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二人の最強による、日本観光記  作者: ふぁいぶ
第二章 二人の最強の恋愛模様編
31/64

第三十一話 最強の魔王、恋を語る

今回はちょっと短めです。


 ――アデル視点――


 恋とは何なのだろう。

 私はずっと考えていた。

 初めて日本に来た時、アタルさんは幼馴染みである由加理さんと結ばれた。

 由加理さんは念願叶ったといった感じだった。

 だが、魔族である私にとって、恋という感覚は全くわからなかった。


 魔族は恋愛は一切しない。

 気に入ったから我が子を産めと言い、逆らったら力でねじ伏せ従わせる。

 ある種、そういった部分だけは野生動物や魔物と何ら代わりないのだ。


 幸せ真っ只中なアタルさんに聞いた。

 恋とは何なのか?


「恋ってのは、とにかく傍に居たくて、守りたくなるものなんだよ」


「私は、アタルさんとは親友ですが、そう思っていますよ?」


「やめろぉぉぉぉぉぉっ!! 僕はそういった趣味は全くないぞ!?」


 違ったのだろうか?

 アタルさんは今の私にとっては唯一無二の親友だ。

 頼りたいし頼られたい、守りたいと思うし一緒に居ると落ち着くから、傍にいたいと思っている。

 それが男色と間違われたらしい。

 

 試しに、サイラスに聞いてみた。


「鯉でございますか? あれはダメです。身が全く美味くありませんぞ!」


 恋の事を聞いたのに、鯉の味を答えられた。

 一応面倒だったが、恋について説明する。


「恋? そんなのは力づくで我が物にする事でしょう。我輩の妻は相当美人でしてな、他の雄共を排除するのに苦労しましたぞ」


 ……魔族に聞いた私がバカだったようだ。

 竜人族の中で、サイラスは確かに美人の妻を持っているらしいが、皆トカゲの顔をしているからよくわからない。


 やはり、私には恋愛小説しかそれを知る術はなかった。

 日本に行った際に購入した小説だ。

 タイトルは、《一途》だ。

 直球なタイトルであるが、なかなかに面白い。

 主人公は男子高校生、そして学校に車椅子に乗った女子生徒が転校してきた。

 主人公は彼女に惹かれていく。だが、彼女は障害のせいで好きな人に苛められた過去を持っており、恋愛を拒絶していた。

 それでも彼は彼女に一途に尽くし、最後は結ばれるという話だ。

 アタルさんに言わせればありきたりらしいのだけど、主人公の心理描写を上手く表現できていると思う。


 その中で、恋をしたらどうなるかというのが書かれており、私はそれを参考にしたのだ。

 

 恋は、胸が苦しいらしい。

 恋は、一喜一憂するらしい。

 恋は、好きな子を抱き締めたくなるらしい。

 恋は、好きな子とセックス(交尾の事らしい)をしたくなるらしい。

 恋は、命を捨ててでも好きな子を守りたいらしい。


 手掛かりはこんなものだ。

 アタルさんにも聞いてみたら、大体合っているようだ。

 付き合っても結構大変で、自身の劣情と格闘をするそうだ。

 物語の主人公も、手を出して嫌われないか不安になっていた。

 両思いになっても、何でもしていいという訳ではなさそうだ。


 まぁ、私には縁はないだろうと思っていた。


 だが今日、まさかの私が恋愛を味わう事になるとは思わなかった。

 

 目の前にいる、田中 夢可という女性に心を惹かれた。


 何処が好きなのだろう?

 私は、彼女と喫茶店で会話をしながら考える。


 最初は本当に誰も寄るなと言わんばかりの、刺々しい雰囲気を表に出した女性だった。

 私の事も最初は拒絶していた。

 でも、彼女の事情を知ると、確かに他人を信じられなくなってしまう。

 私とはまた別の種類の孤独を味わっていた。


 私は、同じ孤独を知る仲間が出来たと思い、友達になった。

 きっと彼女も同志が出来たと思って、友達になってくれたのだろう。


 ここからだ、私の中に恋という感情が成長していったのは。

 男達に襲われていた彼女は服がボロボロだったので、以前お世話になった衣服屋へ向かった。

 そこで店員さんと一緒に服を選んで、何故かどちらが似合うか勝負する羽目になった。


 彼女が着替えている最中、試しに店員さんに恋について聞いてみた。


「そっすねぇ……。俺、最近まで女の子を好き勝手食っちゃってたんですよ」


 食っていた!?

 人間とは、同族を食料にするのか!?

 ……いや、確か日本語の豊かな表現の中で、交尾を手当たり次第するのを「食っちゃう」と言うのを聞いたな。

 彼は確かに他の女性にモテているから、相手は選り取り見取りなんだろうな。


「でもそれだけだと埋まらなかったんですよねぇ、心が」


「心?」


「そっす。そこで最近ようやくわかったんっすよね!」


「何がですか?」


「恋って、一緒に何かをして、一緒に共感するものだってね! そうした上で一緒にいたいし、彼女が喜んでくれたら嬉いんすよ」


 ふむ、それは親友でもいいのではないだろうか?

 この言葉を聞いて、私はさらに混乱してしまう。


 恋とは、本当に何だろうか?


 彼女が着替え終わった姿を見た時、私は彼女に見惚れた。

 店員さんが選んだ服は、活発で行動的、でも体のラインがしっかりわかる格好だった。

 そして私が選んだ服はシンプル、それでいて明るい雰囲気を演出したものだ。

 どれも素晴らしかった。

 彼女は両方似合っていた。


 でも、これは勝負だ。

 何故かどうでもよかった勝負が、私が選んだ服を着てもらった瞬間に、負けたくないものに変わった。


 結果は私の服を選んでくれた。

 何故だろう、とても嬉しかった。

 そして夢可さんの柔らかい笑顔に、胸が締め付けられるような感覚に陥った。


 喫茶店に移動して、彼女の母親の話を聞いた。

 彼女はその思い出を語っている時に感傷に浸ったのだろう、泣いていた。

 私は彼女の涙を見た時、衝動的に抱き締めたくなった。

 だが、魔王としての自覚が何とか抑えてくれた。


 そして涙を拭いて見せてくれた、満面の笑み。

 きっと、この笑顔で私は恋に落ちたのだ。

 どんな宝石よりかも美しく、可憐な笑顔だった。

 それをもっと傍で見ていたいと思った。

 その笑顔を手に入れたいと思った。


 これが、私の所謂初恋だ。

 初恋は叶わないというジンクスがあるらしい。

 ……それ、悲しくなるから止めてほしい。


 未だに恋は自覚出来たけど、何をしたいのか、どうすればいいかはわからない。

 でも日本で産まれた、素敵な感情だ。

 ゆっくりと、大切に育んでいこう。

 きっと、どうしたいか等の答えは、恋という気持ちが大きくなったら答えを示してくれるだろうから。


 さて、変な事を考えていたな。

 彼女との会話に集中しよう。

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