『白』
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『白』
人類が滅亡。
その人類が此の世に残した、今では痛々しい傷跡が刻まれただけの建物。
壁面は今にも崩れそうな雰囲気が出ているが辛うじて内壁は無事であった、組織『白』の拠点。
元は人界であった此の冥界に、人型と呼ばれる『人』に近似したモノが生まれ出でた。
人型は互いに組織を構成、その一つが此の建物を拠点としていた。
大鎌を扱う赫い双眸の少年、浅葱色の髪に刀を振るう少女も、組織『白』に属している。
「―――――――ということで、新種らしき装甲兵器を討伐しました」
相手を畏怖するような血のように赫い目の少年は戦闘の顛末を報告する。
何かを討伐、殺めたのならば、必ず組長に報告しなければならない。でなければ、事の変化を把握できないからだ。
また、討伐に限らず感づいたことなど小さなことでも同様だ。
「新種だったか……まぁ、よく切り抜けられた。生きて帰れたのは何よりだな」
対する組長は少年に笑って頷く。
身長はそこそこ高めで少々肉付き、腰辺りで束ねられた雪白の長髪は滑らかに揺れた。
温厚そうな朽ち葉色の双眸から優男に見える青年は、鴉煉の隣で眠そうにする少女、駈に視線を移す。
「…………駈、大丈夫か?」
「ん…眠いですけど、大丈夫です、ハイ」
明らかに駈よりも年上である組長への態度を気にすることも無く、青年は問うた。
「じゃあ…核はどうした?喰ったのか?」
「いえ、結局持ち帰りました。駈が喰べないから……」
――――――――人の誕生日プレゼントを……
ボソリ、と呟く鴉煉。
「えーー…だって私一人で狩ったんじゃないもん……鴉煉を差し置いて一人で喰べるなんて出来ないですよ…ふあぁ」
相当疲れているのか、欠伸を連発。目を擦ってぐったりモードに。
二人の会話に優しい笑みで苦笑し、顎に手を添えて思考する素振りを見せた。
「なら…核を割ってしまえばい」
「無いですよ固くて出来ません無理です」
即否定。
「貴方が一番核を喰らってきてるんです、分かってる筈だと思いますけど……」
まさかの組長に呆れ顔を噛ます鴉煉は、深く溜息を吐く。
――――――――態とらしく大きく息を吐いて。
「む…やはり君はドSd」
「じゃないです。俺がそうだったら皆さん戦闘中はどうなるんですか」
「いや……普通だと思うが」
「なら俺はノーマルです。ボケにツッコミを入れる、許可が下りればハリセンも持ちたい普通のh」
「ほらそこだ、鴉煉。なぜそこでハリセンなんだ?何の為に……」
「……いいじゃないですか、ハリセンのあの音。一度やってみたいんです」
「やはり叩くか……」
「ハリセンは叩く為に在ると思います。でなきゃ何の為に在るんですか、白さん」
「あ~~もう鴉煉も白さんも!話題から変なとこに飛んでる!私眠いのにぃ……」
そこで『ハリセンの話題』がぷつりと途切れ、少々恍惚な笑みを浮かべている鴉煉と顎に手を当てたまま本気で苦笑する組長、白が黙り込む。
二人の視線は眠たげな駈へと集まり、ハリセンは頭の隅へと追いやられた。
再び核へと戻る。
「………うーん…あ、だったらさ、白さんに喰べてもらえばいいんじゃないかな!?いつもお世話になってますってさ!」
「!!?それグッドアイデア!そうだね、そうしよう!」
いつに無く舞い上がる二人。
「おい、それは認めないぞ二人共。戦闘に加わった者のみが得られる特権だ。しかも力の源である核をそう容易く人にあげるとは……」
――――――――力への固執は通常の状態である彼らには無いということか……
人型、異形…憎悪や怒りに溺れる装甲兵器を除く冥界の住人は、力に異常に執着するという性質を持っている。
その為、生まれ出でたばかりの二種類は、同族であろうとも互いを喰らい合い、強大化したのだ。
それは今になっても変わらず、変わったことといえば人型の組織が構成され始めた…ということのみで、未だ強大化することを異常に好んでいる。
此処の組織、『白』も例外ではない。
その組長でさえ核という力に執着心を抱いているのだ。
今は、抑制しているだけ。
心の奥底を覗いてみれば、今にもモノへの欲求が暴れださんとしていることだろう。
それなのに、この二人は……特に鴉煉については、戦闘の時以外の核への執着が見えない。
戦闘の時は人一倍暴れ回るというのに。
また彼は、武器を自らの血で構築するという驚愕の能力を持っている。それも、構築量の限度は伸びるらしく。
大抵の人型は、武器を生まれ出でた時から持っており、増えることなど無く、ましてこの少年のように霧散させることも出来ない。
鴉煉にはこれまでの人型と比べ、何種類かプラス要素があるようだ。
そして今、新型の装甲兵器が現れたとの報告も受けた。
――――――――何か変化が起きる……?
