表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢ですが、漫画を描かせてください!〜ペン一本で世界を救う転生記〜  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/41

【第6章/終章】第3シーン:「最後の漫画」

 静寂――。

 音も風も消えた、世界の果て。


 そこに、ただ一人、ルシエナが座っていた。

 足元の大地は、破れかけた紙のようにひび割れ、ゆっくりと端から剥がれていく。

 空には黒い亀裂が走り、世界の断面から白い光が滲んでいた。


 それでも彼女は、静かに微笑んでいた。


 ――手には一本のペン。

 幾千の物語を紡ぎ、幾度も涙を描いたその道具が、いま再び彼女の手に握られている。


「誰かが描いてくれたこの世界を、

 今度は私が、笑顔で描き直す。」


 ルシエナはそう呟き、ゆっくりとペンを動かした。


 細く、柔らかな光の線が、空へと走る。

 その一筆がひとつの裂け目を縫い合わせ、崩れた街並みを再び結びつけていく。


 彼女がページをめくるたびに、景色が甦った。

 燃えたはずの家が立ち上がり、倒れた橋が再び空を渡る。

 そして、失われた人々の笑顔が――光の粒となって帰ってくる。


 それは、“描くこと”そのものが、修復の魔法となった瞬間だった。


 ルシエナの描く線が増えるたび、風が吹き、色が戻る。

 黒いインクが光に変わり、溶けるように世界へ染み込んでいく。

 まるで、かつて彼女が描いてきた“優しさ”や“涙”が、世界の骨格に帰っていくように。


 遠くの空――。

 ノエルが、浮遊する大地の上からその光景を見上げていた。


「……彼女の線が、世界を繋いでる……!」


 風が鳴る。

 彼の背後で、インクルが涙を拭いながら微笑んでいた。


「これが、ルシエナの“最後の漫画”だね……」


 やがて、空に巨大な線の円が描かれた。

 始まりも終わりもない、完全な輪。


 それはまるで――この世界そのものの“輪郭”のようだった。


 白と光と風が溶け合い、全てがひとつの物語へと戻っていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