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ep.41

 リーバは血を吐いた。


 それもかなりの量だ。


 目の前がぐらつく。


 だが、この勝負は想像もつかない展開を呼ぶ。





 時は遡る。


 リーバは背神の紋章を駆使して、悪戦苦闘した。


 カユの身体に強烈なGがかかる。


 トオルの時のように遊んでるわけにはいかない。


 「カユ?君はケイロスの言いなりなんて屈辱じゃないのか?」


 「フフ。リーバ様。無論、屈辱的ですよ。ですが、私にも守らなければならない人たちがいる。それだけのことです。」


 「そうか。だが、母さんは力づくで返して貰う。」


 「ええ。それが貴方のやるべきことです!!」


 急に声を大きくしたカユはGを覇気で吹き飛ばした。


 しかし、トオルはさらに追撃する。


 レオが剣で巨木の根本に切り込みを入れる。


 そして、リーバは自身の能力で巨木をカユに向かって何本も叩きつける。


 その破壊力は恐ろしいものであったが。


 土煙から無傷のカユが姿を現す。


 冷や汗を浮かべたリーバが言う。


 「やはり強すぎる...」


 「いいえ、リーバ様。間違っていますよ。貴方が弱すぎるのです。」


 リーバは幼少期から魔王の血族としては、落ちこぼれ扱いだった。


 故に肩身が狭く、強さを重んじる魔族に産まれたがため、酷い差別、侮蔑を受けてきた。


 しかし、最弱の魔族である彼は諦めなかった。


 たった1人の肉親である母を守るために。


 例え実質魔族でも至高の領域に近いカユが相手であろうが。


 「リーバ様。私の理想の国のため、犠牲になってください!!」


 カユは詠唱する。


 この世界では特段無詠唱だから必ずしも優れているとは限らない。


 それどころか、詠唱は無詠唱よりも強力な魔力を発するのだった。


 「力の盟主たる三銃士カユの名に置いて、古の魔装は今現れんとする。」


 「ブラックアームド!!」


 漆黒の鎧にカユは纏われる。


 リーバは聞いたことがあった。


 カユは強敵には切り札の黒い魔装で闘うと。


 カユに強敵と見做されている。


 戦闘狂のリーバは興奮した。


 血が滾った。


 勝ちたい。どうしても。


 その彼の願いに何かが応じる。


 森がざわつき始めた。


 そして、吹き荒れる風の中、プラチナの光にリーバは包まれる。


 「まさか!?その光は、古の赤き剣士レッズと肩を並べたという三勇者セイル、カイン、アストだけが辿り着いたと言われる領域!!」


 カユは固唾を呑んだ。


 「プラチナ...最高位のギフテッド!!」


 カユは更に気づく。


 一緒にいたはずのレオはどこに行ったの??


 レオは少し頭の回らない方である。


 だが、森の木に切れ込みを入れ回っていた。


 リーバの指示によるもの。


 と思ったかもしれない。


 だが、これは長い間を共にしたリーバとレオの阿吽の呼吸だったのだ。


 「こんなものか??」


 レオは一息ついた。


 カユが気づいた時にはもう遅かった。


 一斉にリーバは森全体に紋章を宿す。


 森の上空に浮かぶそれはプラチナ色だった。


 切れ込みを入れた巨木がカユを襲う。


 だが、カユは世界屈指の戦士だ。


 「ブラックサーベル!!」


 カユは木々を粉々に粉砕し続けた。


 それでも。


 根気強いリーバの攻撃でカユは魔力をかなり消費した。


 「やりますね。リーバ様。このままじゃジリ貧です。次の攻撃に賭けましょうか。」


 「ああ、こっちも全てを賭ける。」


 「力の盟主たる三銃士カユの名に置いて、暗黒の使徒よ!顕現せよ!」


 そこに現れたのは。


 暗黒龍アシッドブラックドラゴン。


 神話上で魔王に懐いていた最古の龍であり、その強さは至高の領域を遥かに凌駕すると言う。


 「相手にとって不足無しだな。」


 リーバはいつも通り好戦的な笑みを引き出す。


 「聞こえるかー!!ケルーー!!!」


 「...!」

 

