【第1章・第4シーン】 「異端の宣告」
王都の中心、白亜の大聖堂。
陽光を受けて輝くステンドグラスの下、静寂が広がっていた。
聖職者たちが並び立ち、金の杖を掲げる。
その声は、冷たく厳しく、世界の法そのもののように響いた。
> 「“絵物語”――その名を持つ書、異端と定める。」
ざわめきが走る。
聖書朗読の合間に、信徒たちの不安げな囁きが漏れた。
> 「感情を操る魔法だという……」
> 「笑えば花が咲く? そんなもの、悪魔の戯れに違いない。」
老司祭が立ち上がり、厳かに告げる。
> 「笑いは神聖の冒涜。悲しみこそ祈りの証。
下民が幸福を求めるなど、傲慢の極みである。」
――その宣告は、刃のように全国へと広がった。
貴族たちの屋敷では、別の怒声が響く。
> 「公爵家の令嬢が――娯楽を売る?!」
> 「平民の市場に足を踏み入れた? 家の恥だ!」
王都の新聞には「笑う異端」「狂気の絵物語」と見出しが踊る。
そして、ひとりの少女のもとに一通の封書が届いた。
――『ルシエナ・フォン・レーベンリヒ。王都教会審問所へ出頭せよ。』
屋敷の空気が張り詰めた。
ミリアが真っ青な顔で封筒を握りしめる。
ユリウスは目を伏せ、低く言った。
> 「……覚悟を。あなたの創作は、もう“革命”と呼ばれ始めています。」
ルシエナは、ほんの一瞬だけ沈黙した。
そして、そっとペンを取る。
> 「革命、か。そんな大層なものじゃないわ。」
微笑むその横顔は、蝋燭の光に照らされ、どこか穏やかだった。
> 「私はただ、描きたいの。
泣いた人が笑えるように。
暗い場所に、少しでも灯りが届くように。」
ミリアの目に涙が浮かぶ。
ユリウスは深く息を吐き、彼女をまっすぐ見つめた。
> 「……ならば、共に戦いましょう。ペンと紙で。」
ルシエナは頷き、静かに言った。
> 「どんなに叩かれても、私はこの世界に“笑顔”を描く。」
その瞬間、窓の外で風がそよぎ、
遠くの街路樹に、季節外れの小さな花が一輪咲いた。




