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WAR DOLL  作者: 零煉
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序章 人界は冥界へと誘われ

この作品には残酷な描写が含まれています。

   苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

WAR(戦争) DOLL(人形) 


序章  人界は冥界へと誘われ

   

 現代と呼ばれていたその時間は、<人>(ひと)の面倒事を一手に引き受けプログラム通りにこなし、<人>の及ばぬ驚異的(きょういてき)な速度でモノを作り上げる“その存在”が当たり前であった。“その存在”は長い時を()て、<人>の手によって作られ、<人>の手で活用され続け、<人>への利便さを追求、日々<人>の手で<人>の楽の為に改良されて行った。

 だが、楽を求め続ける余り、“その存在”は<人>に苦痛を味わわせ、楽を収奪(しゅうだつ)するという対蹠的(たいしょてき)な活用も同時に生まれ出てくるようになった。

 

 ――――――――“その存在”とは(まさ)に”“機械(キカイ)”である。


 “その存在(キカイ)”は<人>の悪しき思想により構成されたプログラムを忠実に貫き、<人>の思いの(まま)に改悪され、それは“兵器(へいき)”と称呼された。

 “兵器”はあらゆる全てを破壊し、例に銃を挙げれば心臓へ引き金を引くだけで対象を瞬殺、あの世送りにできるが、それはまだ(なま)(やさ)しいモノと言っていいだろう。

 唯、“兵器”はこの世の全てに(あだ)なし、忌み嫌われ、残酷極まりない存在であることは隠蔽(いんぺい)しきれない瞭然たる事実には変わりないのである。




 現代と呼ばれていたその時間――――所謂(いわゆる)人界(じんかい)』に、()る一人の研究者が居た。

 蕾獰罹嬉(らいどうりき)との名は果たして実名なのか偽名なのか定かではないが、彼女は異能と呼ぶに相応しい、恐るべき知能を持った鬼才(きさい)であり、“兵器”に至極関心を抱いていた。

 (いな)、関心を抱くなどそんな半端なものではない。胸の奥で息が乱れるほどに脈打つ抑えきれない知的好奇心(ちてきこうきしん)に動かされるが(まま)に、自らの手で“兵器(ソレ)”を更に残酷に、より改悪させたいのだ。

 殺人的なまでに己を襲う破壊衝動に(さいな)まれ、我執(がしゅう)(とら)われもう戻れはしないのだという後悔は微塵(みじん)も無く、唯単(ただたん)に“兵器(ソレ)”と自分の破壊の限界を確かめる(すべ)を見つけたこの胸の高鳴りはもう止まり方を知らない、そのままの理由に彼女は待ち焦がれていた“兵器”の研究を開始した。

 それが成功であったのか失敗であったのかと問われれば、快楽主義と主情主義を織り交ぜた様な思考に加え狂った彼女にとってそれは全くどうでもいい愚問である。後に何十億人の犠牲が出ようが出まいが自身の好奇心が満たされるのなら、そんなもの、道理を(はず)れて眼中(がんちゅう)にさえ無い。

 彼女の研究…否、実験と狂気は(とど)まるところを知らず、“兵器”に<人>の感情を移入する禁忌にまで手を出した。秘密裏に進められた実験は鬼才の脳により(わず)か数年で成功し、史上最凶の惨劇を生む金剛不壊(こんごうふえ)の装甲兵器を新造した。

 

 装甲兵器へ移入させたのは彼女が好む心火(しんか)のみで、その対象は<生物(せいぶつ)>。

 

 世界中から取り寄せた最新の装甲を改良、より強固に造り上げ、新製の小型核兵器を大量に生産。

 

 世界各地に凄惨な舞台が用意されるが(ごと)く、小型核兵器を隠し持つ金剛不壊(こんごうふえ)の装甲兵器を分散。


 彼女の狂気は加速し続け、<人>としての道理を外れ続けたその結果、あらゆる全てに仇なし、残酷極まりない(あしきキカイのような)存在になり、彼女は己の欲望の(まま)に残虐の装甲兵器を一斉(いっせい)に起動させた。


 たった一つの小さなエンター(キー)を人指し指で押し込んだ、唯それだけの動作でそれは行為となり、存在は罪となり、虐殺の悲劇が三千世界に降り立った。

 覚醒した各地の装甲兵器は生半可(なまはんか)な銃弾などには(ひる)みさえせず、<人>に対しての心火のみを感情として宿し、マシンガンを乱射、火炎放射を振り撒き、核兵器を市井(しせい)投擲(とうてき)し、現世を虐殺の海に呑み込んで蹂躙(じゅうりん)した。

 余りの脅威と虐殺の侵攻の速さに<人々>は戦戦恐恐とし、()(すべ)も無く大混乱に(おちい)り次々と――――広範囲で殺戮(さつりく)された。

 核も圧力も衝撃さえ与えても外傷は見当たらず、あらゆるモノを無効化し、心胆(しんたん)(さむ)からしめ戦慄(せんりつ)を覚えさせた数多(あまた)の凶器を装備する装甲兵器は、<生物>の惨状、悲鳴を見聞きしながら、憤怒(ふんぬ)憎悪(ぞうお)の激情に駆られ――――――――

 

 ――――――――――あらゆる全て(せいぶつ)を殺戮し終えた。




 (あと)として残ったのは、燃焼し、被爆したものの辛うじて骨組みだけで建っている建造物、舗装(ほそう)された道路に目立つ陥没や何かが口を開いたかのように引き裂かれた巨大な穴、偶然<人>が訪れなかった無傷の建物、その他被爆し焼け焦げ、痛々しい爪痕(つめあと)を残して絶望の色に染まったモノのみであった。