 ケルの耳にそれは届いていた。


 「この龍は!!世界の災厄となるほどの存在だ!だが、俺とお前の力が必要なんだーーーー!!!!」







 ケイロスは不愉快そうにしていた。


 「五月蝿いですねえ。所詮魔王の血筋とは言っても最弱。敵うはずないでしょう。」


 ケルは思い出していた。リーバやリーバの母との日々を。


 そして、あんなに弱々しかったリーバがここまでの気迫を出していることに驚いてるのだった。


 「人々を導く女神として不甲斐ないですわ、今の私ったら。」


 「ん?何を言っているのです?」


 ケイロスはよほど自信があるのだろう。


 全くもってそうこぼすケルに理解に苦しむ。


 「あなたの大切な者の命運は全て私が握っているのですよ?まさか裏切るなんて?ねえ?」


 ケイロスは歪み切った顔で再度脅す。


 「そうね...でもあんたの顔も見飽きたわ。いいわリーバ久しぶりに女神らしいことしてあげる。」


 ケルの目に活力が戻る。


 「とんでもない助っ人呼んでやるわね!」






 リーバはケルを信じた。


 そして、ケルは唱える。


 「力の盟主たる元三大女神ケルの名に置いて、異界より祝福されたその力を貸したまえ!!」


 そこに現れたのは。


 「どうやら出番が来たみたいですね。」


 「ああ、そうらしいなキーナ。」


 カユはその姿を見て、膝をつき涙を流す。


 「信じられない...あの燃え滾るような赤い髪と光輝く金の髪。間違えないわ。」


 ケルは力強く笑っていた。


 「ええ、そう。それは他の世界を救った伝説の存在。赤髪の剣士レッズ。そして、金髪の魔導士キーナよ!!」


 ケイロスは絶句していた。


 そして、同時に恐怖した。


 「魔王様でさえ、恐れ慄くあの忌まわしき存在がなぜこの異界に!!クゥゥ!!!!!」


 カユは信仰する存在を見て涙を流していた。


 リーバは驚いている。


 「ケル...まさか君が元三大女神だったなんて。」


 「大サービスよ。私も加勢するわ。」


 ケルはリーバの後ろに現れ、そう告げる。


 「それと、レッズ様とキーナ様の戦いぶりもよく見ておくのよ。」


 その刹那だった。


 黒い龍はレッズたちに黒い咆哮を飛ばす。


 「ハイパーバリア!!」


 そして。


 「今汝我の問いに応えよ。かの赤髪の戦士に大いなる力を与えたまん!!ハイパーレイズ!!」


 レッズが光に包まれると、あっという間に髪を赤く燃やす。


 「フレイムバーサークモード!!」


 赤い戦士は炎の魔装に纏われた。


 黒龍は足がすくんでいた。


 「神話上の邪竜がここまで怯えるなんて。」


 リーバは血が騒ぐ。


 俺もあんな風に強くなりたいと。


 そこで、カユもアシッドブラックドラゴンにエンチャントする。


 「ブラックレイズ!!」


 黒いオーラに包まれた龍はレッズたちに向かって、鉤爪を振るう。


 「ゴン!!」


 鈍い音が鳴る。


 一方でカユはリーバ、レオ、ケルを相手取る。


 連携魔法をリーバたちは使う。


 「それは天の怒り!タイフーン!!」


 ケルのサポートがあると、ここまでやり易いのか。


 リーバは頼もしく感じていた。


 ついにケルは覚悟を決めてくれたのかと感慨深くも思った。


 あのカユが女神ケルの助力もあって圧されている。


 ケイロスは計画が完全に狂ったと判断した。


 「撤退ですね。」


 ケイロスは黒紫の渦の中に消えた。




 黒龍の攻撃をレッズは愛剣で跳ね返す。


 赤髪の剣はあまりに重い代物だ。


 だが、それを自在に操る怪力を持つ。


 龍の両手を斬り飛ばし、こう言う。


 「キーナ、決めるぞ!!」


 「はい!!レッズさん!!」


 「ニルヴァーナ!!」


 ポツポツと雨が降る。


 そして、どこからか押し寄せる超巨大な濁流の渦にブラックドラゴンは沈み込んでいった。


 リーバはそれを横目に見ていた。

 

 「これが神に最も近いと言われるレッズ、キーナの力なのか...」

 

 「どこを見ているのです!!」


 苛立ったカユがリーバに襲いかかる。

 

 さすがにカユの分が悪いか?


 勝負の行方は?

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