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出合序曲

首都女子大学付属女子中学校の校舎の廊下の片隅で葵奈愛美(あおいな まなみ)葵奈幸美(あおいな ゆきみ)は折り畳み式のスマホを見ていた。二人は一卵性の双子姉妹で首都女子大学付属女子中学一年生であり入学して間もなかった。愛美は葵奈家の四女で、幸美は五女であり、学年学級も一年A組と二人そろって同じであった。二人が見ているスマホは愛美の物である。二人の周辺は昼休み時間であるためか他の生徒(女子だけだが)が往き来している。首都女子大学付属女子中学校、高等学校の制服は指定された種類の中から好きな型、色、模様を選択して着用が可能だった。指定制服にはセーラー服、ブレザー、両者の間の子であるセーラーブレザーがあり各教室には指定の制服、体操服、水着を掲載したカタログが数冊置かれている。もちろん体操服も水着も学校指定の中から好きな型、色、模様、組み合わせを選択して着用が可能で入学時のみならず購買部でも購入可能で中にはその日気分で制服の型や色、組み合わせを変えて着用して登校する者もいる。愛美と幸美が着用している制服はセーラーブレザーで色は青色系、制服のスカートは青色系のチェック柄、リボンネクタイは赤色で髪型は愛美がシニョンヘアーでお団子に丸めた部分にシニョンキャップを左右両方に被せていてチャイナ風にしている。幸美の髪型はツインテールのショートであった。二人の前髪の先端は眉から1センチ余りあけている。通りかう女子生徒の中には二人に声をかける者もいる。

「愛美、幸美、部活は何にするか決めた?」

「良かったら私と同じバレー部に入らない?」

「チアーリーディング部はどう?」

「バスケット部はどう?」

しかし二人は入部を決めている部があるので首を横に振り断る。

「ごめーん、水泳部の飛び込み競技部門に決めているの」

「飛び込み競技で推薦入学したから、お姉ちゃんも同じだし」

声をかけてきた生徒達は、

「そうなんだ、仕方ないなあ」

「出来たら助っ人してくれたら嬉しいなあ」

と、返すしかないのだった。スマホに夢中になっている二人に声が降り注がれた。

「愛美、幸美、お前ら何を見ている?」

声の主は葵奈家の三女で愛美と幸美の三姉、葵奈洋美(あおいな ひろみ)だった。洋美は首都女子大学付属女子中学校(以後は首女中と呼称)の二年生で学年学級は二年B組であり部活は愛美、幸美が入部を決めている水泳部飛び込み競技部門であった。洋美の制服は愛美、幸美と同じ組み合わせで髪型はポニーテールのショートである。洋美の前髪の先端も愛美、幸美と同じく眉から1センチ開けられている。愛美、幸美は慌ててスマホの画面を谷折に閉じてスリープモードに切り替えた。

「ひっ、洋美姉ちゃん、びっくりするじゃん」

「なっ、何よ、見ないでよ」

愛美と幸美は洋美から逃げるように退散した。

「あ〜危なかった」

「友美姉ちゃんに知れたら平手打ちのと鉄拳の嵐よ〜」

友美(ともみ)とは洋美、愛美、幸美の二姉で葵奈家の二女、首女中三年A組である。友美も水泳部飛び込み競技部門であるが泳力および運動能力は三人の妹に比べると劣る。しかし頭が上がる相手ではない。怒らせると平手打ちと鉄拳が飛ぶほど猛烈に恐い。しかも異性との交際を友美に禁止されているので洋美にばれる事は友美にばれるのと同じくらい危険なのであった。二人は一年A組の教室へ逃げ込んで再びスマホを見る。二人が見ているのはある男性とのメールのやり取りである。この男性の名は

三矢悠斗(みつや ゆうと)

であった。二人が悠斗とメールのやり取りするようになったいきさつは二人が首女中受験の合格祈願のために訪れた神社に吊るしてあった絵馬の札に悠斗の恋愛祈願を見つけた事だった。そこには悠斗のプロフィールとメールアドレスが書かれ記載されていた。当然その事は二人だけのトップシークレットである。

(何としてでも、この人の妹になりたい!もう友美姉ちゃんの妹ではいるのは・・・)


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一方、三矢悠斗も愛美、幸美とのメールのやり取りに夢と期待に心をときめかされているのだった。同時に宝くじも趣味であった。とある工場(悠斗の職場)の休憩ベンチでスマホを見ながらため息をつく。

(また、ハズレ・・・か・・・)

その三矢に彼の上司が声をかける。

「三矢、お前相変わらず好きだなぁ、宝くじが」

上司の言葉に悠斗はうなづいて答えた。

「はい、好きなんです。夢は非課税暮らしですから」

悠斗の答えに上司は、かか大笑する。

「ははは、そぉか、確かに宝くじの当選金は非課税だな。でも三矢、仮に一等が当たっても誰にも口外するな。何故かわかるな?」

「はい、無心する者、慈善寄付を装おって金品を騙し取ろうとする者、慈善団体や宗教団体を装おって脅す暴力団、反社会勢力などが現れる可能性があるからですよね」

「その通り、有頂天は禁物だ」

上司の言葉に悠斗は気持ちを引き締めてうなづいて思いを強めた。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


放課後になり帰宅部として下校する者各々の部活に向かう者などで首女中の一年A組の教室は慌ただしくなっていた。愛美と幸美は洋美を、待っていた。二人はお互いに悠斗の事は黙っておこうと確認し合う。やがて洋美が姿を現し二人に声をかける。

「愛美、幸美、今から水泳部に案内するから付いてきて」

愛美、幸美は洋美に連れられ部室のあるプールへと歩き出した。首女中の、校舎は八階建で一階は中等部一年、二階は中等部二年、三階は中等部三年、四階は高等部一年、五階は高等部二年、六階は高等部三年、七階と八階は地方出身者のための個人寮、八階の上は屋上となっていて消防法に基づいてエレベーターがある。校舎の側にはプラネタリウムドーム、食堂、購買部、コインランドリーがある。プールは可動式の屋根があり、50メートル競泳プール、飛び込みプールと規模が大きめでオールシーズン練習が可能である。放課後の部活時には他の学校の水泳部が練習に来て他流競技会となる事もある。一年前、洋美が一年生だった時には二年生だった友美が洋美を部室に連れて行ったのだった。部室の扉の前に着くと洋美はノックし報告した。

「葵奈です。新入部員、二名連れて来ました」

「入って来て」

部室の中から扉越しに友美の声が響いて来ると洋美は愛美、幸美と共に中に入る。部室の中には友美、友美のクラスメイトの井之上真美奈(いのうえ まみな)、三年B組の遠藤美幸(えんどう みゆき)、美幸のクラスメイトの宇都香織(うとう かおり)、洋美のクラスメイトの工藤美千代(くどう みちよ)津軽礼子(つがる れいこ)の姿があった。他に競泳部門や高等部の部員も何人か姿がある。友美の制服は洋美、愛美、幸美と同じ組み合わせで髪型はポニーテールのロングである。真美奈の制服は緑色系のセーラーブレザー、リボンネクタイは緑色、スカートは緑色系のチェック柄、髪型はロングヘアーでおでこはやや大きく出している。美幸の制服は青色系のブレザー、リボンネクタイは青色、スカートは青色系のチェック柄、髪型は真美奈と同じロングヘアーであるが頭部に白銀色のカチューシャを着けている。香織の制服は赤色系のセーラーブレザー、赤色のリボンネクタイ、赤色系のチェック柄のスカート、髪型は三つ編みである。美千代の制服は赤色系のセーラー服、スカートは赤色、髪型はショートヘアーである。礼子の制服は黄色系のセーラー服、スカートは黄土色、髪型は美千代と同じショートヘアーである。髪の毛の色は葵奈四姉妹が黒みを帯びた天然の栗毛色であり、真美奈、美幸、香織、礼子は黒色であり、美千代だけ天然の茶髪である。どの部員も皆、前髪の先端と眉の間は1センチ開けられている。部室に入るやいなや愛美と幸美は

「真美奈姉ちゃん、美幸姉ちゃん、香織姉ちゃん、二年生の美千代姉ちゃん、礼子姉ちゃん、それに高等部のお姉ちゃん、入部する事にしたのでよろしくね!」と息を揃えて挨拶をするが友美は即座に二人を叱り飛ばす。

「こらぁ!!!愛美!幸美!全くわかってないわね!上級生に対して、お姉ちゃんとは何なの!?その態度は!?」

友美をなだめるように真美奈が笑いながらさえぎった。

「まあまあ友美、押さえて、いいじゃない。私、先輩呼ばりされるのは好きな方じゃないわ、堅苦しいから」

美幸も笑いながら口添えする。

「私も同感よ、飛び込み競技のキャリアに関しては愛美ちゃん、幸美ちゃんが一番長いんだから、友美ったら苦労が絶えないわね」

香織も、

「友美って、お姉ちゃんが早く嫁いだから妹ちゃんの世話、嫌がおうでも強いられたのね」

と笑いながら口添えするのだった。美千代も、礼子も、高等部の部員達もクスクス笑っている。友美には2つ歳上の長姉で葵奈家の長女、歩美(あゆみ)がいる。しかし早くから、許嫁と同棲し15回目の誕生日に第一子である長女、依沙美(いさみ)を出産している。通っていた中学は首女中ではなく普通の市立中学である市立榊台中学校だった。依沙美を出産した場所は産婦人科の病院ではなく通っていた市立榊台中学校の保健室だった。今、依沙美(友美、洋美、愛美、幸美から見れば姪)は、もうすぐ二歳で、母親である歩美のお腹には第二子を宿しており、お姉ちゃんになることが決まっている。愛美と幸美が飛び込み競技を始めたのは幼稚園年少組だったころからで年中組だった洋美も同時に始めた。しかし歩美は飛び込み競技には一切ノータッチで、友美は一年生だった二年前から大きく遅れるかたちで始めたのだった。真美奈、美幸、香織も友美と同じ時期に始めている。きっかけは香織の母親が経営する茶道教室に真美奈、美幸、葵奈姉妹が顔を出した時だった。友美はその時の様子を思い出し回想にふけりだした。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


話は二年前、友美、真美奈、美幸、香織が首女中に入学して間もない頃にさかのぼる。その時、洋美と美千代、礼子は小学六年生、愛美と幸美は小学五年生であった。友美は三人の妹、真美奈、美幸と共に香織の母親が経営する茶道教室に顔を出していた。

「真美奈姉ちゃん、一緒に飛び込み競技やろうよ」

愛美と幸美が真美奈に声をかけるのを見て友美はたしなめた。

「こらぁ!!愛美!幸美!真美奈は良いとこのお嬢様よ」

真美奈は資産家、井之上の令嬢である。彼女は兄弟姉妹は無く一人っ子でもあるのだった。飛び込み競技は危険が伴う競技で一つ誤ると大怪我は免れない。運が悪いと生死をさまよいかねないのだ。万が一、死亡事故となったら重大な責任問題は火を見るよりも明らかだ。友美が心配し怒るのも無理はない。しかし友美の心配をよそに真美奈は興味深く面白そうだわといった口調で笑いながら口を開く。

真美奈:「うふふふっ、愛美ちゃん、幸美ちゃん、そんなに飛び込み競技って楽しい?」

愛美:「うん、入水時の衝撃がスリルなの、特に高飛び込みの」

幸美:「幸美の得意種目は愛美とのシンクロナイズドダイビングよ」

真美奈:「高飛び込みって何㍍からの高さからなの?」

愛美:「一番高いので10㍍よ」

真美奈:「それよりも高いのは無いの?」

愛美:「日本国内ではないよ。でも海外では30㍍の高さから飛び込む超ハイダイブと言うのがあるみたい。テレビでやっていたみたいたけど」

真美奈:「そうなんだ。私、飛び込み、体験してみようかなぁ」

愛美:「真美奈姉ちゃんはどのくらい泳げるの?」

真美奈:「全く泳げないげど、何㎞以上泳げないと駄目なの?」

愛美:「25㍍は最低でも」

幸美:「飛び込みプールは深さ5㍍だから」

真美奈:「えっ!たったそれだけでいいの?何か拍子抜けしそうだわ」

愛美:「真美奈姉ちゃん、まずは25㍍泳げるようになろうよ」

幸美:「急いては命取りよ、真美奈姉ちゃん」

真美奈:「私、25㍍泳げるよりも愛美ちゃんと幸美ちゃんに高飛び込みの特訓を受けたいのよ。どれぐらい厳しくしごかれても良いから溺れ死ぬつもりで飛び込み競技をやりたいのよ!」

美幸:「うふふふっ、真美奈ってヤル気満々ね。その気なら私も飛び込み競技やらせて頂こうかしら」

真美奈だけでなく美幸まで飛び込み競技をやりたがるようになった為、友美は新たな不安に悩まされた感覚に襲われた。美幸も資産家の令嬢の一人っ子で兄弟姉妹はいない。

友美:「大丈夫かしら?ケガしなければ良いのだけと心配でならないわ」

香織:「友美、真美奈と美幸の事は洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃんに任せておけば良いじゃん」

心配する友美に香織は落ち着かせた。こうして真美奈と美幸は洋美、愛美、幸美が通う飛び込み教室の現場を覗く事にした。友美も香織も見学者として付き添う事にした。最初は見学のつもりに思えたのだったが、女子更衣室に洋美、愛美、幸美が水着に着替える為に入ろうとすると真美奈は呼び止めるように声をかけた。

「洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃん、私、水着で見学させてほしいの」

「私も同じよ」

真美奈につられたのだろうか、同じ事を考えていたのだろうか、美幸も声をかける。そんな二人の言動に洋美、愛美、幸美は呆気に取られてしまうが二人に促され更衣室に入る。その後ろ姿を友美と香織は見送るしかないのだった。

(怪我の無いようにありたい)

友美は祈るような気持ちだった。飛び込み教室の現場である飛び込みプールサイドに受講生たちや講師の前に真美奈と美幸は洋美、愛美、幸美エスコートされるかたちで現れると資産家の令嬢らしく、おしとやかに挨拶するのだった。真美奈、美幸が着用している水着は紺色のワンピース型の競泳用で派手さはなくオーソドックスなデザインでスクール水着との違いは無く地味であったが、見えない資産家の令嬢としてのオーラのためか講師や受講生達は目が点にになっていた。何はともあれ、受講生に混じって洋美はソロで、愛美と幸美はシンクロで飛び込み競技の練習に勤しむ。真美奈と美幸は入水時の姿勢に目が釘付けになった。その二人に講師が微笑みを浮かべながら声をかけた。

講師:「飛び込み競技の経験ありますか?」

真美奈:「無いですけど、これからやりたいと思っていますわ」

美幸:「私も同感です、飛び込みの型、色々あるみたいですけど、基本はどのような型ですか?」

講師:「基本は前飛び込みの伸び型101A、後ろ飛び込みの伸び型201Aでしょう」

真美奈:「洋美ちゃんに手本を見せてもらおうかしら」

美幸:「そうね」

そこへプールから上がった洋美が水滴を滴らせながらやって来た。

真美奈:「洋美ちゃん、101Aを見せてちょうだい」

洋美:「オッケー!よくみてね」

洋美は快く返事をして五メートルからの101Aを演技した。

美幸:「洋美ちゃん凄い!今度は201Aを見せてちょうだい」

真美奈と美幸の要望に洋美は快く答え201Aを演技する。

真美奈:「私、今やりたい!」

美幸:「私も今やってみたい!」

こうして真美奈と美幸は洋美、愛美、幸美の手ほどき受け飛び込み競技にのめり込んでいった。

(真美奈姉ちゃん、美幸姉ちゃん、以外と運動神経、強いんだ、上達早い)

香織も、そして友美も飛び込み競技の世界へ誘われていったのだった。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「さあ、これから着替えて練習を始めようよ」

高等部の部員の声が部室内に響き、友美は回想から現実へと引き戻され我にかぇった。部室達は制服を脱いで水着に着替え始める。愛美も幸美も水着に着替え、水泳部員達はプールサイドへと移動した。

「幸美、シニョンキャップ、外して」

「オッケー、愛美」

幸美が愛美のシニフォンキャップを外していると、友美が二人に声をかける。

「愛美、幸美、他に入部を希望する者はいないのか?」

「いないよ、それどころか他の部から誘いがあったよ」

愛美の返答に幸美も添える。

「バレー部、バスケ部、チアー部、色んな部から誘いがあったよ」

「そうなの・・・他の部から引き抜くしかないか・・・」

友美が難しい顔をしていると真美奈と美幸が声をかける。

真美奈:「友美、どうしたの?」

美幸:「難しい顔をしてどうしたの?」

友美:「新入部員が愛美と幸美の二人だけだから、どうやって部員を獲得したら良いのかなのよ。他の部から引き抜く方法を考えたいのだけと」

真美奈:「他の部からだったら入部希望者が多過ぎて悩んでいる部に頼んで、余剰部員をまわしてもらうのは、どうかしら?」

友美:「それもそうだけど、頼めるかなぁ?」

美幸:「それなら他の体育系の部に、良かったら汗流しに一泳ぎしていかない、と声を掛けて泳がせてあげて誘って引き抜いたら良いじゃん」

真美奈:「そぉね、それも1つの手として良いかも」

やがて、プールサイドに水泳部の顧問で友美と真美奈の担任教師、菊池由利(きくいけ ゆり)が現れ、水泳部員に声をかける。

「みんな、今日も練習、頑張ろう」

彼女は保健体育の教師で首女中、首女高、首女大の出身でもあり体育の授業に飛び込み競技を取り入れた人物である。当然、練習の厳しさは尋常ではない。洋美、美千代、礼子が入学した年度から首女中と首女高の全学年の体育の授業に飛び込み競技が正式になったのだった。

「入水はノースプラッシュを心掛けるように!」

菊池の声で部員達は練習に勤しみ出す。友美は真美奈と、美幸は香織とペアを組んでシンクロダイビングの練習を。礼子、美千代、洋美はソロでの練習を始める。高等部の部員達も練習を始める。愛美と幸美もシンクロダイビングの練習に入るべく列に並ぶ。愛美が幸美の耳元でささやく。

「悠斗さんとのメールのやり取り、バレてないね」

「うん、大丈夫だと思う。このまま大丈夫だと良いね」

幸美は愛美と見つめ合ってうなずく。

一方、友美は愛美と幸美の動向を忘れ、洋美と共に一人の少女の事を気にかけていた。その少女は友美の小学時代の同級生で中学は長姉の歩美が通っていた市立榊台中学に通っている。彼女の名前は、七島加代(ななしま かよ)である。洋美が友美に加代の事を気にするように声をかける。

「友美姉ちゃん、加代ねえ大丈夫かなぁ?最近、連絡取り合えてないようだけど」

「そおね、最近、久しぶりにメール入ったけど深刻な問題事が出来たみたい。洋美、一度、加代の自宅覗かない?暇を探して」

「そおね、愛美と幸美にも声をかけておこうかな」

また一方、顧問の教師の菊池も部員の練習をみまもりながら心配の表情を微かに表している。

(悠真、まだ見つからないのかなあ?本来なら私と首女中、首女高、首女大で一緒に勉強するつもりだったのに、行方不明になって十年以上たつけど、生きてるかな?死んでいなければ良いのだけど・・・)

菊池が気にかけているのは同い年の女性だった。その女性は首女中に入学したが入学して間もないうちに行方不明になっていて生死が判明していないのだった。その女性の名前は牟田内悠真(むたうち ゆま)であった。当然、彼女の家族は警察に捜索願いを出していて、警察も懸賞金をかけての捜索を続けているが一向に見つからないのだった。菊池が体育の教師として首女中に赴任したのは悠真が無事に帰って来たときに首女中の生徒として学ばせてあげたい思いがあった為であった。そんな菊池に洋美が声をかける。

「菊池先生、何か浮かない顔をしているようですけど、何か気になる事があるのですか?」

「実は私と同い年の同級生で行方不明になっている人がいるのよ」

「えっ!行方不明に?いつからですか?」

けげんそうな口調で洋美がたずねると菊池は悲嘆に暮れた顔で話す。

「そぉね、私が首女中に入学して間もない時にだから十二、三年は経つかしら・・・」

「え〜っ!そんなに?それでは、義務教育を受けずに大人になってしまう事を意味しているじゃないですか、体は菊池先生と同い年の大人でも頭脳と心は、まだ私達と同じ中学生ですよね!?」

