表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍発売中・コミカライズ連載開始】捨てられた第四王女は母国には戻らない WEB版  作者: 風見ゆうみ
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/114

29  お茶会……、ではなく薬草茶会 ③

 次の日は薬草学の日だったので、コニファー先生が家にやって来てくれた。普段なら薬を作りながら雑談をするのだけど、今日は薬作りはやめて、コニファー先生とゆっくり話をすることになった。


「ロードブル王国のやり方は前々から聞いていたし、そんな時がいつかは来るだろうと思っていたから大して驚いてはいないんだけれど、あなたが学園に通っている間だとは思っていなかったわねぇ」

「近隣の国ならまだしも、私がここまで有名になっているとは思っていませんでした」

「あなたのおかげで私がかなり有名になってしまったもの。弟子になりたいと訪ねてくる人が増えたわ。でも、断り続けてきた。だから余計に弟子であるあなたが目立ってしまったのかもしれないわねぇ」


 コニファー先生はそう言って大きなため息を吐いた。元々は薬草学を教えてもらうだけだったのに、薬の作り方まで教えてくれた。私の先生になったせいで、コニファー先生たちはのんびり隠居生活ができなくなってしまったことを本当に申し訳なく感じる。


「巻き込んでしまって申し訳ございません」

「巻き込まれたなんて思っていないから、気にしないでちょうだい。それに私はあなたには借りがあるんだから」

「借りって、先生の旦那様を助けたことですか? あれは、当たり前のことをしただけですし、もうあの時の分は返してもらっています!」

「人は死んでしまったらどうしようもないの。あなたのおかげで主人は今も生きている。簡単に返せる借りではないのよ。それに、あなたは私の可愛い愛弟子よ。師匠が弟子を助けるのは当たり前のことよ」


 コニファー先生は私の手を握って言ったあと「もう、薬師としては追い越されちゃったけどね」と付け加えて笑った。コニファー先生には私の生い立ちを伝えたから、私が苦労してきたことを知っている。

 だから、こんなに優しいことを言ってくれるの?

 そう思うと、目頭が熱くなった。そんな私を見て、コニファー先生は笑う。


「あらあら、ミリルは泣き虫ねぇ」

「泣いてません!」


 目が潤んでしまったのは確かだけど、涙を流してはいなかったから強く否定すると、コニファー先生は私に優しい眼差しを向ける。


「大人になったって一人で生きていけない時はあるわ。助け合うのは当たり前よ。どうしても気になるなら弟子が師匠に助けを求めたと思えばいいだけよ」

「ありがとうございます。では、これからは遠慮なく何度も助けを求めようと思います!」

「……それは少し違うかしらねぇ」


 私たちは顔を見合わせて笑い合うと、パトリック様にどう対処するか。そして、美味しい薬をコニファー先生にどうやって作ってもらうかなど、見学会について話し合った結果、今回は薬ではなく、薬草茶をみんなで作って楽しむ会にしようという話になった。


「パトリック様はそれで納得してくれるかしらねぇ?」

「招待してもいないのに自分から来たいと言ったんです。文句は言えないでしょう。それに薬を作っているところは見せてあげたら良いかと思うんです」

「そうね。薬なんだから、飲ませる必要はないものね。だけど、ミリルが作るようなドロドロの薬にはならないわよ?」

「そのことについては任せてください」


 テーブルの上に置いていたシイちゃんに視線を送ると、キラリと光って返事をしてくれた。

 こうして打ち合わせを重ねていく内に、あっという間に日が過ぎて、茶会ならぬ薬草茶会の当日になったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