【第6章/終章】第1シーン:「崩壊する世界」
夕暮れの王都は、まるで巨大な紙芝居が破られるように音を立てて崩れていた。
建物の輪郭がにじみ、瓦礫がインクの粒子へと溶けて空に舞う。
地面に走る亀裂は、まるで誰かが紙を裂いた線のよう――。
その裂け目の奥から、黒と白の光が交互に瞬き、感情の奔流が吹き上がっていた。
怒りの赤、哀しみの青、歓喜の金、絶望の灰。
人々の心から溢れた色彩が風に乗って絡み合い、世界そのものを染め上げていく。
「……世界が、解けていく……!」
カルディナが震える声で呟いた。
彼女の手の中に握られた聖印が、次第に透明になっていく。
信仰さえも、形を保てない。
「共感の臨界点を超えた。」
ユリウスが唇を噛み、空を見上げた。
「想像と現実の境界が崩壊している!」
空には無数の線が浮かんでいた。
それは描きかけの絵のように震え、断ち切られ、また結び直されながら漂う。
まるで、世界の“設計図”が露出しているかのようだった。
笑う者がいれば、同じ場所で泣く者もいる。
絶望の叫びと歓喜の歌が、同じ空に溶け合って響いた。
感情が混ざり合い、渦を巻き、風となる。
――まるで、この世界そのものが、
人々の心で紡がれた“ひとつの物語”であるかのように。
その混乱のただ中で、ひとつの影が立ち尽くしていた。
ルシエナ。
風に煽られ、彼女のマントが破れ、髪が舞う。
目に映るのは、自らが愛した世界が“線”となってほどけていく光景だった。
「……物語が、ほどけていく――」
その呟きは、風に溶け、空の裂け目に吸い込まれていった。