「その通りなのよ、どんなことがあっても首女中と首女高で学ばせたいのだけど本人はどうか、在校生はどう思うか・・・」

やがて会話は友美に関しての内容になった。菊池が洋美に友美の事をたずねる。

「ところで、お姉ちゃん、どう?優しい?」

「友美姉ちゃんですよね、怒ったらメチャメチャ恐いですよ、すぐ平手打ちが飛ぶぐらい。愛美と幸美、泣いてばかりです」

「あらあら、私からも注意した方が良いかしら?」

「菊池先生からも御願いしたいですよ。何だったら友美姉ちゃんに怒る時に平手打ち食らわして下さい、何千発、何万発でも構いませんから」

洋美の要望に菊池は、呵呵大笑する。

「あははっ、それじゃ体罰になってしまうわ。まるで太平洋戦争時代の旧日本空軍の予科練みたいじゃん。運悪ければ教師生命が危うくなるわ。ひと昔だと教師の体罰は日常茶飯事だったらしいけど、今はそういうわけにはいかないのが現状なんだよね。時代が変わっても良きもものは残し、あしきものはなくすのが良いのだけどね」

練習で時間が流れ下校時刻が近づいて来ると練習は終わり部員達は下校のため制服に着替えた。着替え終えると部員達は挨拶して帰路につく。津軽礼子だけは校舎内の個人寮へ戻る。礼子は青森県の出身で首女中に入学した一年前から実家を離れ寮生活しているのだった。校門の外には白と黒の高級セダンが二台、ハザードランプを点滅させて停車している。白は真美奈の、もう一台の黒は美幸の迎えだった。

「じゃあ、美幸、香織、友美、洋美ちゃん、美千代ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃん、また明日」

真美奈が挨拶する。美幸も香織も、葵奈姉妹、他の部員達に挨拶する。

「また明日、今日は4月7日月曜だから明日は火曜」

「バイバイまた明日もね」

真美奈と美幸は挨拶を済ませると、それぞれの迎えの車に乗る。葵奈姉妹を始めとする残った部員達は近くのモノレール駅『首女大付属校前』まで歩きだす。首都女子大学と付属の首女高、首女中がある場所は京浜方面にある『首都学園埠頭』と呼ばれる埠頭の中にあり学園埠頭モノレールが伸びている。当然、埠頭には車が出入りするための自動車道路があり、それと平行する形で歩行者および自転車が通行する専用道路もある。真美奈と美幸の送迎車は埠頭に出入りするための自動車道路を通っている。部員達はモノレールに乗る。その車中では愛美と幸美が窓の景色を見てはしゃぎだした。

愛美:「あっ、真美奈姉ちゃんの車だぁ!」

幸美:「美幸姉ちゃんの車も見える!」

友美と洋美は呆れ顔で二人を横目に友美の小学時代の同級生、加代の事を話し合いを続ける。加代の自宅は葵奈姉妹の自宅からは首女中と方向は正反対であり、会う機会を作りにくい。おまけに葵奈姉妹は四人そろってグラドルもやっていてDVD、Blu-ray、写真集も出している。やがて幾つかの駅を通りすぎ葵奈姉妹は自宅からの最寄り駅でモノレールを降り自宅へと歩きだす。自宅がある閑静な住宅街に入って間もなく葵奈姉妹は一組の親子とかち合う。その親子は葵奈姉妹の長姉、歩美と歩美の長女で姪の依沙美だった。歩美は腹を大きく脹らませて四人に声をかける。

「友美、洋美、愛美、幸美、今帰り?」

二歳の依沙美も話し方を覚えて間もない口調で四人に声をかける。

「友美おばちゃん、洋美おばちゃん、愛美おばちゃん、幸美おばちゃん、依沙美はママと一緒に、じいじとばあば、勝幸おじちゃんに合いに行くの」

葵奈姉妹には小学五年生の弟、勝幸(かつゆき)がいる。葵奈家は八人家族であるが長女で第一子の歩美が許嫁と同棲しているので自宅で暮らしているのは7人である。四人姉妹の顔は沈痛の表情をしていた。友美は声を出す。

「そうよ、お姉ちゃん」

「帰りよ、歩美姉ちゃん」

と洋美、愛美、幸美は口を揃えて言う。六人は葵奈家へと歩きたどり着く。

「ただいま」

葵奈五人姉妹が口々に言うと姉妹の母親、葵奈育美(あおいな いくみ)

「お帰り」

と言って迎える。その日の夕食は葵奈家で取る事になった。翌日の4月8日は育美、歩美、依沙美の誕生日で、それぞれ32歳、17歳、2歳になるのであった。食事が終わって歩美と依沙美は育美とひときり話したあと歩美の嫁ぎ先へと帰っていった。食事の後、幸美と愛美、洋美と友美の順に入浴を済ませ葵奈四姉妹は四人の部屋で明日の授業に備え宿題をした。四姉妹の部屋は自宅の二階の南側にある。弟の勝幸の部屋は北東側、両親の部屋は北西側にある。やがて就寝時間になり四姉妹は二つある二段ベッドで寝る。片方の二段ベッドに友美と洋美が、もう片方に愛美と幸美が寝るのだった。夜中の就寝中に幸美は目を覚ますのだった。

(トイレに行きたくなった)

幸美がベッドから出て部屋の扉のドアノブに手をかけた時、愛美も目を覚ました。目を覚ますないなや愛美は幸美にささやく。

「幸美、トイレ?愛美も行く」

愛美と幸美は友美と洋美を起こさないように部屋を出てトイレに向かう。用便を済ませて部屋へ戻ろうとした時、幸美が愛美の手を取り声をかける。

「ねぇ愛美、幸美なんか眠れそうにないわ」

幸美は愛美の手を取って話す。

「そう?愛美も同じよ、幸美」

「愛美、一緒に寝ない?同じベッドの段で」

「良いよ、ところで幸美、悠斗さんとのメール、返事した?」

「うん、したよ、友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんに気付かれないようにね。愛美、抱き合って寝ようよ、キスしながら」

二人が話し合っていると洋美が部屋を出てトイレにやって来た。話し合っている愛美と幸美に声をかける。

「愛美、幸美。二人ともそこで何しているの?明日も早いから早くベッドへ戻って寝ろ。寝坊したら友美姉ちゃんに顔を平手打ちで叩かれるぞ。私、何回も叩かれているんだから」

洋美に促され愛美と幸美は部屋に戻り同じベッドの段で抱き合い口付けを交わしながら一緒に寝る。洋美がトイレで用便を済ませ部屋に戻ると今度は友美が目を覚ました。

「洋美、トイレに行ってたの?」

「そうよ、愛美、幸美もトイレに行ってたよ」

友美は愛美と幸美が同じベッドの段で一緒に寝ているのを見て洋美にささやいた。

「こう見ていると、愛美と幸美、二人は双子だなあと改めて感じるよ」

「そうね、一卵性だから。まるで二人の前世は夫婦かも知れないわ」

友美、洋美もベッドに入り再び就寝する。

そして翌朝の4月8日火曜日、洋美が一番早く目を覚ます。洋美は真っ先に愛美と幸美を起こそうと声を上げる。

「愛美!幸美!起きろー!朝だぞー!」

しかし、寝起きの弱い二人は起きても寝言をぼそぼそと口にする。

「いい加減に目を覚ませ!」

洋美の声で友美が目を覚ますと洋美は愛美と幸美を促す。

「ほらほら友美姉ちゃん起きたぞ!平手打ちの嵐が来るぞ」

友美は背伸びしながら口を開く。

「洋美、愛美、幸美、起きたか〜」

四姉妹は朝食のため一階の台所に向かうため部屋を出る。同時に弟の勝幸も朝食のために部屋から出てきた。

「友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、愛美姉ちゃん、幸美姉ちゃん、いま起きたんだね」

四姉妹と勝幸は朝食を済ませると歯磨きをして制服に着替え登校の準備を急いだ。

「洋美、愛美、幸美、出るよ」

友美は三人の妹を促して自宅を出て駅に向かって歩き出す。やや広めの道路に出て数分後、四姉妹の背後からクラクションが響きわたった。四人が振り向くと白と黒の二台の高級セダンが近づいていた。二台の後部座席の窓から真美奈、美幸が顔を出し四姉妹に声をかける。

「友美!おはよう。乗っていかない?」

白のセダンの後部座席の窓から真美奈が声をかけると黒のセダンの後部座席の窓から美幸も四人に声をかける。

「おはよう!四姉妹揃っての登校ね、乗っていかない?」

四姉妹は話し合って分乗する事にした。真美奈の車に友美と愛美が乗り、美幸の車に洋美と幸美が乗った。こうして四姉妹を乗せた二台は首女中へ走り出した。真美奈の車の中では助手席に座った友美が運転手に挨拶する。

「おはようございます。ありがとうございます」

「いえいえ、葵奈家の友美お嬢様、愛美お嬢様、お二方の事は我が井之上家の真美奈お嬢様からお伺い致しております」

友美が振り返って後部座席を見ると愛美が真美奈を膝枕にして寝ているのだった。友美は呆れる口調で怒る。

「こら愛美!真美奈を膝枕にして!もう何を考えているの!?」

友美がたしなめると真美奈は笑いながら友美をなだめる。

「まあまあ、友美。愛美ちゃんは私の膝が寝心地良いのかしら」

一方、美幸の車の後部座席では幸美が美幸の膝で寝ているのだった。

こうして二台の車は首女中の校門近くに到着し葵奈四姉妹と真美奈、美幸は車を降り校門を通過して校舎に入に入った。友美、真美奈、美幸は三階に、洋美は二階へと上がり、愛美と幸美は一階の1年A組の教室へと入った。1年A組の教室内では何人かの生徒が制服や体操服、水着が掲載されているカタログを見ていて、また何人かの生徒が談笑を楽しんでいる。カタログを見ていた何人かの生徒が愛美と幸美に声をかける。

生徒A:「愛美、幸美、体操服の下は、どれにした?私は白のシングルラインが入った赤の短パンなの」

生徒B:「私は黒のスパッツにしたけど」

生徒C:「私は緑色の無地の短パンだよ。緑が好きな色だから」

愛美:「体操服の下?愛美は無地の紺ブルよ」

幸美:「幸美も無地の紺ブルよ」

生徒A:「えっ!?それって・・・紺色のブルマ?」

愛美:「そうよ!」

幸美:「グラドル活動で履く事、多いから」

生徒B:「恥ずかしくはないの?」

愛美:「はぁ!?恥ずかしくはないのって?愚問よ、水着の上に体操服のシャツを着るような感覚だと思えば何ともないわよ」

幸美:「ブルマは女子力フルブーストで敏捷性アップの必須アイテムだもん。他の学校じゃあ短パン、ハーフパンツしか無いらしいけど何でブルマがほとんど無くなったのかが全く不思議でならないわ」

生徒A、B、C「そっ、そぉーかねぇ?」

やがて、始業のチャイムがなり1年A組の担任教師、池澤瑠美菜(いけざわ るみな)が教師に入って来て朝のホームルームが始まった。池澤は英語科の教師でチアーリーディング部の顧問をしている。彼女も菊池と同じ首女中、首女高、首女大の卒業生である。

「皆さん、おはようございます。これから出席を取るから返事してね、まずは、葵奈愛美、幸美」

「はーい!」

愛美と幸美は同時に返事する。

「赤木ほのか」

「はい」

「石澤優子」

「はい」

「加藤麻友留」

「はい」

出席が終わると一時間目の英語の授業になった。

☆☆☆☆☆☆☆

校舎の二階に上がった洋美は二年B組の教室に入り美千代と礼子に挨拶を交わした。

洋美:「おはよう、美千代、礼子」

美千代:「おはよう、洋美。今日も姉妹揃って登校なの?」

洋美:「そうよ。途中、井之上先輩と遠藤先輩の車に乗せてもらったわ」

礼子:「そうなんだ。洋美はどっちに乗った?」

洋美:「私と幸美は遠藤先輩の方に乗ったわ。友美姉ちゃんと愛美は井之上先輩の方に乗ったわ」

三人が話し合っていると始業チャイムが鳴り担任教師の大水咲(おおみず さき)が入って来て出席を取る。彼女は音楽科の教師で陸上部の顧問をしていて首女中、首女高、首女大の卒業生でもある。

☆☆☆☆☆☆☆☆

校舎の三階に上がった友美、真美奈、美幸は香織と会う。

「おはよう、友美、真美奈、美幸」

香織の挨拶に三人も挨拶を交わした。四人が談笑を楽しんでいると始業のチャイムが鳴り響いた。友美と真美奈は三年A組へ、美幸と香織は三年B組へと急いだ。A組の教室に菊池が入り、B組の教室には担任である高畠美代(たかはた みよ)が入った。高畠は数学科の教師で新体操部の顧問である。彼女自身も首女中と首女高、首女大の卒業生である。菊池、池澤、大水、高畠を始めとする首女中と首女高の女性教師の大半は首女中、首女高、首女大の卒業生であった。

☆☆☆☆☆☆☆☆

一時間目が終了し休憩時間になった。愛美と幸美の1年A組では二時間目の体育の授業に備えて生徒達が各々の選択した体操服に着替えていた。着替え終えると全員、グランドに出る。その様子は洋美の学級、友美の学級から見て取れる。友美の学級である三年A組では友美と真美奈がグランドを眺めているのだった。

「グランドに出ているのは愛美ちゃん、幸美ちゃんのクラスみたいだわ」

「当然よ、愛美と幸美、いつも一緒だから、すぐ解ってしまうわ」

と相づちを打つ友美であるが小学校時代の同級生の加代の事が気掛かりで表情は不安げだった。

(加代が首女中に転校してくれると一番いいのだけど・・・)

洋美の学級でもグランドに出ている1年A組の生徒達の姿が見えるのであった。

美千代:「あっ、洋美の妹、愛美ちゃんと幸美ちゃんだわ」

礼子:「本当、いつも一緒だし、制服だけでなく体操服もお揃いの紺ブルだから、すぐ解ってしまうわ」

洋美:「紺ブル履くのは私達、葵奈四姉妹のトレードマークでもあるんだけどね」

美千代:「私だって今は赤ブル、たまに紺ブル履く事あるわ。入学して間もないうちは赤の短パンだったけどね」

礼子:「私は最初、黄色の短パンだったけど、今は紺ブル一筋だもん」

やがて休憩時間も終わり二時間目の授業が始まった。愛美と幸美のクラスはバレーボールであった。生徒達は二人一組でレシーブやパスの練習に励む。愛美は幸美とペアを組んでボールのやり取りをする。愛美と幸美は高飛び込みだけでなくバク転、バク宙、連続前宙も得意であった。

☆☆☆☆☆☆☆

四時間目の授業が終わり、昼食休憩の時間になった。愛美と幸美は食堂へと歩きだした。歩きながら二人は食事のメニューは何をするか話し合う。

愛美:「幸美、昼は何を食べる?」

幸美:「そおね、スパゲッティナポリタンかペペロンチーノにしようかと思っているの。愛美は決まった?」

愛美:「愛美はカツカレーか海老フライカレーにしようかと思ってるの」

幸美:「食べたあと唇にカレールー着きそうだね、着いたらキスしていただこうかしら?」

愛美:「いいよ、愛美は幸美とキスしている時が一番幸せを感じるよ」

二人が話し合っていると同じ学級の生徒が何人か話しかけてきた。

生徒A:「愛美、幸美、いつも一緒だね」

生徒B:「価値観が同じだと仲が良いのかしら?」

生徒C:「そうみたいだわ、シンクロナイズドダイブだと息が合うね」

愛美:「愛美にとって幸美は最愛の妹、愛し合ってるのよ」

幸美:「幸美にとって愛美は心を許せる同い年の唯一無二のお姉ちゃんよ」

生徒A:「幸美、愛美の事を『愛美姉ちゃん』とは呼ばないの?」

幸美:「呼ばないよ、双子で同い年だから」

生徒B:「愛美はどう思っているの?」

愛美:「幸美から呼ばれる時?『愛美』の方が良いと思っているよ、双子で同い年だから」

生徒C:「やっぱ年齢差、学年差なのかなぁ」

やがて食券の自動販売機にたどり着き、愛美と幸美達は各々の食券を購入し料理と交換してテーブル席に着き食事を取る。食事を終えて教室へと歩きだすと会話は再開するのだった。

生徒A:「愛美、幸美、お姉ちゃん、三年生と二年生に1人づついるよね?」

愛美:「いるよ」

幸美:「二人とも水泳部よ」

生徒B:「優しい?」

愛美:「ノー、メチャメチャ怖いよ」

幸美:「怒らせたら、どつかれるし平手打ちされるよ」

生徒C:「え〜っ!?マジ!?」

愛美:「そぉーよ、新入部員もっと集められないのかと、うるさいし」

幸美:「ねぇ、ものは相談だけど水泳部に入ってくれない?」

生徒A:「そうは言われても私、陸上部にしたし」

生徒B:「私はバスケ部にしたし」

生徒C:「私はバレー部にしようかチアーリーディング部にしようか文科系にしようか迷っているの」

愛美:「迷っているぐらいなら水泳部に入ってくれない?」

幸美:「部員が集められないと、お姉ちゃんに平手打ちされるかも知れないのよ、お願いだから入って」

生徒C:「勘弁してよ、私、高所恐怖症だから高飛び込みはイヤよ」

やがて昼休みが終わり午後の授業が終わって放課後、愛美と幸美は再び同じ生徒に水泳部への入部をねだる。しかし生徒は反発する一方だった。嫌がる生徒の声を偶然聞きつけた友美が1年A組の教室に入って来て愛美と幸美に平手打ちを食らわして問い詰めた。

「愛美!幸美!何しているの?」

「うぇ〜ん、水泳部に入って欲しいと頼んでいたところなのよ」

と泣きじゃくる愛美。幸美も

「うぇ〜ん部員、集められなきゃ駄目なんじゃ」

と、嗚咽しながら相づちを打つ。友美は

「強引に誘うのは駄目と言っているだろ!全く解ろうとしないんだから!」

と愛美と幸美を叱り飛ばす。嫌がっていた生徒に向き直り謝罪の声をかける。

友美:「ごめんね、妹の愛美と幸美が強引に誘ったらしくて不愉快だったら申し訳ないわ」

生徒C:「愛美と幸美のお姉さんですか?強引と言うよりも何かに急かされているような感じでしたわ」

友美:「私の水泳部、新入部員がまだ二人しか集まっていなくて、せかせかしてたのよ。ところで、氏名は何と言うのか教えてくれない?」

生徒C:「私の氏名ですか?小湊佳那子(こみなと かなこ)です。部活はバレー部かチアーリーディング部か文科系にしようか迷っている最中なんです」

友美:「そうなんだ。佳那子ちゃん、もし愛美と幸美の事で困った事があったらいつでも遠慮せずに言ってね」

佳那子:「はい、ありがとうございます。葵奈先輩」

友美:「佳那子ちゃん、入る部が決まったら教えてね。気が向いたら水泳部も覗いてくれると本当は嬉しいんだけどね」

小湊佳那子の着用している制服は緑色系のセーラー服でスカートは緑色で髪型は黒色のお下げである。彼女は愛美、幸美のような推薦入学ではなく一般入学だった。友美は佳那子に別れを告げ愛美と幸美を連れて部活の場所であるプールへと急いだ。葵奈姉妹の姿が見えなくなると佳那子は思案にふけり出した。

(愛美と幸美のお姉ちゃん、厳しくて恐い先輩と思っていたら意外と優しいなぁ。私には兄と姉はいないし小学生の弟、二人しかいない。とりあえずバレー部から覗いてみようかな、優しいお姉ちゃんのような先輩がいれば良いのだけど)

佳那子はバレー部が活動しているコートを覗いてみたが新入部員達がボール拾いの為に立ちどおしになっているのを見て退屈する感覚を禁じ得なかった。それはバレー部のみならずテニス部、バスケ部、サッカー部でも同じだった。チアーリーディング部、陸上部を覗いても佳那子は入部する部活を決められずだった。佳那子は愛美と幸美が所属している水泳部を覗いて見るべくプールへと歩いた。競泳プールを覗くと何人かの部員が泳いでいた。飛び込みプールを覗くと葵奈姉妹を始めとする部員が飛び込み競技の練習にいそしんでいるのだった。佳那子は食い入るように飛び込み競技の光景を見続けた。そして下校時刻になり首女高と首女中の生徒達は帰路に着くべく校門から次々と出ていく。佳那子はそれを見届けながら校門の側で一人たたずんでいた。そんな彼女に声をかける者がいた。

「あら、佳那子ちゃん、一人?」

声の主は友美だった。側には妹の洋美、愛美、幸美、真美奈、美幸、香織、美千代を始めとする水泳部員の姿もある。佳那子の眼には水泳部員が理想の姉として映り始めていた。

(何でかしら?水泳部の先輩達、お姉ちゃんのような感じがするわ。この感覚どうしてかしら?)

