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第二十一話

 レッズとキーナは魔族。


 グレスとカレンはハク、クレイツとドルスはゲントを相手する。


 そして、相手側の後方のサポートにアレンがいる。


 キーナは正直アレンを厄介だと思った。


 恐らく前回と違い、絶妙なタイミングで後方支援が飛んでくるだろう。


 だからこそ、周囲に目を配りながら目の前の敵を屠らなければならない。


 レッズとキーナ最強タッグここに現るだ。


 しかし、相手は魔族。


 恐らく純粋な戦闘力では魔人族をも凌ぐ可能性が高い。


 相手にとって不足はなし。


 レッズとキーナはすぐさま連携をとる。


 「ザ・レイズ!」


 「聖者の大剣よ。俺に力を貸したまえ!」


 レッズはその自慢の黒い大剣で魔族を叩こうとした。


 その刹那、ミノタウロスのような容姿をした魔族はレッズに向かって吼えた。


 何と禍々しい咆哮だとレッズとキーナは思った。


 キーナは思わず、足元がすくむ。


 その時、レッズは叫んだ。


 「キーナ!!俺がついてる!」


 「はい!」


 キーナは覚悟を決め直す。


 「行きましょう!レッズさん!」


 「ああ!行くぞ!」レッズは笑っている。


 レッズはキーナと共に闘えるということに喜びを感じている。


 最も大切な存在と。


 そして、同じ気持ちをキーナは持っていた。


 レッズは初っ端から全開を出す。


 「今ならやれる!バーサークモード!」


 レッズはM字の頭をしたあのサ◯ヤ人のような好戦的なそして、どこか冷静さを持った表情を浮かべていた。


 レッズの全力の一撃を魔族はその斧で受け止めた。


 と思ったらその斧が砕かれた。


 ミノタウロスは目を赤く光らせる。


 「ウォォォォ!!!!!」


 レッズの初撃は尋常ではなかった。


 キーナは思った。今のレッズとなら。この最強タッグなら。と。








 グレスはその華麗な剣戟で元五大魔人を凌駕していた。


 そして、カレンのサポートも抜かりない。


 ハクは強い。


 だが、このグレスという男は日々の鍛錬を怠っていなかった。


 レッズへの敗北。それが、この聖剣に選ばれた戦士を駆り立てていた。


 グレスとカレンは連携を見せてくる。


 「ドライヴソード!」


 カレンがグレスの剣にエンチャントしたのだ。


 そして、カレンも「ザ・レイズ!」


 これにより、グレスの身体能力が強化される。


 「ハアアアア!」


 グレスは雄たけびを上げる。


 そして、ハクの身体を袈裟斬りにした。


 と思われた。


 だが。


 それはハクの幻影だった。


 「グレスさん!後ろ!」


 後衛のカレンが叫ぶ。


 気づけばグレスの背中は横に大きく切り裂かれていた。


 カレンは驚嘆した。


 そして、魔力の流れを心を澄まして見ると。


 「これは奴の能力かもしれないわね。」


 幻影のハク。


 かつては五大魔人として人々に多くの厄災を振りまいた存在。


 その強大な力にレッズ達の師匠と痛み分けになったこともあった。


 そして、ハクの力がグレス達に猛威を振るう。


 「ファントム!!」


 ハクの幻影が4つに増える。


 そして、その内の二体がグレスを襲う。


 一体をグレスは切り裂いた。


 だがもう一体がカレンに矛先を変える。


 グレスはその影を追う。


 しかし、少し遅かった...