 標的を失った装甲兵器は、永遠と解消できぬ心火が導く儘に、対象(せいぶつ)を探し続け、暴れ回っている。空気中の二酸化炭素を微量に吸収するだけで膨大な量のエネルギーを得られるソレは、不朽(ふきゅう)であり不滅(ふめつ)だ。

 装甲兵器が殺戮を(こいねがい)未だ無意味に凶器を振り回している中、蕾獰罹嬉(らいどうりき)が装甲兵器の実験と共に開発していた粘着質(ねんちゃくしつ)な液体が各地で活性化していた。

 (あらかじめ)め装甲兵器に液体を携行(けいこう)させ、機体が自爆か火炎放射を使うなどして高温に触れることで活性化する仕組みだったのである。

 その液体からなんとも形容し辛い異形(いぎょう)が、()いずる様に出で、有ろうことか側の装甲兵器を(すす)る様に()らったのだ。いとも簡単に喰われた装甲兵器は跡形も無く、最初から存在していなかった様に、吸われ、消えた。

 獣の顔形をしたような粘着質なその異形は各地に断続的に出現し、装甲兵器を喰らう他に同類まで喰い、自らの(かて)とし強大化した。

 弱肉強食の世界は生まれ出でる異形の形が多様になろうとも一向に変わる気配は皆無(かいむ)であり、それらは力を求めて互いに争いあっていたのだが、時が経過するにつれて徐々に多種多様な感情が身に付いていた。

 それは(すで)に生まれ出ている異形を指し示すのではなく、新たに出現した、言わば全体の種類は多種だが、予め一種類しか備わっていない感情をもつ新種の異形が現れ始めたということだ。

 端的に言えば、これまで全ての異形の感情が『力への固執(こしつ)』――――『執着(しゅうちゃく)』のみであったのに対し、新種の異形は様々な感情の中から一種類だけ持つようになったということである。

 だが、旧型の異形に比べ何かが向上した訳ではなく、結局弱肉強食の()の世では新旧関係なく力が無ければ喰われるのは変わらないのだ。

 それから(しばら)く、異形は生み出され続け、喰われ続け、強大化し続け――――――――




 ()る時、異形を断続的に生み出しているその液体から、<人>に近似(きんじ)した………否、<人>であるかもしれない人型(ひとがた)が生まれ、呪術的(じゅじゅつてき)(コトバ)諷詠(ふうえい)した刹那(せつな)、手中に凶器が顕現(けんげん)し、あらゆる異形を一瞬の内に殺傷、強大化した異形さえも(もてあそ)ぶかのように翻弄(ほんろう)し、己は無傷の儘息の根を止めた。人型は新旧の異形とは方法は違えど異形を自身の糧とし、再び殺戮に向かう。

 ()の世に生まれ出た人型の圧倒的な実力の差は歴然としていた。

 これまでの異形とは能力が遥かに上昇し、加えて外見も粘着質ではなく(れっき)とした<人>である。新旧の異形のように曖昧(あいまい)な形はとっていない。

 更に人型は思考回路・動作さえも<人>のようであり、言語能力や数学などの基礎的能力(きそてきのうりょく)も兼ねていた。

 詰まり、<人>と同じくくしゃみはするし、痛みは感じるし、面倒だと思うことも有るのである。

 それらを端的に言えば、<人>の基礎的能力に人外(じんがい)で大幅なプラス要素が追加されたということだ。

 だが、新旧の異形に比べ、人型が生まれ出でてくる数は非常に少なく、とても(まれ)であった。また、新旧の異形、そして同類に喰われる場合も少なからず有り、総数は三桁に達しない。

 やがて人型は、<人>と同じように互いに手を組み、組織を構成した。だがそれは一つに(まと)まることは無く、各地に点在し、異なる組織とは出会い頭に衝突、意見が相反するならば互いを殺しあい、自らの組織が主張する(りょう)に一歩でも踏み越えたならば、即座に殺傷、得物を振るうのだ。

 そんな中、各地の液体から生まれ出でる人型が更に減少し、人型は異形を狩りつつも時には狩られ、その数は大幅に低減されている。




 『人界』は終焉(しゅうえん)を告げられ、新たなる世が創世(そうせい)された。

 その世は核の乱発により陽光が通らず、その為氷河期に入る星の(ごと)く寒冷化した。大気中に残留する超高濃度の放射能は未だ辺り一帯を被曝させている。

 だが、それら全ては装甲兵器、異形、人型には全く影響が無いようだ。

 大きく分けられた三種類の脅威は、互いを敵視し、喰らい、増減する。

 <人>の(みにく)い心火のみを宿す装甲兵器、(いず)れかの感情を備え本能の思う儘に従う新旧の異形、唯一(ゆいいつ)<人>らしく、<人>となんら変わらない感情を持ち、生まれながらに圧倒的な力を誇る人型。

 それらが織り成す惨劇の舞台は凄まじく、異様であり、おどろおどろしく、現実離れしている。

 そんな世を『冥界(めいかい)』と呼ばずに何と形容出来ようか。




 ()の物語は、(けが)れた『冥界(めいかい)』で生まれ出()でた人型の――――――或る少年の終世(しゅうせい)である。

文章表現が拙く、誤字脱字があると思います。

熟語の使い方も間違っているかもしれません。

ですが、本作を覘いて頂きありがとうございました(・▽・)/

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