佳那子は首を横に振る。それを見た友美は彼女に声をかける。

「良かったら一緒に帰らない?私、佳那子ちゃんと話をしてみたくなったのよ」

「いいですよ喜んで。私だってお姉ちゃんのような先輩がいれば良いなあと思っているんです。葵奈先輩のような」

「さっ、行こう」

佳那子は友美達に連れられて歩きだす。真美奈と美幸は迎えの車で帰宅していく。佳那子と葵奈姉妹、他の部員達はモノレールに乗る。その車中で友美は佳那子との会話を再開する。

友美:「佳那子ちゃん、入部する部活、決まった?」

佳那子:「いえ、まだ決まらなくて迷っているんです。どの部活も先輩後輩との上下関係が厳しいみたいで・・・」

友美:「そうなんだ。佳那子ちゃん兄弟姉妹いるの?」

佳那子:「小学生の弟が二人です」

友美:「私も小学生の弟がいるよ。五年生の」

佳那子:「そうなんですか?私の弟は四年生と一年生です。お兄ちゃんか、お姉ちゃんが欲しいですけど第一子として産まれた以上、現実は・・・」

友美:「それで、お姉ちゃんのような先輩が理想の先輩なの?」

佳那子:「はい、そうなんです。葵奈先輩のような。でも私、高所恐怖症なので高飛び込みは苦手なんです」

友美:「私だって高い所は苦手よ。気持ちは解るわ」

佳那子:「どうしたら克服出来るのでしょうか?」

友美:「そぉねぇ、必ず克服したいと言う想い、と言った方が良いじゃないかしら」

佳那子:「克服したいと言う想い・・・ですか?」

友美:「そう、あるところで聞いたんだけど、運は想いが強い人に傾く、と言うのをね。どこで聞いたかは失念したから覚えてないけど」

やがてモノレールは佳那子が降りる駅に近づいてきた。葵奈姉妹が降りる駅は、その次の駅である。

佳那子:「あっ私、降りなきゃいけないわ。もっと先輩と話をしたかったのに・・・残念だわ」

友美:「私も降りるわ。私、定期だから途中下車聞くから。もっと佳那子ちゃんとお話させて欲しいしの。洋美、愛美、幸美、先に帰って」

洋美:「私も降りるわ」

愛美:「愛美も降りる」

幸美:「幸美も降りる」

佳那子と一緒に葵奈四姉妹はモノレールを降り駅の改札口を出て歩きだし会話を再開した。

佳那子:「ところで言いにくいですけど先輩の事、友美姉ちゃん、と呼んだら怒りますか?運悪ければ平手打ちされそうで・・・」

友美:「えっ!?どっ、どうして!?」

佳那子:「私、先輩の妹になりたいんです。私にとって先輩は理想の優しい、お姉ちゃんであってほしいんです」

洋美:「そうなったら私も佳那子ちゃんの御姉ちゃん、じゃん」

愛美、幸美:「佳那子、もしかして」

友美:「何と言ったら良いのかしら、下級生に、お姉ちゃん呼ばりされるのは・・・・」

佳那子:「やっぱり・・・イヤですか?」

友美:「ねぇ、佳那子ちゃん、ものは相談なんだけど、水泳部飛び込み競技部門に入部してくれると嬉しいんだけど、無理?理想の妹のような後輩が欲しいのよ」

佳那子:「板飛び込みですか?高飛び込みですか?」

友美:「原則は両方なんだけど佳那子ちゃんだったら最初は板飛び込みからだと、やり易いと思うわ。板飛込みだと高さは1㍍と3㍍。高飛び込みだと5㍍、7.5㍍、10㍍だよ。水深は5㍍だけどね」

佳那子:「1㍍でも高いですよ。競泳のスタート台よりも高く感じます。私、あまり泳ぎは得意じゃありませんしスタートの飛び込みも全く駄目で・・・・」

洋美:「とりあえず体験入部と言う形でやってみたらどう?」

愛美:「水泳部飛び込み競技部門には魅力的なお姉ちゃんが多いよ」

幸美:「みんな、お姉ちゃん呼ばりしているのよ」

佳那子:「えっ!怒られない?」

愛美:「大丈夫、怒るのは友美姉ちゃんだけだよ」

幸美:「愛美と幸美、いつも友美姉ちゃんに平手打ちされてるのよ」

佳那子:「えっ、そぉなの?私でも怒らせてしまったら・・・」

洋美:「佳那子ちゃん、悩んでも仕方ないよ、当たって砕けるつもりじゃないと駄目よ」

佳那子:「そぉですよね、あっ、もうこんな時間だけど遅くなったらまずいんじゃないですか?」

友美:「そおね、また明日会いましょ」

洋美:「バイバイ佳那子ちゃん」

愛美:「また明日、水曜日に」

幸美:「おやすみ」

佳那子は自宅へ、葵奈姉妹は途中下車で降りたモノレールの駅へ歩いて帰路に着いた。最寄り駅でモノレールを降り再び歩きだすと友美と洋美は加代の事で話し合いを始める。愛美と幸美は黙って会話のやり取りを聞いている。

洋美:「加代ねえ、どうしてるかなぁ?」

友美:「最近、返信無いし、何か気になるわ」

洋美:「なるよね。そう言えば菊池先生も、ずっと行方不明になっている同級生の女性の事、気掛かりで顔色は不安げだよ」

友美:「どのくらい経つのかなぁ?」

洋美:「十二、三年は経つと菊池先生は言ってだけど」

友美:「そっ、そんなに!?本当なの!?」

洋美:「本当だと思う。警察と家族が懸賞金かけているようだから。何年か前、テレビで行方不明になっている人の公開捜査やっていたようだし。最近でもテレビで公開捜査の番組やるようだわ」

やがて自宅にたどり着き葵奈四姉妹は夕食、入浴、宿題等を済ませ就寝する。

☆☆☆☆☆☆☆☆

一方、葵奈四姉妹と別れた佳那子は帰宅して入浴、食事を済ませたあと自分の部屋で宿題をしながら思案に暮れていた。友美と水泳部の事である。

(葵奈先輩って二人いるんだよね、友美姉ちゃん、洋美姉ちゃんと呼ぶ方が解りやすい、でも水泳部への入部どうしようかな?バレー部はボール拾いが退屈だしチアーリーディング部はバク転が出来ないから駄目だし)

佳那子は水泳部への入部を決めかねていた。窓の景色を眺めるとモノレールの駅周辺が夜景として輝いている。佳那子は両親と小学四年生と小学一年生の弟の五人家族でモノレールの駅から少し離れた10階建ての分譲マンションの10階に住んでいる。空に眼を向けると晴れわたった漆黒の夜空が広がっている。やがて宿題を済ませ佳那子はベッドに入り就寝する。しかし、なかなか眠りに着くことが出来ず再び水泳部への入部の事で再び思案する。

(水泳部への入部、どうしよう?泳ぎ駄目、飛び込みも駄目、でも葵奈先輩を、お姉ちゃんにしたい、とりあえず休み時間、昼休みにでも一人で会いに行こうかな?怒らせたら私どうなるのかなぁ?平手打ちされるのは嫌だけど友美姉ちゃんにされるのだったら・・・)

思案に暮れているうちに佳那子は眠りに入って行った。

翌朝の4月9日水曜日、佳那子は当校のためモノレールの駅のホームでモノレールを待っていた。やがてモノレールが到着し扉が開くと車内に葵奈四姉妹が乗っていていた。佳那子は乗車して葵奈四姉妹に挨拶をする。

佳那子:「おはようございます葵奈先輩。おはよう愛美、幸美」

友美:「おはよう佳那子ちゃん」

洋美:「おはよう」

愛美:「おはよう佳那子」

幸美:「おはよう、水泳部への入部、決心した?」

佳那子:「そぉねぇ、葵奈先輩を怒らせてしまったら私どうなるのか気掛かりで昨夜は眠れませんでした」

友美:「やだぁ佳那子ちゃんたら、もう」

佳那子:「放課後、愛美と幸美と一緒に水泳部に行きます」

こうして佳那子は水泳部への入部を決め、放課後、愛美と幸美に連れられて部室があるプールへと足を運ぶ。部室に入ると友美、真美奈、美幸、香織、洋美、美千代、礼子達が迎えた。

友美:「佳那子ちゃん、いらっしゃい。入部してくれるの?」

佳那子:「はい、入部させて頂きます。葵奈先輩を友美姉ちゃん、洋美姉ちゃんと呼ばせて欲しくて」

真美奈:「あはははっ、面白い娘だわ、佳那子ちゃん」

美幸:「友美に洋美ちゃん、妹が一人増えたみたいだね」

香織:「愛美ちゃん、幸美ちゃん、佳那子ちゃん、まるで三つ子みたいだわ」

美千代:「ねぇ佳那子ちゃん、どのくらい泳げるの?」

礼子:「後で泳ぎ見せて欲しいなぁ」

佳那子:「実は全く駄目で二人の葵奈先輩から特訓を受けたいと思っているんです」

礼子:「あら、そぉなの?私からじゃ嫌?」

美千代:「ちょっと礼子、そんな事聞いちゃ駄目よ、佳那子ちゃん悩んでしまうじゃん」

佳那子:「誰からでも構いませんよ。私の目に水泳部飛び込み競技部門の先輩は全員、理想の素敵なお姉ちゃんに見えるんです」

真美奈:「嬉しいわ佳那子ちゃん、私は井之上真美奈、真美奈姉ちゃんと呼んでね」

美幸:「私は遠藤美幸、美幸姉ちゃんで良いよ、佳那子ちゃん」

香織:「私は宇都香織、香織姉ちゃんよ、佳那子ちゃん」

美千代:「私は工藤美千代、あだ名は『くどちゃん』だけど、どう呼ぶかは佳那子ちゃんの自由よ」

礼子:「私は津軽礼子、あだ名は『つがちゃん』なの。『礼子姉ちゃん』でも良いし、好きな呼び方でいいよ」

佳那子:「ありがとうございます、葵奈先輩はそれぞれ友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんで呼ばせて頂きます」

真美奈:「そろそろ着替えて練習に入りましょ、佳那子ちゃん水着持ってきた?」

佳那子:「はい、でも小学校時代に使っていたスクール水着しか持ってきてないです。良いですか?」

真美奈:「どういう型なの?」

佳那子:「これなんです」

真美奈:「セパスパ型のスクール水着じゃん」

美幸:「セパレートスパッツ型だわ。最近の公立小学校に多いよね」

佳那子:「もし駄目なら、どんな型が良いですか?」

真美奈はロッカーボックスから水着を何着か出し佳那子に見せた。どの水着も素足丸出しで肩のヒモが白のノーマルワンピース型の競泳スクール水着である。教室に置かれているカタログに掲載されているのだった。水泳部の部室にも置かれている。

真美奈:「今見せている水着は私達が着用していたモノよ。サイズが小さく感じてきたから使わずに置いていたのよ。新入生が入部してきた時の為に」

友美:「どの型が良いのか教えてあげるわ」

友美はカタログの水着のページを佳那子に見せ説明した。佳那子は食い入るようにカタログを見た。佳那子がカタログを見ている間に水泳部員達は水着に着替えた。一向にも着替えずにカタログを見続けている佳那子に真美奈は声をかけ、促した。

「佳那子ちゃん、早く水着に着替えましょ、好きな水着を選択して着替えてちょうだい。どれでも良いから」

「は、はい。どれにしようかな・・・持ってきた小学校時代のスクール水着でも良いですか?」

「今回は良いよ、次回からは私達が見せたものと同じ水着でね」

佳那子は急いで水着に着替えスイミングキャップとスイミングゴーグルを着けプールサイドへと移動した。プールサイドでは水泳部員達が準備運動をしていた。佳那子は何をしたら良いのか解らない表情で見つめた。そんな佳那子に真美奈が声をかける。

真美奈:「佳那子ちゃん、どうしたの?」

佳那子:「は、はい・・・着用している水着の為なのでしょうか、飛び込み競技部門のお姉ちゃん、みんな美しくセクシーで見とれてしまって・・・」

真美奈:「あら、そぉなの?か・な・こ・ちゃん、ぼーと、してたら友美に怒れるわよ。平手打ちされても知らないわよ」

佳那子:「ごめんなさい、つい。でも友美姉ちゃんにだったら」

そこへ友美がやって来て声をかける。

友美:「佳那子ちゃん、真美奈と何を話してたの?」

佳那子:「ぼーとしてたら友美姉ちゃんに叱られるよ、って」

友美:「そぉなんだ。佳那子ちゃん早速だけど泳力テストといきたいんだけど泳ぎ見せてくれない?」

佳那子:「飛び込みでのスタートは得意じゃないですから」

佳那子は競泳プールに入り一番端のコースで泳ぎ始めた。しかし真ん中の25㍍近くまで泳いだ所で力尽きてプールから上がった。

「佳那子ちゃん、これが限界なの?まあいい。飛び込みの特訓と行こうよ。飛び込み競技はノーゴーグル、ノーキャップだから外すようにしてね」

佳那子は友美、洋美、真美奈の三人から飛び込みの特訓を受けることになった。練習量は多くて厳しく、友美からの口調は特に厳しかった。下校時刻が近づいて練習が終わる頃には佳那子は疲れはてて着替えるのも他の部員達の手をわずらわせる程だった。そして下校時、友美は佳那子に声をかける。

「佳那子ちゃん、大丈夫?いきなり初日から厳しくし過ぎたけど」

佳那子の眼から涙が滝のように流れ出ていた。友美は佳那子を抱きしめて慰める。それを待っていたのか佳那子は泣き出した。佳那子の泣き声が一向にも止みそうにないのと判断した友美は

「洋美、愛美、幸美、先に帰れ」と言い他の部員を帰らせた上、佳那子に付ききりで慰める。モノレールの駅の近くの公園のベンチで腰を掛け、友美は佳那子を優しく抱きしめ続けた。泣き疲れてきたのか佳那子は泣き止んだ。

「やっと泣き止んだわ。佳那子ちゃん、しっかり、元気出して」

「友美姉ちゃん・・・・」

「佳那子ちゃん、今日は厳しくしちゃってごめん。出来る事なら本当はもっと厳しくしごかせて欲しかったわ」

「えっ!?今日の練習の厳しさは序の口なんですか?私、友美姉ちゃんから平手打ちされないかびくびくしてたんです。覚悟はしていたとはいえ、もう怖かったです」

「あら、そぉなの?私って、そう見えるのかなぁ?洋美、愛美、幸美に平手打ちしてる事多いから、そう思われても無理ないか」

「友美姉ちゃん、ストレス貯まる事多いですか?発散は、やっぱり・・・」

「貯まってしまうかもしれないわ。三人の妹と同じ部屋で寝食共にしているからね。佳那子ちゃんは弟が二人いるよね、鬱陶しく感じる事ある?」

「私は弟とは部屋は別々ですから」

「そぉなんだ、一緒だから貯まるのかなぁ?」

「友美姉ちゃんと二人きりだと、何故かしら落ち着きそうな感じがします」

「私自身、本当は佳那子ちゃんに平手打ちを食らわして、しごきたいと思っていたのよ。でも、周りのおとがめが怖かったから手を出したくても出せなかったのよ。あら、何バカな事言ってるかしら?私って」

「やだぁ、友美姉ちゃん、やっぱり私に平手打ち食らわしたいと思っていたんだ。良いですよ、私、友美姉ちゃんから平手打ちされるのなら何発でも何万発でも我慢できますよ。でも愛美と幸美からだと一発足りとも我慢出来ないかも知れません」

佳那子の表情に微笑みと元気が復活していた。

「あはははっ、そぉなの?ねぇ佳那子ちゃん、一発左の頬、叩かせてくれない?」

「良いですよ、友美姉ちゃんに叩かれるのなら。私と友美姉ちゃんのだけの秘密にして欲しいんです」

「じゃ、いくわよ、痛いけど我慢してね、か・な・こ・ちゃん」

友美は佳那子の左の頬を思いっきり力強く叩いた。

パーン!

乾いた音が響いた後、友美は再び佳那子を慰める。

「佳那子ちゃん、痛かった?」

「叩かれた瞬間は痛かったですけど今は晴々しく感じます。友美姉ちゃん今のでストレス発散出来ました?」

「お陰様で。佳那子ちゃん遅くなりそうから、そろそろ帰ろう」

「はい、そうですね」

友美に連れられて佳那子はモノレールの駅へ歩きだす。その左頬のアザには友美の愛情が焼き付いているようだった。モノレールの車内では部活で着用する水着の話題に変わった。

「ところで佳那子ちゃん部活で着用する水着の事だけど」

「友美姉ちゃんからカタログで示した水着を選んで着用する事ですよね」

「それもそうだけど私から言いたいのは着用する時の厳守事項なのよ。水着の下にスイミングサポーターを着用する事を忘れないで欲しいのよ。水泳部の規則だから」

「スイミングサポーターって?」

「水着の下に履く下着なのよ。パンツの上に水着を着るような感覚だと思えば解ると思うけど」

「そう言えばカタログの水着のページにも載ってましたね」

「必ず着用よ、忘れずにね。もし忘れたら学校内の購買部で買うか、履いている下着の上に水着を着用して泳いでもらうからね」

友美は心を鬼にして言った。

「はい、でも前者にしようとしても在庫切れだと後者にするしかないですね、それだと下着が濡れてしまいますね」

「その場合、部室にある小さな乾燥機と脱水機を使えば良いよ。私はもちろんの事、洋美、愛美、幸美は普段からスイミングサポーターを下着として履いているのよ。水着に着替える時、手際よく着替えることが出来るからね。他の部員もそうしている者多いし。スイミングサポーターは普通の下着に比べると速乾性に長けているから乾くのが早いよ」

話している間にモノレールは佳那子が降りる駅に到着した。

「佳那子ちゃん、今日はお疲れ、また明日も頑張ろうね」

「友美姉ちゃん、今日はありがとうございました。また明日、木曜日も御願いします」

佳那子はモノレールを降り帰宅して行く。友美も次の駅でモノレールを降りた。

(佳那子ちゃん、部活、続けてくれるかな?)

