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第二十話

 それは唐突だった。


 レッズとグレスの手合わせのはずだったのに。


 レッズの目に魔人族の紋章が宿る。


 それと同時に正気を失った。


 「これは奴の力の誤作動だ。皆!力を貸してくれ!」


 グレスが必死に叫ぶ。


 「わっかりやした!レッズさんにもたまにはこういうこともあるでしょう。今度はこっちが助ける番です!」


 クレイツも臨戦態勢を取る。


 「恐らくこれはバーサークモードと言われる状態やもしれん。自我を保てれば強力な武器となるがまだ奴はその力を使いこなしていないということだ!」


 グレスは状況を冷静に判断する。


 「レッズさん必ず助けて見せます!」


 異常事態にキーナは決死の表情を見せた。


 瞬間。レッズがグレスに襲い掛かる。


 ガン!


 剣と剣が凄まじい音を立てた。


 その衝撃は常軌を逸したスピードで車が突っ込んできたようだった。


 「何だ!この馬鹿力は!」


 グレスの手が少し痺れたのがいい証拠だ。


 「援護します!レッズさんにならこれを撃っても大丈夫でしょう。」


 「コスモドライヴ!!」


 カレンは必殺の魔法を使用する。


 しかし、バーサーク化したレッズは無傷だった。


 「そんな!コスモドライヴでも無傷なんて!」


 カレンは驚愕していた。


 「これがレッズさんに秘められた魔人族の力!」


 そして、キーナは生半可な攻撃ではレッズを止められないと気づく。


 「皆さんの力を魔法で強化します!」


 キーナは詠唱する。


 「今我らの力を精霊の恩恵により高めたまん!」


 「ザ・レイズ!!」


 グレスたちは力がみなぎるのを感じた。


 レッズの大剣がクレイツを襲う。


 しかし、クレイツはレッズの攻撃を見事に躱して見せた。


 「天使の加護を受けた今の俺は甘くねえぜ!レッズさん!そして、いつものレッズさんより乱暴で粗野な太刀筋だ!読みやすい!」


 そう言うとクレイツは風凪いや、光の風凪で必殺技を繰り出す。


 「光鋼刃!!」


 レッズの腹をその一撃は掠めることに成功する。


 ドルスは驚いていた。


 みんな強くなっている。


 なのに自分は何をしていた?


 12聖魔導士になって浮かれていたのか?


 いや、今は仲間の前で恥はかけない。


 全力でレッズを正気に戻す。


 そう誓った。


 ドルスは本気の底力を出す。


 「汝今我の問いに答えたまえ。天より司りしその荘厳なる扉よりその姿を見せたまえ!」


 ドルスはホーリーグリフォンを召喚した。


 「クレイツさん!」


 ドルスは叫ぶ。


 「あいよ!」


 クレイツは意図を理解する。


 ホーリーグリフォンにクレイツは飛び乗ったのだ。


 そして、加速したグリフォンにクレイツの光の一撃が上乗せさせる。


 「天かける刃!」


 クレイツの渾身の一撃がレッズにかなりのダメージを負わせた。


 そして、キーナの魔法の力を借りたグレスがレッズの頬に右ストレートパンチを決める。


 これにより、レッズを気絶させることに成功した。








 赤髪の剣士は目を覚ます。


 レッズの頭はキーナの膝の上だった。


 「あれ?俺は確かグレスの奴と決闘していたはず。」


 そして、思い出す。


 仲間に牙を剥いたその記憶を。


 「ああ、俺は何てことを。剣士失格だ。」


 「レッズさん。違います。間違っていますよ。」


 「ええ?」


 「レッズさんはこれまで何度も私たちを救ってくれました。私たちも同じようにレッズさんを助ける。あたりまえじゃないですか。」


 レッズは周りを見ると、皆頼もしさを感じさせるような笑みを浮かべている。


 「ああ。必ずこの力を使いこなして、魔人王を倒して見せる。皆。見ててくれ。」


 「レッズさん。私たちもついてるんですからね!」


 カレンははにかんで見せる。


 「ああ、俺はもうひとりじゃない。何だってお前たちとならやれる気がするよ!」


 レッズはいつもの調子をここに取り戻した。


 








