第三十五話 最強の魔王と孤独な少女、それぞれの帰路
さて、恋愛模様編もそろそろ終わりに近づいて、また旅行に戻ります!
アタルが即付き合った系なら、アデルに関しては少女マンガのように何巻も使ってくっつく恋愛をしていきます。
アデルと夢可がどのように恋を育んでいくか、お楽しみください!
――アデル視点――
ついに、渋谷駅まで着いてしまった……。
こんなに、こんなにも夢可さんと離れたくないと思うとは思わなかった。
とても胸が苦しい。
とても悲しい。
誰が死んだとかではないのに、とても悲しいのだ。
離れてしまうという事実、会えたとしても次は一ヶ月後。そんなに長く待てない。
これが、恋なのか……。
アタルさんは本当に嬉しそうに語っていたが、もしかしたら今の私と同様に寂しさを感じていたのかもしれないな。
もう今日は驚くばかりの出来事が起きすぎている。
そもそも、私にこんな感情があるとは思わなかった。
「「……はぁ」」
私はため息を付いた。何故か夢可さんと同時に。
私は夢可さんの方に振り向いたら、彼女も私の方を見ていた。
きっと、私と同様にため息を付いた理由を知りたいみたいだ。
「貴女と離れたくないからです」
……なんていう言葉が何故か言えず、とりあえず笑ってごまかした。
でも、彼女のため息の理由は何なのだろう?
「どうしました? ため息付いて」
「いや、まぁ……あはは」
あっ、笑ってごまかした。
ん~、理由が気になるが、深く追求して嫌われるのは嫌だ。ここはスルーしておこう。
もし、彼女も私と同じ気持ちなら、とても嬉しい。
しかし、恋愛の難しい所は相手が私の気持ちを受け止めてくれるかという部分だ。
同じく相手が私を想ってくれていれば、お付き合い出来るだろうが、そうでなければ振られてしまう。
それは本当に嫌だなぁ……。
恋の怖い部分はまさに、それだな。
「なぁ、アデル」
「はい、なんでしょうか?」
「その……さ、次はいつ……会えるか?」
な、何と!!
彼女の方からそのように言ってもらえるとは!!
嬉しい、とてつもなく最高に嬉しい!
「一ヶ月後に会えます!」
しまった。
声を大きくしてしまった。
だが、本当に嬉しい。
また、会ってくれるんだな。
「一ヶ月……長いな」
「申し訳ございません、我がく……会社が繁忙期なもので」
嘘だ。
国の運営は毎日が繁忙期だ。
ま、これ位の嘘は許してほしい。
だって、異世界から来ました魔王ですって言っても、信じては貰えないだろうしな。
「わかった! じゃあ一ヶ月後、この忠犬ハチ公像で待ち合わせしよう!」
「ええ、わかりました!」
そう言って私達は帰路に着いた。
私だけ、彼女の姿が見えなくなるまで見送った。
夢可さんの姿を、一秒でも長く焼き付けたかったからだ。
……やはり、苦難を乗り越えた彼女は力強く、美しかった。
ポケットに手を突っ込むと、カサリと音がした。
それを出してみると、夢可さんに渡されたスマホの連絡先が書いてある紙だった。
そうだ、忘れていた!
連絡先貰っているではないか!
しかも丁寧に、今流行しているメッセージアプリのIDとやらも書かれている。
となると、私のやる事は決まった。
「よし、アタルさんにお願いしてスマホを確保しよう!」
私は夢可さんと別れた残念な気持ちが吹っ飛び、電車に飛び乗った。
スマホ、絶対に確保するぞ!!
――夢可視点――
今、私は帰りの電車に乗っている。
アパートに帰る為だ……って、あぁぁ!
あのゲス男にアパート引き払われてるんだっけ!
アデルと別れるのが嫌で、すっかりその事忘れてた……。
まぁお金は正直一生暮らせる分があるし、どっかホテルに泊まろう。
しっかし、この私が恋をするとは思わなかった……。
しかも今日会ったばかりの男にだ。
私はこんなにも惚れっぽかったんだなって、ちょっと思ってしまった。
でも仕方ないじゃん?
あんなに優しいし、常に私の目を見て話してくれるし、私が喜ぶ言葉を常にくれるし……。
いやらしい目じゃなくて、本当に私を見てくれているようで、とっても嬉しい。
正直、この胸のせいでいやらしい目で見られ続けているから、若干コンプレックスになっている。
でもアデルは違った。
それが大きいのかもしれないなぁ、アデルを好きになったのは。
あぁ、でも何で帰りの電車は逆方向なんだよ!
電車まで一緒にいたかったのになぁ……。
ま、私が今家がない事を失念していたのが悪いんだけどさ。
とりあえず今後はどうするかなぁ。
今、本当に一生暮らせるお金が手元にある。
でもそれでいいのか、って思ってしまう。
私は今、バイトを四つ掛け持ちしている。
今までは家計の為だけに働いていたから、そのバイト自体に思い入れはこれっぽっちもない。
そういえば、アデルも言っていたっけ。
「『生きている限り、何かが見えてくる』……か」
もしかしたら、私は今、チャンスを得ているのかもしれない。
夢を見つける為のチャンスを。
すると、頭の中ですごく古い記憶がフラッシュバックのように思い出された。
『わたし、お嫁さんになりたい! お嫁さんになったら、おかあさんにわたしの子供を見せてあげるね!』
そっか、私お嫁さんが夢だったのか……。
ありきたりだねぇ、私。
まぁ結局、その子供を見せる事なく逝っちゃったけど……。
ま、まぁね、アデルのお嫁さんだったら、いいかも……って、なに考えているんだよ、私!!
「まっ、それ以外でやりがいある仕事を見つけてみようかな……」
私はスマホを取り出し、求人サイトを見る事にした。
何処か学校に通おうかともふと考えたが、やりたい事が決まっていないで学校に入るのは時間の無駄だなって思った。
なら、とりあえず興味がある仕事に就いてみて、気に入ったらその仕事を頑張ってみようと思う。
アデルに出会って、本当によかった。
私は、こんなにも前を見て生きた事はなかった。
でもアデルが、あいつが私の閉じた心をこじ開け、好きになった事で生きる事が楽しくなった。
私は、全力で生きてみたい。
そして、あいつに胸を張って好きだって言いたい。
「アデル……別れたばっかりなのに、もう会いたいよ」
心がもうアデルを求めている。
でも、ゆっくりこの恋を育んでいこう。
焦ってしまって振られるのは死んでも御免だ。
次に会ったら、私はこんなに頑張ってるって、言いたいから。
よし、一先ずはホテルに泊まろう!
今日は色々頑張った自分にご褒美で、ちょっとグレードが高いホテルに泊まって、美味しいものを食べてやる!
最後まで読んでいただき、有難うございます!