☆☆☆☆☆☆☆

友美に先に帰るように言われた洋美、愛美、幸美はモノレールを降り、駅の改札を出た時、一人の女性に声をかけられた。彼女は友美の小学六年生の時の担任教師、高井佐由美(たかい さゆみ)であり友美の同級生、七島加代の担任でもあった。

高井:「洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃん、久しぶり。友美お姉ちゃんは?」

洋美:「高井先生、お久しぶりです。友美姉ちゃんは用事で遅くなるんです」

洋美は挨拶し友美の事を話す。

「そうなんだ、近くのショッピング街で用事があったから来てたのよ」

「そうなんですか、ところで高井先生、七島の加代ねえ、最近どうしてるのか知りませんか?」

「洋美ちゃん、気になるのね。残念だけど私には解らないのよ。それに私、今年度の今月から違う学校へ転勤になったのよ」

「そうなんですか」

「七島さん、よく男子からいじめられてたわ。友美ちゃんが、かばっていたけど中学生になってからは別々の学校だから・・・」

「その話、友美姉ちゃんから聞かされました。最近では音信不通です。友美姉ちゃんから、たまには自宅を覗いてみようと話が持ち上がっているんです」

高井と洋美が話し合っていると佳那子と別れた友美がモノレールから降り改札口から出てきた。三人の妹が小学六年生の時の担任教師、高井と話し合っているのを見て、いそいそと駆け寄り声をかけた。

「高井先生、お久しぶりです。今日は、どうしたのですか?」

「友美ちゃん、久しぶり。今、妹さん達と話していたのよ。七島さんの事で」

「加代とはメールのやり取りしていたんですけど、最近、返信が途絶えているんです。何か知りませんか?」

「残念だけど私にも解らないのよ。友美ちゃん、いじめられていた七島さんをかばっていたよね。七島さんは、かなり古めの長屋の住宅に住んでいるのを覚えているわ。家庭訪問の時に見たけど」

「解らないですか、私、洋美と相談して加代の自宅、見に行こうかと思っているんです。でも、なかなか暇が作れなくて」

「そぉなんだ、中学では、どうなのか心配よね」

高井と葵奈四姉妹は話し合っていたが腕時計を見て

「あっ、もう、こんな時間に。遅くなったら良くないわ。友美ちゃん、洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃん、気をつけて帰ってね」

「はーい、高井先生も気をつけて」

葵奈姉妹は高井と別れ自宅へと歩きだした。そして就寝時、愛美と幸美は友美に佳那子の事で話しかけた。

愛美:「友美姉ちゃん、あれから佳那子どうだった?」

幸美:「あまりにも厳しかったから泣いてたし」

友美:「しばらくは私の胸にしがみついて号泣していたわ。おかげで私のセーラーブレザー、佳那子ちゃんの涙で濡れちゃったわ。でも何とか元気を取り戻してくれたわ」

洋美:「それだと良いわ。明日も元気よく部活に精を出してくれる事を祈ろうよ。明日も早いから、おやすみしよう」

四人は消灯して就寝した。

☆☆☆☆☆☆☆☆

一方、帰宅した佳那子は自分の部屋で入浴の準備を兼ねて持っている下着をチェックしていた。

(明日、履いていくパンツはどれにしようかな?パンツの上に水着を着て泳ぐから替えのパンツも用意しなくては・・・よし、これとこれで行こうっと)

入浴で湯船に浸かり佳那子は思案に暮れた。

(今日の練習、厳しかったなぁ・・・友美姉ちゃん怖かった・・・洋美姉ちゃん、愛美、幸美、毎日怒られてどつかれてるのかなぁ?それにしても、まだ左頬ヒリヒリする)

佳那子は左手の手のひらを左頬に当てた。友美に平手打ちされた衝撃がおさまっていないのだった。

(友美姉ちゃんの平手打ち、メチャメチャ痛い、でも愛情たっぷり。幸運を呼ぶ痛さであれば良いのだけと・・・・)

しばらく湯船に浸かった後、佳那子はパジャマに着替え就寝した。

☆☆☆☆☆☆☆☆

翌朝の4月10日木曜日の登校時、佳那子はモノレールの駅で改札を通りホームに上がった。しばらくするとモノレールがやって来て佳那子は車内の様子を見た。

(あっ、いた友美姉ちゃん。あれ?一人?洋美姉ちゃんに愛美、幸美が見当たらないけど)

モノレールに乗った佳那子は友美に駆け寄って挨拶をする。

「おはようございます、友美姉ちゃん。今日もよろしくお願いします」

「おはよう、佳那子ちゃん。昨日は痛かった?ごめんね」

「いえ、まだ痛みは少し残っていますけど大丈夫です。ところで洋美姉ちゃん、愛美、幸美はどうしたのですか?」

「洋美はあそこで香織と談笑を楽しんでいるわよ。愛美と幸美は、もっと離れたところで二人で話し合っているわよ。」

友美が指差した方向を見ると数㍍先で洋美が香織と談笑していて、更に数㍍先で愛美と幸美が密着するように寄り添って談笑している。佳那子は友美に向き直って話しかける。

「友美姉ちゃん、相談なんですけど、水着選び、下着選びに付き合って頂けると嬉しいのですが嫌ですか?」

「あら、どうして私なのかしら、水着は解るけど下着選びはどうして?佳那子ちゃんだったら嫌とは言えないわ」

「昨日、水着の下にスイミングサポーター必ず着用、忘れたら履いている下着の上に水着を着て泳いでもらうと言ってたじゃないですか。その時の友美姉ちゃん、別の意味でも怖かったです」

「あら、私って怖いのかなぁ?」

「怖いです。でも私、友美姉ちゃんを嫌がる気は毛頭ないです。一番のお姉ちゃんだと思っています。一番のお姉ちゃんである友美姉ちゃんに下着選びに付き合ってもらえたら最高です。私、水着の下はスイミングサポーターではなく普通の下着を履いて泳ぐつもりです。実は、ふと思いついちゃったんですけど水着に着替える時、パンツを脱がずにパンツの上に水着を着てそれで海かプールにシャワー浴びずに飛び込んだら、どのくらい気持ちいい、なんて考えちゃったんです。飛び込むのでもシャワーを浴びてから飛び込むのと浴びずに飛び込むのでは感触が大きく違うんじゃないかと」

佳那子の言葉に友美は呵呵大笑する。

「あはははっ、佳那子ちゃん面白い、洋美、愛美、幸美よりも可愛い妹だわ、解ったわ、今日の昼休み一緒に購買部で見てみる事にするわ」

「はい、御願いします。あっ駅に着きますよ」

モノレールは駅に到着し葵奈姉妹、佳那子、香織は首女中の門をくぐる。1年A組で佳那子は愛美と幸美に声をかける。

「愛美、幸美、おはよう。スカートの中、見せて」

佳那子は両手で愛美と幸美のスカートをめくりあげる。

「愛美、幸美の下着って白のスイミングサポーターなんだ」

「ちょっと佳那子、愛美のスカートめくって、どういうつもりなのよ!?友美姉ちゃんにチクるわよ!」

「もう幸美のもめくるなんて!友美姉ちゃんに平手打ち食らわしてもらおうかしら?」

「良いわよ!好きにすれば、私、友美姉ちゃんにだったら何億発叩かれても我慢出来るわよ。今日の昼休み、私、友美姉ちゃんと一緒に購買部で水着選び下着選びする約束なのよ」

そして昼休み、佳那子は愛美、幸美、クラスメイト二人と昼食を取った後、食堂から出ようとした時、友美に声をかけられた。

「佳那子ちゃん、昼食終わったでしょ、購買部に行きましょう」

「はい友美姉ちゃん。愛美、幸美、先に教室に戻って」

友美は佳那子の手を取り購買部へ歩きだした。購買部の部屋には数人の生徒が学用品や制服などを見たりしている。友美は佳那子を連れて水着の展示コーナーへと歩き水着の説明をする。

友美:「佳那子ちゃん、これが私と洋美、愛美、幸美が部活、体育の水泳、飛び込み競技の授業、グラドル活動でも着用している紺色のスクール水着よ」

佳那子:「そうなんですか、足丸出しで肩のヒモが白だから何かスポーティーでセクシーですね」

友美:「水着に関しては私、これをオススメしたいわ」

佳那子:「この水着を着用して泳ぐのですか、私は緑色が好きな色なんですけど紺色もいいと思います。私、友美姉ちゃんと同じ紺色にしたいです」

友美:「そう言ってくれると嬉しいわ、紺色だけでなく青色、赤色、エンジ色、黒色、佳那子ちゃんの好きそうな緑色、深緑色、もあるよ」

佳那子:「紺色にしたいです。それから下着の方も見てみたいです」

友美:「そうね、購買部が扱っている下着はスポーツインナー、スイミングサポーターとしても使えるのでいいよ」

佳那子:「そうですね、いろんな色がありますね、白、パステル系など。私は白かパステルグリーンが良いなあと思います」

友美:「佳那子ちゃん、制服、水着、下着もグリーン系が好きなんだね。どうして緑色が好きなの?」

佳那子:「緑は自然の色、植物の色、光合成の色、安らぎの癒しを感じるので好きなんです」

友美:「そぉなんだ、ねぇ佳那子ちゃん、スカートの中の下着、見せてくれない?どんなパンツ履いているか気になったのよ」

佳那子:「良いですよ、今日の部活で水着の下に着ようかと思っているんですから、替えの下着も用意しています」

友美は佳那子のスカートをめくり上げ下着を見た。いかにも女子小学生が好んで履きそうな感じに見えたのだった。

友美:「佳那子ちゃん。今日履いているパンツ、小学校時代から履いているんだよね、ピンクの水玉模様のパンツ、可愛いじゃん」

佳那子:「友美姉ちゃんの下着は、どんな色ですか?スカートをめくらせて下さい」

佳那子は友美のスカートをめくる。履いているのは愛美と幸美が着用しているのと同じ物で購買部で売ってるのと同じ物でもある。

佳那子:「やっぱり愛美と幸美が履いているのと同じですね。今回は友美姉ちゃんがススメてくれた紺色のスクール水着を買う事にします」

友美:「ありがとう佳那子ちゃん。愛美と幸美のスカートめくってみたの?」

佳那子:「めくりました」

友美:「愛美と幸美に何か言われた?」

佳那子:「はい、友美姉ちゃんにチクって平手打ち食らわしてもらうわよ、と言われましたけど、私は好きにしたら、友美姉ちゃんに平手打ちされるのなら何億発でも我慢出来ると言ってやりました」

友美:「あははっ、佳那子ちゃん、さすがだわ。愛美と幸美よりも根性がなっているわ、あいつら平手打ち食らわしたら、すぐ泣き出してべそをかくから疲れるしストレス貯まるわ、全く悪循環も良いところよ」

佳那子はレジカウンターへ行き紺色のスクール水着を購入すべくサイズを伝え支払いを済ませた。その表情は、ワクワク感たっぷりだった。

友美:「支払い済ませたのね、そろそろ昼休みも終わりそうだし教室へ戻りましょう」

佳那子:「はい、今、購入した水着、今日の部活から着用します。友美姉ちゃんと話してたら楽しくて時間が沢山あっても足りませんわ」

友美:「楽しみにしているわ、佳那子ちゃん」

友美は校舎の三階へ佳那子は一階へと別れた。教室に戻ると佳那子は愛美と幸美に水着購入を伝えた。

☆☆☆☆☆☆☆

放課後、佳那子は昼休みに購買部にて購入したスクール水着に着替えるべく水泳部の部活へと向かう。愛美と幸美も一緒に。部室には友美を始め三年生、二年生達が佳那子の着替えを待ちわびていた。友美が佳那子に着替えを促すように声をかける。

「佳那子ちゃん、さっ早く着替えて、必ずパンツ上にね」

「は、はい。私の水着姿、気になるみたいですね」

佳那子は顔を赤面させながら水着に着替えると部室に備え付けの鏡で着こなし具合を確かめる。

「佳那子ちゃん、良く似合っているよ。飛び込み競技の選手とグラドルのようなスポーティーでセクシーな風格を感じるわ」

友美が惚れ惚れする口調で言うと他の水泳部員は美しさに目を奪われた顔つきに変貌する。佳那子は言う。

「私は友美姉ちゃんと同じ水着を着用したいと思っただけです。この上に体操服のシャツか無地の白のTシャツ着れば紺ブルの体操着みたいな演出が出来そうですね」

「佳那子ちゃん、さぁプールサイドに出ましょう。こう見てくると佳那子ちゃんの飛び込みの美しい演技、早くみたいわ」

真美奈も、早く飛び込め、と言った口調で佳那子に言う。部員と共に佳那子はプールサイドに出る。部員達は準備運動を始めるが佳那子だけは飛び込みプールの飛び込み台の方を微動もせずに眺めているのだった。そんな佳那子に友美は近寄って平手打ちを三発食らわす。

パーン!パーン!パーン!

「か・な・こ・ちゃん、もう何ぼーっとしているの!?他の部員が準備運動しているのに何してるの!?、ちゃんと準備運動しないと駄目じゃないの!」

友美の激しい叱責に佳那子は我に帰った表情をする。

「ご、ごめんなさい飛び込みのイメージに夢中になってしまいました」

「友美の言うとおりよ、か・な・こ・ちゃん。ちゃんと準備運動してね」

真美奈も口を出す。佳那子は痛みをこらえて準備運動をする。

準備運動を終えて佳那子は再び飛び込み台に目を移す。そこへ友美が佳那子に声をかける。

「佳那子ちゃん、準備運動したの?」

「は、はい、友美姉ちゃんの平手打ちが準備運動になりました。今すぐ飛び込みやりたいです。溺れ死ぬ気で飛び込みたいです」

「あはははっ、まるで飛び込み競技を始めた時の真美奈と美幸にそっくりだわ。佳那子ちゃん、ますます面白いわ。どの台からでも良いから飛び込み見せてちょうだい」

「はい、飛び込みます」

佳那子は1㍍の台から飛び込んだ。頭からの逆飛び込みで、

プールから佳那子は水を滴らせて上がる。部員達は驚きの声をあげる。

真美奈:「佳那子ちゃん飛び込み出来るようになったのね」

美幸:「溺れ死ぬ気でやったら上達早いのかしら?」

香織:「優しく見守ってあげないといけないわ」

美千代:「上達早そう」

礼子:「私、追い抜かれそう、どうしよう」

洋美:「次は3㍍から飛び込んでちょうだい」

愛美:「佳那子がんばれ!」

幸美:「頑張って美しく飛び込め!」

友美:「佳那子ちゃん、さっ行こう」

佳那子:「は、はい・・・・」

佳那子は友美に手を引かれ3㍍の飛び込み台へ上がる。

(美しく、かっこ良く飛び込まなくては)

佳那子は今まで観てきた他の部員の飛び込みを自分自身の飛び込みに照し会わそうと思いながら飛び込み台から飛び込んだ。

ザブーン!

微かに水しぶきは上がったが佳那子は飛び込みプールの底へ潜水して泳ぐ。

(飛び込みプールの底もっと深いようだわ。水深は5㍍と聞いてだけど)

やがて佳那子は水面へと浮上しプールから上がる。

「佳那子ちゃん、かなり潜っていたね、溺れないか心配したわよ」

友美が声をかける。

佳那子:「いやぁ、もう少し潜って泳ぎたいと思ったんです。今度は三年生や二年生のお姉ちゃんの飛び込み拝ませて欲しいです」

友美:「解ったわ、でも飛び込み競技のキャリアは私よりも洋美、愛美、幸美の方が長いのよ」

佳那子の要望に答えるように友美は真美奈とのシンクロナイズドダイビングの飛び込みを披露する。美幸も香織と一緒に、愛美も幸美と一緒に飛び込みの練習に勤しむ。

(みんな上手に飛び込むわ。私、上達出来るかなぁ?)

佳那子が思案に暮れだすと友美が佳那子に声をかける。

「佳那子ちゃん、またぼーっとして、また叩いて欲しいの?」

そこへ真美奈が口を挟み友美をたしなめる。

「友美、また佳那子ちゃんを叩くつもりなの?もう程々しないと駄目よ」

「良いんですよ真美奈姉ちゃん。私、友美姉ちゃんに平手打ちで頬を叩かれるなら何億発でも我慢出来ます。勿論、死んでもです。友美姉ちゃんストレスたまりすぎじゃないかと」

「あはははっ、佳那子ちゃん面白い、根性ある、感心するわ。でも無理な強がりは禁物よ」

「真美奈姉ちゃん、私って面白いですか?」

「勿論、可愛いくて面白いわよ。どっちが妹にもらうか取り合いになりそうなくらいだわ。私は友美と違って一人っ子だから養子縁組でも良いから姉妹兄弟が欲しいわ」

「私はお姉ちゃん、お兄ちゃんが欲しいです。愛美と幸美をうらやましく妬んでしまう事もあるんです」

「そうね、佳那子ちゃん、練習を続けましょ」

佳那子は友美、真美奈から飛び込みの練習の手ほどきを受け続けた。やがて練習が終わり着替えタイムに入ると水泳部員達は制服に着替え始める。佳那子は水着を脱ぎ、濡れた下着から替えの下着に履き替える。そんな佳那子に美幸が声をかける。

「佳那子ちゃん、着替えている間に濡れたパンツ、乾燥機で乾かしたら良いよ」

「ありがとうございます、美幸姉ちゃん」

「佳那子ちゃん、私達にとって、あなたは可愛さ満点の妹よ」

佳那子の目には嬉し涙が溢れていた。そして下校時、佳那子は友美に話しかけた。

「友美姉ちゃんは洋美姉ちゃん、愛美、幸美と一緒にグラドル活動しているんですよね?何か興味が湧いて来ました」

「勿論やっているわよ。2ヶ月に一回の割合でね。学校には芸能活動の届け出を出しているのよ」

首女中、首女高には葵奈姉妹以外にも芸能活動の届け出を出している者もいる。女優として活動してたり、目指したり、中には歌手、声優を目指してたりと。友美の会話を聞いているうちに佳那子はグラドルに興味を抱き始めていた。

「私もグラドルやれたらなぁ、グラドルの撮影現場、どんなのか気になります」

やがてモノレールの改札口にさしかかり首女中と首女高の生徒達は改札を通ってモノレールに乗る。佳那子は葵奈姉妹と話し合う。

「佳那子ちゃん、今度の日曜日、私、洋美、愛美、幸美とグラドルの撮影があるのよ。良かったら現場を覗いて見る?」

友美の問いかけに佳那子は喜びいさんで答える。

「是非とも御願いします。グラドルになれなくても良いから現場を見てみたいです」

「当日は朝早いのよ。午前6時頃にモノレールの駅前ロータリーで撮影スタッフ及びカメラマンと待ち合わせなのよ」

友美の言葉に佳那子は不安毛な顔をする。

「6時ですか?起きれるかどうか不安です」

「起きる自信が無いのなら前日、ウチの家に泊まりに来る?部屋は同じで、ベッドは四人分しかないけど」

友美は申し訳なさそうな顔をする。しかし佳那子は気にしない口調で話す。

「気遣いはしなくて良いですよ。ただ、友美姉ちゃんと一緒に寝られたら嬉しいなあと思って」

「実は私、佳那子ちゃんと一緒に寝てみたいと思っていたのよ。一つの部屋で四人、二段ベッドが二つだから窮屈かも知れないけど」

「良いですよ、四人での生活、まるで修学旅行や合宿の雰囲気を感じ楽しそうです。是非とも御願いします」

「解ったわ、また詳しい事解れば教えてあげるわ」

「ありがとうございます。お願いします。もう駅なので降ります。また明日、金曜日に」

佳那子がモノレールを降り、次の駅で葵奈姉妹はモノレールを降りて歩き出す。洋美が友美に話しかける。

「友美姉ちゃん、今度の日曜のグラドル、佳那子ちゃん誘うのね、佳那子ちゃんにグラドル参加させるつもりなの?」

「あくまで佳那子ちゃん次第よ、もし佳那子ちゃんが参加したいと言うのなら・・・」

愛美は口を出す。

「佳那子にグラドルで着用する水着、体操服を用意させた方が良いじゃん」

幸美も添える。

「同感、でも佳那子一人でグラドルデビューは辛いかなぁ?」

「とにかく、スタッフに知らせておいた方が良いわ」

友美は佳那子の事を伝えるべく自分のスマホを操作した。

☆☆☆☆☆☆☆

翌朝の4月11日金曜日、登校時葵奈姉妹はモノレールで佳那子に会う。すかさず佳那子が挨拶する。

佳那子:「おはようございます友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、愛美、幸美」

友美:「おはよう、佳那子ちゃん、一応グラドルの撮影スタッフに伝えておいたわ、明日の土曜日の晩の事、家族にちゃんと伝えたの?」

佳那子:「はい、お母さんには同級生の愛美と幸美に誘われて泊まりに行くと言いました」

友美:「よかった。ところで部活の事は話した?」

佳那子:「お母さんに入部した部は何と聞かれて、水泳部と言ったら、種目は何、と聞かれました。飛び込み競技と言ったら、危ないからやめなさい、カナヅチでしょ、と反対されました」

友美:「それで何と言ったの?」

佳那子:「理想の御姉ちゃんのような先輩がいるからやめたくない、体育の授業に飛び込み競技があるからと、言いました。どうしても辞めて欲しいのなら、弟や妹ではなく、お兄ちゃん、お姉ちゃんを産んで欲しい、それでも辞めろと言うのなら自殺すると言って納得させました。もし自殺するとしたら飛び降りか、飛び込み台で首吊りか、飛び込みプールで溺死するかですね」

友美:「飛び降りだと、どこからになるのかしら」

佳那子:「私が住んでいるのは10階建ての分譲マンションの10階ですから」

洋美:「なるほど、そこからの景色、格別かしら?礼子が生活している校舎の寮と比べたら、どうなんだろうね?とにかく、お母さんに納得してもらえて良かったわ」

愛美:「本当に良かった。愛美、心配してたのよ」

幸美:「幸美も心配したわ。佳那子、これからも練習、頑張ろうね」

佳那子:「ところで新入部員、あと何人ぐらいが理想ですかね?」

友美:「出来ればあと二、三人いたら嬉しいのだけとね」

洋美:「二年生もあと一人か二人いたら良いのだけど、首女中の中で無理だからと言って他校から有望な選手候補生徒を招いて転校させるのも無理な話かもね」

会話を楽しんでいるうちにモノレールは到着し首女中と首女高の生徒達は下車して歩きだし校門をくぐり抜けていく。

☆☆☆☆☆☆

昼休みの昼食後、用便を足すべく便所に入ろうとした佳那子は友美に声をかけられた。

「佳那子ちゃん、トイレ?終わったら一緒に話さない?」

「は、はい」

佳那子はトイレで用便を済ませ、友美の側へ戻った。

「用便、終わりました。友美姉ちゃん」

「じゃあ、ベンチで話そう」

二人は校舎の外にあるベンチに座り会話を始める。

友美:「佳那子ちゃん、文科系の部活も考えた事ある?」

佳那子:「はい、色々みて廻りましたけど、どこも一長一短で迷いました」

友美:「迷っていたのね、私、あなたが水泳部飛び込み競技部門に入部してくれた事に感謝しているのよ。何か不足に感じる事、望んでいるものある?」

佳那子:「そうですね、友美姉ちゃんと二人きりで、ゆっくり話せる時間と場所ですね。私、本当は飛び込みプールよりも友美姉ちゃんの胸の中に飛び込みたいです」

友美:「えっ!?そうなの。私、佳那子ちゃんを抱きしめていると何か心が落ち着くと言うか、何か不思議な感じなのよ」

佳那子:「私も友美姉ちゃんに抱きしめられると幸せを感じます」

友美:「佳那子ちゃん抱きしめていい?幸せ感じそうなのよ」

佳那子:「勿論いいですよ、お願いします」

友美:「何か幸せ感じそうだわ、部活の飛び込みで厳しくしごくよりも」

佳那子:「私だって本当は愛美と幸美から友美姉ちゃんを奪って私自身の御姉ちゃんにしたいです」

友美と佳那子が抱き合っていると午後の授業開始のチャイムが鳴り響き二人は幸せ気分から引き離された。

「佳那子ちゃん、また放課後の部活時にね」

「はい、友美姉ちゃん、よろしくお願いいたします」

☆☆☆☆☆☆☆☆

放課後の部活が終わり、水泳部員達は着替えて帰宅する準備を整える。佳那子は葵奈姉妹と一緒に歩きだした。友美が佳那子に声をかける。

友美:「佳那子ちゃん、今日も頑張ったね、1日でも早く10㍍の台から飛び込む姿を見てみたいわ」

佳那子:「そんなに見たいのですか?3㍍からが限界で」

愛美:「愛美が練習して目指しているのは10㍍からの109Cよ」

幸美:「幸美も同じよ。愛美とシンクロでペアを組んでいるから」

洋美:「私はソロで103B、201Aなどを練習しているのよ」

佳那子:「色々呼び方があるんですね」

友美:「明日の土曜日は午前中で授業が終わって昼から部活、終了時刻も早いから、まず先に佳那子ちゃんの自宅マンションに寄ってそれから私達の家に行くことにしたいけど、どう?」

佳那子:「いいですよ。明後日、日曜日の準備と支度もしていきたいです」

愛美:「佳那子のお部屋、どんなのか気になる」

幸美:「ベランダからの景色も気になるわ」

洋美:「こらぁ愛美、幸美、上がる事しか考えないの!?」

佳那子:「私の部屋、汚いですけど、それで良かったら上がっても良いですよ。日曜日のグラドルの見学、何を来て行こうか迷っているんです」

友美:「迷うぐらいなら首女中の制服でも良いじゃん。もし、スタッフの方からグラドル体験してみない?と来たとしたら制服で対応出来るし」

佳那子:「でも撮影場所が何処なのか少し気になるんです。もし、体操服や水着での撮影となれば・・・」

友美:「やっぱり気になるのね、どおしても恥ずかしいから嫌なら見学で押し通せば良いじゃん。佳那子ちゃんには私達がグラドルで美しさを発揮する姿を見て欲しいのよ」

こうして葵奈姉妹と佳那子は一通り話し合い各々の駅でモノレールを降り帰宅していった。そして翌日の4月12日土曜日、午前中のみの授業が終り佳那子はプールに行かずに購買部にいた。日曜日のグラドルの事で気掛かりである。

(明日がグラドルか、何か体操服の事を気にしてしまう、どうしてかしら?)