 魔人王レーネストは聡明な男だ。


 レッズがバーサークモードになったことも全ての魔人の始祖である魔人王は感じ取っていた。


 「我ら王家に伝わるバーサークモードをガイアが掴みつつある。我らにもあまり時間はないということだ。」


 「はは。レーネスト様。赤髪の討伐編成をしますか?」


 「無論だ。至急、赤髪討伐隊を編成せよ!」


 「承知致しました。」


 忠実なヴァンはすぐに部隊の編成に取り掛かることにする。


 「もうすぐですか。ガイア様、いや赤髪とはもう一度拳を交えたいものだな。」


 戦闘狂のヴァンはそう呟くのだった。


 








 ヴァンの編成した魔人精鋭部隊はこうだ。


 五大魔人アレン


 魔人ハク


 魔人ゲント


 そして、魔族だ。


 ミネスは工作のため別の場所に出張っている。


 ハク、ゲントはかつての五大魔人でもある。


 その実力はグランにも引けを取らないほどだ。


 いかにグランの魔力量が優れていたからといってこの二人は戦闘のスペシャリスト。


 尋常ではない強さを誇る。


 そして、この戦力がレッズ達に牙を剥こうとしているのだった。


 この部隊は対レッズだけでなく複数をイメージした陣営である。


 先のグランは人族の高度な連携に倒れたと聞いた。


 よってそれも警戒済みなのである。









 ミネスは失われた魔人族領土の地図も並行して探していた。


 なぜなら、地図は魔人族の敷地を詳しく書かれており、敵に有利な情報を与えないためでもある。


 そんな中、ミネスには懸念材料が見つかっているのだった。


 同盟関係であるはずの魔族から時折だが妙なオーラを感じるのだった。


 ミネスは「まさかね。」


 最悪の状況を想定するが、首を横にブンブン振りそれを自分で否定することにした。


 レックスは訝し気な目で時折こちらを見ることがある。


 達人同士にしかわからない駆け引きがあった。


 ミネスの考えでは恐らくレックスに怪しまれてると踏んでいる。


 同時にレックスも自分の心中を悟られまいとしていた。


 ちなみに魔族は亜空間にいるので、実際に姿を現しているわけではない。


 ミネスはあくまで最後の切り札として取っている。







 そして、再び決戦の時が近づく。


 アレンは魔人を率いてキースターの森に向かっていた。


 魔人族第一王子の行方の足掛かりがあったからだ。


 そして、厄介な精霊のいる森を焼き払うつもりだった。


 しかし、それを阻むものがいた。


 レッズ達はあらかじめ魔人族が次に現れる場所を絞っていた。


 そして、ビンゴである。


 アレンはレッズ達と相対する。


 「これはこれは手厚い歓迎だな。ガイア。」


 そこにはレッズ、キーナ、クレイツ、グレス、カレン、ドルスといった面々が立ちはだかっていた。


 「ここの精霊とは友人でな。悪いが貴様らはここで倒させてもらう。森に危害は加えさせない。」


 レッズはそう啖呵を切った。


 「フフ。ハハハハハ。舐めておるのか?グランの老骨を倒したくらいで。」


 「舐めてはねえさ。こっちは準備万端ってとこだぜ?」


 レッズは軽く挑発する。


 「フン。減らず口を。すぐに黙らせてやる。楽しみにしておくがいい!」


 そう言うとアレンはハク、ゲントを前に出させる。


 「やれ。」


 アレンがそう言った瞬間。二体の魔人が強烈な勢いで襲ってきた。


 前衛のキースター三剣士が対応する。その中でもクレイツの動きはまるで閃光のようだ。


 そして、パワーと豪快さではレッズ、剣先の鋭さと華麗な足運びはグレスに軍配が上がる。


 三人とも特色のある剣士である。


 この勝負の命運はいかに。

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