第4章 第2シーン「夢の市場」
共和国の港町・フェルカ――
海風に乗って、紙とインクの匂いが町中に広がっていた。
石畳の広場いっぱいに並ぶのは、色とりどりのテント。
そこに描かれているのは、各国の言葉と、無数の絵物語。
ルシエナは、感嘆の息を漏らした。
「これが……“漫画市”……?」
ノエルは笑い、腕を組んで空を仰いだ。
「ああ。君の風が、とうとう海を越えたんだ。」
彼の言葉通り、広場には異なる国の服を着た子どもたちが集い、
言葉も文化も違う彼らが、同じ紙を前に笑い合っていた。
少年:「俺の漫画、あの国の子が読んでくれた!」
少女:「絵が違っても、笑う場所は同じなのね!」
ルシエナは胸を押さえた。
――ああ、これが文化なんだ。
国も、宗教も、戦争も超えて、“共に笑う”ための力。
その瞬間、微かな光が広場の上に舞い上がる。
子どもたちが描いた“未来の絵”が、紙の上で光を帯び始めたのだ。
ミリア:「……絵が、動いてる……!」
少年が描いた“空を飛ぶ船”が、紙を離れ、ふわりと風に浮かぶ。
少女が描いた“光の街”が、空気の中に幻のように映し出される。
ユリウス:「いや……これは、夢そのものが形を取っているんだ。」
風が鳴った。
光の絵が空を渡り、人々の頭上で踊る。
それはまるで、希望の花弁が世界中に散っていくようだった。
ノエル:「見えるかい? これが、“夢=希望”の魔法さ。」
ルシエナ:「夢が……現実を描いてる……」
ノエル:「ああ。君の物語が、それを導いたんだ。」
涙が頬を伝う。
それは悲しみの涙ではなく、未来への歓喜の証。
ルシエナ:「……こんな風が吹くなんて、思わなかった。」
ノエル:「文化ってのは、風と同じだ。
止められない。どこまでも、誰にでも届く。」
港の鐘が鳴る。
朝焼けの空へと、光の絵たちが一斉に飛び立っていく。
――夢は、現実を創る。
それが、この時代を動かす“新しい魔法”のはじまりだった。