そこへ美千代が入って来て佳那子に呼び掛ける。

「佳那子ちゃん、何しているの!?練習に来ないと駄目じゃないの、友美先輩に怒られるよ、また平手打ちされるわよ」

「ごめんなさい、美千代姉ちゃん、見てた物があったので」

美千代は佳那子の手を引きプールへと急ぐ。部室では友美が仁王立ちになっていた。友美は佳那子に問い詰める。

「もう佳那子ちゃん、何していたのよ?早く水着に着替えて!」

佳那子は水着に着替えプールサイドに出る。他の部員達は既に練習を始めている。友美は佳那子に言う。

「佳那子、練習が終わったらプールサイドに残るように」

そこへ愛美と幸美が挟む。

「どうして?友美姉ちゃん。愛美、気になる」

「幸美、わかった。佳那子、友美姉ちゃんに平手打ちされるのを喜んでいるからじゃないの」

友美は激しく怒り愛美と幸美に罵声を浴びせる。

「私に平手打ちされて喜ばないといけないのは愛美、幸美、お前達の方だ!出任せを言うな!」

部活の練習終了後、佳那子は着替えず水着のままプールサイドに残っていた。そこへ友美が佳那子のもとへ近寄ってきた。友美も、まだ水着のままだ。佳那子はおびえながら友美を見つめる。

「佳那子ちゃん、ちょっと話さない?」

「は、はい、どこで話すのでしょうか?」

「そぉね飛び込み台の一番高い台でどうかしら?」

佳那子は急に泣き出した。その泣き声はプール内に響きわたる。

「え〜っ、そこから飛び込め、ですか?私、怖いです、友美姉ちゃんよりも怖いです」

泣きじゃくる佳那子に友美は抱きしめ語りかける。

「ねぇ佳那子ちゃん、一緒に飛び込んで一泳ぎしたいのよ。付き合ってちょうだい、飛び込みプールでも競泳プールでも良いから」

「一泳ぎですか?飛び込みプールの一番低い台じゃ駄目ですか?」

「良いわよ、さっ飛び込みましょう」

友美と佳那子は飛び込み台から同時に飛び込みプールに飛び込んだ。佳那子が深く潜ろうとすると友美も付き添うように潜る。やがて二人は水面上へ顔を出し見つめ合う。佳那子が口を開く。

「私も友美姉ちゃんと一緒に飛び込めたら、と思っていたんです。前から」

「あら、そぉなの?そう言ってくれると嬉しいわ。そろそろ上がって着替えましょ、私の理想の妹、佳那子ちゃん」

「また友美姉ちゃんと一緒に飛び込みたいです」

他の部員に遅れるかたちで友美と佳那子は水着から制服に着替えた。着替え終り部室から出ると外には洋美、愛美、幸美が待っていた。

洋美:「友美姉ちゃん、佳那子ちゃん、今日はウチに佳那子泊まるから早く帰ろうよ」

佳那子:「出来たら購買部のぞきたいですけど、もう閉まっているかな?」

友美:「どうして覗きたいの?何か見たい物あるの?」

佳那子:「グラドルに適した体操服と思っていたんです」

友美:「そうなんだ、まだ開いていたら見てみよう」

佳那子は葵奈姉妹と一緒に購買部へと移動する。購買部の中には買い物をしようとする者、品定めをする者、レジに並ぶ者で混雑していた。

佳那子:「これじゃ人多いからゆっくり見れそうにないですね。私の自宅マンションに向かいましょう」

こうして佳那子は葵奈姉妹を伴って自宅マンションへ向かうべくモノレールに乗った。モノレールを降りて佳那子が住んでいるマンションに着いた。

友美:「ここが佳那子ちゃんが住んでいるマンションね」

洋美:「10階建ての10階に住んでいるのね」

愛美:「ベランダから何が見えるかな?」

幸美:「とにかく上がろうよ」

佳那子:「付いてきて」

佳那子は葵奈姉妹と一緒にオートロックの扉を通りエレベーターで10階へ登った。1011と書かれた扉の前で佳那子は口を開いた。

「ここが私の自宅です。良かったら上がって下さい」

佳那子と葵奈姉妹は中に入る。

佳那子:「ただいま」

葵奈姉妹:「お邪魔します」

奥から佳那子の母親が姿を現した。

佳那子の母親:「お帰り佳那子、あらこの人達は?」

佳那子:「同じ学校の部活の人達なの。四人とも同じ姉妹なの、今晩はこの人達の家に泊まらせてもらうつもりなの」

友美:「初めまして、葵奈です。こちらの三人は妹です。いきなり唐突で申し訳ございません」

佳那子の母親:「いえいえ、今晩は佳那子がお世話になります」

葵奈姉妹は佳那子の部屋に通された。友美、洋美は佳那子と明日の準備を進める。愛美と幸美はベランダの景色を眺めている。

佳那子:「友美姉ちゃんの部屋で宿題をしたいです。それと明日の準備は」

友美:「そう気にしなくても良いよ佳那子ちゃん」

佳那子:「そうですか?何か胸騒ぎと言うか予感と言うか・・・」

洋美:「気にしても始まらないよ早く仕度しましょ」

佳那子と葵奈姉妹の五人は仕度を整え佳那子の母親に挨拶をする。

佳那子:「行って来ます」

葵奈姉妹:「お邪魔いたしました」

佳那子の母親:「行ってらっしゃい」

佳那子の自宅を出た五人はエレベーターで一階に降りマンションを出てモノレールの駅へと歩き出した。歩きながら佳那子が口を開いた。

「狭苦しい部屋でごめんなさい」

「そんな事ないわ、四人で押し掛けてしまったから文句を言う気は毛頭無いわよ。私の方が申し訳ない気がするわ」

やがてモノレールの駅に着き五人はモノレールに乗り葵奈姉妹の自宅がある最寄り駅で降り歩き出した。

佳那子:「友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、愛美、幸美の住んでいる場所、閑静な住宅地ですね」

友美:「でも駅までが遠いから登下校が辛いのよ、早く家に着かないかな」

佳那子:「私はワクワクですよ」

数十分ほど歩き、ようやく葵奈姉妹の自宅に到着した。佳那子は目を丸くしていた。

葵奈姉妹:「ただいま」

佳那子:「お邪魔します」

台所から葵奈姉妹の母親の育美が迎えた。

育美:「お帰り、友美、洋美、愛美、幸美、それに佳那子ちゃんよね!?いらっしゃい」

佳那子:「初めまして!小湊です」

育美:「今晩は、ゆっくりしてね」

佳那子は葵奈姉妹と夕食を共にする。育美が口を開く。

「佳那子ちゃん、狭苦しいようだったらごめんね」

「いえ、何か修学旅行や合宿のようなノリで楽しそうです。前からワクワクしていました」

食事を終え入浴の時間になると、どの順番に誰か誰と入浴するかの話になった。葵奈家の湯槽は二人しか入らない。佳那子は口を開いた。

佳那子:「私は友美姉ちゃんと入りたいです」

友美:「そうなの?それじゃ愛美、幸美、先に入って来たら。そのあと私、佳那子と入るわ」

愛美と幸美が入浴の為に部屋を出て友美、洋美、佳那子の三人となった。

洋美:「佳那子ちゃん、今日の部活の反省会といきたいけど良いかしら?」

友美:「これ洋美、せっかくの楽しいムード踏み潰す気?やめてよ」

佳那子:「今日は練習遅れてすみませんでした」

友美:「工藤からの話では購買部にいたみたいね」

佳那子:「グラドルで使う体操服、どうしても気になって何か胸騒ぎが」

友美:「そうなの、ねぇ、佳那子ちゃん、あなたを呼ぶ時の言い方なんだけど、『佳那子ちゃん』ではなかく『佳那子』と呼ばせて欲しいけど嫌?」

佳那子:「良いですよ、私、友美姉ちゃんの胸に飛び込んで泳ぎたいですよ」

友美:「飛び込みたいのは私の方なのよ、佳那子、あなたの胸に飛び込んで、あなたを妹にしたいのよ」

洋美:「佳那子ちゃん、私も『佳那子』と呼ばせて欲しい。あなたの胸に飛び込んで、あなたを妹にしたいのよ」

佳那子:「良いですよ洋美姉ちゃん、これで私、友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんの妹になれた実感が湧きます。これに愛美と幸美も私の胸に飛び込んでくれたら、もう私、何て言ったら良いのか」

友美は佳那子を抱きしめる。同時に洋美も友美と一緒に佳那子を抱擁した。

☆☆☆☆☆☆☆

その頃、愛美と幸美は入浴しながら話し合っていた。内容はメールのやり取りをしている三矢悠斗の事である。二人は友美、洋美、佳那子に内緒でやり取りを継続しているのだった。

幸美:「愛美、今の所、友美姉ちゃんにバレてないね?」

愛美:「バレてないと思う。洋美姉ちゃんや佳那子にも知られないようにね」

幸美:「ねぇ愛美、どんな人なのか気にならない?」

愛美:「なるわ。でもどうやって事を進めるか悩むよ」

幸美:「一度、TELで話してから考えた方が良いじゃん」

愛美:「それだと、こっちの番号教えるか、向こうの番号教えてもらうかのどちらかをとらないといけないじゃん」

幸美:「写真は私達、写真集出してるから携帯から送る必要はないと思うけど・・・・」

愛美:「向こうは、会いたいと言ってない?」

幸美:「会えたら嬉しいけど強引には言えないし頼めないと言ってるよ。悩んでいるのかなぁ?」

愛美:「もうそろそろ上がろうよ、次は佳那子と友美姉ちゃん、洋美姉ちゃんに入ってもらわないとね」

幸美:「そうよね、ぼちぼち上がるようにしようか」

愛美と幸美は風呂から上がり脱衣場である洗面所で服を来て部屋へもどる。部屋に戻ると友美と洋美が佳那子を抱擁しているのだった。

愛美:「友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、佳那子、何しているの!?」

愛美の声で友美、洋美、佳那子は驚きの表情をあらわにした。

幸美:「次、お風呂に入ってちょうだい」

友美:「入ってくるわ、佳那子と一緒に」

洋美:「私も一緒に入る、佳那子いこう」

佳那子:「はい、友美姉ちゃん、洋美姉ちゃんと一緒の入浴、夢みたい」

佳那子は友美と洋美に連れられて風呂場へと向かう。部屋には愛美と幸美の二人になった。

☆☆☆☆☆☆☆☆

洗面所で友美、洋美、佳那子は脱衣して全裸になり入浴を始める。

友美:「佳那子、ごめん。狭い湯槽で」

佳那子:「いえ、友美姉ちゃん、洋美姉ちゃんと一緒なら苦にはならないです。感無量です」

洋美:「良かった、普段は友美姉ちゃんと二人で入る事多いからね、佳那子と入浴できて嬉しいわ、三人姉妹のような感じがする」

友美:「このノリで三人一組でやる飛び込み競技があればいいんだけどね」

佳那子:「もし、そうだとしたら私、友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんから、今よりも厳しくしごかれそうですわ」

洋美:「そういえば私、佳那子を平手打ちした事ないわ、愛美と幸美にはあるけど。友美姉ちゃんはあるんじゃない?佳那子を平手打ちに」

友美:「ある。その時の佳那子、可愛いく見えてしまうから手を出してしまうのよ」

佳那子:「友美姉ちゃんの平手打ち、メチャメチャ痛いですけど愛情満点です。洋美姉ちゃんの平手打ちはどうなのか、まだ不透明です」

洋美:「愛情満点と評価するなんて佳那子ちゃん、しっかりしてるわ、愛美と幸美よりも。一度でも良いから私も叩かせて欲しいなぁ。佳那子ちゃん、私に平手打ちされるのは嫌?」

佳那子:「本当は嫌ですけど友美姉ちゃん、洋美姉ちゃんからだったら何億発でも我慢します。洋美姉ちゃんからだと愛情はどれくらいなのかなぁ?」

洋美:「ありがとう佳那子、そう言ってくれると嬉しい。可愛い妹みたい」

友美:「私と洋美にとって佳那子は過ぎた妹だわ。可愛いがらなきゃ」

佳那子:「どころで友美姉ちゃんのオッパイ程よい大きさで素敵です。触って揉んでみたいです」

友美:「ちょっと佳那子ったら、もう仕方ないわ、良いわよ。佳那子のオッパイも揉ませてね」

洋美:「女同士だから良いじゃん。佳那子ますます虜になっていくわね」

佳那子:「あ〜ん虜になる〜このまま溺れてしまいたい友美姉ちゃんの中で」

友美、洋美、佳那子の三人は、しばらく入浴を楽しみ続けた。

☆☆☆☆☆☆

友美、洋美、佳那子が入浴している間、愛美と幸美は三矢悠斗とのメールのやり取りを継続していた。

愛美:「悠斗さんに通っている首女中の事、話す?」

幸美:「そうよね気にしている見たいだから教えちゃおうかしらね」

愛美:「会いたいと思う?」

幸美:「そぉね会いたいと言ってみようかな?スリルありそうだし」

愛美:「友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、佳那子には内緒でね」

幸美:「OK、会いたいと言ってみるわ」

愛美:「もう少しで友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、佳那子が風呂から上がって来るし宿題の準備しよう」

しばらくして風呂から上がった友美、洋美、佳那子が部屋に戻ってきた。「入って来たわ。友美姉ちゃん、洋美姉ちゃんとの入浴、気持ちよくて楽しかったわ」

佳那子の声に愛美と幸美は安堵の表情を浮かべる。洋美が口を開いた。

「これから宿題して、それから明日の打ち合わせといこうか」

五人は宿題を済ませる。佳那子は友美と洋美から勉強の指南を受けた。

「友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんからの勉強の指南と助言、楽しかったです」

佳那子の声に友美と洋美は安堵の表情をあらわにする。友美は言った。

「良かったわ、嬉しい、私、お姉ちゃんとして精進しなくちゃ、佳那子の為にも。何はともあれ明日の準備しなくては」

「そうですね、待ってました。私、グラドルで着用する体操服の事が気になっていたんです。見学を前提に考えているとはいえ何か胸騒ぎが」

佳那子の声に友美は衣服を収納しているタンスの引き出しを取り出し佳那子の眼前に置いた。引き出しの中にはグラドルで使用する体操服が色とりどり入っている。佳那子は驚きの表情で見つめた。

「友美姉ちゃん、これってみんな体操服ですか?」

「そうよ、みんな首女中の購買部で購入したものよ、グラドル用にね」

佳那子は体操服の多さに驚きを隠せなかった。

「友美姉ちゃん、沢山ブルマを持ってますね、紺ブル、赤ブル、青ブル、緑ブル、凄い数でビックリです。同じ紺ブルでも白のサイドラインが太めのシングルライン、ダブルライン、細めのトリプルライン、まるでコレクションみたいです」

「洋美、愛美、幸美も同じ数を各々所有しているのよ」

「えーっ!そっ、そんなに?これだけの数を揃えるのに金が沢山必要じゃないですか、どうやって?」

「グラドルでの写真集、DVD、Blu-rayで儲けた金で色んな色のブルマ、水着、制服を購入しているのよ。色んな撮影要望に対応できるようにね。グラドルは四歳の頃からやっているのよ」

友美の説明に佳那子の顔つきはカルチャーショックを受けた表情に変貌しているのだった。更に友美は水着も出して佳那子に見せた。

友美:「佳那子、グラドルで着用するスクール水着はこれぐらい所有しているのよ」

佳那子:「えーっ、こんなに!白のサイドラインがシングル!ダブル、トリプル、沢山有りますね、これからもグラドルで稼いで購入し揃えたんですね、明日のグラドルにはどれを着用する予定ですか?」

友美:「明日に関しては、ちょっとスタッフからのメールチェックするわ。ふむふむ、今日は向こうが用意したものを着用ということみたいだけど、一応は無地の紺ブル、赤ブル、スク水は用意しておこうと思っているのよ」

佳那子:「そうなんですか、何かワクワクしそうで今晩は眠れそうにないです」

友美:「そうなんだ、佳那子、明日は早いから、そろそろ寝る準備を始めようよ。私だってワクワクするものあるのよ」

佳那子:「寝場所はどうするのですか?」

愛美:「愛美は幸美と一緒に抱き合って寝るので一つ空くから、そこで寝たらどう?」

佳那子:「私は友美姉ちゃんと一緒に寝たいわ」

友美:「そう言ってくれると嬉しいわ、佳那子、一緒に寝ましょ、楽しい夢が見れそうだわ」

五人は其々のベッドに入って消灯し就寝する。そして真夜中過ぎ、佳那子は目を覚ました。同時に一緒に抱き合って寝ている友美も目を覚ます。

「佳那子、目を覚ましたの?私トイレに行きたくなったのよ」

「友美姉ちゃんがトイレなら私も行きたくなりそうです」

「じゃあ一緒に行きましょ、静かにね」

友美と佳那子は部屋を出てトイレへ歩き先に友美が用便を済ませ、その後に佳那子が用便を済ませる。それが終わると二人は部屋へ戻る為歩きだす。すると部屋の方から洋美が歩いてきた。

「洋美もトイレ?今、私と佳那子、トイレに行って来た所よ」

「そぉなの?何か不思議だわ、同時に目を覚ましてトイレとは」

友美と佳那子はベッドで再び抱き合って寝る。そして4月13日午前5時、目覚ましのアラームが鳴り響き五人は起床する。佳那子が挨拶する。

「おはようございます。6時に待ち合わせでしょ」

「そぉね、急いで仕度しよう」

五人は各々の制服を来て着替えを済ませ一階の台所へ降りる。朝食はトーストで済ませ歯磨きをして準備を急いだ。仕度が整った時は5時半であった。

「忘れ物はないね?じゃあ行って来ます」

「お邪魔しました」

佳那子と葵奈姉妹の五人は待ち合わせ場所のモノレールの駅へと歩きだす。空は雲一つ無しの快晴である。洋美が佳那子に話し掛ける。

「佳那子、昨夜は眠れた?」

「はい、お陰様で。機会があれば洋美姉ちゃんと寝てみたいです」

「そぉなの?じゃあ、また泊まりに来る?」

「出来ればよさせて頂きたいです」

やがて五人は待ち合わせ場所のモノレール駅の駅前ロータリーに到着する。時刻は午前5時50分を指していた。周囲を見回すと人影は疎らで何台かの車、バス、タクシーが行き来している。

