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第一話


このお話は「砂漠の涙」の続編となります。

ただしお読みになられていなくても大きく支障はございませんので安心してどうぞ。






 ある日、車に乗った一人の旅人さんがやってきました。


 ここはとても広い砂漠で、木はほとんど生えていません。遠くの方にぽつりぽつりと、わずかに地平線を盛り上げている影が見えるのですが、葉をつけているのか、枯れてしまっているのかも遠すぎてわかりません。わずかばかりの草がちらほらとまとまって生えていましたが、照り付ける太陽の日差しが頑張っているその細い葉を焼いてしまいそうでした。

 その車の走る道は舗装されていなくて、しかもさらさらとした砂で表面を覆われていましたが、幸い地面は固くてタイヤを取られてしまうことはありませんでした。大きいエンジンの音と排気ガスとともに、その後ろに砂を巻き上げて進んでいきました。


 その車の後部座席にはたくさんの旅荷物が乗っていました。幾つもの大きな空き缶も乗っていました。舗装されていない道路なのでよくカタカタと揺れます。その揺れと共にカランカラン、ぽこんぽこんと小気味の良い音を立てました。助手席には何か容器が置かれているだけでした。運転している旅人さんがそれを手に取り、蓋を開け、口をつけました。口をつけた後すぐに容器の蓋を閉め、また助手席におきます。唇がちょっとだけ湿っていました。どうやら水筒のようです。含んだお水を少し口の中で転がした後、喉が動きます。これだけ乾いた空気の中だと言うのに一口飲んだだけで我慢したところをみると、持ち合わせているお水もそんなにたくさん残っていなさそうです。



 旅人さんは日中ずっと車を走らせました。お日様が地平線の向こうに沈んでしまう少し前から車のヘッドライトをつけて走っていきましたが、お日様が隠れた後は残った光もすぐに消えてしまい本当に真っ暗になりました。

 今日はまだ月が出ていませんがヘッドライトは行く先を照らしてくれます。気にせず走ることも出来そうでしたが燃料の残りを気にしなくてはいけないので、道に迷う可能性や、悪路にはまってしまって脱出するために無駄にエンジンを回す羽目になることを避けるために今日はここで車を止めて、野営をすることに決めました。

 火を焚き、食事を用意します。食事といっても用意されたのは缶詰一個と、瓶詰めが二個、それとクラッカーのようなものだけです。缶詰入りのお肉を火で炙ってほおばります。瓶詰めの中身はというと、一つはジャムで、もう一つはバターでした。クラッカーに乗せて口に運びます。大人が満足できるとは思えないのですが、きっと食料も十分にないのでしょう。わずかばかりのご飯を摂って、後片付けをしていきました。空いた缶詰の缶は地面に埋めました。瓶の中身はまだまだあります。



 空気が乾いて、雲ひとつ無い砂漠の夜はとても冷え込みます。出来れば一晩中火に当たっていたいのですが、用心しなくてはいけません。こんな生き物のいそうにない砂漠では猛獣に襲われなさそうですが、万が一のことがないとも言えませんし、何より怖いのは人でした。焚き火の明かりを頼りに野盗の一団が現れないとも限りません。火を消し、車を少し走らせます。月が出てきたので夜目の利くこの旅人さんはヘッドライトをつけずにゆっくり運転しました。この車はつやのない深い緑色をしていて、よく目を凝らしても夜の闇の中では目立たなくて、遠くから見たらどこにあるのかよくわかりません。

 しばらく走って焚き火をしたところから離れると、また車を止めました。後部座席の荷物の中にまとめてある寝袋を取り出して、座席の背もたれを倒します。ドアを閉めたまま器用に寝袋を広げ、体をその中に入れていきます。すっぽり入りきると程なくして寝息が聞こえてきました。



今日はここまでのようです。




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