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二人の最強による、日本観光記  作者: ふぁいぶ
第一章 渋谷観光編
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第二十一話 エピローグ3 最強の魔王がもたらした改革

第一章ラスト1話です!


 ――アデル視点――


 私は今、魔王城に設けられている自室にて、頭を抱えていた。


「何なのだ、ニホンゴとは!! あまりにも複雑過ぎる!!」


 私は頭脳には自信がある。

 魔術の研究を行って、ここまで色々な魔術を開発したのは私だけだろうしな。

 そんな私を以てしても、このニホンゴとは奇っ怪な文字であった。

 ひらがなやカタカナは覚えたのだが、あまりにも単語が多すぎる。しかも同じ読み方でも漢字の書き方で全く違う意味を持つ単語もあるし、私の頭は絶賛大混乱中だ。

 よくニホンの民は、こんなものを日常生活で使えたものだ。

 私には理解できない。

 しかもアタルさんの話によると、ニホンゴはかなり柔軟な言語らしく、アメリカゴという他国の言語も取り入れているのだとか。

 何故こんなに複雑にしたんだ、ニホンの民よ!


「はぁ、これは長期戦になりそうだな……」


 この調子だと一ヶ月ほどかかるかもな。

 一旦息抜きが必要だな。

 久々に別荘にでも行こうかな。


 今私の魔力は、すっからかんだ。

 それだけ、ニホンとの距離は半端なく、まさか一往復でほぼ空になるとは思っても見なかった。

 まぁ全く空ではないので、魔力消費量が少ないテレポーテーション等は、まぁ一往復なら使える程度だ。

 ん? テレポーテーションが魔力消費量が少ないはずないと?

 この魔術は私が改良に改良を重ねたものだ。

 消費量を極限にまで削ったのだ。

 ふふん、すごいであろう?


 すると、自室の扉を叩く音が聞こえた。


「陛下、お休みのところ申し訳御座いません。宰相殿がお呼びで御座います」


 扉越しで召し使いが話しかけてくる。

 はぁ、今日は休ませてほしいと伝えてあるはずなのだがな……。

 宰相であるサイラスは、そこそこ有能ではある。

 だがやはり脳筋魔族であることは変わりなく、「政は二の次で、足りないものは奪えば良い」という考えである。

 それも為政者としての選択肢の一つなのだが、それで終わってしまうのが悲しい。

 しかし頭脳は良いと思っているので、今は私自らサイラスを教育しているところだ。

 まだまだ私を補佐するレベルに達してはいないが、後五年経ったら私の仕事の負担も減らせる位にはなるだろうと見込んでいる。


 というか、先代魔王が脳筋過ぎて、国の政がズタボロ過ぎたのがいけない!

 だから私は法整備やら何やらで追われて大忙しなんだ!

 ……いらっとしたから、後で隠居している先代魔王を懲らしめに行こうかな。

 最近、私の姿を見ると、「も、もう勘弁してくださいまし!!」と情けない姿を晒して謝ってくる。

 


「さて、サイラスに呼ばれたから行くか……ん?」


 席を立った時、ふとニホンで買った服が目に入った。

 私の今や思い出の宝物だ。


「……うん、気分的にこれを着たいな」


 私はマントやローブを脱ぎ捨て、着替え始めた。











 ――魔王軍宰相、サイラス視点――


 我輩は竜人族の宰相を勤めているサイラスという。

 我輩は戦闘も出来、算術や政治も出来たので先代魔王陛下に宰相としてご推薦を頂いたのである。

 もちろん我輩は、この役職に誇りを持っている。

 陛下のお側で、陛下の覇業のお手伝いが出来るのだから、魔族としては最上の喜びである。

 しかし、我輩の自信と誇りは、今現陛下によってズタズタにされていたのだ。

 何故なら、我輩は陛下のお考えが全くわからぬのだ。

 陛下が行う政策は、今までの魔王陛下とは違い、武力を一切振るわないのだ。

 法律というものを敷き、守らぬ魔族は罰則を与えた。殺しはしないが、なかなか重い罰則だった。

 国民は罰則を恐れ、これを守った。守った結果、略奪による被害が激減したのだ。

 ただ戦うだけしか脳がなかった兵士を、各拠点に派遣。そして近辺の村や町を護衛する。

 すると国民にも感謝され、税(主に肉や穀物の物品)が多く納められるようになったのだった。


 我輩がこの政策の成果を垣間見た時、身体中の鱗が剥げ落ちるような気持ちだった。


 これが、天才というものであろう。

 我輩なんて足元にも及ばなかった。

 

 確かに今自信を打ち砕かれているが、我輩はこの役職に誇りを持っている。

 だから、我輩は恥を忍んでアデル陛下にご教授頂いている。

 まだ陛下のお力になれていないものの、着実に知識を付けてきていると自負している。


 そんな話はさておき、我輩は今、陛下をお呼びしてとある政策の報告をしようとしているのだ。

 前々から陛下がお考えになっていた、通貨の流通が形になったのだ。

 我輩が全力で取り組んだ、自信の政策である。

 それを今から報告しようとしているのだが――。


「へ、陛下……。そのお戯れは?」


「ふむ、パンクであろう?」


「ぱ、ぱ……?」


「ふふ、サイラスはパンクもわからぬか」


「は、はぁ……。知識不足で申し訳御座いません?」


 何故我輩は謝っているのだろうか。

 今陛下は、珍妙な格好をしている。

 全身黒の服なのだが、いつものではなく、ズボンは所々破けている。

 上着については白く絵や記号らしきものが書かれている。

 中央に大きく書かれているのは、骸骨か?