「もう少ししたらスタッフが来ると思うわ、佳那子、スタッフの人への挨拶はちゃんとしてね」

友美が口を開く。佳那子が友美に問いかける。

「はい、まだ来てないみたいですね。どんな現場になるのか気になってきました。グラドルの撮影って毎回場所同じですか?それとも違うのですか?」

「毎回変わると言った感じよ。私だって、洋美、愛美、幸美だって何処でやるのかワクワク気分なのよ。もうすぐ・・・あっ来たわ、あれよ」

友美が指差す方を見ると一台の大きめのワゴン車が走って来て速度を落とし佳那子と葵奈姉妹の近くに停止した。ワゴン車からカメラマンとおぼしき女性が降りてきて五人に挨拶する。

「おはよう友美ちゃん、洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃん」

「おはようございます、よろしくお願いいたします」

五人は口を合わせて挨拶する。女性カメラマンは水色のジーパンに白の長袖のポロシャツを着ていて髪型はブロンズに染めたソバージュでありデコは大きく出していた。佳那子の姿を見ると友美に訪ねる。

「友美ちゃん、この子が見学希望なの?」

「はい、一応は見学を前提と言う事なんです。同じ学校の部活の後輩です。佳那子、紹介するわ、女性カメラマンの長野明子(おさの あきこ)さんよ」

「おはようございます、一応見学のつもりで来させて頂きました」

佳那子が挨拶すると女性カメラマンの長野は自己紹介で挨拶する。

長野:「おはよう、私は葵奈姉妹の撮影担当の長野明子です。あなたの名前は何と言うの?」

佳那子:「小湊佳那子と言います。初めまして」

長野:「佳那子ちゃん、だね。佳那子ちゃんもグラドルやってみない?」

佳那子:「えーっ?私がグラドルですか!?」

愛美:「佳那子、やろうよ」

幸美:「佳那子のグラドルとしての活躍、良いじゃん」

洋美:「佳那子、お願い」

友美:「私からも御願いしたいの、佳那子と一緒にグラドルやりたいのよ」

嘘に包まれた気分になった佳那子は目を丸め心を決めた。

「やらせて下さい、本当は私グラドルやりたいと思っていたんです」

佳那子の決意に長野は本日の内容をのべる。

「今日の撮影は廃校になった中学校の校舎で行う予定なのよ!現場まで案内するので乗って下さいね」

五人は長野に促されワゴン車に乗る。ワゴン車は撮影現場へと走りだした。その車中で友美は佳那子に言う。

友美:「佳那子、実は長野さん、首女中、首女高、首女大の出身なのよ」

佳那子:「えーっ?そうなんですか?」

佳那子が信じられない顔をすると長野が佳那子に話し掛ける。

長野:「佳那子ちゃんは友美ちゃん、洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃんと同じ学校ですね?」

洋美:「はい、そうです。愛美、幸美とは同じクラスなんです。部活は四人と同じ水泳部飛び込み競技部門です。」

長野:「飛び込み競技とグラビアのコラボレーションはベストマッチだと思いますよ」

色んな会話が飛び交っているうちに車は撮影現場とおぼしき古びた中学校の校門前に到着した。時計は午前7時30分を指していた。敷地内には数人の撮影スタッフの姿が見て取れる。ワゴン車を降りた長野と葵奈姉妹、佳那子は、スタッフに歩みよる。友美が挨拶する。

「おはようございます、今日も1日よろしくお願いいたします」

洋美、愛美、幸美、佳那子も、

「おはようございます、今日も1日よろしくお願いいたします」

と復唱するように挨拶する。最初の撮影は制服姿での撮影で始める事になりどの制服を着用するかの問題になった。五人の制服は首女中の物だが葵奈姉妹は青色系のセーラーブレザーで佳那子だけ緑色系のセーラー服である為スタッフ達は迷いためらうが五人ともスタッフ側が用意した紺色のブレザー、灰色系のチェック柄のスカート、白のカッターシャツ、赤色の蝶ネクタイの制服を着用しての撮影になった。当然五人分用意されている。体操服も葵奈姉妹が体育の授業で着用しているのと同じ紺ブルで五人分用意されていた。葵奈姉妹と佳那子は校舎の中の教室の一つで着替える事になった。長野とは別にメイク担当の女性スタッフもいるのだった。長野が五人に言うのだった。

「制服での撮影後は体操服での撮影ですよ」

佳那子が口を開いた。

佳那子:「あの、ものは御言葉ですけど制服の下に体操服を着こんでおくのはどうかと思ったのですけど、良いでしょうか?」

長野:「スカートの中が紺色のブルマだったら良いんじゃない、マリリンモンローみたいに風でまくり上げる感じでやるのも良いかもね。写真のみならず動画撮影もやってみなくてわね」

メイク担当:「着替え終わったらメイクですよ」

葵奈姉妹と佳那子は用意された体操服に着替え、その上に撮影用の制服を着用しメイクの施しを受けた。佳那子にとってメイクは発体験である。メイクが完了すると五人の撮影が開始される。最初は校門前で始まり下駄箱前、廊下、教室、科学室、音楽室、美術室、家庭科室、水のない空の25㍍プールの側などで長野が使用している一眼レフのシャッター音が響きわたる。同時にDVD、Blu-rayの為の動画撮影も遂行される。葵奈姉妹は勿論の事、佳那子はワクワク嬉し顔であった。制服姿での撮影が終わると次は体操服姿での撮影に移行するのだが友美は長野とスタッフに口を開いた。

「制服の下に体操服を着こんでいますので制服を脱いで体操服になるシーンの撮影をして頂きたいのですが」

「オッケー、撮影始めますよ、和気あいあい楽しい表情でいってね」

撮影開始の合図が鳴ると五人はブレザーを脱ぎ、蝶ネクタイを外してスカートを脱ぎ、カッターシャツを脱いで体操服になる。

「カット!いい感じよ、このノリで体操服姿での撮影も明るく楽しく行きましょうね」

五人の体操服での撮影は体育館、グランドで行われる。愛美と幸美のバク宙と前宙の動画撮影している間、佳那子は友美、洋美と一緒に三角座りをしてその光景を眺めている。洋美が佳那子にささやく。

「佳那子、どう?グラドルの撮影は」

「感無量です。楽しくて恥ずかしさは吹き飛んでしまいそうです」

グランドではドローンを使用しての上空からの撮影も並行して行われる。五人で準備体操、トラックをランニング、鉄棒での運動の撮影も行われる。撮影が進められているうちに昼食休憩の時間になった。昼食はスタッフ達と用意された弁当を食べる事になった。弁当のメニューはスパゲッティ、唐揚が入った大盛のハンバーグ弁当である。予想外の豪華さに佳那子は目を丸くしている。食べ終わると、スタッフやカメラマンとの会話になった。

スタッフ:「佳那子ちゃん、初めての撮影はどう?緊張した?」

佳那子:「楽しくて緊張感、吹き飛びました。感無量です」

スタッフ:「友美ちゃんは、どんな先輩?」

佳那子:「理想の御姉ちゃんです。怒ると平手打ちが飛ぶくらいメチャメチャ怖いです。でも友美姉ちゃんに平手打ちされるのなら何億発でも我慢出来ます。洋美姉ちゃんに対しても同じです」

スタッフ:「そうなんだ、スタント撮影はどうかな、と聞きたいけど」

佳那子:「えっ?スタント撮影ですか?」

長野:「映画でのスタントマンがやる撮影よ」

佳那子:「あの、スタントの内容は何でしょうか?」

スタッフ:「佳那子ちゃんが友美ちゃん、もしくは洋美ちゃんに平手で張り倒されて泣くシーンと行きたいのだけど」

友美:「ちょっと、佳那子は、スタント経験、皆無ですよ」

洋美:「佳那子は女優じゃなくてグラドル志望ですよ」

佳那子:「良いですよ、私、挑戦してみたいです」

こうしてスタント撮影が行われる事になった。まずは洋美が佳那子を張り倒すシーンの撮影から始める事になった。友美、愛美、幸美は息を飲んで見守る。洋美が佳那子に話す。

「佳那子、初めての平手打ちだけど、大丈夫?私、気になる」

「良いですよ、洋美姉ちゃん、思いっきり叩いてくれないと倒れないので」

「わかったわ、佳那子、いくわよ我慢してね」

こうして撮影スタンバイされ、撮影開始の合図が鳴り響き撮影が始まり佳那子の左頬に洋美の強烈な平手打ちが炸裂した。

バチーン!

佳那子は倒れこみ泣き出した。しばらく泣き続けているとスタッフが

「カット!オッケー」

と合図する。洋美は佳那子に駆け寄って抱きしめる。

「佳那子、大丈夫?痛かった?」

「痛いけど我慢出来ます。次は友美姉ちゃんからですよね」

友美との撮影でも佳那子は友美からの平手打ちに耐えた。

「カット!オッケー!佳那子ちゃん、良いスタント演技だったよ」

スタッフの声に佳那子は嬉し涙で返事する。

「ありがとうございます」

スタッフが佳那子に声を掛ける。

「佳那子ちゃん、何かやってみたい演技、撮影はある?」

「出来る事なら、プールで水着撮影に挑戦したかったです」

「そうなんだ、でも老朽化がひどく浄化装置が壊れて水を入れる事が出来ないんだ。おまけに水道とトイレは決められた場所でしか使えないんだ」

「残念ですね、閉校までは生徒達が通っていたんですね」

「老朽化がひどくなり近隣の中学校との統廃合で閉校になったんだ」

「何か悲しい結末みたいですね、私と葵奈姉妹のグラドル撮影がきっかけで再び開校の動きが起こる事を祈りたいです。そうよね友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、愛美、幸美」

佳那子の言葉に葵奈姉妹はうなづく。友美は佳那子に問いかける。

「佳那子、次は何の演技、撮影に挑戦したい?」

「そうですね、またグランド走りたいです。その撮影で」

「じゃあ、走ろう。掛け声を出してね、いち、に、いち、に」

五人は掛け声を出しながらグランドを走り出す。長野はカメラを動画撮影モードに切り替えて五人を追いながら撮影する。時折写真撮影モードでもシャッターを切る。気が付くと五人は十週近く走っていた。長野は声を掛ける。

「そろそろ戻って」

五人はグランドを走り終えスタッフや長野の元へ戻る。佳那子の顔面には大量の汗が流れていた。グラドル撮影は午後3時半過ぎで終了し五人は着替えで使用している教室で撮影用の体操服を脱ぎ、各々の首女中の制服に着替えた。長野が五人に声を掛ける。

「首女中の制服でも最後の記念撮影したいのでお願いいたします。こちら側から用意した制服、体操服はこちらの専用ケースに入れて下さいね。あと忘れ物の無いように気を付けて校門前に集合してね」

撮影で着用した制服と体操服をケースに入れ、五人は各自の荷物と貴重品を持ち校門へ移動した。友美が佳那子に声を掛ける。

「佳那子、真ん中に立ったら」

佳那子をセンターに五人はラストの記念撮影に挑んだ。こうしてグラドル撮影は終了し五人はスタッフに挨拶をする。

「お疲れ様でした。ありがとうございました」

「お疲れ様、忘れ物は無い?気を付けて帰って下さいね」

五人は朝乗って来たワゴン車に乗り長野の運転で帰路につく。時刻は午後4時を廻っていた。ワゴン車は動き始め走り出す。その車中で長野がハンドルを握りながら佳那子に問いかける。

「佳那子ちゃん、今日のグラドル撮影はどうだった?」

「はい、とっても楽しかったです。ありがとうございました」

「何が一番楽しかったですか?」

「友美姉ちゃんと洋美ちゃんの平手打ちによるスタント撮影が一番最高で楽しかったでした。痛かった事が楽しかった事になりました」

「そうなんだ、またやりたい?」

「是非とも、やりたいです。でも親には見学としか言ってないので写真集に載せる名前は本名ではない方が・・・」

そこへ友美が口を開いた。

「じゃあ芸名を考えて載せたらどう?『葵奈かな子』か『葵奈夏奈美』でいくのはどう?」

「葵奈かな子にしてほしいです。友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんの妹でありたいので」

再び長野が口を開いた。

「本格的にグラドル活動考えたいのなら本当は保護者もしくは親権者の同意書が必要なのよ。今回は体験と言う事だからよしとします」

「その段取りは友美姉ちゃん達と相談します」

「親御さんに同意してくれると良いね。帰りはどこまで送れば良いの?」

「私が住んでいる分譲マンションの側がありがたいです」

佳那子が住んでいるマンションの側に着いた時、時刻は午後6時前であった。葵奈姉妹は佳那子と降りたいと長野に申し出た。

「長野さん、私達もここで降り失礼します。佳那子の家に寄って行きたいので。今日はお疲れ様でした。ありがとうございました」

「わかったわ。今日はお疲れ様、忘れ物は無い?気を付けてね」

長野は五人を降ろした後、帰っていく。それを見送った後、葵奈姉妹は佳那子を送るべくマンションの入口へ歩く。佳那子は葵奈姉妹に礼を言う。

佳那子:「友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、愛美、幸美、今日はありがとう。とっても楽しかったわ。また明日の月曜日に会いましょう」

友美:「いえ私だって佳那子との撮影、楽しかったわ」

洋美:「私も楽しかったわ、また参加できると良いね」

愛美:「また参加しようね」

幸美:「ご両親に解ってもらえたら良いね」

佳那子は自宅へと帰るべくマンションの中へと姿を消す。それを見届けると友美は三人の妹に促す。

「洋美、愛美、幸美、帰ろうか」

四姉妹は帰宅すべくモノレールの駅へと歩きだした。

☆☆☆☆☆☆☆☆

一方、愛美と幸美とメールのやり取りを続けている三矢悠斗はファーストフード店てコーヒーを飲みながら思案に暮れていた。愛美と幸美から首女中に通っている事を教えれたのである。

(もし仮に会うとしたら、どうすれば良いのだろうか、モノレールの駅前はどうだろうか、会って最初はファーストフード店か、ケーキバイキングか、スイーツバイキングのお店で話し会うのが良いのか)

悠斗はメールを送る。

☆☆☆☆☆☆☆☆

佳那子とグラドル撮影に挑んだ日の晩、愛美と幸美は友美と洋美の目を盗んで三矢悠斗のメールを凝視していた。やがて就寝となり二人はトイレに行くふりをしてメールの返信内容を話し合う。

愛美:「ねぇ幸美、悠斗さんと会う事だけど、どうする?」

幸美:「そぉねぇ最初はカラオケ店か、ファーストフード店かバイキング形式の店が良いと思うけど」

愛美:「目的はグラドルをやっていく上での参考意見を聞くためでどう?」

幸美:「良いかも、どうやら悠斗さんも愛美と幸美達の写真集を買って見ているみたいよ」

愛美:「何か電話番号らしきものも記載されているわ、登録しておこうよ」

幸美:「どうやら悠斗さんの携帯の番号みたいね」

☆☆☆☆☆☆☆☆

翌日の4月14日月曜日、佳那子はモノレールにて友美と洋美に会い挨拶をする。

佳那子:「おはようございます。友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん。昨日は楽しかったです。ありがとうございました」

友美:「いえ、こちらこそ、私も佳那子とのグラドル楽しかったわ」

洋美:「私も同感よ。昨日は佳那子、私の平手打ち、初体験だったよね、痛かった?もし痛かったらごめんね」

佳那子:「いえ、洋美姉ちゃんのも愛情満点でしたよ、あれ愛美と幸美は?」

洋美:「二人はあそこで何か話し合っているよ」

友美:「ねぇ佳那子、次は水着での撮影があったら良いと思う?」

佳那子:「良いと思います。友美姉ちゃんに選んで頂いたスクール水着で撮影に挑みたいです、その時はプールに飛び込むシーンの動画撮影があれば嬉しい事、この上無しですね」

洋美:「その為にも今よりも高い台から飛び込めるようにならないといけないよね。実は私、佳那子とシンクロダイブのペア組んでみようかと思っているのよ、今よりも佳那子を厳しくしごかせて欲しいの」

佳那子:「洋美姉ちゃんにだったら喜んで受けます。昨日の撮影の写真集はいつ頃出るのでしょうか、楽しみです」

話し合っているうちにモノレールは到着し首女中と首女高の生徒達は降りて校舎へと歩きだす。そして1年A組の教室で佳那子は愛美と幸美に挨拶する。そこへ同じ学級の生徒が二人話し掛ける。

生徒A:「おはよう佳那子、あれから部活どうした?」

佳那子:「水泳部飛び込み競技部門にしたわ」

生徒B:「えーっ!マジで?」

佳那子:「だって体育に飛び込み競技があるんだもん」

生徒A:「ねぇ愛美、幸美、昨日はどうしてた?」

愛美:「佳那子を誘ってグラドル撮影だったのよ」

幸美:「お姉ちゃん達も一緒だったよ、五人での撮影だったのよ」

佳那子:「昨日は楽しいグラドル撮影だったわ」

生徒A:「へぇーっ、そぉなんだ」

生徒B:「道理で佳那子、楽しそうだなぁと思ったわ」

やがて授業開始になり愛美、幸美、佳那子たちは席に着く。

☆☆☆☆☆☆☆

昼休み、愛美と幸美は三矢悠斗とメールのやり取りに腐心していた。

幸美:「愛美、悠斗さんと会う約束の日時設定はどうする?」

愛美:「ちょっと幸美、話し合わずに、いきなり会うと言うの?」

幸美:「話した方が良いのかな?」

愛美:「良いに決まってるじゃん。掛けるとしたら何時頃が都合が良いのか伝えないと駄目よ」

幸美:「そうかな?話し合いで場所、日時を決めるべきかな?」

愛美:「そうだと思うよ」

一方、佳那子は三年A組の教室で友美、洋美、真美奈と話し合っていた。

真美奈:「洋美ちゃん、佳那子ちゃんとペアを組む気なのね」

洋美:「はい、そうなんです。井之上先輩、シンクロダイブで」

真美奈:「佳那子ちゃん、友美と洋美ちゃんの妹みたいね、面白いわ」

友美:「放課後、居残りで佳那子を特訓で厳しくしごくつもりなの」

真美奈:「それだったら私も混ぜて欲しいですわ」

佳那子:「真美奈姉ちゃんって何かお金持ちのお嬢様の雰囲気がします」

友美:「真美奈は資産家の令嬢よ」

佳那子:「そうなんですか?どんな家なのか気になりそうです」

友美:「かなり大きいわよ、首女中のプールに比べたら小さいけど庭に小さな飛び込みプールがあるのよ」

佳那子:「えーっ?そぉーなんですか?」

友美:「そぉよ。私、洋美、愛美、幸美と訪れて飛び込んで泳がせてもらった事あるのよ」

佳那子:「一度、見てみたいです」

真美奈:「いつでも言ってちょうだい」

そして放課後、佳那子が友美、洋美、真美奈から居残り特訓を受けている頃、愛美と幸美は二人のクラスメイトとの会話を楽しんでいた。

生徒A:「愛美、練習はどう?陸上の練習は暑いよ」

生徒B:「バスケも暑いよ、水泳部は良いなぁ、プールで気持ち良いなぁ」

愛美:「それじゃ、練習後の汗流しで一泳ぎ、一飛び込みしていく?」

幸美:「お姉ちゃんのような上級生が喜んで迎えてくれるよ」

生徒A:「そんな事したら水泳部に入部させられるじゃん」

生徒B:「ところで佳那子はどうしたの?居残り特訓?」

愛美:「そうよ、お姉ちゃん達に、泣きながらしごかれているよ」

幸美:「佳那子、葵奈姉妹に入る為に頑張ってるからね」

やがて居残り特訓を終えた佳那子が友美と洋美、真美奈に連れられて部室から出て来た。その日の晩、愛美と幸美は自宅で友美と洋美の目を盗み悠斗とのメールのやり取りに腐心する。就寝後、愛美と幸美はトイレに行くふりをして廊下で話し合う。

愛美:「幸美、悠斗さんに、こちらの番号、教えておいたわ」

幸美:「オッケー、かかってくるかな?」

愛美:「だと良いなぁ、何を話そうか迷うよね

幸美:「バイキングで食べたいと相談してみようかな」

二人が話し合っていると友美がやって来て二人に声を掛ける。

「愛美、幸美、お前らそこで何をしている?早くベッドへ戻って寝ろ!起きれなかったら平手打ちにするぞ」

友美に叱られ愛美と幸美はベッドへ戻り就寝する。

翌日の4月15日火曜日、葵奈姉妹は普段通りモノレールで登校し佳那子と会う。愛美と幸美は談笑を装おってメールのやり取りに余念が無かった。そうとも知らず友美と洋美は佳那子と談笑を楽しんでいる。そして昼休み、愛美と幸美は校舎の裏側で悠斗に電話を試みようとスマホを手に取った。今頃の時間帯なら昼休み(悠斗の職場も)だろうと、二人は見つめ合って悠斗の番号に掛ける。手が震えそうな気持ちを抑えて応答を待つ。愛美がスマホを耳に当てた。やがて相手から反応があり声が響いてきた。声は三矢悠斗である。

