そりゃあ、こんな非現実的な空間にいたら何となくわかりますよ」
「その割には動揺してた見たいだけどね。あ、紅茶おかわりいる?」
「まぁ、目の前の現実を受け止めれなかったからですね。あ、いただきます」
神様が、紅茶を入れてくれ・・・あぁ、カップから湧いてくるんですね。さすが神様、それは想像してなかったわ。
うん。薄々は気づいてたけど、ここは俺の知ってる世界じゃないみたいだ。だって、こんな真っ白な空間も顔が見えないレベルの真っ白な人なんて地球上に存在するわけないじゃん。
こんな非現実的な空間にいる人なんて、神様か宇宙人くらいしか想像がつかん。
「・・・それで、俺はなぜここにいるんですか?」
「あぁ、その説明をしようか。三上椎名君、君はここを見てどう思った?」
「なんで俺の名前を・・・」
「まぁまぁ、後で教えてあげるから。それで、ここは君の眼からどう映る?」
「・・・とっても白いです」
「この空間が真っ白なのはね、ここにはまだ何もないからなんだ」
「何もない・・・ですか?」
「そう、まだ何もないんだ!強いて言うなら、このテーブルセットと紅茶ぐらいしかこの世界には存在していないのさ。ボクはね、この空間の創造神として赴任してきたんだ。ボクの仕事は、ここに新しい世界を作ることなんだ。君たちの世界でいう異世界ってやつさ。そこにね、君を招待しようと思ってここに呼んだんだ。君は功労者だしね」
「へっ!?お、俺をですか?」
ダ、ダメだ。情報量が多すぎて頭が追い付かない。目の前に神様がいるだけでもうお腹いっぱいなのに、今度は異世界に招待とな。
異世界とかラノベの中の憧れのシチュエーションだったけど、いざ自分がってなると何も考えれなくなるな。
・・・でも、なんで俺なんだ?功労者とも言ってたけど、まったく身に覚えがないんですけど。
「あの、功労者ってどういうことなんですか?」
「あぁ、その説明がまだだったね。・・・実はね、世界を創造するってすごい面倒なんだ」
「はぁ、そうなんですか」
「本当に大変なんだよ?なにせ文明から生態系まで全部一人で考えないといけないからね」
「それは・・・大変そうですね」
それは確かにめんどくさい。白すぎて表情がわからないけど、神様も心なしかげんなりしてるように見える。
「そこでね、ちょっと参考がてらに地球を覗いてて君を見つけたんだ」
「俺・・・ですか?」
「そう、見つけたのは本当に偶然なんだ。あまりに君が熱心にゲームをしてるのが目に留まってね。思わず覗いてみたんだけど、ユグドラシルってゲームだっけ?あれすごいね。世界観は元より文明から生態系までもがすごい綿密に練られている。君があそこまで熱心にやり込むのもわかるよ」
ユグドラシルとは、サービス開始から五年経った現在でも不動の人気を誇るVRMMOだ。プレイヤーは人間族・獣人族・エルフ等の多岐に渡る勢力の一つに所属し、世界樹であるユグドラシルの所有権や領土を巡り争うゲームだ。
神様の口から、まさかユグドラシルの話が出るとは思わなかったが、ユグドラシルが神に称賛されて、自分のことのように嬉しさが込み上げてくる。これが本当の神ゲー認定ってやつかな?
「それでね、あまりにも出来が良いものだからボクはユグドラシルをパク・・・とても参考にしようと考えたんだ」
「今、パクるって言いかけませんでした?」
「気のせいだよ」
「えっ、でも今・・・」
「気のせいだよ」
「アッ、ハイッ」
神様の圧が凄い・・・気のせいだったことにしないと何か大変なことになりそうな予感がする。
直感って大事だし、仕方ないね。
「まぁ、ぶっちゃけるとほぼほぼマルパクリなんだけどね。ユグドラシルそっくりの異世界だ。君なら興味あるかなって思ってね」
「結局パクってるじゃねーか!・・・はっ、すいません口調が乱れました。そうですね、興味はすごいあります」
「あはは、構わないよ。それで、どうだい?ボクの招待を受けてくれるかい?」
「そうですね・・・」
どうする俺。ユグドラシルそっくりの異世界ってパワーワードが強すぎて、正直に言うと行く以外の選択肢が見つからない。だけど、即決は良くない気がする。ここぞという時こそよく考えろって死んだバーちゃんが言ってた。
よし、心はCOOLに。異世界に行くにあたってのメリットとデメリットを冷静に考えよう。
「あーごめん。深く考えてるようだけど、本当は異世界に行くしか君には選択肢がないんだ」
「・・・はぇっ?」
なら、な ぜ 聞 い た し !
「ごめんごめん、君なら真っ先に食いついてくると思ってたんだ」
くそっ、殴りてぇ・・・
真っ白すぎて顔が見えないけど、きっとてへぺろ的な顔をしているに違いない神様に軽く殺意を覚えてる。
落ち着け椎名、落ち着くんだ。心はCOOLに・・・だ。
「理由を聞いても?」
「だって君。向こうの世界ではもう死んでるからね。異世界に行くかこのまま消滅するかの二択だよ?実質、行くの一択じゃん」
「・・・はえっ!?」
・・・えっ?
俺って死んでるの?
「えっ、死んでるの気づいてなかったの・・・?」
「し、死因を聞いても?」
「君が突然に奇妙な踊りを踊り始めて、転んで頭を打って即死したよ?」
「ファッ!?」
思い出した!歓喜の舞の時に、ペットボトルを踏んですっころんだんだ。
頭にすごい衝撃が走って気絶したと思ってたんだけど・・・そっかぁ、死んじゃったのか。
「は、恥ずかしい・・・」
俺は両手で顔を覆い、襲ってくる羞恥心に耐える。歓喜の舞を見られてた上に、その最中に転んで死亡って・・・恥ずかしすぎる。
「ま、まぁ。死ぬ時なんてみんなそんなもんさ」
やめて!慰めないで!今は優しさがツライっ。
でも、自分の恥ずかしい死因と同時に気づいたこともある。
「今回の異世界転生は、云わば第二の人生だ。楽しんでおくれ」
「・・・はい。ありがとうございます」
「うんうん、素直でよろしい」
この誘いは、神様の優しさだ。ふざけた神様だけど、この優しさは本物だと思う。そう思うと俺は自然と神様に頭を深く下げていた。
神様も慈愛に満ちた声で笑う。白くて顔見えないけど、きっと優しい眼差しで見詰めてくれてるんだろうなぁ。
「さぁ、そうと決まればさっそく転生だね!」
「えっ、もうですか?」
「うん、実はもうプログラムは完成してるから、あとは起動するだけなんだよね」
「か、神様・・・?」
神様に光が集約していく。瞬く間に集約されていく光は、神様の中で凝縮されて今にも弾け飛びそうな勢いだ。
「それでは三上椎名君、ようこそボクの世界へ。そして君に楽しい異世界ライフを」
神様の楽し気な声を最後に、光の奔流に飲み込まれ俺の意識はここで途絶えた。




