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04.ヴィンスリ―とロイド [改]

 ヴィンスリー男爵家とは、父の実家です。


 平民でも扱える生活に密着した魔導具を、製造販売する商会を運営していて、輸出業も手掛けているという。

 その兼ね合いもあって、国外にも何店舗か支店があるそうです。

 なかなか繁盛しているみたいね。


 ハロルド伯父さんは男爵家の後継ぎだけれど、貴族というよりは商人寄りの人。

 爵位を継承した時に子爵に格上げされる予定だそう。

 事業が成功していて、国に多額の税を納めているとか、色々功績を認められたからだと。


 父はヴィンスリー商会で魔導具を作る人。

 魔力は少ないけれど、魔導具師としてはそれなりに優秀で、将来性も買われているようです。

 魔導具作りが好きで、弟子入りした師匠の孫が母のアイリスなんですって。


 母の実家は、祖父ラルフが魔導具作りで功績があったことで、平民から一代男爵に叙せられロイド男爵を名乗っていた。


 母の両親は早くに亡くなっていたから、祖父と孫娘二人暮らしで、あとは数人の従業員を抱えた工房を構えていたところに、曲がりなりにも貴族の次男坊が弟子入りしたので、外野から色々言われたらしい。

 しかも、ハリスとアイリスが心を通わせ婚約したことで、余計にややこしくなったとか。


 ラルフが(わたしからしたら)五十代(という若さ)で病がちになり、先行き不安になったところ、商売仲間であり友人のヴィンスリー男爵ハイドが一肌脱ぎ、あちこち根回しして、ロイド男爵家に貴族令息である父が婿入りして継承できるようにしてくれたそうです。


 ハイドはハロルドとハリスの父親。ということはわたしのおじいちゃんだね。

 いまだ会ったことないけど、どんな根回ししたんだろう。

 『マネーロンダリング』ならぬ『爵位ロンダリング』でもしたのかしら。

 そういうのがあるのかどうかは知らないけどねー。

 まあ、さすがは高額納税者? 会うのがちょっと怖いかも。


 そういった手回しがされた後、孫娘の行く末に不安が少なくなってほっと一安心したのか、回復傾向だったラルフ(ひいおじいちゃん)が突然死した。

 保護者を失った母、当時十六歳。

 一年喪に服して、十七歳で十八歳の父と結婚した。そして同時に爵位を継承したという。


 日本でいえばまだ高校生だよ。そんな若さで頼みとなる大人を失ったわけよね。

 この国では十六歳で成人(早っっ)だっていうから、子供ではないんだけど、でもねぇ。

 自分自身に置き換えてみると、心細さは半端ないって。


 成人して結婚して独立しているから、あまりヴィンスリーの実家にも頼れなかったみたい。

 男爵位を継がせてくれたこと、いま家にいる執事さん、メイドさん、料理人を派遣してくれたことで、もうそれ以上はって遠慮があったんだろうなぁ。

 ただメイドのエイダさんは、元々()()()()()()()付きメイドさんだから、率先してきてくれたんだそうです。


 しかしこういう込み入った話をさぁ、一歳児に聞かせるかなぁ。

 まぁわたしは中身三十歳ですから、なるほどとコクコク頷きましたけどね。

 それが面白かったのか、その後も大人対応の話を普通に、本当にふっつーに話して聞かせるハロルド二十六歳。

 自分ちの子供にもそんな感じなんですか!?ってツッコミ入れたい。


 でも、後でちゃんと魔導師の先生を紹介してくれたあたり、良い人ではあるんだろう。

 ……たぶん。



 その後ハロルド伯父さんは、時々我が家にやってきては、わたしにこの国のこととか、商売の話とか大人同様に話して聞かせてくれる。


 あなたは社会学の教師ですか!?


 そしてお土産くれたり、他の家庭教師をつけてくれたり、色々我が家を気にかけてくれている。

 ここは素直にお礼を言いたい。


「ハリーおじしゃま、いつもありがとう、ごじゃいます」


 ハリーってハロルドの愛称ね。

 幼子らしく、カミカミでお礼を述べ、いつになくニコーと笑顔を向けると、伯父はふんと鼻を鳴らす。


「先行投資だ」


 ……あ、そうですか。

 もしかして、いずれ政略の道具にしようとか考えてます?

 こんな可愛らしい幼児ですし? 両親とも美形だからきっと美人になるだろうしね?

 さらに魔力高めだったら底辺男爵の娘っていっても、結構な良縁掴めそうって?

 へぇ?


()()()()()()()ってなんでしゅか?」


 わざと聞き返してやったよ。

 だけどそれに慌てたのは伯父ではなく両親でした。


 気が弱く、詰めの甘いヴィンスリー男爵家の次男坊は、ロイド男爵という地位はあっても、兄に頭が上がらない。


 残念イケメン。でもわたしは好きです。

 わたしの両親は癒し系ですから。


 十八歳と十七歳で結婚して、一年後には父と母になって。

 不安だったろうね。大変だったね。いや、今も大変か。

 でもなんでかわたしの両親はいつも幸せそうな笑顔でいる。


 いつまでも小さな幸せをかみしめて、ほのぼのと平和に暮らしていきたいね。

 伯父の政略の道具にされるかもしれないのは(しゃく)に障るけど、いつか良いとこのお坊ちゃま掴まえて恩返しするね。

 美佐子としては親孝行出来ずに終わったから、その分も。


 しかし、わたし、どうやって死んだんだろう。

 これはいまだに分からない。




7歳で洗礼を受けお披露目。

そのあと学校を卒業して16歳で成人。

20歳までに結婚とか婚約する世界。


昔の日本でも14~15歳で成人ですぐ結婚とかして、寿命が50歳前後だったからねぇ。

いまではちょっと考えられませんよね。

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