悠斗:「もしもし」

愛美:「もしもし、あっ、あの、三矢悠斗さん、ですか?」

悠斗:「はい、そうなんですけど、誰の声かな?」

愛美:「愛美です。今、昼休みで、今そばに幸美もいるんです」

悠斗:「こっちも今、昼休みなんだ。はじめまして」

愛美:「葵奈姉妹および愛美達の写真集、楽しんでますか?」

悠斗:「はい、楽しませて頂いてますよ。感想はこの格好だったら、こうするシーンがあれば良いなぁと感じるのが多かったですね」

愛美:「ありがとうございます。実は愛美達、昨日次の写真集の為の撮影に行っていたんです。今までは四人姉妹だったんですけど昨日の撮影ではニューフェイス1人加わって五人なんです。楽しみにして下さいね」

悠斗:「そうなんだ。どんな撮影だったのかなぁ?望み通りのシチュエーションが盛りだくさんだったら良いですけど言葉で話しただけでは伝わりそうにないなぁ」

愛美:「どんなシチュエーションをお望みですか?会って話を聞けたら良いなあと思うのですが」

悠斗:「会う約束の日時と場所、設定が出来れば良いのだけと」

愛美と幸美は自宅から最寄りのモノレールの待ち合わせ場所に決める。

愛美:「今度の日曜日の午前11時にどうですか?」

悠斗:「良いですよ」

幸美:「もしもし、悠斗さん、私、愛美の妹、幸美です。当日はスイーツバイキングに連れてってくれたら嬉しいの、お願い」

悠斗:「解りました。もうすぐ昼休みが終るので、何かあればまた話したいです」

愛美:「そうですね、愛美達も昼休み終るのでまたお話ししましょう。では」

悠斗との会話を終え愛美と幸美は、お互いに目を会わせうなづき合い教室へと戻った。その日の部活終了後の下校時、佳那子は友美、洋美、真美奈と談笑を楽しんでいた。

友美:「佳那子、今日も練習ご苦労さん、いつも楽しませてくれて嬉しいわ」

佳那子:「私だって友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、真美奈姉ちゃんのお陰で飛び込みに自信がつきそうです」

洋美:「佳那子も5㍍から飛び込めるようになったね。嬉しいわ」

真美奈:「ゆくゆくは7.5㍍、10㍍から美しくかっこよく飛び込む佳那子ちゃんを拝ませて欲しいですわ」

佳那子:「頑張ってみます。見たいんでしょうか?」

真美奈:「見たいですよ。佳那子ちゃんは友美と洋美ちゃんから平手打ちされるよりも10㍍の飛び込み台から飛び込む方が美しくてかっこいいと思いますわ」

佳那子:「やっぱり、そうですか・・・ところで話を変えて申し訳ないのですが、今度の日曜日、真美奈姉ちゃんの家見てみたいです」

真美奈:「解りましたわ」

友美:「私もよさせて欲しい。洋美と佳那子と一緒に」

洋美:「私も行きたい。でも愛美と幸美はどうする?」

友美:「あいつらは、はしゃぎ出すから今回は抜きでいきたい。出来れば」

佳那子:「愛美と幸美の二人、あそこで話し合っていますわ」

佳那子が指さす方向を見ると首女中とモノレールの駅の近くの公園のベンチで話し合っているのが見えた。真美奈は迎えの車に乗るべく友美と洋美、佳那子に別れを告げる。

真美奈:「じゃあ私、迎えが来ているから、これにて失礼するわ。友美、洋美ちゃん、佳那子ちゃん、また明日」

友美:「真美奈、また明日、水曜日に」

洋美:「井之上先輩、また明日も、お願いします」

佳那子:「真美奈姉ちゃん、明日も、お願いします」

真美奈を乗せた車は帰っていく。友美、洋美、佳那子はモノレールの駅へ歩きだすが、洋美が口を開いた。

「友美姉ちゃん、愛美と幸美どうする?」

「今日は先に帰ろう、あいつら、自分自身で帰って来れるし。佳那子、一緒に話そう」

友美、洋美、佳那子の三人はベンチで話し合っている愛美と幸美を残してモノレールの駅に入る。

佳那子:「今度の日曜日、楽しみです。真美奈姉ちゃんの家」

友美:「そう?真美奈の家、ウチの家よりも大きいからね」

洋美:「愛美と幸美はどうする?友美姉ちゃん」

友美:「そうだな、一応声はかけておこうか帰って来たら」

佳那子が先にモノレールを降りて帰って行くと、友美と洋美は自宅の最寄り駅で降り歩きだす。

友美:「こうやって二人きりで歩くの久しぶりだよね、洋美」

洋美:「そぉよね、去年、私が首女中に入学してからは友美姉ちゃんと一緒に歩いて登下校したものだったわ。友美姉ちゃんが二年生で私が一年生だった頃を思い出すわ」

友美:「一年前とはいえ懐かしい感じだわ。愛美と幸美、佳那子は小6だったよね」

感傷に浸って会話をしているうちに二人は自宅に帰り着く。

「ただいま」

二人は声を揃えて母親の育美に挨拶する。愛美と幸美の姿が無いのを見て

「友美、洋美、お帰り、愛美と幸美は?」

と言う。友美は答える。

「遅くなる。公園のベンチで話し合っていたから、もうすぐ帰って来ると思う」

やがて10数分後、愛美と幸美が帰って来た。

「ただいま」

「あら、愛美、幸美、今日は、お姉ちゃん達と別々だね、珍しいわ」

「小学校時代の同級生と話してたの」

そして、就寝前、友美と洋美は愛美と幸美に今度の日曜日の事を告げる。

愛美:「愛美は幸美と今度の日曜日、小学校時代の同級生と約束事があるから都合がつかないの。友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、佳那子の三人で真美奈姉ちゃんの家で楽しんで来たら。大人数で押し掛けるのは真美奈姉ちゃんの家族、使用人も迷惑するかも知れないから今回は遠慮するわ」

幸美:「幸美も同じよ」

友美:「そうか、解ったわ。気遣い精神向上したわね、愛美、幸美」

洋美:「感心するわ」

四人は消灯し就寝する。

そして、4月20日の日曜日の朝。友美と洋美は午前8時に家を出て佳那子の自宅へと向かう。それより遅れる形で愛美と幸美は午前10時に自宅を出て、悠斗と待ち合わせ場所のモノレールの駅へと歩き出した。

愛美:「悠斗さんと会うの少し緊張するけど、幸美はどう?」

幸美:「幸美も緊張する。」

愛美:「やっぱり緊張するよね。そういえば先週は佳那子を入れてのグラドル撮影だったよね。あれから一週間、早いなあ」

会話をしているうちに二人は待ち合わせのモノレール駅に到着する。時刻は10時半を回ろうとしていた。二人は抱きしめ合いながら口付けを交わしながら悠斗を待ち続ける。

☆☆☆☆☆☆

一方、友美と洋美は佳那子のマンションの前で佳那子と会う。

佳那子:「おはようございます。今日は真美奈姉ちゃんの家、楽しみです」

友美:「おはよう、佳那子。もう少ししたら真美奈が来ると思うわ」

洋美:「おはよう、楽しみだね」

しばらくして白の高級セダンがやって来て友美達の前に停車した。車の窓から真美奈が声をかける。

「おはよう、友美、洋美ちゃん、佳那子ちゃん、乗ってちょうだい」

友美、洋美、佳那子は車に乗り、真美奈の家へと向かう。

☆☆☆☆☆☆☆

また一方、三矢悠斗は愛美と幸美との待ち合わせ場所であるモノレール駅に向かうべくモノレールに乗っていた。やがて待ち合わせの駅に到着し下車して改札を出て辺りを見回す。

(愛美と幸美はどこかな?電話してみようか)

悠斗は自分自身のスマホを取り出し愛美に掛ける。幸美と口付けを交わしながら抱き合っていた愛美はスマホの着信が鳴ったのを知るとすぐ取り話す。

「もしもし悠斗さんですか?愛美です」

「あっ、あの人じゃない?」

幸美が声高らかに言うと一人の青年がスマホを手に話している姿が視界に入って来た。視界に入って来た青年が三矢悠斗である。悠斗は青のジーパンに水色の長袖シャツといった出で立ちであり年齢は友美と真美奈の担任の菊池と同じ位に見える。愛美は悠斗に声をかける。

愛美:「あの、三矢悠斗さん、ですか?」

悠斗:「はい、そうです。もしかして愛美ちゃん?幸美ちゃん?」

愛美:「はい、愛美です。おはようございます」

幸美:「幸美です。おはようございます」

悠斗:「おはよう、愛美ちゃん、幸美ちゃん。小汚い格好だったらごめんね」

愛美:「いえ、とんでもないですよ。今日はこれからのグラドル活動の為の参考を聞かせて頂きたいんです。よろしくお願いいたします」

幸美:「よろしくお願いいたします。今日はスイーツバイキングでお願いね」

愛美:「幸美!もう悠斗さんをメッシー扱いしちゃダメよ」

悠斗:「愛美ちゃん、幸美ちゃん、ケーキ、スイーツが好きなんだね」

愛美:「はい、そうなんです、好きです。悠斗さん、いい店知りませんか?」

悠斗:「それだったら、モノレールに乗ってJR線と連絡する駅の近くにケーキバイキングの店あるんだけど、どうかな?」

幸美:「それでもいい。ねぇ行こうよ」

三人はモノレールに乗って行く事にした。首女中とは反対の方向である。

モノレールの終点の駅で降りると歩いて五分の所にケーキバイキングの店があり三人は入る。悠斗が三人分の料金を支払う。愛美と幸美は思い思いのケーキを各々の取り皿に盛り席で頬張っていく。悠斗も望むケーキを取り口へ運んで賞味する。ある程度腹がふくれた所でグラドルに関する話を始める。

愛美:「悠斗さん、愛美達の写真集でこういうのがあったら良いと思うのはありませんか?」

悠斗:「一応、イラストみたいのを描いてみたんだ」

悠斗は背負っていたリュックサックの中から一冊のノートを取り出し広げ愛美と幸美に見せた。

愛美:「悠斗さんが良いなぁと思っている水着、愛美達が部活やグラドルで着用しているのと同じなんだ」

幸美:「ビキニタイプの水着の事も描かれている。白のバンドウビキニだわ」

愛美:「体操服は一位が紺ブル、二位が赤ブル、三位が青ブルとあるわ」

幸美:「悠斗さん、女の子の体操服姿は何が良いと思いますか?短パン、スパッツ、ハーフパンツ、ブルマのどちらが良いのか、男性側の意見が知りたいんです」

悠斗:「やっぱりブルマになるよ。男だったら老若関係無しにそう思うよ。水着の上に無地の白いTシャツを着ているような錯覚を感じるから。愛美ちゃん、幸美ちゃんの小学校の時はハーフパンツだったんじゃない?」

幸美:「そうでしたよ。丈が長くて愛美、幸美にとっては動きずらかったわ」

愛美:「悠斗さん、ビキニも好きですか?」

悠斗:「好きですね、グラドルの王道はビキニという傾向が強いよね」

愛美:「女の子の水着姿はビキニとスクール水着、どっちが良いですか?」

悠斗:「そうだなぁ、美しくかっこよく飛び込む姿を楽しむのなら競泳型のスクール水着になるよ。でもエッチな事を楽しむのなら白のバンドウビキニが良いとなるなぁ。どちらにしても素足を丸出しが高ポイントだからね」

愛美:「エッチな事って何なの?悠斗さん」

幸美:「幸美、こういうエッチな話、実は好きなのよ。悠斗さんの考えているエッチな事何なのか、すごく気になる」

悠斗:「白のバンドウビキニでプールに飛び込んだら衝撃で脱げると思ったので」

愛美:「やっぱり男の人って、そう考えるのね、どうしてビキニは白が一番なの?」

悠斗:「ブラとショーツの下着のセットにも見えて代用にもなりそうだからね。色は白かパステル系が一番かな、紺色、青色も良いなぁと思うなぁ」

幸美:「基本的に愛美と幸美はノーブラ派なのよ。お姉ちゃん達にはブラ着けろと言われる事あるけど」

愛美:「私、また腹空いてきたケーキ取りに行くわ」

三人は再びケーキを食べ始める。

☆☆☆☆☆☆』

真美奈の自宅に到着すると友美、洋美、佳那子は真美奈に案内されて中に入った。家の大きさに佳那子は圧倒され驚きの表情を隠せない。

佳那子:「真美奈姉ちゃんの自宅、御屋敷ですね。びっくりです」

真美奈:「ゆっくりしていって下さいね」

洋美:「いつ来ても大きいなあ」

友美:「愛美と幸美がいたら、大はしゃぎで、うるさいからね」

真美奈:「まずは私の部屋に案内するわ」

真美奈は三人を自室に案内する。真美奈の部屋は資産家の令嬢に相応しく高級感あふれる品々が見て取れる。部屋の壁際に真空管アンプをしようしたオーディオ装置もある。佳那子はそれに見とれた。

「アンティークな音響機器ですね、味があります。ところで真美奈姉ちゃん、プールはどこですか?」

「こちらですわ」

真美奈は部屋の大きいカーテンを開け佳那子を招く。カーテンが開けた所はガラスの扉で外を見るとテラスがあり、飛び込み台と下へ降りる階段があった。飛び込み台の下は幅5㍍、長さ10㍍、深さ5㍍のプールだった。プールサイドは白でプールの内壁はロイヤルブルーに塗装されエーゲ海周辺地域を彷彿させる雰囲気を漂わせている。プールの水はいつでも泳げるように無色透明であった。

「真美奈ちゃん、プールの水、いつでも泳げるように綺麗ですね」

「そうですよ、毎日飛び込んで泳いでますよ。真冬でも水着でね」

「えーっ?まっ真冬でも水着で飛び込みやっているんですか!?」

「そうですよ、寒中飛び込みをやっているんですよ。私のみならず友美、洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃん、美千代ちゃん達もやっていますよ」

しばらく会話を続けていると執事がやって来て真美奈達に声をかけた。

「真美奈お嬢様、友美お嬢様、洋美お嬢様、佳那子お嬢様、昼食の準備が整いました」

「御苦労。友美、洋美ちゃん、佳那子ちゃん、お昼にしましょう。食堂へ行きましょ」

四人は執事に案内されて食堂へ移動する。昼食はポタージュスープが最初に出された。四人は音は控えめで飲んでいく。メニューはステーキランチである。一流シェフが調理したような料理に佳那子は感激の表情である。昼食の締めくくりのデザートが出た後、真美奈は三人を音楽室であるピアノの部屋へ案内する。佳那子が口を開いた。

「昼食、美味しかったです。最初に出されたスープがとても最高です」

「良かったわ、愛美と幸美だったら大きい音を立てて飲むからねぇ」

「これから私、ピアノをひかせてもらうわ」

真美奈は三人を椅子に座らせピアノの演奏を始めた。佳那子は驚きの表情で目を丸くして聞き入った。

(真美奈姉ちゃん、飛び込み競技だけでなくピアノも上手にひけるなんて)

ショパン、バロック、モーツァルト、バッハ、ベートーベン、スメタナなど数多くの得意曲を真美奈が演奏していくうちに佳那子は深い眠りに入り友美を膝枕にして寝てしまう。友美は我慢しながら演奏を聞いていた。演奏が終わると真美奈は口を開いた。

「あら、佳那子ちゃん、友美を膝枕にしてねるなんて可愛いらしいわ」

洋美が佳那子に平手打ちをお見舞いして起こす。

「佳那子!もう友美姉ちゃんを膝枕にするなんて!」

「はっ?私、寝てました?」

「寝てたわよ、気持ちよく私の膝でね、私の膝、寝心地良い?」

「最高です。また寝かせて欲しいです」

「あはははっ、佳那子ちゃん、面白い」

真美奈は、かか大笑する。

☆☆☆☆☆☆☆

バイキングで食事を終えた後、愛美と幸美、悠斗は駅の近くの展望台のベンチで座りながら話していた。

愛美:「悠斗さん、またノート見て気になったけど水着に着替える時とあったけど、それ何?」

悠斗:「それは何かと言うと、水着を着る時の要望なんだ。水着の下はスイムショーツを着用、もしくは普通の下着の上に水着を着るとこが見れたらなぁと思うんだ。そういうシーンDVDやBlu-rayで見れたら良いなあと思ったんだけど」

愛美:「んもぅ!悠斗さんたら。女の子の着替え見たいんだ、やらしー」

幸美:「その要望、愛美、幸美が所属している水泳部の規則と酷似しているわ」

悠斗:「へぇーそぉなんだ、驚きだなぁ」

愛美:「ねぇ、悠斗さん、話は変わるけど車、持ってる?」

悠斗:「免許はあるけど車はないよ。自転車しか乗らないんだ」

幸美:「ゲーセンに行く事ある?」

悠斗:「たまにある。最近は、ほとんど行かないなあ」

幸美:「じゃあ近くのゲーセン少し覗かない?」

愛美:「久しぶりのゲーセン、良いわね、悠斗さん、行こ」

愛美と幸美に手を引かれ悠斗はゲーセンへ歩く。ゲーセンで愛美と幸美は対戦型のゲームを楽しむ。その後ショッピング街を三人で散歩する。そして時刻が午後5時半を過ぎると悠斗は愛美と幸美に帰宅をすすめる。

悠斗:「もうそろそろ夕方だし今日はこの辺で、おひらきにしようか、モノレールの駅まで送ろうか」

愛美:「そぉよね、今日の事、お姉ちゃん達には内緒なので愛美は幸美と二人で帰りますよ。今日は御馳走様、ありがとう。楽しかったです」

幸美:「今日は幸美、楽しかった、ありがとう。御馳走様。またおごって下さいね」

悠斗:「こちらこそ色々話せて嬉しかったよ、また電話ちょうだい」

悠斗はモノレール駅のホームまで見送り愛美と幸美はモノレールに乗って帰宅していった。

☆☆☆☆☆☆☆

真美奈の自宅で楽しく過ごした友美、洋美、佳那子は帰宅の徒につくべく送迎の車に乗り込んだ。真美奈も同乗し見送る事になった。車は友美と洋美、佳那子を送るべく走り出す。その車中で友美は佳那子に話しかける。

友美:「佳那子、私と洋美の妹になりたいのなら、私の弟と付き合ってみない?」

佳那子:「付き合うって結婚を前提にですか?私、結婚なんて考えるつもりは」

友美:「佳那子は歳上が好みなんだね?」

佳那子:「そうなりますね、お兄ちゃんタイプが好みですから。それよりも私の弟二人と友美姉ちゃん、洋美姉ちゃんの弟さんと一緒に遊ばせられたら良いと思うんですが」

友美:「その方が良いかもね、私の弟に話してみようかな」

佳那子:「私も話してみようかと思います。それにしても今日の真美奈姉ちゃんのピアノ演奏とても良かったです。機会があれば、また聞かせて頂きたいです」

真美奈:「そう?その時は私の家のプールで一飛び込みしましょ。出来れば佳那子ちゃんと寒中飛び込みやりたいですわ」

やがて車は葵奈家の自宅に到着し友美と洋美は下車する。そこへ愛美と幸美が帰って来た。

「ただいま。友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん帰って来たのね」

「そぉよ、愛美、幸美も帰って来たのね」

友美と洋美を降ろすと佳那子を送るべく井之上家の車は葵奈姉妹を尻目に帰っていく。その車中で真美奈が佳那子に再び問いかける。

真美奈:「佳那子ちゃん、今日はどうだった?」

佳那子:「最高でした。機会があれば、またよさせて頂きたいです。高級ホテルや民宿よりも素敵です。宿泊してみたくなりそうです」

真美奈:「実は私、佳那子ちゃんと一緒に寝てみたいと思うのよ」

佳那子:「私だって寝てみたいです」

やがて佳那子のマンションに到着すると佳那子は下車し真美奈に別れをつげ帰宅する。その後、真美奈は運転手つきの迎車で帰宅の徒につく。

☆☆☆☆☆☆☆☆

翌日の4月21日月曜日の昼休み、愛美と幸美は悠斗との会話を楽しんでいた。

愛美:「もしもし悠斗さん、愛美です。昨日は御馳走様でした。ありがとうございました」

悠斗:「いえ、こちらこそ、楽しい一時をありがとう」

幸美:「悠斗さん、昨日はどうもありがとうございました。また他にも美味しいバイキングのお店あったらおごってね」

悠斗:「そうだね、それだったら遠い所になるかも知れないけど探してみようと思うんだ」

愛美:「愛美も幸美と一緒に探しているよ。ねぇ悠斗さん、今度の日曜日も都合つきますか?」

悠斗:「つくようにするよ。今度は何が良いと思うの?」

愛美:「遠い所が良いなぁと思うのよ。ものは相談ですけどレンタカー借りる事できませんか?」

悠斗:「そっ、それってドライブに連れて行って欲しいの?」

愛美:「そうなりますね、幸美も望んでいますので」

幸美:「悠斗さん、今度は車の中で話したいの」

悠斗:「わかった、待ち合わせは前回と同じ場所でどうですか?」

愛美と幸美:「オッケーでーす」

悠斗:「待ち合わせの時間は午前9時半過ぎでどうですか?」

愛美と幸美:「オッケー、了解でーす」

悠斗:「それじゃ今度の日曜日、また楽しみにしてるよ。これから午後の仕事の仕度しないといけないのでまた」

愛美と幸美:「悠斗さん、仕度、頑張ってね」

悠斗との通話を終えた二人はお互いに見つめあって頷くが、背後に人の気配と殺気を感じた。

(だっ誰かしら!?)

