魔力根源(レヴァンティン)
またこりずにホラー書いています。よかったらお読みください。
魔力根源
全てはこの言葉から始まった。
「あなた、レイチェルが、レイチェルが・・・化物に」と、母は言う。
「う、うわ、うわわわわ。」と、父は木の棒を持って殴りかかってくる。
痛みは感じない。頭を殴られたのに。
喰ってしまえ・・・。私じゃない私がそうささやく。
私じゃない私が怯えている父を見ている。立ち上がれない母を見ている。
私は父を食べた。
私は母を食べた。
泣くという事も無く、次の日を迎える。町に出ると・・・ハンターに追われた。
ハンターが私を追っている。
逃げてるけど・・・。
追いつかれる。
ここで死ぬかな。私、レイチェルは後ろを向く。
「ほらほら、もっと早く走りな」
あはは。その上、遊ばれてる・・・。
「げひゃひゃひゃ。嬢ちゃん、追いついちゃうぜ~」と別の声も聞こえる。
べちゃっ。
こけた。転倒した。
よそ行きのリボンのついたお洋服・・・。
膝までワンピース。
ピンク色。
汚れちゃった・・・。
起き上がれない。私は嬢ちゃんじゃない。もう16歳、今日が誕生日だけど。
地面を見ながら私はぼやく。
「あ~もうあきらめたのか?」と、また別の声がする。
頭にターバン・・・白い布を巻いた男たちとハゲ。
ヒゲもじゃ。ハゲ。片目無し。また私じゃない私が見ている。
何だろう、この人たち。
父ちゃん・・・レヴァテの導きって何?
魔力根源と、書かれた紙を見せながら「名前を知っているだけでもいいんだ。口で唱える事・・・それが大切だよ。何てな、実は父ちゃんも知らないんだ」
「魔力根源」と、私は唱える。
「何だ?」「ひっ」「!!」
男たちはそれぞれに驚いた。黒い塊が男たちを包んでいく。
私は起きた。自分の黒髪をさわる。
「まずぅ・・・」
私の口から血がこぼれている・・・。
たぶんこれで2度目。
さっきまで私を追いかけていた男たちの足首から下がある。
父ちゃん・・・また人間を食べました。
母ちゃんと同じ味がする。
心が汚れてたのかな。知らない。
レヴァテの導きって何?暗闇の中を歩くこと?あっ雪だ。
赤い雪だ。暗闇の中、赤い目が光る。
3つの赤い目が。
少女の姿をした化物はアラヴァスタの都市の中へ消えて行った。
次の日、世界中のハンターが集まるアラヴァスタの街道。
Cランクに上がったばかりの2人のハンターは昨日の事件に花を咲かせていた。
「おい、聞いたか?」と、眼鏡をかけた男、コメリーは言う。
「レイチェル・アラヴァスタのことだろ?」
と、茶髪で口元に青いマスクをしている男、ヴァラッサは聞く。
「まあな。っていうかやめようぜ。そのアラヴァスタをつけるところ」
「いやいや。これはウワサだが・・・そう呼ぶと狙われないって聞いたからさ」
「もういいよ。それよりもまた非正規で3人のハンターが挑んだらしい。」
「それで勝ったんだろ?」と、青いマスクをしている男、ヴァラッサは聞く。
「それが・・・足首だけになって帰って来たって話だ」
「おっかねぇ・・・というか賞金が高すぎるのが悪いと思わないか」
「たしか1000億ヴァール(1ヴァール=1000円)だろ?いくら何でもな」と、コメリーはヴァラッサに同意を求めている。
「ああ、いくら何でもな。その上、ランクはダブルS・・・。正規の依頼じゃ誰も彼女を討伐に行けない。ある意味都市に守られている・・・それでついたあだ名がレイチェル・アラヴァスタだよ。知ってたか?」
「いや、初耳だ。そうなのか・・・そのお嬢ちゃんは古龍と呼ばれているドラゴンよりも強いのか?」
「それがわからん。殺したのは父親と母親。それと今回の3人のCランクハンターだけだ」
「じゃあ、何でだよ」と、コメリーは腕を組んで考える。
「言ってはいけない言葉を唱えてしまったらしい」
「古くから伝わる魔力の根源にまつわる言葉か?」
「ああ、文章で書いて伝えるだけでも死罪・・・」と、ヴァラッサは答える。
「ほら、いたよな。孫に文章で伝えたお婆さん」と、コメリーは言う。
「ああ、いた。今回、殺された父親がその孫だよ」と、ヴァラッサは答える。
「冗談だろ?」
「冗談じゃないからダブルSなんだよ」
「ねぇねぇ、何の話をしているの?」と、黒髪の少女が目隠しをしたまま聞いてくる。
「え?」と、コメリーは黒髪の少女を見る。
まるで時間が止まったかのように動きを止める。
「黒髪の少女、ピンクのワンピース、胸の赤いリボン」と、ヴァラッサも動きを止める。
黒髪の少女、レイチェルはにっこり笑って、
「何の話をしているの?」と、聞く。
「ひっ。寄るな、近づくな、化物ーーーー」と、コメリーは叫ぶ。
「うわぁあああああああああああああああ」と、ヴァラッサも逃げ出す。
「ひどいな~。魔力根源」と、レイチェルはつぶやく。
コメリーとヴァラッサは動きが止まった。いや、止められた。
闇が訪れる。さっきまで青空だったのが、突然、星空に。
街灯はつかない。暗闇。光も無ければ音もしない。
コメリーとヴァラッサの呼吸音だけが聞こえる。
「あっ」コメリーは黒い何かに身体が包まれて行く。何もできず喰われた。
「ごめんなさい。」ヴァラッサはそうつぶやいて喰われた。
レヴァテの導きって何?
もっと人間食べればわかるかな~。なかなかうまい人いないし。少女はまた暗闇の中へ消えて行った。