27 お茶会……ではなく、薬草茶会 ①
「ルワナ様に力を与えたのは神様なの?」
ルワナ様と別れた馬車の中で、早速、シイちゃんに質問してみた。
『ソウミタイ。カミサマハヤサシイカラ、ドンナヒトニモチャンスヲアゲルンダヨ』
「チャンスってどういうこと?」
『ワルイコトヲシテモ、ハンセイシテヨイヒトニナル、チャンスダヨ』
一度、悪いことをしたからといって、この人は悪い人だと決めつけないということかしら。
「シイちゃんはもうチャンスをあげないのね?」
私の元家族のことを思い出して尋ねると、シイちゃんは躊躇う様子もなく、コロコロと転がる。
『アイツラノコトヲイッテイルンダロウケド、ジュウブン、チャンスハアゲタヨ。ダカラ、ミリルガ、ユルスッテイウマデ、ユルサナイ』
一度動きを止めたけれど、すぐにまた動き出す。
『ヤッパリ、ハラガタツカラ、ユルサナイ』
「ありがとう、シイちゃん」
私の分も怒ってくれているんだと思い、お礼を言って抱きしめると、シイちゃんはキラキラと光った。
きっと神様も変わることができると思ったから、彼女を選んだのよね。ルワナ様が私を騙そうとしたら、罰を与えてくれるはず。それにシイちゃんだって付いてくれているんだもの。ルワナ様にそこまで警戒しなくてもいいでしょう。
「それにしても、パトリック様はどうやって私をロードブル王国に連れ帰るつもりだったのかしら」
私がパトリック様のことを恋愛対象として見ることなんてないんだけど、簡単に恋に落ちる女性だと思われてるのかな。
そんなことを考えていた次の日、パトリック様から昼食を一緒にとりたいと言われた。
ここはルワナ様の出番だわ。
そう思った私は快く頷いたあと、ルワナ様の所に行って一緒に昼食をとってもらいたいと話をした。すると、ルワナ様は嬉しそうに頷く。
「わたくし、頑張りますわね」
「よろしくお願いします」
私たちの会話を聞いた、ルワナ様の取り巻きは驚いた顔をして、私たちを見つめている。
それはそうよね。今までの私たちはどちらかというと敵だったんだもの。
******
「え、ルワナ嬢も一緒?」
「いけませんか? ご迷惑でしたら席を外しますわ」
「あ……、いや、いいんだけどね」
昼休み、私と同じテーブルに着いていたルワナ様を見て、パトリック様は驚いていたが、さすがに拒否することはなかった。
「君たちはいつの間に仲良くなったの?」
「どういうことですか?」
「いや、君たちは仲が悪いと聞いていたんだけど」
どうして来て間もない彼がそのことを知っているのか。
パトリック様の言葉に驚きはしたものの、動揺を見せないように笑顔を作る。
「もう小さな子供ではありませんし、良い関係を築いていくつもりですよ」
「そうですわ。家族だって喧嘩もしますでしょう?」
「そうだよね。誤解していたみたいだ。ごめんね」
「気になさらないでください」
その後は、パトリック様から、コニファー先生はどんな人なのか、可能ならば会わせてほしいと言われた。
まさか、コニファー先生までロードブル王国に連れて行こうとしているんじゃないわよね?
「コニファー先生に会えたら、どんな話をするおつもりなんですか?」
「……そうですね。薬を作っている所を見てみたいかな。今まで、ミリルさんや辺境伯家の方々しか見ていないのでしょう?」
笑顔でそう言ったパトリック様の目が笑っていないことに気がついた。
もしかして、話題になっている薬を作っているのはコニファー先生ではないと疑ってる?
「わたくしも見てみたいです!」
援護してくれるはずのルワナ様が裏切って……、いや、彼女は知らないんだった。
「わかりました。コニファー先生に相談してみます」
いつまでも隠し続けられるものでもないことはわかっていた。変に動揺を見せて怪しまれたくなかった私は、とりあえず、話を持ち帰ることにした。




