#03.神さま、何億年間も不幸を嘆いていた
全知であり、全能であったとしても、幸せだとは限らない。
神さまは、その昔、とてもとても不幸だった。
いつもイラついて、いつも怒りに支配されていた。
自分の作った世界があまりに不完全なことに腹を立て、すべてを壊して作り直そうとしたことがある。
だがそのとき、世界の中から一体の存在が現れ、神さまを一発、ぶん殴ってきたのだ。
神さまは驚いた。そして同時に喜んだ。
生まれてはじめてぶたれた――ことにではなくて、そんな力を持つ存在が生まれる可能性があったことに、大喜びした。
〝それ〟は一発きりで消えてしまったが、待っていれば、またいつか再び同じような存在が現れるに違いない。
神さまは〝殴り合い〟というものをやってみたかった。
ぶって、ぶたれて、またぶって、対等な〝戦い〟というものが、もしできたなら……。それはすごく素晴らしいことに思えた。
だから待つことにした。
世界を壊すのはやめにした。それどころか、世界をいくつもこしらえた。
無限に近い数の世界で、同時並行的に、生物の「進化」を促した。
はじめの数万年は、楽しみでしかたがなかった。
何百万年くらいは、気長にやろうと思っていた。
何千万年も待ったときには、事はそう簡単なことではないのだと、自分に言い聞かせつづけていた。
そして一億年が経ち、数億年が経過した……。
神さまは絶望しかけていた。
いくら待っても現れないのではないか? ……と。
そのとき、神さまは、ふと閃いた。
待っていても来ないのであれば、逢いに行けばいい。
《俺より強いやつに逢いに行く!》
そうして神さまは――、〝人間〟になった。