「おーい、白さーん、しーらーs」
「…………ん?あぁ、すまない」
物思いに耽っていた白を駈が呼び戻す。
相変わらず眠たそうで。
「白さんがそう言うなら核をあげられないから……どうしたらいいんですか?」
「む………、あ」
態とらしく手をポンと鳴らす。
「なんですか?なにかいい方法が…」
鴉煉の赫い双眸が瞬く。
「あぁ、思いついた。簡単だったんだ」
「「簡単?」」
二人して疑問符を浮かべるのは、対になった鏡のように同時だった。
「一方が先に半分齧り、次にもう一方が残りを喰べる方法だ。これなら譲り合いも無いだろう?」
……………………………長い沈黙。
鴉煉も駈も見事に凍りつき。
先に口を開いたのは、少年だった。
白はドヤと笑んで、その口から放たれる言葉を待つ。
だが、鴉煉は心底から反吐が出るというような苦い顔をして、
「嫌です無理です即行拒否ですどういうこと考えてるんです貴方は!」
放たれた言葉は白が待っていたモノではない、正反対の批判。
「それが命令だったら俺首斬って死んだ方が何倍もマシです!!」
怒涛の如く責め立てられる鴉煉の言葉。
それに対し、少年の隣で固まっていた駈が瞬きを再開する。
そしてポカリ、と口にした。
「……いいですよそれ。全然OK~~!!むしろ大歓迎~~!!」
「…だ、だよな?ほら見てみろ、駈はここまで喜んでくれている。何故君はそこまで……」
つい先程まで魂が抜けている状態だった白は駈の言葉に復活する。
「頭が可笑しくなったのか?駈。普通違うんじゃn」
「やったぁ~夢だったんだよね!!」
「何の夢なんだよッッッ!!そこ喜んじゃ駄目だって!!」
「そんなに否定することは無いだろ鴉煉」
「だって人が喰べたのを喰べるって、そんなの俺は拒否だ!他に回して!」
「じゃあお先にどうぞ?私後でもいいから」
「そういう問題じゃなくて」
「じゃあどういう問題なのよ?私のこと嫌いなの?」
かなり険を含んだ声音と目が鴉煉を凝視する。
「俺は…………っ」
「『俺は』?ねぇ何―――――――って、あの、白さん?」
「うん?」
「なんであなたとあろう者が取り逃がすんですか?」
「あぁ、すまない。欠伸してた」
「………………………………」
この場に残されたのは、僅かに頬を引き攣らせる少女と、申し訳無さそうにしつつ再び欠伸をする青年のみ。
少年の逃げ足の速さは、恐るべしである。
今回も読んで下さりありがとうございます。
まだまだ頑張って書こうと思いますので、レビューなど頂けたらよりよい作品が出来上がるのではないかと……
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