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平凡なヒロインですみません (改訂・休止中)  作者: アキヨシ
第三章(聖女編)

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01.学園復帰

 種子の季節前半の上旬、わたしは学園復帰した。


 同級生のご令息・ご令嬢たちは、親御さんから事情を聞いているのでしょう。わたしを遠巻きにしている。

 通りすがりの上級生たちまで道を開けていく。

 今までもある意味遠巻きにされていたので、そこは変化なし。

 変わったのは、いつも女性護衛騎士を連れている事と、シリウス様とピエール様が一緒にいる事だ。

 わたしより先に復帰していた、ウィリアム王子のお守はいいのだろうかと訊いたら、どうやら免除されたらしい。

 えーと、マジで学園でも一緒にいるの?

 色んな視線が痛いんですけど。

 この2人が一緒だから、余計に遠巻きにされているのかもね。


 でも……、ふふふふふ。

 今までわたしの悪口を言っていた人たちが、今度はどんな対応をしてくるのか、ちょっと楽しみではあります。

 男爵令嬢ごときって散々言われたからね。

 現在、わたしは「伯爵令嬢」に変わりました。付加価値として「聖女」もおまけで付いてます。

 何様よ!と言われたら、聖女ですけど?って言ってやるわ!

 おーっほっほっほっほ!


 ――なんてガラじゃないわね。


 それよりも、何よりも――


「……ねぇ、ビアンカ様、この状況、おかしくないですか?」


「あら、皆さま口には出さないですけれど、聖女である貴女と親しくなりたいと願う方々ばかりですわ」


「おかしいですよ! なんで周りが王侯令息ばかりなんでしょうか!」


「伯爵以下はもはや眼中外! 貴女のお相手は王子や公爵・侯爵家でなければお話になりませんもの」


 扇を片手に、ビアンカ様はコロコロ軽やかに笑う。

 面白がってるわ。

 わたしの片手には盗聴防止端末。だからこそのぶっちゃけ話。


「……わたしが身分の高いイケメンを避けたいって知っているでしょうに」


 元々わたしは平凡に、穏便に暮らしたかったのだ。


「仕方がありませんわ。もうあきらめてはいかがかしら? だって貴女、王家の血を引く聖女なのですもの」


 シリウス様とピエール様は、神殿でも護衛としていつも傍にいたから慣れたけど。

 何故、隣国の王子たちまでいるんでしょうね?

 今まで接触のなかった侯爵家ご令息たちも増えました。

 君たち誰? え? 宰相の息子だ? 外務大臣の息子? はぁ?

 そして、ああ、なんか知らんけどウィリアム王子までやって来たわ。

 女子がビアンカ様だけっていうのも怖い。

 いやだー! どこかの乙女なゲームの販促イラストのような絵面になって来たわー。

 ちょっと茶話室でお茶飲んでただけなのに。


 わたしはヒロイン……断固拒否です!




 ◆◇◆




 思ったよりも長くかかった神殿おこもり生活。

 わたしよりも、護衛の為に神殿に詰めていた人たちの方が、疲れたのではないかしら。


 お披露目の後、毎週末午前のお祈りに参加して、参拝者に祝福を与えていた。

 毎回超満員。個別にお願いをしようとする人は、すべてシャットアウト。

 とにかく、一律平均値で祝福を、との強い要望の元ではあったけど、わたしも格差が出来るのは嫌だったので承諾した。

 わたしが表に出て、ナサニエル様には休養してもらったの。

 もう何年も、式典以外は姿を現していない神殿長が見えなくても、特に不思議に思われていないのは幸いだった。


 ところで、王族の身分を与えるかなど、諸々を決める御三家会議の決議は、公爵の委任状を持つ代理人で行われた。

 会議の前におじい様が招かれていて、王のご落胤の証拠の品である、王家の紋章入りの指輪と手紙を提出したんだって。

 物的証拠は大事ですよ。この世界じゃDNA鑑定が出来ないんだから。

 そして結論として、王の血筋である事は認めても、王族としては扱わない事になった。

 まぁそうでしょうね。傍系として扱える条件も揃ってないし。

 そして伯爵位への格上げと、聖女としての身分保障が決められた。


 そして先日、ヴィンスリ―子爵夫妻と前当主、そしてロイド男爵夫妻が、王宮にて国王の拝謁が叶った。

 時期外れとはいえ、王都に住む多くの貴族が集う中、おじい様が二代前の王の落胤である事、両家がその血筋であると公式発表。併せて伯爵位への叙爵がなされた。

 御三家会議での決定後、異例のスピード叙爵です。


 王に拝謁できる最低ラインの伯爵位への陞爵(しょうしゃく)

 我が家は二階級特進ですよ!

 聖女を輩出した功績がなんとか、取って付けたような理由が述べられたそうだけど、まあ名誉だけの伯爵位らしい。

 領地も役職もないけど、国からの配当金は身分にふさわしく増えるそうだ。それは助かるよね。

 しかし元々ロイド男爵は一代男爵で、平民に毛が生えた程度。それが伯爵ですよ、伯爵!

 父さまがロイド伯爵……。うん、あんまり深く考えないでおこう。


 国王の意向としては、血筋を認め、爵位も上げたんだから王家に味方してね、て感じらしいわ。

 王太子殿下が言いだした、わたしを養女にする件を諦めてもらう代わりに承諾したそうだ。

 別に王家に反する理由もないしね。

 今回、どっちがより希望に添えたのかしら。

 本当はわたしに話してくれた他にも、何か条件とか要求とかあったんじゃない?

