第五十四話 二人の最強、アナウンサーを助ける
お久しぶりです!
ちょっと音の魔術師に集中してしまいました。
今日からこちらもしっかり更新していきます!
――新人女子アナウンサー、高木 裕子(二十四歳独身 アイドルから転向)視点――
私は今、とんでもないスクープに遭遇した!
本当は松本市の美味しい料理を紹介するっていう内容での収録だったんだけど、収録中にその事件が起きた。
何と、白昼堂々爆発テロを起こしている男性がいた! しかも私達は、男の約百メートル後方で出くわした!
でも爆弾を投げているっていう訳じゃなくて、手をかざしただけで爆発したり、火の玉を投げつけたり、もう訳がわかんない!
訳わかんないけど、私にとってはチャンスよ!
私達クルーは、同行していたディレクターと相談した。
「今から生放送に切り替える! いいか、これは大スクープだ! 全員気を引き締めておけ!!」
私達は頷く。
特に新人カメラマンである、高柳君なんて撮ってやるっていう意気込みがオーラのように感じる。
私達の気持ちは、このスクープを逃さないっていう気持ちで固まった。
でも私達は、地獄を目の当たりにした。
黒焦げの死体、瓦礫に潰されている人、無数の悲鳴。
スクープとか軽はずみで言っていいものじゃなかった。
肉が焼けたような臭いが、胃液を逆流させるけど、私は耐えた。
だって、いつまでもアイドル気取りとか言われてバカにされていたんだ、私は!
私はただのアイドルじゃない、今はアナウンサーなの!
東大を舐めるんじゃないわよ!!
このスクープで、私はアナウンサーもしっかりやり遂げられる所を見せつけてやる!
後ろにいた高柳君は、カメラを回しつつも吐いていた。
きっと吐いた音声は入っちゃってるけど、それでもカメラを回すガッツは褒めてあげる!
彼にも野心があった。
大きな番組のメインカメラマンになる事。
私と同じ時期に入社した彼にとっても、これは大きなチャンスなの。
私は、吐き気を抑えてアナウンスを開始した。
「皆さん、見ていますでしょうか!? 謎の人物によって引き起こされている破壊を!!」
台本なんて無い。
試されているのは私の語彙力と機転だ。
アイドルの経験をここで活かしてみせる!
「皆さんには大変ショッキングな光景、映像になっているでしょう。ですが、今起きている事は事実なのです! 何らかの方法によって建物を爆破し、通行人を焼いていっています!」
私が必死になって言葉で伝えようとしているところに、男の前に警官隊が立ちはだかった。
皆銃を構えている。
私は高柳君にズームするよう伝えようとしたが、彼もわかっていたようで、親指を立ててサムズアップした。
絵はしっかり取れているみたい。
「見えていますでしょうか! 今警官隊が、男の前に立ちはだかり――ああっ!?」
何と、男が右手を水平に一薙ぎした瞬間、警官隊が爆発に飲み込まれた。
無数の悲鳴は、きっと警官隊の皆だと思う。
「――何という地獄絵図でしょうか……! 数十もいた警官隊が、一瞬の内に焼き払われてしまいました……。男は楽しそうに笑っています」
男の全身図は撮れている。
でも、男はパーカーを深く被っていて、残念だけど顔は見えなかった。
しかし口元は見えていて、楽しそうに笑顔を作っていた。
狂ってる、本気でこいつは頭がおかしいと思う。
それでも私は、この事件を伝えなくちゃいけない!
使命感とかそんなのじゃない、ただ、私の為に!
もっと色んな仕事をしたいの、もっと色んな人に私を知って欲しいの!
亡くなった皆には悪いけど、踏み台になってもらう!!
と思っていた時、男が振り返った。
そして掌をこちらに向けた。
その瞬間、何か熱いものが一瞬顔の横を通った。さらに背後から急に熱さを感じた。
私と高柳君が振り返ってみると、私達の後ろにいたディレクターが燃えていた。
えっ……?