 そして胸に輝く十字架の首飾りは、何かしらの《アーティファクト》なのだろうか。だが、何の魔力は感じないな。

 一番は、何ゆえ陛下は頭の角を隠して人間と同じようになっているのだろうか……?


 わからん、我輩は試されているのであろうか?


 しかし、珍妙ではあるのだが、とてつもなく違和感がない。

 むしろ似合っている。

 玉座に足を組んで座り、右の肘置き部分に右肘を置いて、頭の体重を右手に預けているような体勢だ。

 それが凄まじく神々しい。

 威厳やそういったものではない、上手く表現は出来ないが、崇拝したくなるような。

 だが神とかそういうのではなく、身近の崇拝する存在というか。


「さて、私を呼び出したという事は、通貨の件であろう?」


「はっ、左様で御座います!」


「書類はまとめているのだろうな?」


「はっ、こちらに」


 我輩は陛下の前に跪いて書類を渡した。

 書類という、あまり慣れない行為に四苦八苦したが、上手く纏めたと思う。


 陛下は書類をパラパラと物凄い早さでめくる。

 陛下は速読が出来るようで、あれでもしっかり内容を確認できているのだろう。


「うむ、日頃の教育が実になったな。よくやった」


「はっ! ありがとうございます!!」


 アデル陛下から初めてお褒めの言葉を頂けた!

 あぁ、恐悦至極とは、この事か……。


「修正箇所もほぼないな。ではこの計画通りに早速事を進めよ。もちろん、サイラスが指揮をするんだぞ?」


「誠心誠意取り組ませて頂きます!」


「それと、これは私主導で行う予定の案だ。目を通しておいてくれ」


 我輩は陛下から書類を受け取ると、表紙にこのように書かれていた。


『ドーン大陸教育機関設立の草案』


 我輩は驚いた。

 魔族を教育する?

 我輩でも陛下の教えは相当苦労したのに、他の魔族にそれができるのだろうか?

 さらにページをめくって読み進めた。


 簡潔に計画をまとめると、こうだ。

 まず十歳になった魔族を対象に、文字の読み書きや算術、基本的な戦闘技術や魔術を一年間教育する。

 そこから《戦闘技術専門学校》《魔術技術専門学校》、そして《総合知識専門学校》の三つを選択できる。

 《総合知識専門学校》を卒業した者は、地方で教師として教える資格を有し、優秀な者は文官として魔王城へ迎え入れるとの事。

 他の専門学校でも、優秀な者はスカウトするという流れになるという。

 だがそれだけでは終わらない。

 今回通貨を流通させるにあたって、それとも連動していた。

 今まで税は物品だったが、今度は金になる。

 つまり、皆金を稼ぐ必要が出てくるのだ。

 そうなったら商売を始める必要がある。

 そこで、この《総合知識専門学校》の出番である。

 商売の基本や金の流れ方を教え、立派に独立してもらおうというのだ。


 また、自警団を設立し、《戦闘技術専門学校》と《魔術技術専門学校》の職の選択肢を増やしたのだ。

 元々我輩の通貨流通計画書に、初回のみだが三ヶ月程暮らせる金を、全国民に支給する予定だ。

 階級関係なく、選択肢は大幅に増える事となる。


「……これは」


「我が臣民は、あからさまに戦闘に特化しすぎている。強い者は栄え、弱い者は死ぬ。そんなのは国としては最低だ。ならば、弱い者でも活躍できる場所を作る。すると、強い者はその場所に頼らないといけない場面が必ず来る。つまりこの国は、腕っぷしだけでは暮らせない国に生まれ変わる」


 弱い者が淘汰される時代が終わるのだ、と陛下は付け加えた。

 まるで人間の社会と同じではないか。

 恐らくそれを真似たのだろう。

 しかし、確かに国民が減れば税がなくなる。

 この通貨流通も機能しなくなるであろう。

 それを抑える為の教育、という訳か。


「上手く行くかは正直わからぬ。だから、上手くいくよう手を貸してもらいたい」


 へ、陛下が……初めて我輩を頼ってくださった……。

 我輩は感涙を流してしまった。

 これほど、嬉しい事はない。


「はっ!! 命に代えましても、この草案を成功させますぞ!」


 これが上手く行くかどうかは、我輩の力量も問われる。

 死ぬ気で成功させてみせようぞ。












 ――書物、《リューンハルトの歴史》百四十二ページ、第三章より――


 魔王アデルの帰還より約二ヶ月後、《リューンハルト》初の教育機関が誕生する。

 人間側の方でも教育機関はなく、貴族階級が家庭教師を雇って専門知識を学んでいくという形だったのだ。

 この事により、《ドーン大陸》の識字率は百パーセントとなる。

 そして戦闘狂として知られる魔族も、比較的温厚となり、強奪による殺戮件数は減った。

 通貨流通改革も同時に行われ、宰相サイラスの指揮の元円滑に進んだ。

 全ての国民が文字の読み書きや基本的な算術が可能で、それぞれが適任の専門職に就いた事で、《ドーン大陸》は急激に栄える事となる。

 また、兵士の練度も高まり、人間の一般兵士では全く手に負えないレベルにまで成長した。

 だが、調子に乗って《グエン大陸》への進行はしなかったのだ。

 通貨の流通によって、自身の生活の安定化を図り始めたのである。

 魔王アデルも、それを徹底させたのではあるが。

 国民の貧富の差はそこまで大きくなく、やろうと思えば誰もが金を稼げる環境も作った。


 また、副産物も得た。

 この改革により、魔族間の差別が激減したのだ。

 もちろん全くなくなってはいないが、差別による大量虐殺等は完全に消滅したのだった。


 今、魔族では魔王アデルは賢王として、現在も慕われている存在である。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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