24 少し変わった友人関係 ②
私とルワナ様はリディアスと婚約してから、とても仲が悪くなった。というか、一方的に嫌われていると言ったほうが正しいか。
貴族御用達と大きく書かれた看板のあるカフェに入ると、ルワナ様の顔を見ただけで、店員は私たちを個室に案内した。
個室は2階にありバルコニーに出て、綺麗な庭園を見ながらお茶をすることも可能だそうだが、今日は話がメインのため、大人しく部屋の中で話すことになった。
「あなたの噂は色々とお聞きしてましてよ」
「……どのような噂でしょうか」
思い当たることが多すぎてわからない。
リディアスとのことなのか。薬師としてのことなのか。それとも――。
「これは私の考えなのですが、あなたは王家の石を持っているのでしょう?」
「何をおっしゃっておられるのですか?」
この話は予想外だった。動揺を隠して笑顔で聞き返すと、ルワナ様も笑みを浮かべて答える。
「レイティン殿下が先日、学園に来られた際、陛下に話をしておられたのを聞いたという生徒がいるのです。その話を聞いた陛下がかなりご立腹だったそうですから、嘘の話をしたわけではないのでしょう」
「他国とはいえ、王族の話を言いふらしている人がいるんですか?」
シイちゃんが気がついていなかったことも不思議だけど、立ち聞きした話を言いふらすのもどうかしている。
「ええ。そうみたいね」
「教えていただきありがとうございます。このことはハピパル王国の国王陛下にも連絡しておきます」
「えっ!? どうしてハピパル王国の国王陛下に?」
「立ち聞きして噂を広めるような人間が、この国にいるということですから取り締まっていただきたいからです」
「言いたいことはわかるけれど、国王陛下にまで報告しなくても良いのではないかしら」
慌てているルワナ様を見て思う。本当に噂を聞いただけなのか。この人自身が聞いたのかどちらなのかしら。
「立ち聞きできるような場所で大事な話をしていた、フラル王国側にも問題がありますが、聞いたからといって言いふらして良いわけではありません。国際問題になりかねないため、ハピパル王国の陛下に相談しようと思うのです」
言い終えた時、ウエイターが飲み物を運んできてくれたので、そこで会話が途切れた。ウエイターが出ていっても、ルワナ様が無言のままだったので話しかける。
「ルワナ様、あなたが望むなら、誰からその話を聞いたかは、陛下に伝えることはやめておきます」
「……でも、犯人探しをするのではないかしら」
「探しはせずに警告だけに留めてもらうようにお願いするつもりです」
厳しい処置を取れば、噂を肯定しているようなものだもの。あくまでも立ち聞きしていたことについて怒ってもらわなくちゃ。
「わかりました。これ以上、誰かにその話をするのはやめておきますわ。あ、私が立ち聞きしたわけではありませんからね!」
「承知しました」
焦るルワナ様に笑顔で頷くと、彼女はため息をついて口を開く。
「王家の石をあなたが持っていることは確かなのでしょう?」
「どうしてそう思うのですか?」
「だってわたくし、大きな石に襲われたことがありますから」
「……」
そ、そういえば、ルワナ様は私の机の中を勝手に漁ろうとして、シイちゃんの下敷きになっていたんだった!
あんなことがあったら、石に反応したくなる気持ちもわからないでもない。
「不思議な石を持っていることは確かですが、それが王家の石かはわかりません」
これ以上余計な詮索をするなという圧を送りながら笑顔で言うと、ルワナ様は慌てた様子で話題を変える。
「こ、こんな話をしに来たのではありません。本題に入らせてもらいますわ」
「お願いします」
「わたくしは婚約者を探しているのですが、中々見つかりませんの」
「……そうでしたか」
「で、ミリルさんに私とパトリック様の仲を取り持っていただきたいんです」
「えっ」
自分の恋愛もままならない私に、そんなことを言われても困るんですけど!




