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第十八話

 ベガは戦慄する。


 なんだこの状況は。


 これが人族の力だというのか。


 カレン達の必殺の一撃は確かに手傷は負わせたものの、致命傷は避けられた。


 しかし、カレン達は絶望するどころか笑っている。


 そして、カレン達は勝負を畳みかけようとする。


 「まだよ。私たちは決して負けない!明日が欲しいから!」


 ユーゼもそれを聞いて、立ち上がる。


 ユーゼも魔力を酷使し、ルシファーさえ顕現させたのだ。


 体力ももうわずか。


 のはずなのに。


 ユーゼもカレンに同調する。


 「カレン。立派になったね。」


 カミラもだった。


 もう魔力も使い果たした。それでも。


 明日を掴むためにと立ち上がる。


 これが、カレン達の底力だ。


 「この一撃に賭けるわよ!」


 「ああ。」「ええ。」


 先程の切り口よりもっと大きなものが天上に生まれる。


 「コスモドライヴァーズハイ!!!!行っけーーーーー!!!!!!!!!」


 「まさか!こんな力、奴らの一体どこから!?」


 魔人は切り口から生まれる光線の餌食になった。


 そして、ルシファーがデーモンロードを打ち破る。


 ここにひとまずの勝利を得られたのだった。


 だが、戦いはまだこれからだ。


 魔人王も復活し、本当の勝負がこれから始まる。








 一行はとりあえずそれぞれの居場所に戻ることとなった。


 魔人王レーネストは復活してしまった。


 それだけではない。レントの様子を見ると天使族と何かがあったのだろう。


 レントは目を瞑り、息を吹き返すことはなかった。


 レッズは悲しみに暮れていた。


 同時に兄と慕った男に託された使命に胸を焼く。


 しかし、レントは後悔はないとまで言っていた。


 そして、レッズだけが知らされた。


 この世界の行く末とは。







 恐らく北の大陸に魔人王は潜伏している。


 魔人達を従えて。


 それに伴い、レッズ達にも猶予が与えられたのだった。


 キーナは「今回はなんとか勝利を得られました。ですがこれからです。魔人王は人類を滅ぼそうとしていると聞きました。さらに五大魔人最強格ヴァンが残っています。」


 「ああ、そうだ。キーナ魔導士の言う通りあの戦いは通過点に過ぎない。何より魔人王は行方をくらませた。警戒は怠らないことだ。」


 グレスは前髪をかき分けながらそう言った。


 「レッズさん。あなたは仲間を信じて戦った。そして、一つの難は逃れたと言っていいでしょう。」


 カミラもそう言って一番の功労者レッズを称えた。


 その言葉でレッズは胸を撫でおろした。


 そうだ。


 レッズは仲間の命のために戦っている。


 戦いの目的を忘れるわけにはいかない。


 






 魔人王レーネストは復活を遂げていた。


 「レーネスト様。無事復活されてなによりです。」


 最強格の魔人ヴァンがそう祝辞を述べる。


 「ああ。私が復活したのはいいが、グランを失ったのは痛手だな。あの出来損ないと思っていたガイアにやられるあたり、皮肉な事だ。」


 「ええ。ですが。私がいます。」


 「ああそうだったな。ではヴァンよ、ガイアを討ち取れ。」


 「まことですか?ガイア様は今やグランにも引けを取らない存在。完全な魔人化をさせ、我らのもとに引き込むべきかと思われます。」


 「私もそれを一考した。だが、あれは心が脆い。バーサーカーとなった時は私でも少し厄介だからな。」


 「なるほど。その命このヴァンが命をかけてまっとう致します。」


 そこにミネスがやってきた。


 「レーネスト様。お待ちいただいていた戦力ですが無事補強できました。」


 「そうか。ご苦労。」


 「いえ、私はやるべきことに従事したまでです。」


 果たして魔人王が欲していた戦力とは。










 そのころ、天界では天空神殿が半壊していたのだった。


 天使長とレントの戦闘の凄まじさをその神殿は語っている。


 レントはもういないが、天空で何が起こっていたのか。





 時は遡る。


 レントは天使長と二人きりで会談することになった。


 そして、ある話を持ち掛ける。


 「恐らく、魔人王を仮に倒せたとしましょう。そうするとまた一つ問題が出てきます。」


 「それは天使長様の懸念されている通り、絶縁世界の向こう側。未開拓大陸の存在です。」


 「なるほどな。魔人王と未開拓大陸の魔族が繋がっているということか。」


 「流石、話が早い。そうです。魔人王はどの道倒さなくてはなりません。しかし、魔族が黙っているかどうか。仮に魔人王を倒したとして、魔族が絶縁世界の結界を解除する可能性があります。」


 「それはつまり、傘下の者を殺された面目が立たないからか?」


 「それもあります。未開拓大陸では魔族の統治ですが、人間が暮らしていると師匠から聞かされました。未開拓大陸の人間も国交を望み、そしてなにより、魔人王候補となってもおかしくないレッズに魔王が限りなく興味を持つ可能性が高いです。これらのことから魔族いや、魔王が絶縁世界を解除するでしょう。」


 「それに問題があるのか?」


 天使長は首を少し傾げる。


 「魔王も一人ではありません。友好的な者もいれば、服従を求める者も出てくるでしょう。今の我々では魔王からすれば塵芥のような存在。ですから天使長様にはあくまで中立の立場を取って頂きたいのです。」


 レントはさっきから妙だと感じている。


 聡明な天使長であろうとここまでリアクションが薄いのも気になるが。


 その時、精霊が警鐘を鳴らす。


 「レント。不味い。今すぐ逃げたほうがいい。」


 「ああ、何かおかしい。」


 レントの勘は当たる。


 「ということのようです。魔王様。」


 天使長は感情のこもっていない声で言う。


 「遅かったか。」


 レントは舌打ちする。


 「魔王様。この者は他にも知っていることもあるやもしれません。知ってはならない事柄にたどり着き得る存在かと。」


 「ああ。消すのが最善じゃ。」


 魔王は嗤う。


 「クソッ。せめて鍵だけでも奪い返さないと。レッズに伝えるんだ。」


 そこから壮絶な戦闘が始まり、レントは天使族総出の戦力をいなしながら満身創痍で転移魔方陣に乗り込み、レッズに看取られたわけだ。


 




 レッズは悔しがった。


 レントから託された情報は正に値千金のものだ。


 無論。これを話せるのはグレスだけだった。


 それほど、レッズはグレスという男に信頼を置いていたと言ってもいい。


 だが、今は魔人王だ。魔人王ははっきり言って底なしの化け物中の化け物。


 多大な戦力を必要とする。


 よって、戦力増強のためカミラ、レーンバルには六英雄を探す命が下った。


 六英雄。大半が同じ師を仰いだ人類最強の戦士達。


 異なった性格をしているが、その実力には目を見張るものがある。


 レッズ達にはのどから手が出るほど欲しい人材だった。


 そして、一人の英雄レントが死んだ。これは本当に大きな痛手だ。


 だが、レッズはかつて兄と慕ったレントの分まで思いを背負い魔人王を撃つ所存だ。


 この先レッズ達をどのような運命が待ち受けているのだろうか。


 そして、絶縁世界の向こう側の未開拓大陸には何があるのか。

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