 ファントムの爪がカレンの腹を掠める。


 「カレン魔導士!!」


 グレスはまだまだ強くなりたい。


 ともに戦う者のことを傷つかせないために。


 「グレスさん!大丈夫かすり傷です!」


 聖剣の持ち主はその言葉に胸を撫で下ろす。


 「ほう。かすり傷とな。しかしそれだけではないだろう?」


 魔人は醜悪な笑みを浮かべた。


 突如として、カレンが苦悶に満ちた表情で冷や汗を流し始めた。


 そう。毒だ。


 「私の爪には毒を仕込んであってね。それも呪術で解毒魔法は効かない。最も私を倒せば話は変わるかもしれないが、万に一つもないだろうな。」


 グレスはハクを睨みつけた。


 無論この戦いには勝つつもりでいた。


 しかし、もっと勝たなければならない理由ができた。


 ここにいる仲間の命のために。








 クレイツとドルスはゲントに善戦していた。


 覚醒したクレイツの圧倒的な剣技とドルスの援護魔法が光る。


 しかし、そこにアレンの魔法が飛んでくる。


 「デスフレイム!!」


 「アンチマジック!!」


 間一髪クレイツへの脅威をドルスが退けた。


 ゲントは興味深そうにクレイツとドルスを舐めるように見る。


 「いいでっすね!!私ゾクゾクしてきましたよ!!」


 ゲントは大げさに言ってみせる。


 「何ですかい?変な魔人だな。まあ魔人の中でも結構やるようだが。」


 「ですね。何か変な奴ですが。」


 ドルスも同意する。


 「変な奴とは失敬!!」


 どこぞの至高の御方に仕えるあのキャラを思い出す話し方だ。


 「では本気で相手して差し上げましょう!グレーターデーモン出でよ。そして、我と融合し、その真価を発揮したまん!!」


 ゲントの魔力が一気に跳ね上がる。


 「ではイッツショウウウウウタイㇺ!!」


 ゲントがどこぞの民謡のような踊りをし始めた。


 すると、ゾーンに入っていくのかして、さらに魔力が跳ね上がる。


 その魔人が手をパンと叩くごとにオーラが増幅していく。


 「行きましょう!限りある時間を生きる者達へ悠久の眠りを与えたまん!!」


 囁くように言った。


 「ジ・エンド」その瞬間クレイツ達の視野が真っ暗に染まっていく。








 一方でレッズはミノタウロスの二本の角を切り落とし、最後の攻撃を与えようとしていた。


 その矢先、アレンが動き出す。


 「デスレイズ!!」


 その援護魔法により、弱り切っていたミノタウロスがみるみる凶悪化していった。


 「クソ!!」レッズは舌打ちした。


 バーサークモードも長くはもたない。


 最後に畳みかけようとした瞬間にこれだ。


 キーナは冷や汗を浮かべた。


 そんな状況で、ミノタウロスが左の拳を挙げる。


 そして、レッズは降りかかる拳を剣で受け止めた。


 「何なんだこの力!」


 レッズはなんとか拳を押し返した。


 今度は両腕の指を絡ませて握り上から振り落としてきた。


 また大剣で受け止める。


 「グウ!!」


 地面が軋む。


 「どうだ。魔族の力の脅威は!!ハハハ!!」


 アレンが心の底から愉悦に浸っている姿が見える。


 キーナはそれを睨むが、レッズに発破をかけた。


 「レッズさん!!援護魔法です!!」


 「スーパーレイズ!!」


 レッズはその魔法名を聞いた直後、力がみなぎるのを感じる。


 「キーナ!助かった。」


 そして、レッズは必殺技を使う。


 「火炎竜の袈裟斬り!!」


 レッズの後ろに火炎竜が一瞬現れたようだった。


 レッズの剣がミノタウロスの腹部を捉える。


 そして、その傷口が燃えた。


 ミノタウロスは絶叫する。


 「ウオオオオオオオオオ!!」


 アレンが不機嫌そうにその光景を見ていた。


 「仕方ない。私自ら相手になろう。」


 アレンが前線に出てきた。


 レッズに強烈な圧をぶつける。


 しかし、レッズとキーナは屈しない。


 この逞しい二人なら。


 アレンが吠える。


 「ウアアアアアアアア!!」


 アレンが獣のような姿に変わる。


 「私がただ魔法に優れていると思ったらそれは大間違いだ。本来私は武人だった。お前達を殺す。ここで今!!」


 アレンがその狂気に満ちた目でレッズとキーナを睨みつけていた。


 だが、「行くぞキーナ!!」


 「はい!」


 負けないほど強い目で二人は魔人に対峙していたのであった。

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