ようこそ、ねこねこ王国へ!
「みお?」と囁く声が聞こえる。この声だけで恋に落ちそうなセクシーさよ…。
この声の発信源は、どうやら、わたしを抱えている猫耳イケメン…。
ビックリして、下ろしてほしくてバタバタしてみたけれど、余計にギュッと抱えられて、下ろしてくれる気配が無い。改めて、猫耳イケメンを観察する。黒髪に、黒縁メガネの、イケメンで。なぜかタキシード着用。こんなイケメン執事、漫画とかに出てきそう…と、ポーッとしてしまった。
そして我に返る。
「…誰!?あなたは誰!?」
「みお?俺だよ!俺!」
「おれ?おれおれ詐欺…!?」
「みお、見て、これ。」と差し出してきたのは彼の左手。(ちなみにわたしは右手だけに抱え直された)
彼の左手には、わたしがセバスにあげたのと同じリボンがついていた。そして、さっき見たセバスと同じように、リボンが縦に蝶結びになっていた。
「このリボンは、セバスにあげたやつと同じ…」
「つまり、このリボンを持ってる俺は?」
「…あなた!セバスを!セバスを誘拐したの!?」
「違う違う!俺を見て!セバスと同じタキシード着てるし、この頭の耳のふわふわ具合とか、尻尾の滑らかさは誰と一緒?」
猫耳イケメンの耳も、いつの間にか身体に巻き付いてきた尻尾も、これはセバスのものと一緒…。
「セバスのと一緒だけど…。だけど…。あなたは人間で、セバスは猫よ!?いや、でも猫耳と尻尾がついてるから人間じゃない…?あれ?あれれ?」
「俺は猫の獣人だから、この人型もとれるし、猫型もとれるんだよ。見てて?」
ようやく彼はわたしを地面に降ろすと、あっという間に、タキシードキャットの、セバスにが現れた!
見慣れたセバスに駆け寄って、つい抱き上げてしまう。
「セバスーーー!さっきイケメンがセバスのフリしてね!?あれ、でもイケメンがいない?」
「ふむ。俺の人型はイケメンか。それは良かった」
と、腕の中から聞こえる声に驚いて、セバスを放り投げてしまった。
「に゛ゃっ!?」
「あっごめんよ、ごめんよ~今セバスが喋った気がして…驚いて投げちゃった」
そしてそこには、イケメンがいて、セバスがいなくなっていた。
「突然投げるなんて~。猫は着地が得意だからいいけど。犬の獣人だったら怪我するぞ!まあ、犬の獣人なんて抱かせないけどな!みお、これで分かったか?俺が、あのタキシードキャットのセバスだ。オーケー?」
「オーケーだよ…、君はセバスだと認めるよ。うう…」
「突然驚かせてごめんな?」
ギュッと抱きしめられ、頬が赤くなる。ドキドキ。
「ねえ、ちょっとお~。そろそろ、お話終わったかしら?ワタクシたちのこと、忘れていない?」
振り返ると、そこには、キラキラした美男美女が並んでいた。
「全く。あの氷のセバスがそんなに甘い声出すなんて。背筋がぞぞーってしちゃったじゃないの。」と、ピンクの髪の可憐なお嬢様。
「いや~デレッデレだねぇ。」と、ニヤニヤ顔の青い髪のマッチョなお兄さん。
「こちらまで照れますね」と、頬を赤くしている、赤い髪のカッコいい騎士風お姉さん。
そして、
「いや~めでたいね!」と、キラキラ笑顔の、黄金色の髪のお兄さん。なんだか後光がさしている気がする。
さっき空き地にいた猫さんたちと同じ色…。と、ポケーッとしていると、
4人とセバスが「せーのっ♪」と声を合わせて…。
「ようこそ、ねこねこ王国へ!」
ヒュルルル~パーン!と、青空に、キラキラした花火(?)が打ち上がったのでした。