第2話 橋下 圭介
「いらっしゃいませ、こんにちは」
「どうも…」
今にも消えそうな声で私のあいさつに応えた。一瞬何かを思い出したかのように、ハッと目を見開いてから、また表情が固くなった。
「こちらの席へどうぞ。あなたの人生の情報が送られてくるまで少々時間がありますので、ゆっくりしていて下さい」
「あ、はい」
「それとお茶とコーヒーどちらがいいですか?」
「じゃあ、お茶で」
見るからに力がなく、さえない男性。歳はまだ30代前半といったところか?死ぬには早すぎる年齢だ。まぁだいたいこの雰囲気からすると、死因は交通事故か自殺のせんが濃いだろう。
突然に男が不安そうに聞いてきた。
「今回もまた人間に戻れますかね?」
やはりそこが気になるか。それも当然だな。
「すみません、人生評価センターから送られてくる資料を見ませんと、私にはなんとも言えません」
人生評価センターとは、その人間の行いで出された評価を数値化し、価値メーターにまとめる機関のことだ。
「そうですか… 」
「失礼ですが、死因は何でしたか?」
「僕は…自殺です」
「そうですと、減点が大きくなるので人間に戻るのは難しいかもしれませんね」
話し終わるとため息をひとつ吐き、彼は完全にブルーになってしまった。
間もなくウィーンと鳴り出したFAXから資料が出てきた。なぜFAXなのかは私も気になることのひとつだ。ここのオーナーはアナログ人間なのかもしれない。