表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/16

序章

今回で2作目です。1作目からかなり間が空きましたが、短期間でUpしていけたらと思います。たぶん朝方に出していきます。

イラストも描いていますが、相変わらずてきとうな感じです。。

少しでも読んでいただけたら幸いです。宜しくお願い致します。


2018.02.18 新しい表紙を追加

序章


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 慣れない路地裏には入るもんじゃないなと、多少の後悔はある。

 足元にはゴミが散乱し、不法投棄と思わしき、壊れた家電品や金属片が山を作っている。

 そして何より問題なのは、こんな平穏な田舎でも街の中心部にある繁華街ともなると、人の下辺に位置する輩が少なからず潜んでいるということだ。


 今、私の目の前にはスキンヘッドにピアスだらけの耳、いかにもという風貌の男が一人。そしてその後ろには同種の輩が三人、まるで私の逃げ道を塞ぐように、陣を構えている。

 男四人で一人の女子高生を囲むとは、フェアじゃないわね。


「おうおぅ、なんだなんだ? 珍しいお客様じゃねぇっすか。生の女子高生ってか」

「うひょっ、なんだよ、こいつ。ごっつかわええやん。これから俺らと楽しもうよ」


 スキンヘッドが私の顎先に指を掛け、異様に長い舌で唇のピアスを舐める。


「へへっ、健康的で綺麗な肌だな。それに、恐れを知らねぇって感じのその目、たまんねぇよ。俺はそういう強気な女に現実を教えてやるのが堪らなく好きなんだよ、ひょほほっ」


 やれやれ、面倒な奴だ。

「おい、タコ野郎。汚い手で触るな。この服、作ったばかりなんだぞ」


 スキンヘッドが裂けた広い口角を大きく歪ませ、ニヤニヤと笑う。他の男もケラケラと笑いながら距離を詰めてくる。


「おおぅ、威勢がいいね。その服はママに作ってもらったのかにゃ? でもちょっと布地が多すぎだな。今の流行りに合わせて、俺が仕立て直してやるよ、俺こう見えて有名なデザイナーなんだぜぇ~、へへっ」

「ぎゃはははっ。おぃおぃ、ケンちゃんいつからデザイナーになったんだよ。おめぇ、女の服剥ぎ取ることしかできねぇだろぉよ、ひゃははっ!」

「はぁ~? 俺の隠れた才能知らねぇな。見てろよ、これでその服作り直してやんよ」


 男は毛のない頭をペタペタ叩きながら、一方の手でポケットからサバイバルナイフを取り出した。


 ――やっと出てきたか。これでまぁ、天秤が釣り合ったかな。

「ねぇ、それって武器よね?」念のため尋ねる。


「はっ? 物騒なこと言うなよ。これはお裁縫道具でしょうが、ひょほほっ」


 うん、尋ねた私が馬鹿だった。とりあえず、やっちゃうか。正直、私もこれがどんなもんか、試してみたいし。


「ねぇ、この服剥ぎ取るのに、そんなもの必要ないわよ。首のロック外せば、一気に脱げるようになってるから」


 私はそう言って首のチョーカーベルトに手を掛けた。カチリとスイッチをスライドさせ、ホックを外してベルトを引き抜くと、それに連動して制服のシャツがバラりと中央から割れる。いくつも並んだ正面のボタンはフェイク。袖は肩で分離し、続けてスカートもサイドからバラける。まるで早着替えのマジックのように、一瞬で私の体から上下の制服が剥がれ落ちた。


「ふぅ……相変わらず、この時期はまだ肌寒いわね」


 軽量金属と高硬度ガラス繊維のフリルがあしらわれたアーマーが上下の局部をギリギリ隠し、私の体を最小面積で保護している。


「は、はぁぁぁ?! なんなんだよ、おめぇ。自分から脱ぐとか、とんだビッチだぜ、こいつ」

「すっげぇ。ケンちゃん、こいつ、ガチでビキニアーマーしてんぞ、俺初めて見たかも。どこのコスプレ風俗だよ?!」


 防御代わりに体を這わせたレザーベルトがなければ、浜辺でキメ込んだワンショルダーのマイクロビキニとさして変わらない。陳腐な表現ではあるが、男の言うことに過言はない。

 私は、舐めずるような眼でこの体に視線を這わせる男たちを軽く無視して、飯盒ほどの大きさのストレージバッグに手を掛ける。

 ハッチを開けると、中では半透明の胎児のようなエネルギー体がうぞめいている。そこから威勢の良いものを一つ選んで口の中に押し込むと、私はそれをごくりと飲み込んだ。そして、肌で感じる、周囲に漂う命の波動を少しずつ引き寄せ、体内で圧縮させる。

 すると、私の中からもう一人の”それ”が這い出した。

 辛うじて形を保つだけの”それ”は、色もなく、脆弱で、今にも輪郭を失いそうだ。だが、小鹿のように歩くその足元には、金属片や残骸が寄り集まり、徐々にその輪郭を確かなものにしていく。 


「さて、あんたら。自分の所業を悔いることね」


 両耳を押さえる。路地裏に響く男たちの汚い叫び声は、正直、耳障りだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