振り向くと洋美が怒りの表情で二人を睨んでいた。洋美は二人を問い詰める。

洋美:「愛美、幸美、お前ら今いったい誰と何を話してた!?」

愛美:「ひっ洋美姉ちゃん、いっ、今のは、しょっ、小学校時代の同級生なのよ」

幸美:「久しぶりの会話だから、つい嬉しくなったから」

愛美と幸美は誤魔化そうとする。しかし嘘は明白で洋美は更に問い詰める。

洋美:「嘘つけ!誰と何を話していたのかはバレバレ、聞いていたわよ。友美姉ちゃんにチクろうか!?」

愛美:「お願い!止めて!洋美姉ちゃん!」

幸美:「それされたら、愛美、幸美、生きていけない」

愛美と幸美は泣きじゃくりながら洋美に助けを願う。洋美は条件付きで妥協案を打診する。

洋美:「解ったわ、その代わり、今度の日曜日の約束事、私も入れて連れていけ」

愛美:「うん、解った。友美姉ちゃんと佳那子、他の部員には黙っててね」

その頃、友美は真美奈と一緒に購買部で佳那子の体操服の品定めに付き合っていた。

佳那子:「友美姉ちゃん、グラドル撮影で着用する体操服は何が一番ですか?」

友美:「やっぱり紺のブルマの体操服が一番だね。私は体操服に関しては体育の授業もちろんの事、グラドルもほとんど紺ブルだからね」

佳那子:「そぉですか、真美奈姉ちゃんはどうなんですか?」

真美奈:「私は入学した当初は今の佳那子ちゃんと同じ緑の短パンだったけど今は友美の影響で紺ブルよ。佳那子ちゃんも紺ブルか緑ブルに替えるのはどう?」

佳那子:「そぉですね、今回は無地の紺ブルを購入しようと思います」

友美:「あっ、佳那子、今回は私が代金支払ってあげる。こないだのグラドル撮影に参加してくれたお礼だから」

佳那子:「えっ?良いんですか?友美姉ちゃん」

友美:「佳那子、あんたにはグラドル葵奈姉妹の一員として頑張って欲しいのよ」

友美が支払いを済ませると佳那子は友美に抱きついて涙声で礼を言う。

佳那子:「友美姉ちゃん、ありがとうございます」

真美奈:「良かったね、佳那子ちゃん」

佳那子:「ところで話変えて申し訳ないのですが今度の土曜日の晩、真美奈姉ちゃんの家に泊めさせてもらえたら嬉しいですけど」

真美奈:「あら、私の家に?解ったわ。ものは相談なんですけどプールで寒中飛び込みをしましょうよ。私、佳那子ちゃんと一緒に寒中飛び込みしたいと思っていたのよ」

佳那子:「是非ともお願いいたします。水着持参ですね」

真美奈:「水着は部活で着用しているのをね、友美もどう?」

友美:「私も泊めさせて欲しい。あっ、もう昼休み終わるわ」

その日の下校時、愛美と幸美は洋美の立ち会いで悠斗に電話をかけた。

愛美:「悠斗さん、今日の昼約束した今度の日曜日の事なんだけど」

悠斗:「都合が悪くなって駄目になったの?」

愛美:「そうじゃないんだけど洋美姉ちゃんが、私も入れて連れて行け、と言っているのよ、悠斗さん迷惑ですか?」

悠斗:「女の子に関しては少ないより多い方が嬉しくて有難いから良いよ」

愛美:「ありがとうございます、洋美姉ちゃんに代わります」

洋美:「もしもし三矢悠斗さんですか?私、愛美、幸美の姉の洋美です」

悠斗:「はい、三矢悠斗です。初めまして」

洋美:「昨日の日曜日は妹の愛美と幸美が御世話になりました」

悠斗:「いえ、どういたしまして。こちらこそ無断で申し訳ない」

洋美:「今度の日曜日の約束事ですけど私も入れて頂きたいです」

悠斗:「わかりました。昨日はグラドル写真集の事で色々、提案してみたいのがあって話させて頂きました。今度の日曜日も話させて頂きたいです」

洋美:「わかりました。今度は幸美に代わります」

幸美:「悠斗さん、今度の日曜日は四人で会いましょう」

悠斗:「了解です。待ち合わせの場所は愛美ちゃん、幸美ちゃんと決めているモノレールの終着駅、首女中とは反対方向です」

三人が悠斗との電話を終えた時、友美、佳那子、真美奈を始めとする部員は帰っていた。洋美は愛美と幸美を促して帰宅の徒についた。

洋美:「愛美、幸美、今度の日曜日、楽しみだね。友美姉ちゃんには内緒にしないと」

愛美:「そぉよ、バレたら平手打ちされちゃうよ」

幸美:「友美姉ちゃんの平手打ちは、もう我慢できない」

洋美:「私だって我慢できない。できるのは佳那子だけだわ。とにかく友美姉ちゃんには黙っておこうね」

家に帰りつくと、友美が洋美、愛美、幸美に告げた。

友美:「洋美、愛美、幸美、今度の土曜日の夜、佳那子と一緒に真美奈の家に泊まりに行くけど、お前達はどうする?」

洋美:「私は遠慮するわ、小学校時代の同級生との用事があるので」

愛美:「愛美も幸美と一緒に同級生との約束事があるのでパスするわ」

友美:「わかった」

こうして、4月26日土曜日の下校時、友美と佳那子は真美奈の迎車に乗って真美奈の家へと向かう。真美奈の家に着くと友美と佳那子は井之上家のメイドから挨拶を受ける。

メイド:「葵奈家の友美お嬢様、小湊家の佳那子お嬢様、ようこそ、お越し下さいまして」

友美:「今日と明日の二日間、お世話になります」

佳那子:「今回は一泊二日、お世話になります」

真美奈は友美と佳那子を自室へ案内する。

佳那子:「真美奈姉ちゃんの部屋、いつ見ても素敵です」

真美奈:「ありがとう佳那子ちゃん、そう言って下さると泊まりに来て欲しくなりますわ」

友美:「佳那子、すっかり気に入った見たいね」

真美奈:「夕食は入浴の後で、お風呂に入りましょう」

佳那子:「真美奈姉ちゃんの家のお風呂、どれぐらい大きいかな?」

三人は入浴すべく風呂場へ移動する。

真美奈:「さぁ脱いで入りましょう」

佳那子:「真美奈姉ちゃんの家のお風呂、やっぱり大きい」

友美:「葵奈姉妹の合宿に良いなぁと思ってしまいそうだわ」

三人は体を洗い湯槽に浸かる。友美が佳那子に声をかける。

友美:「佳那子、真美奈の家の風呂、私の家のよりも大きいでしょ」

佳那子:「はい、水泳部飛び込み競技部門に入って良かったです。真美奈姉ちゃん、飛び込みだけでなくピアノ演奏も得意なのには驚きです」

真美奈:「また後でピアノ演奏聞かせて差し上げますわ」

佳那子:「是非お願いいたします。聞かせて欲しいです」

真美奈:「解ったわ、佳那子ちゃん、ちょっと良い?」

真美奈は佳那子の唇にキスをする。

佳那子:「まっ、真美奈姉ちゃん、何するんですか!?」

真美奈:「うふふふっ、佳那子ちゃんの唇、美味しいわ」

友美:「佳那子、私にもキスさせて。私達、女子校だから女同士の恋愛は日常茶飯事だからね」

佳那子:「はっ、はい、お願いいたします」

友美も佳那子にキスをする。

友美:「佳那子の唇美味しいわ」

佳那子:「友美姉ちゃんのキスも気持ち良いです。平手打ちをお見舞いされるよりも気持ち良いです」

友美:「やっぱり、そぉよね」

入浴後、三人は食堂で食事を取り、その後、音楽室にて真美奈のピアノ演奏に友美と佳那子は聞き入った。演奏中、佳那子は友美に寄りかかって眠ってしまう。演奏が終わると真美奈は佳那子に声をかける。

真美奈:「佳那子ちゃん、よく眠れた?」

佳那子:「はっ、私、寝てました?」

真美奈:「寝てましたよ、友美に寄りかかるようにね」

佳那子:「えっ!?そぉなんですか?友美姉ちゃん、ごめんなさい。余りにも気持ち良かったので」

友美:「佳那子の寝顔、幸せそうだったわよ」

ピアノ演奏の後、佳那子は友美と真美奈から宿題と勉強の手ほどきを受けた。

佳那子:「友美姉ちゃん、真美奈姉ちゃん、勉強の手ほどき、ありがとうございました。とても楽しくて受けがいがあります」

真美奈:「そう言ってくれると嬉しいわ」

友美:「洋美、愛美、幸美も首女中の受験の時に手ほどきを受けたのよ」

佳那子:「そぉだったんですか?真美奈姉ちゃん、作曲出来るとしたら葵奈姉妹のテーマ曲はどうかと思うんですけど」

真美奈:「葵奈姉妹のテーマ曲?」

佳那子:「はい、曲名は『葵奈姉妹の飛び込み純愛組曲』でどうかなと私、思ったのですけど」

真美奈:「私は作曲、考えた事はないけど洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃんは、どう思うかしらね?」

友美:「そぉだな、聞いてみると良いかも」

真美奈:「友美、佳那子ちゃん、明日の早朝、寒中飛び込みするけど良い?佳那子ちゃんは初体験だけど大丈夫かしら?」

佳那子:「真美奈姉ちゃん、友美姉ちゃんと一緒だったら、やります」

友美:「佳那子、明日は頑張って寒中飛び込み頑張ろう。今夜はどうやって寝る?真美奈、佳那子」

佳那子:「友美姉ちゃんと真美奈姉ちゃんの間では駄目ですか?」

真美奈:「良いわ」

友美:「そう来なくっちゃ、佳那子、今夜は楽しませてもらうから良い夢見てちょうだい」

友美、真美奈、佳那子の三人は真美奈のベッドで一緒に眠りについた。

☆☆☆☆☆☆☆☆

一方、友美が不在の葵奈姉妹の部屋では洋美が愛美と幸美に悠斗との出来事を聞いていた。

洋美:「悠斗さんにケーキバイキングでおごってもらったんだ」

愛美:「そうなのよ。もう幸美ったら食いしん坊だから」

幸美:「幸美の理想のデートスポットはケーキとスイーツのバイキング、飛び込みプールがあるプールなんだもん」

洋美:「とにかく、明日に備えて寝ようね」

そして翌日の4月27日の日曜日、洋美、愛美、幸美の三人は悠斗との待ち合わせ場所である駅へと向かった。時刻は9時半、周りを見回していると幸美が声を上げた。

愛美:「あっ、来た、悠斗さんだわ。悠斗さーん!おはよう!」

幸美:「悠斗さん、今日も、よろしく、洋美姉ちゃんも来てます」

悠斗:「おはよう、愛美ちゃん、幸美ちゃん、洋美ちゃん」

洋美:「初めまして、三矢悠斗さん、愛美と幸美の姉の洋美です」

悠斗:「これからレンタカーを借りに行こうと思います。愛美と幸美の要望なので」

悠斗は洋美、愛美、幸美を伴ってレンタカーの店へ行き、五人乗りの普通車を九時間借りる契約を結んだ。契約の手続きが終わると四人は乗り込んだ。運転席に悠斗、助手席に洋美、後部座席に愛美と幸美が座る形で乗り出発する。最初に悠斗はコンビニエンスストアへと車を走らせた。

「買い物と用便ある?あるなら今のうちにね」

悠斗は洋美、愛美、幸美に呼びかける。三姉妹は用便と飲み物の購入を済ませる。悠斗は自身のリュックから一週間前、愛美と幸美に見せたノートを取り出し、愛美に手渡し、運転席に座る。後部座席に愛美と幸美が座り助手席に洋美が再び座り車は出発する。悠斗はシフトレバーをPからDへ入れ出発する。愛美がノートを見ながら洋美に声をかける。

「洋美姉ちゃん、このノートには悠斗さん好みの体操服、水着等が書かれているよ」

洋美は愛美からノートを受け取り一頁ずつ目を通す。

「どれどれ、そぉなのねぇ」

悠斗は車をスイーツバイキングの店へと走らせ駐車場へと停車させる。到着した店に悠斗は何回か入店した事がある。しかし洋美達は始めてであった。その為か愛美と幸美は期待の表情である。四人は車を降り店内に入る。

店員「いらっしゃいませ、何名様ですか?」

悠斗「四名です」

店員:「当店は全て禁煙席でございます」

四人はテーブル席へ行き確保する。愛美と幸美は待ってましたと言わんばかりに各種スイーツを皿に盛り取り席で美味しそうに頬張る。

「愛美、幸美、ちょっと行儀悪いよ、もう!」

洋美がたしなねるが二人は食べ終わると新たに取りにいく。悠斗が洋美に問いかける。

「愛美ちゃん、幸美ちゃん、ケーキ、スイーツ好きなんだね」

「そぉなんですよ、私も好きな方です。二人の妹、テーブルマナー悪くて」

洋美も悠斗もスイーツを取りに歩く。

(本当は葵奈姉妹、四人姉妹なのか?洋美は二女、愛美は三女、幸美は四女だろうか?)

悠斗は気になるのだった。入店してから一時間過ぎになると悠斗と葵奈三姉妹は満腹感になった。時計を見ると正午を過ぎを指している。洋美は悠斗との会話モードだが愛美と幸美はスイーツ食べたいモードだ。

「愛美、腹一杯?幸美は腹一杯だけど、まだまだ食べたい」

「幸美も食べたりない感じ」

「愛美!幸美!もう良いじゃん、十分食べたんでしょ!テーブルマナーをわきまえなさい!友美姉ちゃんがいたら平手打ちよ!」

「友美ちゃんは、どうしたの?」

「友美姉ちゃんは昨日から友達の家に泊まりに行ってるんです。実は今日の事、内緒なんです。バレたら怖いので」

「どういった感じで怖いの?」

「怒るとすぐ鉄拳と平手打ちなんですよ。私も、愛美も、幸美も泣き通しです。ところで悠斗さん、ここを出た後なんですけど」

「どこか行きたい所、行って欲しい所があるの?」

「はい、出発する時ナビの行き先設定させて欲しいんです」

「返却予定時刻の午後7時までに帰ってこれる所なら良いよ」

スイーツの食事を終え悠斗が四人分の支払いを済ませた。車に四人が乗ると助手席の洋美がナビの行き先設定をする。設定が完了し案内開始をタッチすると悠斗は洋美が設定した目的地へと車を走らせる。走り出してから一時間足らずで到着した目的地は人口が少なさそうな田舎風情の町村であった。ある中学校の正門前に差し掛かると洋美は悠斗に停車を求める。

「悠斗さん、ここで停めて」

悠斗はブレーキペダルを踏み停車させハザードランプを点滅させる。四人は車を降り背伸びする。時計を見ると午後2時を指している。悠斗が問いかける。

悠斗:「ここで?どうしてなの?古びた中学校だけど」

洋美:「実は二週間前、ここで撮影をやったのよ。私と愛美、幸美、友美姉ちゃん、ニューフェイス1人を加えて五人のね」

悠斗:「そぉなんだ、廃校になった中学校で撮影したんだね」

愛美:「そぉよ、ここでの撮影、愛美、楽しかった」

幸美:「幸美も楽しかった。でもプールがボロボロで駄目なのが残念だった」

悠斗:「どこかの芸能プロが買い取ってタレント養成学校に改修したら良いなぁと思うんだけどねぇ、僕が芸能プロの社長だったら考えるかも」

洋美:「そうだとしたら、私はプールの改修はして欲しいと思うわ」

愛美:「愛美は飛び込みプールに改修してくれたら良いなぁと思う」

幸美:「幸美も同じ、プールは飛び込みプールが一番だもん」

悠斗:「見ていると、『国破れて山が在り』を連想しそうだな」

悠斗の声に三姉妹は感傷に浸ってしまう。グラドル撮影で訪れた場所なので思い出深いものがあるのだった。撮影の日に開いていた校門は施錠されていて中には入れない。

「またここで撮影が出来れば幸美、嬉しい」

「愛美も同感と言いたい」

「また出来る事を祈ろう、そろそろ移動しましょうよ。悠斗さん」

四人は再び乗車し走り出す。悠斗は車を適当に走らせる。

「この辺は住宅が少ないなぁ。公園が見えてきたので停めよう」

悠斗は公園の側に停車し四人は下車し公園のベンチに座る。周辺を見回すと住宅が何軒か見てとれる。公園の側にも一軒住宅がある。洋美が悠斗のノートを広げ口を開く。

洋美:「悠斗さん、あなたのノート見たわ、エッチな要素が多く感じるわ」

悠斗:「男の欲望だからね。人それぞれ違いはあるかも知れないけど」

洋美:「グラドルを続けていく上での参考になりそうな気がしそうです。ところで悠斗さん、彼女はいますか?」

悠斗:「いないですよ。今の心情は愛美と幸美に気持ちが傾いてるんだ」

愛美:「悠斗さん、気持ちは愛美の方?」

幸美:「それとも幸美の方?」

洋美:「私と愛美と幸美どっちを彼女にしたい?」

悠斗:「今の心情では迷って悩むよ、スカートの中を見て比べた上で決めたいのじゃ怒るかなぁ?」

洋美:「すっ、スカートの中を見て比べるって!?もう悠斗さんのエッチ!」

パーン!

洋美は悠斗に平手打ちを食らわす。その表情は怒り心頭そのものだった。

愛美:「洋美姉ちゃん、怒らなくても良いじゃん。面白いじゃん」

幸美:「スカートの中は水着かブルマにして見比べてもらったら良いじゃん。グラドル葵奈姉妹としての誇りがかかった勝負になりそうだからさ」

愛美:「洋美姉ちゃん、悠斗さんに謝ってよ」

洋美:「ごめんなさい、悠斗さん」

悠斗:「叩かれるのならキスしながら胸とお尻触りたくなりそう、そうしたら一発や二発じゃ済まないかも」

洋美:「やっぱりエッチな事考えているんだ、男の人ってそうなのかしら」

悠斗:「本能だから、どうしょうもないよ。洋美ちゃん達の学校は」

洋美:「私達の学校は中高一貫の女子校なの。高等部から編入してくる人もいるわ」

悠斗:「そういう人は他の中学校から高校受験で入学してくるんだよね」

洋美:「悠斗さん、そろそろ移動しましょうよ。色々と見て廻りたいの」

四人は車に乗り込んだ。洋美は悠斗にノートを返す。

洋美:「悠斗さん、これ返しておきますわ」

悠斗はある方向を凝視しだした。それを幸美が尋ねる。

幸美:「悠斗さん、どうしたの?」

悠斗:「あそこに人影が見えてきたんだ」

愛美:「人影?本当だ」

悠斗が示す方向を見ると1人の人影がとぼとぼと歩きながら近づいているのが見とれた。洋美もその人影に見入った。ぎこちない歩き方に四人は違和感を禁じえない。よく見てみると足は素足で靴の類いはおろか靴下も履いていないのだった。四人は顔を合わせ車を降り、とぼとぼと歩く人影に駆け寄った。よく見てみると人影は女性で長い間、外に出てないらしいのか顔色は色白く青かった。女性の服装は柿色のTシャツにエンジ色のジャージパンツといった出で立ちで長い間着替えてない為なのか風呂に入ってない為なのか臭気が漂わせている。洋美が女性に声をかける。

洋美:「どうかしたのですか?」

女性:「助けて下さい」

悠斗:「何があったのですか?」

四人は驚きの表情で女性を見る。果たしてこの女性は何者だろうか?何故助けを求めているのだろうか?


☆☆☆☆☆☆第一組曲、出会、終わり☆☆☆☆☆☆

To be continue 第二組曲、求愛
























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