第4章 第3シーン「漫画ルネサンス」
世界は、静かに変わりはじめていた。
街角の掲示板には、戦の布告ではなく――
絵と物語のポスターが貼られている。
子どもたちの笑い声が、どの国でも同じリズムで響くようになった。
手にしているのは剣でも祈祷書でもなく、漫画の冊子。
王都の一角。古びた教会を改装した「絵物語学校」。
木製の机に座る子どもたちは、真剣な眼差しでペンを走らせていた。
教師:「いいかい? “勇気”を描きたいなら、
まず自分の怖いものを知ることだ。」
子ども:「……こわいけど、描いてみたいです!」
教室の壁には、ルシエナの名が刻まれていた。
――《笑うこと、泣くこと、想うことを学ぶ場所》
港町フェルカでは、広場に即席の劇場ができていた。
少年たちが描いた漫画を元に、即興劇が上演される。
俳優:「この花は、涙で咲いたんだ!」
観客:「知ってる! 『光の下で眠る花』だ!」
笑いと涙が交差する。
漫画が、人の心を繋ぐ新しい言葉になっていた。
一方、共和国の大学では――
学者たちが魔法理論を漫画で解説しはじめていた。
学者A:「従来の教本より、理解が三倍早い!」
学者B:「絵で思考を整理できる……これが“視覚思考理論”か。」
書斎の中にも風が吹き、
知識の世界までも“物語”が染めていく。
そして、ルシエナは旅の途中の丘の上で、その光景を見つめていた。
彼女の物語を読む子どもたちが、国ごとに“続き”を描いている。
風がページをめくり、彼女の頬を撫でる。
ルシエナ:「私の描いた夢が……
人々の中で“続き”を描いてる――。」
彼女の瞳に映るのは、誰もが創作者になった世界。
ペンを持つ手が、未来を紡ぐ。
その一つひとつが、希望の風に変わっていく。
ユリウス(観測記録):「文化の自立現象を確認。
“物語が作者の手を離れ、社会構造を変化させている。”」
ミリア:「物語が……生きてるんだね。」
ルシエナは微笑んで空を見上げた。
青空に、誰かの描いた紙飛行機が舞い上がる。
それは風に乗って、まだ見ぬ国へと飛んでいった。
――“風のルネサンス”。
それは、世界が初めて“物語で学ぶ”時代の幕開けだった。




