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理不尽

 『拝啓、お父さん、お母さん、僕は元気‥‥ですが、無事ではありません。

 状況を説明しようにも僕にはわかりません、むしろ説明してほしいくらいです。

 僕が何かしたでしょうか?訳がわかりません。悪質な嫌がらせでもここまではしないでしょう。


 仕事もちゃんとしていたし、税金だってちゃんと払ってましたよ?ギャンブル、酒は嗜みますがそれだって節度を守ってしていたつもりです。



 話が逸れましたが今の状況を簡単に説明すると、身ぐるみを剥がされ荒野に放置されています。

 訳がわかりません、混乱しています。落ち着ける訳ないです。

 とりあえずなんとか頑張ってみます、見守っていてください。


 まぁどうせただの独り言なんで無理でしょうが。』









 さて、今のこの状況‥‥‥地獄に近い。

 

 見渡す限り何もない荒野。


 身ぐるみ剥がされ(強盗などに襲われた記憶はないが)裸‥‥‥


 裸‥‥‥全裸。



 真っ裸とも呼べるな!



 しかもなぜか身体が縮んでいる。某名探偵じゃないので怪しい薬を飲んだ訳でもない。

 顔の造形などは鏡が無いのでわからないが明らかに元の身体ではない。手足の大きさ、股間の一物、どう考えても五、六才ほどしかない。



 まぁ、子供になっていたのはある意味救いだったかもしれない。

 だってそうだろ?実年齢29才の大人の男が荒野で全裸。普通に考えて詰んでるだろ?もし他の人に出会ってしまったら通報され、職務質問を受け、留置場に入れられるだろう。子供ならセーフだろ。最悪虐待などに勘違いされ助けてもらえるだろうし。


「だ、誰かいませんか~?助けてくださ~い」


とりあえず周囲を見渡すが人影などはなく、この状況を打破するために出来る限りの大声で叫んでみるが当然返事などはなく、だか諦める訳にもいかず数10分ほど繰り返し続けた。



 それから一時間ほど呆然と立ち尽くし覚悟決め、人を探しに歩きだすことにする。


 「はぁ~、どこに進めばいいんだろ?ここがどこかわからんから方角なんかわからんし」

 一言呟きこれから向かう方向を考えてみるが、磁石などはなく、目印らしい物も見当たらない為深く考える事を諦め‥‥‥


 「っ!向こうに人の気を感じる!あっちだ」額に人差し指と中指をあて、あるサイ〇人の真似をしつつ進路を決め歩きだす。




 もちろん嘘です。そんなんわかる訳ないじゃん。





 「痛っ!あ~あ、足の裏が傷だらけだ」

 三時間ほど歩いた後、痛みが限界に達し不意にでた言葉だった。

 当然といえば当然で、素足のまま慣れてもいない岩、もしくわ砂の上を子供が歩き続ければ当然怪我もする。さらに大人から子どもに急に変化すれば歩幅の違いからつまずいたり転んだりも数回はあった。

 幸いにも天候は春を思わせる過ごしやすい天気で暑くもなく、当然寒い訳でもない。


 だか、楽観視できる状況ではなく依然、全裸のままだった。次第に空は日が落ちかけ暗くなるにつれ、不安は募っていった。



 「暗くなってきたし、移動しない方がいいんかな?」と答えてくれる相手もいないが呟かずにはいられない、当然サバイバルの知識などなく、それ以前に道具すらないのでどうすることも出来なかった。



 大人の足ならば三時間も歩けば数十キロは進めるだろうが、そこは子供の足。足を痛めつつ歩き続けたので大した距離は稼げず体力的にも限界を感じ、そこで野宿を考えた。


 そこには頼れるものはなく、ただ荒野が広がっているだけだった。しかし周囲には人の気配、もしくは生き物の気配はなく、動物などに襲われる心配はそれほど感じないと安易に思い、その日の行動はそこで終わりを迎えた。


 「喉かわいたなぁ、腹も減ったし‥‥‥‥‥‥」



 だが誰も答えてくれない。




「(これ、地味にヤバくね?)」と心の中で呟くが‼答えなどなにもない。




 はっきり言って限界だった。周囲になにもない、飲み物、食べ物、着る物。当然頼れる人もいない。何もない状態でただ歩き続ける、その行為を続けるには現代人の甘い精神では到底無理があった。


 「せめて飲み物だけでも‥‥‥」


当然そんなものはなく、ただひたすらに歩くしかなかった。




 そんな状態が数時間続いた時、天候が急転し雨雲が集まり、いまにも雨が降りだしそうな陰りが見えてきた。


 しかしそんな事を気にする余裕などなく、当然空なんかみてもいなかった。




 ポツッ、ポツッ、と雨が肌を濡らし始め、ようやく天候の変化に気づく。



 「あっ!ははっ、.あははははっ、水だぁ」数十時間ぶりの水分に気持ちを高め全身で雨を浴びる。



 当然なにも考えていない。雨に濡れたあと悲惨な現実があるともしらずに。


 少年は雨の中舞い踊った。意味もわからない全身で喜びを表すような舞いを。





 数分雨に喜び、現実に戻される。



 「なにやってんだろ?」ぼそっと呟き現実に戻され不意に後ろを振り向く。




 そこには一人の青年と少女が立っていた。


 


              


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