燃えていたのはたったの二秒。
それでも、もう炭のように真っ黒になってそのまま倒れた。
嘘……でしょ?
何をしたのか全くわからない!
あの男は、何をしたの!?
私は流石に我慢できず、ディレクターの無惨な死に様を見て吐いてしまった。
「あはははははははは!! 最高だよ、最高に楽しいよ!! そこのお姉さん、すっごく美人だねぇ! ヤらせてくれたら、お姉さんは生かしてあげるぜ?」
男は、私に向かって歩いてきている。
怖い、怖いよ!
私はついに尻餅を付いてしまった。
でも、まだカメラが回ってる。
何か、何かを言わなきゃ!
「み、皆さん……、まだ松本市に残っている皆さん、今すぐ避難してください! 今目の前にいる犯人と思われる男は、無差別で殺しや破壊を楽しんでいる凶悪人物です! 最低限の所持金と荷物だけを持って、早く市外へ避難してください!!」
そう、私はテレビを通して皆に避難を促したの。
打算でも何でもない、自然と出てきた言葉だった。
もしかしたら、私の最期の仕事になるかもしれないし。
「お姉さんも俺の事を凶悪人物とか、好き勝手言ってくれちゃってるねぇ! まっ、事実か。あははははは!!」
ああ、こいつはおかしい。
話し合いとかで何とかなる相手じゃない。
無理だ、私は殺されるか、もしくは犯される!
一応私、アイドル活動に全力を注いでいたから、本当に処女なのよ。
学生時代から芸能活動をしていたから、恋愛すらしてない。
アナウンサーになって、素敵なスポーツ選手と結婚をして、幸せな家庭を築きたかったなぁ。
こんな奴に私の処女と命を奪われるんだって思うと、死ぬ程悔しいし、体が震える位怖い。
「じゃあお姉さん、死ぬ前に俺とイイコトしようぜ?」
「ひっ!?」
ゆっくり歩いていた男は、ついに私達の目の前までの距離まで近づいて来ていた。
だけど高柳君が私と男の間に立ちはだかった。
私を、かばってくれている?
「おいカメラマン、邪魔だぜ? 殺すぞ」
「うっ……!!」
男が高柳君に向かって掌を向けた。
まずい、高柳君が殺されちゃう!!
「逃げて、高柳君!!」
「に、逃げない!!」
「何でよ!!」
「き、君の事を、好きだからだよ!!」
「っ」
私は、今、告白された。
しかも、命を張ってまで。
こんな、こんな状況で告白する!?
でも、私もこんな状況なのに、ときめいてしまった。
高柳君の容姿は普通だ。正直私の好みには一ミリもかすっていない。
それでも、こんな真剣に、しかも自分が死ぬかもしれないのにかばってくれている。
あぁ、こんな近くにいい男いたじゃん。
スポーツ選手とかより、すっごく中身がいい男。
「早く、早く逃げろ、高木!!」
「返事もしてないのに、置いていける訳ないでしょ!」
「バカ、そんなのはいいから、早く!!」
「私は、テコでも動かないわよ」
「……好きにしてくれ」
こんなに嬉しい告白をしてくれたんだ、彼だけ残せる訳ない。
もう、覚悟は決めた。
私は、この男をぶっ倒す!
無理でもなんでも、ぶっ倒す!!
この男は私を犯したいはず、ならすぐには殺さないと思う。
そのアドバンテージを活かして、攻撃すればいい!!
でも、そんな私の甘い考えを、この男はばっさり斬り捨てた。
「あぁあ、何かお前らの茶番見ててどうでもよくなったわ。二人ともまとめて焼け散れ」
だめだ、手詰まりだ。
「高木!!」
高柳君が守るように抱き付いてきた。
炎から私を庇う為かな。
でも多分だめ、二人とも同時に燃やされる。
まぁこの温もり、結構好きだから冥土の土産にはいいかも。
「高柳君……!!」
私も、彼に身を預けた。
あぁ、本音はもっと生きたかったな。
私は目を瞑って、死を待った。
すると、どっかから声がした。
「勇者キーーーーーーック!!」
「ま、魔王パーーーーーーンチ!?」
「ぶげらっ!!」
えっ?
