☆16話 近衛学園女子フットサル部、始動!!
「よし、それじゃ各自に練習メニューを伝えるから」
<亜子・奈夕葉・宇津木>
「まずこの3人で練習してもらう」
「なにすんのー?」
「亜子はここで待っててくれ。なゆちゃんはそこに立ってて。それで宇津木はあっちに行け」
「ちょっとあたしだけ態度違うんじゃない!?」
宇津木が何か言ってるな。お前が俺への態度を改めてくれれば考えてやる。……まぁ、指導者としてあからさまな態度の違いはそれはそれで問題だ。こいつとの接し方は後々考えていかねばならん。俺もこんな歳の離れた奴への指導は初めてだからいきなりそんなことまで考えさせられるのは大変だ。
とりあえず今はそんなこと置いといて。今、体育館の半分のスペースを使って亜子・なゆちゃん・宇津木の順番で縦に「・・・」という形で並んでもらっている。それぞれの距離は10mほどの間隔。なゆちゃんを亜子と宇津木で挟んでいる形だ。
「今からやることだが……宇津木と亜子はお互いに向こう側にいる相手にパスを出しあってくれ。ただし、間にいるなゆちゃんにボールを奪われないように。2人は今立ってる位置から横に移動していいけど近づこうとして前に動くのはダメ。なゆちゃんは前、後ろ、横……自由に移動していい。けど、宇津木と亜子が立ってるところより後ろにいっちゃダメだし直接ボールを奪うのもダメ。あくまでパスをカットするだけだ」
これは簡易的な、ちょっとだけやり方を改造した「ロンド」という練習方法だ。
この練習のポイントは宇津木と亜子が間に敵がいても動いて振り切り、または相手にとられない位置へとボールを出して、ちゃんと「パスを繋げるようになる」こと。つまり「パス」と「ボールを持っていない時の動き」の練習だ。
そしてなゆちゃんは相手のパスをカット─つまり敵の仲間にボールが渡る前に横取りして止める力を身に着けてもらうといったところだ。
「どうだ? 大丈夫そうか?」
「うん! やってみる!」
「わかったー」
「ま、楽勝ね」
よし。良い返事が聞けたところで次は……
<舞依・牧野>
「牧野はゴールの前に立ってゴールを守ってくれ。舞依はそこからちょっと距離を取って……そう、そこ」
牧野はゴール前に立ち、舞依はそこから20mくらい離れたところでボールを足元に置いて立ち、スタンバイする。
「今から舞依はゴールに向かってドリブルで進んでくれ。最初は無理しなくてもいいけどなるべく速くな。それでゴール前……そうだな、6mくらいの位置。ペナルティエリアに入ったところでシュートを打ってくれ。舞依はその形で点を取る、牧野は止める。そういう練習だ」
「はい。わかりました」
「はいっ!」
こっちも問題なさそうだ。この子達は物分かりが良いから説明も楽で助かる。
俺は離れて体育館の半分ずつで行われているそれぞれの練習を眺めていた。
「どうですかね監督? ロリの動く様を間近で見られる感想は?」
「そうだなー。やっぱり新鮮というか、それはまるで天使の舞踏会……ってうるせぇ!」
白戸はニマニマと嫌な笑みで近づいてそんなことを聞いてくる。こいつたしかマネージャーなんだよな? ちょっとは仕事して?
「どうなの? 皆強くなれそう? 練習試合勝てそう?」
「強くはなれるだろうな。練習試合に関してはわからん。正直な話だが……練習試合は絶対に勝たなきゃいけないとは思ってない」
「別に負けてもいいってこと?」
「いや、そういうわけじゃない。もちろん勝つけど……まぁ言い方を変えればそういうことにもなるのか」
父さんはボコボコに負けたらショックで辞めちゃうかもーとか言ってたがそれはもうこれからチームとしてやっていく以前の話だ。ちょっとひどい言い方かもしれないがそれくらいで辞めてしまうならスポーツ自体をやるのが難しい。
お互い必死に練習して全力で試合に挑むんだ。勝つ、負けるは当たり前でボロボロにやられてもそこから立ち上がれる力も持ってないといけない。
だから今回は負けてもこの子達の心が強くなってくれれば、それはそれでアリと思っているのだ。「負けると思った時点で負ける」とは言ったものの、大会とかじゃなくてあくまで「練習」試合なのだ。負けの中に得る物はあると感じている。
「どうしても勝たなきゃいけない理由とかないの?」
「もちろん勝ちにはいく。それは当たり前だ。俺だって勝ちたいしな。が、負けてそこで終わりとかじゃないんだ。今はゆっくりと力をつけるのが一番だろ」
そう。それが一番。練習試合に負けたらフットサルできないなんてことはないし焦りすぎは良くない。まだまだ道は長いんだからな。
……と、この時の俺は思っていた。まさかこの後に、この練習試合がチームのこれからを左右するほどの試合になってしまうとは…………思いもしなかったんだ。
活動報告にも詳しく書きますが、本当に申し訳ございませんが作者の都合(進路関係)により1、2ヶ月ほど投稿をお休みさせてもらいたいです。この作品自体まだ始まったばかりなのでダメージみたいなものは全然大きくないですが、それでも読んでくれている人がいるのでここで謝っておきます……本当に申し訳ございません。次回投稿が7月になるか、8月になるか、わかりませんがそれまで待ってくれと読者の皆さんに偉そうなことは言えません。ただただ……すみません。