 でも訊いたところで教えてくれるはずもないので、今は父さまや伯父さまの動向を見守るしかないのよね。


 ちなみに、わたしの王宮でのお披露目は、社交シーズンの始めになった。

 つまり冬、冬至の季節上旬です。


 爵位は上がったけど、邸は現状のままに。

 ロイド家はさすがに、伯爵の身分にふさわしい邸宅への引っ越しを勧められたそうだけど、大切に育てた薬草畑があるし、子供たちもやって来るしで移る訳にもいかないよね。

 その代わり、警備が更に厳重になり、使用人さんが増える事になったけど、人選に時間がかかりそう。

 聖女の生家だから、念入りにふるいにかけられるとか。

 それ以前に、あの狭い我が家のどこに多くの使用人さんを配置するんだろう。


 花壇教室はまだ続いている。

 自称付き添いの大人は減ったそうだけど、勉強と農作業は今まで通り。

 ただ、グリン君が提案したことを、ヴィンスリ―商会で担当者になった人たちと話を詰めている。

 本当に工房を新設するらしい。

 聖女お披露目のあと、グリン君と伝書鳥で少しやり取りして、見に来てくれたことへのお礼と、わたしの現状を知らせた。

 ちょっとグリン君がきょどってたな。


 我が家に一度帰りたいと思ったんだけど果たせなかった。

 帰れない代わりに、2日に一度やって来る父さまが、時々母さまとリオンを連れて来てくれたので、ほのぼの癒し効果を充電していた。

 わたしが倒れた時は、目が覚めるまで母さまがいてくれたんだけど、その後はまた自宅待機になってしまったから、会えた時の嬉しさ倍増だったわ。


 そして昨日、神殿からまっすぐ学園の寮へ移動。

 部屋が最下位の1階から最上階に転居となり、なんと、ビアンカ様のお部屋と秘密の通路で行き来出来る仕組みが作られていた。

 この建物、どうなってるの?


「わたくしと貴女だけがカギを開けられるのよ」


 ドアノブに魔石が組み込まれていて、個人識別登録をした。しかも高い魔力保持者でなければ扱えない高位の魔石使用で、セキュリティも万全とか。

 電子ロックよりも安全ですね。


 しかしまあ、部屋が広いし数もあるし、厨房付きだし。

 それに対して、住人がわたしとエイダさんとシリンさんだけ。

 ――と思っていたら、新しいメイドと護衛騎士が追加されるという。


 メイドその1、エイダさんの娘、ダリアさん30歳。

 まぁアラサーね! 子育てからの職場復帰にこちらを選んでくれたそうです。

 やっぱり似ているわ。エイダさんが引退した後を引き継いでくれるんだって。


 メイドその2、ララさん……。

 生きてたー! 無事だったんですね!と涙目で喜んだら、ものすごく恐縮されて、平身低頭謝罪された。


「ララは、ハノーヴァ候の間者でした。家の借金を肩代わりしてもらう代わりに、ロイド家の情報を流していました。ただ、内情を探るようなものではなく、日常の出来事を報告するくらいだったようです。先日こちらに素性がバレて、侯爵側に縁を切られたそうです。それを拾い上げたのですが、契約魔術に署名済みの上、お嬢様のメイドとして改めて採用となりました」


 淡々と説明するエイダさんがちょっと怖い。二度目はない、と言外に威圧するかのよう。

 ララさんも承知しているのか、


「アストラス神に誓って、お嬢様に誠心誠意お仕えいたします」


 と、両手を胸の前で交差させ、頭を下げる恭順の意を示してくれた。

 もう急に仕事に来れなくなったという説明だけだったから、深読みして最悪の事を想像してた。

 とにかくこうして再会出来て良かったわ。


 それから女性の護衛騎士、イリアさん。

 シリンさんより年上の28歳。こちらもアラサー。

 少し日に焼けた、筋肉の盛り上がりもステキな肉体美の持ち主。薄紫の髪の色とのコントラストがきれい。

 騎士候の家の出で、人材派遣ギルド登録のフリーの護衛だという。


 そういえば、シリンさんは専属が決まるまで、というお約束だったけど、その辺はどうなっているのかしら?と尋ねたら、


「任務継続です。わたくしはこのままお傍でお守りしたいと思っているのですが」


 変更はないようです。慣れ親しんだ方がいてくれるとほっとします。


「良かったわ。これからもよろしくお願いします」


 にっこり笑顔を向けたら、跪かれた。この生真面目さんめ!

 しかし、仕事に真面目だという点では、イリアさんも同じだった。


「お願いがあるのですが。お嬢様をお守りする同僚として、お互いの実力を知っておきたいと思います。シリン殿が承諾して下ればの話ですが、どうか、一度手合わせをする許可を頂けないでしょうか」


 剣術の腕試しってことですか?

 騎士コースの訓練さえ見たことないし、女性騎士同士の手合わせ! ぜひ拝みたいです。


「お互いがそれで信頼して仕事が出来るのであれば、わたしは構わないです。シリンさんはいかがですか?」


「願ってもない事です」


 返事に迷いがない。剣士って人の剣技や実力を知りたい熱が高いのかな。


 ということで、ピエール様に連絡して、騎士コース訓練場を使わせてもらうことになりました。

 あ、そういえばお料理人さんがいないわ。


第三章開始です。

前半:現在の状況

後半:復帰前のこと


次回、女性剣士同士の練習試合です。

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