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悪役令嬢ですが、漫画を描かせてください!〜ペン一本で世界を救う転生記〜  作者: 南蛇井


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第3章 第5シーン「光の下で眠る花」

 ――夜が、静かに明けようとしていた。

 聖堂広場は、まだ薄闇の中に包まれている。

 けれど、地面には無数の“光の花”が咲いていた。

 それは昨日、異端として焼かれた漫画の灰の中から生まれたものだった。

 花弁は透き通り、ひとつひとつが人々の涙を受けて光を放っている。


 広場の中央には、ルシエナの姿があった。

 肩に降り積もった灰を払い、彼女はゆっくりと朝の空を見上げる。

 ミリアが震える声で囁いた。


「ルシエナ様……見てください。

みんな、もう泣いてません。笑って……笑ってます。」


 人々は互いの手を取り合い、涙を拭い合っていた。

 泣きながら笑うその光景は、かつての王都にはなかったものだ。

 ――怒りや恐れではなく、“赦し”が広場を満たしていた。


 やがて、群衆の奥からゆっくりと一人の男が歩み出る。

 銀の髪、白の法衣。

 神官カルディナだった。

 その姿に、ざわめきが広がる。

 だが彼は、迷いのない足取りでルシエナの前まで進み、静かに跪いた。


「あなたの物語は……神の沈黙を破った。」


 低く、しかし確かな声。

 カルディナの目には、もはや冷たい光はなかった。

 かわりに、深い安らぎと感謝の色があった。


「私はこれまで、神の名を掲げ、人の涙を拒んできた。

だが――あなたの物語を読んで、知ったのです。

真の信仰とは、他者を赦すことなのかもしれません。」


 ルシエナは一瞬だけ驚いたように息を呑み、

 やがて、ふっと柔らかく微笑んだ。

 頬に朝の光が差し、瞳が琥珀のように輝く。


「涙は、祈りよりも正直だから。」


 その言葉に、広場全体が静まり返る。

 そして――空が割れるように、朝の光が差し込んだ。

 夜明けの第一の光が、聖堂の尖塔を貫き、街を黄金色に染める。

 人々が同時に空を仰いだ。


 空には、光の花が咲いていた。

 まるで天そのものが、誰かの涙に応えて微笑むように。

 無数の花弁が風に舞い、広場の上空を漂う。

 それは“赦し”の形をした奇跡だった。


 ミリアが小さく呟く。


「……これが、ルシエナ様の物語の終わりですか?」


 ルシエナは首を横に振り、静かにペンを握りしめた。


「いいえ。

光の下で眠る花は――これから咲くの。」


 その微笑みとともに、夜が完全に明ける。

 朝の風が花びらを運び、王都の鐘が鳴り響いた。

 赦しと再生の物語は、こうしてひとつの祈りとなって世界に刻まれた。


第3章『光の下で眠る花』完。

――涙が光となり、信仰が赦しへと変わる。

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