表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

理想像

作者: ロサ

 考えたことはあるだろうか。

 自分のできる可能性について、考えたことはあるだろうか。

 やる前から『自分にはできないことだ』と諦めていることは、ないだろうか。

 自分の心に蓋をして、やりたいことを抑制してはいないだろうか。

 自分の可能性は、自分が信じてあげなければ意味がない。自分自身ができると思わなければ、人は逃げてしまう。

 逃げる生き物であるが故に、周りから浮かないために、人は逃げる。自分のしたいこと、自分ができること、やれること、やってみたいこと。

 それら全てを、諦めていることはないだろうか。

 挑戦してみよう。頑張ってみよう。奮起してみよう、自分ならやれるはずだ。一歩を踏み出すだけだ。やらなくちゃわからないだろ。

 そんな言葉を耳にはしても、実行するだけの勇気をもてない。踏み出せる自信がない。支えが欲しい。誰でもいい、自分の行いを認め、正しいと言ってくれる人が、欲しい。


 だからだめなんだよ。


 自分自身に否定された。

 お前は他人に甘えすぎだ。やるべきことは、自分自身で決めることが前提条件なんだよ。甘えるな、縋るな、守ってもらうな、支えてもらうな、正当化の理由を、他人に押し付けるな。

 後押しなんてない。自分自身を押すことのできない人間は、どこまで行っても弱いだけだ。

 ふざけるな。間違うな。己の行いに、他人を巻き込むな。己の行いには、己自身で尻を拭え。他人に支えてもらいたいなら、確固たる自分自身の心を忘れるな。

 忘れた人間は他人に縋る。忘れた人間は他人に罪を擦り付ける。彼が、彼女が、君たちが。あなたが友達が親が先生が上司が部下が後輩が、僕にそう言ったのだ。だから。


 『だから』なのか?


 僕は自分の網膜に映る存在に問いかける。視神経が認識し、脳内処理されたその存在に、問いかける。

 弱い自分。弱すぎる自分。甘える自分。涙もろい自分。人と関わり合いになるのが苦手な自分。

 その存在は、口の端を吊り上げて、黒い世界でもわかるほどに三日月のような口をして、僕に笑いかけた。


 だから。この続きは、言わなくても理解しただろ?

 間違えてはいけない。誰もが続きの言葉を想像したように、お前はおまえ自身に嘘をついてはいけない。それは、逃げじゃない。愚考で愚行な愚か者のすることだ。


 僕は、その言葉に微笑んだ。

 目の前の存在は、大笑いをする。

 笑顔がステキなその存在は、僕へと歩いてきて、体と身体が触れ合うところまで近づいてきた。

 優しく厳しい存在。正しく勇気ある僕。憧れた僕の理想像。笑顔がステキな夢の人物。


 一歩、踏み出せる決意はしたか?


 耳元で、僕の方に顎を乗せた君は、憎たらしくそう言った。

 だから、僕は負けじと言い返す。


 わからねーよ。


 精一杯の、悪あがきだった。 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