私が目を開けると、何処から来たのかわからない二人組に攻撃されている犯人が映った。
そして、バトルアニメのように二百メートル位ぶっ飛ばされた。
え、えぇぇ!?
何、この人達!?
「お嬢さん、大丈夫かな? この僕、《勇者レッド》が来たから安心していいよ」
ゆ、勇者レッド?
顔には今やっているスーパー戦隊物のレッドのお面を着けている男が立っていた。
黒髪とだけしかわからず、顔がわからない。
「とにかく、早く逃げてください。私、え~っと、ま、《魔王ピンク》があの男を相手しますので」
ま、魔王ピンク!?
声を聞くとすごく中性的で、性別がよくわからないんだけど、身長高いから男の人なのかな?
でも、魔王は何でピンク!?
「ここはかなり大きな戦闘領域になると思うから、早く逃げて欲しいな」
「「は、はい!」」
私と高柳君は、カメラとマイクを持ってその場から離れた。
でも、三百メートル離れたところで、高柳君は振り返ってカメラの撮影を続けた。
「高柳君!?」
「やっぱり、俺は生粋のカメラマンみたいだ。今の状況をどうしても撮りたい!」
「……なら、付き合うわ」
私はマイクを持って、これから起こるであろう戦いを、しっかりと放送に乗せる決意をした。
――由加理視点――
「こほっ! こほっ! ごほっ!!」
「ゆ、由加理……大丈夫?」
大丈夫な訳がないよ!
今アタシは学校にいるんだけど、先生の親御さんが亡くなられたので現在自習中。
その時に松本市で、謎の爆発テロ事件が起きているという事で、クラスメイト全員がその話題で持ちきりだった。
アタシはスマホのワンセグ機能を使ってワイドショーの中継を見ていたけど、途中で乱入してきた変なお面を付けた二人組が現れた。
うん、どう見てもあっくんとアデルさんだ。
アタシは盛大にむせた。
何よ、勇者レッドって!
何よ、魔王ピンクって!!
あっくんのレッドはまだ良いとして、何でアデルさんはピンクを選んだし!!
松本市って事だから、あの二人は絶対関わるなぁって思ってたけど、本当に関わってくるとは思わなかったわ……。
色々と黒こげ死体とかもモザイク無しで放送しているから、クラスの子何人か気分が悪くなっちゃったみたいで、アタシも実はそうだった。
でも、この二人が出たからには問題解決は間違いないから、気分が良くなっちゃった。
「頑張れ、アデルさん。あっくん、ファイトだよ!」
アタシは、あっくんからもらったネックレスを握り締めて、スマホから流れてくる映像を食い入るように見続けた。
――夢可視点――
私は今、かなり驚いていた。
バイトしているんだけど、ちょっと暇になったからその隙にスマホで何となくニュースを見た。
そしたら、松本市で爆発テロ事件が発生しているって報道があったんだ。
松本市って、今アデルとその親友が観光しているところだよな……?
私の顔は青ざめた。
速攻でワンセグでワイドショーを見ると、一つのチャンネルだけ生中継をしていた。
そこで映った映像は、犯人と思われる男に対して、変な赤いお面を着けた奴がキックを、ピンクのお面を着けている奴はパンチを喰らわしていた。
ちょっと待て、あのピンクって……。
アデル、じゃないか?
多分、直感だけど間違いなくアデルだと思う。
な、何だ?
魔王ってどういう事だ?
でもいいや。
私は、アデルが無事に帰ってきてくれるだけでいいんだから。
「アデル……無事に帰ってきてね……」
「田中さーん!! いくら今お客さんいないからって、今日陳列の量多いんですから、早く手伝ってください!!」
後輩に怒られてしまった。
私はニュースが気になりながらも、仕事に渋々戻った。
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